消費税免税制度改正2025：外国人旅行者向けリファンド方式はいつから施行？準備すべきポイントを徹底解説

日本を訪れる外国人旅行者にとって、消費税免税制度は大きな魅力となってきました。しかし、2026年11月から、この制度が大きく変わることをご存知でしょうか。令和7年度税制改正大綱において、外国人旅行者向けの消費税免税制度が根本から見直されることが決定されました。これまでの購入時に消費税が免除される仕組みから、リファンド方式と呼ばれる還付型の制度へと移行します。この改正は、近年問題となっていた免税商品の不正転売を防止し、制度の健全性を保つことを主な目的としています。免税店を運営する事業者にとっては、システム導入や業務フローの変更など、大きな準備が必要となります。一方、外国人旅行者にとっても、購入時の支払い方法や出国時の手続きが変わるため、制度の理解が欠かせません。施行時期や具体的な変更内容について、詳しく解説していきます。

施行時期はいつからか：段階的な改正スケジュール

消費税免税制度の改正には、複数の施行時期が設定されており、段階的に変更が実施されることになっています。まず最も早い変更として、2025年3月31日に外国人旅行者が免税購入した物品を別送できる措置が廃止されます。これは、免税商品を郵送などで日本国外に送ることができる制度でしたが、不正利用の温床となっていたため、早期に廃止されることになりました。

そして、制度の根幹を変える最も重要な変更であるリファンド方式への移行は、2026年11月1日から実施されます。この日を境に、すべての免税販売が新しい制度の下で行われることになります。現行制度との併用期間や移行期間は設けられておらず、2026年10月31日までは現行制度、翌日の11月1日からは完全にリファンド方式という、明確な切り替えとなる点に注意が必要です。

免税店にとって特に重要なのが、電子化対応の期限です。2026年10月31日までに電子化に対応していない免税店は、その時点で免税店の許可が取り消されることになります。つまり、2026年11月1日からは、電子化対応が完了していない店舗は免税販売を行うことができなくなるため、早急な準備が求められています。システム導入には数か月から半年以上かかることも珍しくないため、遅くとも2025年中には具体的な準備を開始する必要があります。

リファンド方式とは：新しい免税の仕組みを理解する

新しいリファンド方式では、外国人旅行者が免税店で商品を購入する際の流れが大きく変わります。現在の制度では、購入時点で消費税が免除され、税抜き価格で商品を購入できます。外国人旅行者は、その場で消費税分の節約を実感できるため、非常に分かりやすい仕組みでした。

しかし、リファンド方式では、購入時には消費税を含めた税込み価格を支払うことになります。この時点では、免税は適用されていません。免税店は、購入記録情報を国税庁の免税販売管理システムに電子的に登録します。この登録により、誰が、いつ、何を、いくらで購入したかという情報が記録されます。

外国人旅行者は、購入日から90日以内に日本から出国する際、税関で商品の持ち出し確認を受けます。空港や港の税関で、パスポートをスキャンし、免税購入した商品を提示することで、実際に商品を国外に持ち出すことを証明します。この税関での確認が完了して初めて、免税販売が成立することになります。

税関での確認後、免税店は確認情報を免税販売管理システムから取得します。この確認情報により、商品が適切に持ち出されたことが証明されたら、免税店から外国人旅行者に対して、支払った消費税相当額が返金されるという流れになります。返金方法は、クレジットカードへの返金、銀行振込、空港の返金カウンターでの現金受け取りなど、複数の方法が用意される見込みです。

この仕組みにより、実際に商品が日本国外に持ち出されることが確認されてから免税が適用されるため、国内での不正転売を効果的に防ぐことができます。商品を購入しても、税関での確認を受けずに国内で転売した場合は、返金が受けられないため、不正行為のインセンティブがなくなります。

購入から返金までの具体的な手続きの流れ

リファンド方式における具体的な手続きは、外国人旅行者と免税店の双方に新しいステップを求めます。まず、免税店での購入時には、外国人旅行者はパスポートを提示し、税込み価格で商品を購入します。この時点では、日本人が商品を購入する場合と同じように、消費税を含めた金額を支払います。

免税店は、購入者の情報、購入品目、購入金額などの詳細を免税販売管理システムに電子的に登録します。この登録作業は、レジシステムと連携して自動的に行われるように設計されることが想定されています。外国人旅行者には、購入証明となる情報が提供されます。これは、紙の書類の場合もあれば、電子データの場合もあり、各免税店のシステムによって異なります。

次に、出国時の手続きが重要なステップとなります。外国人旅行者は、空港や港の税関において、免税購入した商品を提示します。税関には電子キオスクが設置される予定で、パスポートをスキャンすることで、免税購入記録が自動的に呼び出されます。税関職員または自動システムにより、実際に商品を持ち出すことが確認されると、その確認結果が免税販売管理システムに登録されます。

この税関確認が完了すると、免税店はシステムから確認情報を取得できるようになります。免税店は、この税関確認情報を取得し、保存します。この確認情報により、商品が適切に持ち出されたことが証明され、返金処理を行う根拠となります。

最後に、返金処理が行われます。免税店は税関確認情報の保存を確認した後、外国人旅行者に対して消費税相当額を返金します。返金方法については、返金プラットフォーム「JPrefund（ジェイピーリファンド）」がリリースされる予定です。このシステムでは、本人確認、免税購買履歴との照合、税関承認フラグとの照合、送金手段の受付、還付送金の金融機関への依頼を、迅速かつ自動的に行うことができます。

外国人旅行者は、クレジットカードへの返金を選択すれば、数日から数週間後にカード口座に消費税相当額が入金されます。銀行振込を選択すれば、指定した銀行口座に返金されます。また、空港の返金カウンターで現金を受け取ることも可能になる見込みです。ただし、税関確認を受けずに出国した場合や、免税購入した商品を持ち出さなかった場合は、返金を受けられないという点が、現行制度との大きな違いとなります。

免税対象物品の取り扱い：区分廃止と規制緩和

今回の改正では、免税対象物品の取り扱いにも大きな変更があります。現行制度では、免税対象物品は「一般物品」と「消耗品」に区分されています。一般物品には家電製品、バッグ、衣類、時計、宝飾品などが含まれ、消耗品には食品、飲料、医薬品、化粧品などが含まれます。これらの区分により、購入条件や包装方法が異なっており、免税店にとっても外国人旅行者にとっても、複雑な制度となっていました。

しかし、新制度では、この一般物品と消耗品の区分が完全に廃止されます。すべての免税対象物品が同じ取り扱いとなり、区分による違いがなくなります。これにより、免税店は商品の種類を判断する必要がなくなり、外国人旅行者も分かりやすくなります。

また、現行制度では消耗品について、同一店舗で一日当たり50万円という購入上限額が設定されていましたが、この上限額も撤廃されます。これにより、高額な消耗品の購入も可能になります。例えば、高級食品や高級化粧品を大量に購入したい旅行者にとっては、制限が緩和されることで利便性が向上します。

さらに、消耗品については特殊包装が義務付けられていました。これは、免税購入した消耗品を日本国内で消費することを防ぐための措置で、開封すると明らかに分かるような特殊な包装を施す必要がありました。この包装は、出国まで開封できないため、購入後すぐに商品を確認したり使用したりすることができませんでした。しかし、新制度では税関での持ち出し確認が必須となるため、この特殊包装の義務も廃止されます。外国人旅行者は、購入後すぐに商品を開封して確認することができるようになります。

ただし、金地金や白金の地金など、不正目的で購入されるおそれの高い物品については、引き続き免税販売の対象外とされます。これは平成28年度税制改正で明確化された措置であり、新制度でも継続されます。貴金属の地金は、換金性が高く、不正な資金移動や脱税に利用される可能性があるため、免税の対象から除外されています。

高額商品に関する特別措置：追跡可能性の向上

新制度では、高額商品の取り扱いについて、特別な措置が設けられます。税抜き価格が100万円以上の免税対象物品を販売する場合、免税店は購入記録情報にその物品を特定するための情報を追加する必要があります。

具体的には、商品のシリアルナンバー、具体的な名称、ブランド名、型番号、形状や色彩などの特徴、鑑定書や鑑別書の有無、保証書付きである旨などの事項を組み合わせて、免税対象物品を特定するに足りる事項を提供することが求められます。これらの情報により、高額商品を個別に識別できるようにすることが目的です。

これは、高額商品の不正転売を防止するための措置であり、商品の追跡可能性を高めることを目的としています。宝飾品、高級時計、高級バッグなどの高額商品を扱う免税店は、この情報管理体制を整備する必要があります。もし不正転売が疑われる場合、商品の特定情報により、どの免税店で、誰に販売されたかを追跡することができるようになります。

この措置により、免税店側も販売する相手をより慎重に確認するようになり、不正な購入者を排除する効果が期待されます。高額商品を扱う免税店は、シリアルナンバーを管理するシステムや、鑑定書・保証書の情報を記録する仕組みを構築する必要があります。

免税店に求められる準備と対応：電子化とシステム導入

リファンド方式への移行に伴い、免税店には多くの準備と対応が求められます。最も重要なのは、電子化対応です。新制度では、電子的な免税手続きが必須となります。繰り返しになりますが、2026年10月31日までに電子化に対応していない免税店は、許可が取り消されることになります。したがって、まだ電子化していない免税店は、早急にシステム導入を進める必要があります。

システム面では、購入記録情報と税関確認情報を国税庁の免税販売管理システムとAPI連携で送受信する仕組みを構築する必要があります。API（Application Programming Interface）とは、異なるシステム間でデータをやり取りするための接続方法です。免税店のシステムと国税庁のシステムが自動的にデータを送受信できるようにすることで、リアルタイムでの情報管理が可能になります。

税関確認情報システムは「プル型API」を使用し、免税店側から情報を取得するパターンとして、「期間指定」と「取引指定」の2つの方法があります。期間指定では、特定の期間に税関確認が完了した取引をまとめて取得できます。取引指定では、特定の取引について税関確認が完了したかどうかを個別に確認できます。免税店は、自社の業務フローに合わせて、適切な方法を選択する必要があります。

業務フローの見直しも必要です。現在の購入時免税から、税込み販売と後日返金という流れに変わるため、レジシステム、会計処理、接客手順などを全面的に見直す必要があります。特に、外国人旅行者への説明方法は重要です。税込み価格での支払いとなることや、返金の仕組み、出国時の手続きなどを分かりやすく説明するためのマニュアル作成と従業員研修が必要です。言語の壁がある中で、複雑な制度を説明することは容易ではありません。多言語の説明資料や、図解、動画などを用意することが効果的です。

返金業務の体制整備も重要な課題です。税関確認情報の取得後、迅速に返金処理を行うための体制を構築する必要があります。返金方法の選択肢を用意し、外国人旅行者の利便性を確保することが求められます。クレジットカードへの返金、銀行振込、現金返金など、複数の方法に対応できる体制が理想的です。

システムベンダーの選定も早期に行う必要があります。免税システムを提供する事業者は複数ありますが、自社の業務形態や規模に適したシステムを選定し、導入スケジュールを立てることが重要です。システム導入には数か月を要することもあるため、余裕を持った計画が必要です。また、システムベンダーの対応能力にも限界があるため、多くの免税店が同時期にシステム導入を依頼した場合、対応が間に合わない可能性もあります。早期に準備を始めた免税店ほど、優先的にサポートを受けられる可能性が高くなります。

改正の背景：不正転売問題と制度の信頼性

今回の大規模な制度改正が行われる背景には、現行制度における深刻な不正利用問題があります。最も大きな問題は、免税購入された商品の不正転売です。外国人旅行者が免税で購入した商品を、出国前に日本国内で転売し、不正に利益を得る事例が後を絶ちませんでした。

特に、高額な家電製品や化粧品などが、免税購入後すぐに国内のリサイクルショップや買取店に持ち込まれるケースが多発していました。免税で購入した商品を市場価格より安く転売しても、消費税分の免除により利益が出るため、不正転売は魅力的なビジネスとなっていました。このような不正行為は、日本の税収を損なうだけでなく、制度の信頼性を大きく傷つけるものでした。

また、「通常生活の用に供する」という免税制度の本来の趣旨を超えた大量購入も問題となっていました。個人使用を装いながら、実際には転売目的で大量に商品を購入する、いわゆる「ソーシャルバイヤー」の存在が、制度の信頼性を損なう要因となっていました。特に、中国などからの旅行者が、免税で大量の化粧品や医薬品を購入し、帰国後に転売するケースが問題視されていました。

現行制度では、免税店が外国人旅行者に対して、商品を国外に持ち出すよう説明し、確認書類を保管する義務がありましたが、実際に持ち出されたかどうかを確認する仕組みがありませんでした。この制度の穴を突いた不正が横行していたのです。免税店としても、販売後に顧客が商品を本当に持ち出したかどうかを確認する手段がなく、善意で説明するしかありませんでした。

新しいリファンド方式では、税関での持ち出し確認が必須となるため、商品が確実に国外に持ち出されることが保証されます。これにより、不正転売を大幅に抑制できると期待されています。税関での確認がない限り返金が行われないため、不正行為を行うインセンティブがなくなります。

また、免税店側の負担軽減も改正の目的の一つです。現行制度では、一般物品と消耗品の区分、特殊包装、上限額の管理など、免税店には多くの事務負担がありました。新制度では、これらの負担が軽減され、よりシンプルな運用が可能になります。店頭での販売業務はシンプルになり、本来の接客やサービスに注力できるようになることが期待されています。

外国人旅行者にとってのメリットとデメリット

リファンド方式への移行は、外国人旅行者にとって、メリットとデメリットの両面があります。まず、メリットから見ていきましょう。

最も大きなメリットは、一般物品と消耗品の区分が廃止されることで、購入手続きがシンプルになることです。現在は、物品の種類によって手続きが異なっており、免税店のスタッフに「これは一般物品ですか、消耗品ですか」と確認する必要がありました。新制度では統一された手続きとなるため、このような煩雑さがなくなります。

消耗品の購入上限額50万円が撤廃されるため、高額な食品や化粧品なども制限なく購入できるようになります。これは、特に高級食品や高級化粧品を大量に購入したい旅行者にとっては朗報です。現行制度では、50万円を超える消耗品を購入したい場合、複数の店舗に分けて購入する必要がありましたが、新制度ではその必要がなくなります。

特殊包装が不要になるため、購入後すぐに商品を使用したり、開封して確認したりすることができます。現行制度では、消耗品は特殊包装されており、出国まで開封できませんでした。化粧品を購入しても、実際に使ってみることができず、帰国するまで商品の状態を確認できないという不便さがありました。新制度では、この制約がなくなり、購入後すぐに商品を楽しむことができます。

一方、デメリットもあります。最も大きな変更は、購入時に税込み価格を支払う必要がある点です。現行制度では税抜き価格で購入できるため、その場で消費税分の節約を実感できましたが、新制度では一旦全額を支払う必要があります。10万円の商品であれば、現行制度では10万円で購入できますが、新制度では11万円を支払い、後日1万円が返金されるという流れになります。

返金を受けるまでに時間がかかることも、外国人旅行者にとっては負担となる可能性があります。出国時の税関確認後、実際に返金されるまで、数日から数週間かかる場合があります。クレジットカードへの返金の場合、カード会社の処理期間も含めると、さらに時間がかかることもあります。旅行中に免税のメリットを実感できないという点は、心理的なデメリットとなる可能性があります。

出国時に税関での確認手続きが必須となるため、空港での所要時間が増える可能性があります。特に、多くの免税品を購入した旅行者は、確認手続きに時間がかかる可能性があり、余裕を持って空港に到着する必要があります。繁忙期には、税関での確認に長い行列ができる可能性も懸念されます。

また、税関確認を受けずに出国した場合や、免税購入した商品を持ち出さなかった場合は、返金を受けられません。現行制度では、持ち出し確認が徹底されていなかったため、このようなケースでも実質的には免税の恩恵を受けることができましたが、新制度では厳格に管理されます。うっかり税関での確認を忘れた場合や、商品を日本の友人にプレゼントして持ち出さなかった場合などは、返金を受けられないため、注意が必要です。

インバウンド観光への影響：期待と懸念

免税制度の改正は、日本のインバウンド観光にも影響を与える可能性があります。ポジティブな影響としては、まず制度の信頼性向上が挙げられます。不正利用が減少することで、制度の健全性が保たれ、長期的には外国人旅行者からの信頼が高まる可能性があります。正当に制度を利用する旅行者にとって、より良い環境が整います。

特殊包装の廃止や区分の簡素化により、購入手続きがスムーズになり、利便性が向上します。免税店のスタッフも、複雑な規則を説明する負担が減るため、よりスムーズな接客が可能になります。外国人旅行者にとっても、分かりやすい制度となることで、免税購入のハードルが下がる可能性があります。

一方、ネガティブな影響も懸念されます。購入時に税込み価格を支払う必要があることで、外国人旅行者の購買意欲が低下する可能性があります。特に、高額商品の場合、一時的な支払額が大きくなるため、購入を躊躇する旅行者が増えるかもしれません。現金を多く持ち歩かない旅行者にとっては、一時的とはいえ、税込み価格を支払うことが負担となる可能性があります。

また、リファンド方式への移行に伴う混乱期には、免税購入が減少する可能性もあります。新しい制度への理解が不十分な旅行者や、返金手続きを面倒に感じる旅行者が、免税購入を避けることも考えられます。特に、制度開始直後の2026年11月から数か月間は、周知不足や手続きの不慣れにより、混乱が生じる可能性があります。

免税店側の対応状況や、返金システムの使いやすさが、制度の成否を左右することになるでしょう。JPrefundなどの返金プラットフォームが、どれだけ利便性の高いサービスを提供できるかが重要です。返金が迅速で確実に行われれば、外国人旅行者の不安は軽減されます。逆に、返金が遅れたり、手続きが煩雑だったりすれば、免税制度の利用は減少する可能性があります。

政府としても、新制度の周知徹底や、外国人旅行者への丁寧な説明が求められます。空港や免税店での多言語対応の案内、ウェブサイトでの詳細な説明、SNSでの情報発信など、様々なチャネルを通じて情報を提供する必要があります。特に、中国、韓国、台湾、香港など、日本への旅行者が多い地域に対しては、集中的な広報活動が必要です。

JPrefundの仕組みと機能：返金業務の効率化

リファンド方式の導入に伴い、返金業務を効率化するために開発されたのが「JPrefund（ジェイピーリファンド）」という免税還付プラットフォームです。このシステムは、免税店と外国人旅行者の双方にとって、返金手続きを簡便化する重要な役割を果たします。

JPrefundの主要機能は、複数の工程を自動化することにあります。まず、本人確認の機能があります。外国人旅行者のパスポート情報を読み取り、返金を受ける本人であることを確認します。なりすましによる不正な返金請求を防ぐための重要な機能です。

次に、免税購買履歴との照合を行います。免税店から送信された購入記録情報と、返金申請者の情報を照合し、不正な返金請求を防ぎます。実際に購入した商品と返金申請の内容が一致しているかを自動的にチェックします。

税関承認フラグとの照合も重要な機能です。税関での持ち出し確認が完了し、承認フラグが立っているかどうかを確認します。この確認がない限り、返金は実行されません。これにより、商品を持ち出さずに返金を受けようとする不正行為を防ぎます。

送金手段の受付では、外国人旅行者が選択した返金方法を登録します。クレジットカード、銀行振込、現金など、複数の選択肢から選べるようになる予定です。旅行者の利便性を考慮し、様々な返金方法に対応します。

還付送金の金融機関への依頼は、システムが自動的に処理します。必要な確認が完了すると、JPrefundが金融機関に送金指示を出し、外国人旅行者への返金が実行されます。人手を介さず自動的に処理されるため、迅速で正確な返金が可能になります。

免税店側の視点では、JPrefundを利用することで、返金業務の負担が大幅に軽減されます。免税店は、免税取引データをJPrefundサーバーへ送信するだけで、後の処理はシステムが自動的に行います。個別に返金処理を行う必要がなくなるため、事務作業が大幅に削減されます。特に、多くの外国人旅行者を相手にする大規模な免税店にとっては、業務効率化の効果が大きいと期待されます。

外国人旅行者側の視点では、JPrefundや窓口カウンターを通じて還付申請をするだけで、簡単に返金を受けることができます。複雑な手続きを踏む必要がなく、デジタル化された仕組みによって、迅速な返金が期待できます。多言語対応のインターフェースにより、言語の壁も軽減されます。

承認送信事業者の活用：免税店の負担軽減策

免税店が電子化対応を進める上で、重要な選択肢となるのが「承認送信事業者」の活用です。承認送信事業者とは、国税庁から承認を受けた事業者で、免税店に代わって購入記録情報の送信や税関確認情報の取得を行います。

統計によると、免税店の90パーセント以上が「第三者システム、第三者送信」というタイプを選択しています。これは、承認送信事業者が提供するシステムを利用し、送信業務も委託する方式です。この方式が圧倒的に選ばれる理由は、免税店側の負担が最小限で済むからです。

自社でシステムを開発し、自社で送信業務を行うとなると、膨大な開発コストと運用コストがかかります。システムの保守管理、データの保存、電子証明書の管理など、専門的な知識とリソースが必要になります。特に中小規模の免税店にとっては、これらの負担は非常に大きなものとなります。

承認送信事業者を活用することで、これらの負担から解放されます。システム開発は不要で、保守管理も事業者が行います。データの保存や電子証明書の管理も事業者が担当するため、免税店は本来の販売業務に専念できます。月額利用料や取引ごとの手数料は発生しますが、自社でシステムを構築・運用するコストと比較すれば、はるかに低コストで済む場合が多いです。

ただし、承認送信事業者に消費税の返金業務を委託する場合、事業者との間で立て替えた消費税の決済業務が発生します。この決済フローについても、事前に十分理解し、自社の経理体制に組み込む必要があります。免税店が消費税を立て替え、後日事業者から返金されるのか、それとも事業者が直接外国人旅行者に返金するのかなど、決済の流れを明確にしておく必要があります。

会計処理の複雑化：経理部門への影響

リファンド方式への移行により、免税店の会計処理は複雑化する側面があります。この点は、制度改正のデメリットとして認識しておく必要があります。現行の購入時免税方式では、免税販売は最初から非課税取引として処理されます。販売時点で税抜き価格を受け取り、消費税を受け取らないため、会計処理はシンプルです。

しかし、リファンド方式では、販売時点では課税取引として処理する必要があります。具体的な会計処理の流れは以下のようになります。まず、販売時には、税込み価格で売上を計上し、消費税を預かり金として処理します。この時点では、通常の課税取引と同じ処理です。

次に、税関で持ち出し確認が完了すると、課税取引から免税取引へと区分を変更する必要があります。売上の区分を変更し、預かっていた消費税を返金する処理を行います。この区分変更の処理が、従来にはなかった新しい業務となります。会計システムに、この区分変更を処理する機能が必要になります。

返金処理では、外国人旅行者に消費税相当額を返金します。返金方法がクレジットカードの場合、銀行振込の場合、現金の場合など、返金方法によって会計処理が異なる可能性があります。それぞれの返金方法に対応した会計処理を設計する必要があります。

さらに、税関確認が得られなかった場合の処理も必要です。外国人旅行者が税関確認を受けずに出国した場合や、商品を持ち出さなかった場合は、免税取引として成立しません。この場合、課税取引として確定させ、預かった消費税を納税する必要があります。一定期間経過後も税関確認が得られない取引については、課税取引として処理するルールを設ける必要があります。

期末時点で税関確認待ちの取引がある場合、その処理も考慮する必要があります。販売は完了しているが税関確認がまだ得られていない取引については、仮勘定で処理するなど、適切な会計処理が求められます。決算時には、これらの仮勘定を適切に評価し、必要に応じて引当金を計上することも検討する必要があります。

このように、店頭での販売業務は簡素化される一方で、経理部門の業務は増加する可能性があります。免税店は、この点を十分に認識し、経理システムの改修や経理担当者の研修を行う必要があります。会計ソフトウェアがリファンド方式に対応しているかを確認し、必要に応じてカスタマイズや新しいソフトウェアの導入を検討する必要があります。

準備の緊急性：移行期間なしの切り替え

今回の制度改正において、特に注意すべき点は、現行制度とリファンド方式を併用する移行期間が設けられていないことです。2026年10月31日までは現行制度、2026年11月1日からは完全にリファンド方式という、明確な切り替えとなります。

この移行期間なしの切り替えは、免税店にとって大きなリスクを伴います。準備が間に合わない場合でも、猶予はありません。2026年11月1日から確実に新制度で運用を開始する必要があります。もし準備が間に合わなければ、免税販売を行うことができなくなり、ビジネスに大きな影響が出ます。

さらに重要なのは、電子化対応の期限です。再度強調しますが、2026年10月31日までに電子化に対応していない免税店は、その時点で免税店の許可が失効します。つまり、2026年11月1日からは、電子化対応が完了していない店舗は、免税販売を行うことができなくなります。免税販売が売上の大きな部分を占める店舗にとっては、死活問題となります。

この厳格な期限設定は、免税店に対する強いメッセージです。政府は、今回の改正を確実に実施する意志を持っており、準備の遅れは許容されません。免税店は、この点を深刻に受け止め、可能な限り早期に準備を開始する必要があります。

特に、システム導入には予想以上の時間がかかることがあります。システムベンダーの選定、契約、システムの開発やカスタマイズ、既存システムとの連携テスト、従業員への研修など、多くの工程があります。これらの工程を2026年10月末までに完了させるためには、遅くとも2025年中には準備を開始すべきです。

また、システムベンダーの対応能力にも限界があります。多くの免税店が同時期にシステム導入を依頼した場合、ベンダーの対応が間に合わない可能性があります。早期に準備を始めた免税店ほど、優先的にサポートを受けられる可能性が高くなります。2026年に入ってから慌てて準備を始めても、ベンダーの予約が埋まっていて対応してもらえないという事態も考えられます。

免税システムの選定ポイント：最適なベンダーの選び方

リファンド方式に対応した免税システムを選定する際には、いくつかの重要なポイントがあります。まず、API連携機能の充実度です。国税庁の免税販売管理システムとのAPI連携は必須ですが、その実装の質は事業者によって異なります。

購入記録情報の送信がスムーズに行えるか、税関確認情報の取得が迅速かつ確実に行えるか、エラー処理は適切かなど、細かい点まで確認する必要があります。システムの不具合により、税関確認情報の取得が遅れたり、返金処理に支障が出たりすれば、外国人旅行者からの信頼を失うことになります。

既存システムとの連携性も重要です。POSシステム、在庫管理システム、会計システムなど、免税店が既に使用しているシステムとの連携がスムーズに行えるかどうかは、業務効率に大きく影響します。システムベンダーに対して、自社の既存システムとの連携実績や対応可能性を確認すべきです。場合によっては、既存システムの改修や新しいPOSシステムの導入が必要になることもあります。

返金業務のサポート機能も選定の重要なポイントです。JPrefundとの連携機能があるか、返金処理の自動化はどの程度実現されているか、返金方法の選択肢はどれだけあるかなど、返金業務の効率化に直結する機能を確認する必要があります。返金業務が煩雑であれば、スタッフの負担が増大し、ミスも発生しやすくなります。

多言語対応も外国人旅行者を相手にする免税店には欠かせません。システムの画面表示や帳票出力が、英語、中国語、韓国語など、主要な言語に対応しているかを確認すべきです。また、外国人旅行者への説明資料やマニュアルも、多言語で提供されているかを確認します。言語対応が不十分であれば、外国人旅行者とのコミュニケーションに支障が出ます。

サポート体制の充実度も見逃せないポイントです。システム導入時のサポートはもちろん、運用開始後のトラブル対応、システムのアップデート、法改正への対応など、長期的なサポートが提供されるかを確認する必要があります。特に、2026年11月の制度開始直後は、予期しないトラブルが発生する可能性があるため、迅速な対応が得られるサポート体制が重要です。

コストも当然重要な選定基準です。初期導入費用だけでなく、月額利用料、取引ごとの手数料、システムアップデートの費用など、トータルコストを比較検討する必要があります。ただし、最安値のシステムが必ずしも最適とは限りません。機能、サポート、実績などを総合的に評価し、費用対効果の高いシステムを選ぶことが重要です。

実績と信頼性も確認すべき項目です。すでに多くの免税店で導入されているシステムであれば、信頼性が高いと判断できます。また、ベンダーの財務状況や事業継続性も重要です。免税システムは長期間使用するものですから、ベンダーが安定して事業を継続できる企業であることが望ましいです。

外国人旅行者への周知：制度理解の促進

リファンド方式の成功には、外国人旅行者への周知と教育が不可欠です。制度が変わることを知らない旅行者が混乱しないよう、十分な情報提供が必要です。政府レベルでの周知活動としては、観光庁や国税庁のウェブサイトでの情報提供が基本となります。

制度の概要、手続きの流れ、注意事項などを、多言語で分かりやすく説明するウェブページを作成し、広く公開する必要があります。特に、英語、中国語（簡体字・繁体字）、韓国語は必須です。その他、タイ語、ベトナム語、インドネシア語など、日本への旅行者が多い国の言語にも対応することが望ましいです。

SNSでの情報発信も効果的です。Twitter（X）、Facebook、Instagram、WeChat、Weiboなど、各国で人気のあるSNSを活用し、制度変更の情報を発信します。特に、中国や韓国など、日本への旅行者が多い国のSNSでの情報発信は重要です。インフルエンサーや旅行系ユーチューバーとの連携も効果的です。

空港や港での案内も重要です。日本に入国する外国人旅行者に対して、入国時に免税制度の変更について案内する必要があります。空港や港の入国エリアに多言語の案内ポスターを掲示したり、パンフレットを配布したりすることが考えられます。デジタルサイネージを活用して、動画で制度を説明することも効果的です。

免税店での丁寧な説明も欠かせません。外国人旅行者が免税購入を希望した際、新しい制度について丁寧に説明する必要があります。購入時に税込み価格を支払うこと、出国時に税関確認が必要なこと、返金の方法と時期などを、分かりやすく説明します。

説明用のツールとして、多言語のパンフレットやリーフレットを用意することが有効です。また、タブレット端末で動画を見せるなど、視覚的に分かりやすい説明方法も効果的です。言葉の壁がある場合でも、図解や動画であれば理解しやすくなります。QRコードを提示して、スマートフォンで詳細情報を見てもらうという方法も便利です。

税関での案内体制も整備する必要があります。出国時の税関手続きエリアに、免税品の持ち出し確認の手順を示す多言語の案内を設置します。また、手続きに迷っている旅行者をサポートする係員を配置することも検討すべきです。電子キオスクの使い方が分からない旅行者も多いと予想されるため、サポート体制は重要です。

旅行会社やツアーオペレーターとの連携も重要です。訪日旅行のツアーを企画・販売する事業者に対して、制度変更の情報を提供し、ツアー参加者への説明を依頼します。ツアーガイドが制度について説明できるよう、情報提供や研修を行うことも効果的です。ツアーガイドから説明を受けることで、旅行者は母国語で制度を理解できます。

長期的な影響と展望：制度改正がもたらす変化

リファンド方式への移行は、短期的には混乱や課題が生じる可能性がありますが、長期的には日本の免税制度の信頼性向上と、インバウンド観光の健全な発展につながると期待されています。

不正利用の抑制効果は、最も重要な成果となるでしょう。税関での持ち出し確認が必須となることで、免税購入した商品の国内転売が大幅に減少すると予想されます。これにより、制度本来の目的である外国人旅行者の消費促進が適切に実現されるようになります。

制度の信頼性が向上することで、正当に免税制度を利用する外国人旅行者にとっても、より良い環境が整います。不正利用者のために制度がさらに厳格化されるという悪循環を断ち切ることができます。真面目に制度を利用する旅行者が、不正利用者と同じように疑いの目で見られることもなくなります。

免税店側も、長期的には業務の簡素化というメリットを享受できます。一般物品と消耗品の区分、特殊包装、上限額の管理などの煩雑な業務から解放されることで、より本質的な顧客サービスに注力できるようになります。スタッフは、複雑な規則を覚える必要がなくなり、接客に集中できます。

デジタル化の推進も重要な成果です。電子化が必須となることで、免税業務のデジタル化が一気に進みます。これは、業務効率化だけでなく、データ分析による経営改善や、マーケティングへの活用など、様々な可能性を開きます。どの国の旅行者が何を購入しているか、どの時期に免税販売が多いかなどのデータを活用することで、より効果的な販売戦略を立てることができます。

国際的な標準への接近も見逃せません。多くの国では、リファンド方式が採用されています。ヨーロッパ諸国やシンガポールなど、主要な観光国の多くがリファンド方式を採用しています。日本も国際標準に合わせることで、外国人旅行者にとって理解しやすい制度となります。既に他国でリファンド方式を経験している旅行者にとっては、日本の制度も理解しやすくなるでしょう。

今後、制度の運用状況を見ながら、さらなる改善が行われる可能性もあります。返金の迅速化、手続きのさらなる簡素化、デジタル技術の活用拡大など、継続的な改善によって、より使いやすい制度へと進化していくことが期待されます。AIやブロックチェーンなどの新技術を活用して、さらに効率的で安全な免税システムが実現される可能性もあります。

今後のスケジュール：計画的な準備の重要性

2026年11月1日の制度施行に向けて、関係者は計画的に準備を進める必要があります。2025年中は、主に情報収集と計画立案の期間となります。免税店は、新制度の詳細情報を収集し、自社への影響を分析する必要があります。

また、システムベンダーの選定を開始し、導入計画を策定します。複数のベンダーから見積もりを取り、機能やサポート体制を比較検討します。従業員への情報共有と初期研修も、この時期に開始すべきです。制度変更の概要を従業員に伝え、今後の変更に備えて心構えを持ってもらいます。

2026年前半は、システム導入と業務フロー構築の期間となります。選定したシステムの導入作業を進め、既存システムとの連携を確認します。業務フローの詳細を確定し、マニュアルを作成します。レジでの操作方法、外国人旅行者への説明方法、トラブル発生時の対応方法などを、具体的にマニュアル化します。

従業員への本格的な研修を実施し、新しい手続きに習熟させます。実際のシステムを使った研修や、ロールプレイングによる接客訓練などを行います。特に、外国人旅行者に制度を説明する練習は重要です。

2026年7月から10月は、最終準備とテスト運用の期間です。システムの動作確認とテスト運用を行い、問題点を洗い出して修正します。実際の取引を想定したシミュレーションを行い、業務フローに問題がないかを確認します。外国人旅行者向けの案内資料を作成し、店頭での説明体制を整えます。

電子化対応が完了していない場合は、2026年10月31日までに必ず完了させる必要があります。この時期に慌てることがないよう、早期に対応を完了させることが理想的です。

2026年11月以降は、新制度での本格運用が開始されます。初期の混乱を最小限に抑えるため、十分なサポート体制を用意することが重要です。制度開始直後は、予期しない問題が発生する可能性が高いため、責任者や経験豊富なスタッフを配置し、迅速に対応できる体制を整えます。

また、運用を通じて明らかになった問題点を継続的に改善していく姿勢が求められます。外国人旅行者からのフィードバックを収集し、説明方法や業務フローを改善していきます。スタッフからの意見も積極的に聞き、現場の声を反映した改善を行います。

観光庁、国税庁、税関などの関係省庁も、制度の円滑な移行に向けて、説明会の開催、ガイドラインの公表、FAQの整備などを行う予定です。免税店は、これらの情報を積極的に収集し、活用することが重要です。省庁が開催する説明会には積極的に参加し、最新情報を入手します。

まとめ：制度改正への適切な対応が成功の鍵

2026年11月1日から施行される消費税免税制度の改正は、外国人旅行者向け免税制度の根本的な見直しとなります。購入時免税からリファンド方式への移行という大きな変更により、不正転売の防止と制度の適正化が図られます。

免税店にとっては、システム導入や業務フロー変更など、大きな対応負担がありますが、長期的には事務手続きの簡素化というメリットもあります。一般物品と消耗品の区分がなくなり、特殊包装も不要になることで、店頭での業務は シンプルになります。

外国人旅行者にとっては、購入時の支払額増加というデメリットがある一方、手続きの簡素化や購入制限の緩和というメリットもあります。どちらの側面が大きく感じられるかは、返金システムの使いやすさや、制度の周知状況に左右されます。

この改正が日本のインバウンド観光にどのような影響を与えるかは、今後の運用次第です。制度の周知徹底、円滑な返金システムの構築、丁寧な顧客対応などが、制度の成功の鍵となるでしょう。特に、JPrefundなどの返金プラットフォームが、迅速で確実な返金を実現できるかが重要です。

すべての関係者が協力して準備を進め、2026年11月の制度施行を円滑に迎えることが重要です。免税店は早急にシステム導入の準備を開始し、政府は外国人旅行者への周知を徹底し、外国人旅行者は新しい制度を理解する努力が必要です。この大きな変革を成功させることで、日本の免税制度はより健全で信頼性の高いものとなり、インバウンド観光のさらなる発展につながることが期待されます。

制度改正は確かに大きな変化ですが、適切に準備し対応すれば、すべての関係者にとってプラスの結果をもたらす可能性があります。早期の準備開始と十分な情報収集が、この変革を成功させる鍵となります。