給付付き税額控除とは?2013年国民会議報告書から最新動向まで徹底解説

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社会保障制度改革国民会議は、2013年8月に報告書を提出し、給付付き税額控除を「所得の再分配機能を回復し、中間層を再生させるための切り札」として位置づけました。給付付き税額控除とは、税と社会保障を融合させ、低所得者に対しては減税だけでなく現金給付を行う画期的な仕組みです。この制度は、働いているにもかかわらず生活が苦しい「ワーキングプア」層への支援策として、また消費税の逆進性を緩和する手段として、長年にわたり議論されてきました。

当時のインフラ未整備を理由に導入は見送られましたが、マイナンバー制度が2016年に開始され、2024年6月時点で公金受取口座の登録数が約6,320万件に達するなど、環境は着実に整備されつつあります。本記事では、2013年の国民会議報告書の内容から、欧米諸国における先行事例、そして2024年から2025年にかけての政治動向まで、給付付き税額控除の全貌を詳しく解説していきます。

給付付き税額控除とは何か

給付付き税額控除の本質を理解するためには、既存の「所得控除」との決定的な違いを認識する必要があります。所得控除とは、基礎控除や配偶者控除、扶養控除などのように、課税対象となる所得から一定額を差し引くことで税負担を軽減する仕組みです。しかし、所得控除はあくまで「税金を払っている人」に対する減税措置であり、所得が低くそもそも税金を払っていない層には恩恵が及びません。これが、貧困対策として所得控除を用いることの本質的な限界となっています。

一方、給付付き税額控除は、経済学者ミルトン・フリードマンが提唱した「負の所得税」の概念を具現化したものです。その仕組みは次のようになっています。まず、個人の所得に基づいて本来支払うべき税額を計算します。そこから一定の「税額控除額」を差し引きます。ここまでは通常の減税と同じですが、重要なのは控除額が税額を上回った場合の処理です。通常の税額控除では税額がゼロになるだけですが、給付付き税額控除では、その「使い切れなかった控除分」が現金として本人に支給されるのです。

具体例として、控除額が10万円と設定されたケースを考えてみましょう。納税額が15万円の人の場合は、10万円が控除され、実際の納税額は5万円となります。納税額が3万円の人の場合は、3万円が相殺されて税額はゼロになり、残りの7万円が現金として給付されます。そして納税額がゼロの人の場合は、10万円全額が現金として給付されることになります。

このように、高所得者には減税として、低所得者には給付として機能することで、所得の再分配をシームレスに行うことが可能となります。これは、既存の縦割り行政を統合し、行政コストを効率化する可能性も秘めています。

給付付き税額控除がもたらす政策効果

給付付き税額控除が政策立案者や経済学者から支持される理由は、主に三つのメリットに集約されます。

第一に、垂直的公平性の回復と貧困削減です。消費税率の引き上げは、低所得者ほど所得に占める消費税負担の割合が高くなる「逆進性」の問題を伴います。これに対し、食料品などを対象とした軽減税率は、高所得者も含めた一律の恩恵となるため、貧困対策としての効率は高くありません。給付付き税額控除は、所得情報を基にターゲットを絞った現金給付を行うため、真に支援が必要な層へ直接的に所得移転を行うことができ、貧困率の改善に直結します。

第二に、就労インセンティブの強化です。これが本制度の最大の特徴といえます。生活保護制度には「貧困の罠」と呼ばれる構造的問題があります。生活保護受給者が働いて収入を得ると、その分だけ保護費が減額されるため、実質的な限界税率が100%近くになり、「働いても手取りが増えない」状況に陥ることがあります。これにより、就労意欲が削がれてしまうのです。給付付き税額控除、特に「勤労税額控除」と呼ばれるタイプでは、所得が低い段階では「働けば働くほど給付額が増える」設計が可能です。これにより、福祉受給から自立した就労への移行を促す「メイク・ワーク・ペイ(働いた方が報われる)」の原則を実現できます。

第三に、申請漏れの防止とスティグマの解消です。生活保護の捕捉率が低い一因として、福祉事務所での申請手続きに伴う恥辱感や、煩雑な書類手続きが挙げられます。給付付き税額控除を税務申告と一体化させれば、年末調整や確定申告のプロセスの中で自動的に給付判定が行われるため、心理的な抵抗感を減らし、必要な支援を確実に届けることが期待できます。

2013年社会保障制度改革国民会議報告書の意義

2013年8月6日に提出された「社会保障制度改革国民会議」の報告書は、日本の社会保障政策史において極めて重要な意味を持つ文書です。当時の政治状況は、民主党、自民党、公明党による「社会保障・税一体改革」に関する三党合意に基づき、消費税率の引き上げとバーターで社会保障の充実を図る道筋が模索されていた時期でした。

この報告書の中で、給付付き税額控除は将来の検討課題として明確に位置づけられました。報告書は、従来の「控除から手当へ」という単純な図式を超え、税制と社会保障制度を融合させることの重要性を説いています。具体的には、基礎控除などの人的控除を見直し、それを財源として低所得者層へ厚く配分する構想が描かれました。

しかし、報告書は給付付き税額控除の即時導入には慎重な姿勢を示し、結果として導入は見送られました。その最大の障壁として挙げられたのが、「所得の正確な把握」の実務的困難さです。当時、日本にはまだマイナンバー制度が存在しませんでした。個人の所得、特に自営業者の事業所得や、複数の勤務先からの給与、さらには金融資産からの配当・利子所得などを名寄せして正確に把握するインフラが欠如していたのです。

正確な所得把握なしに現金を給付すれば、所得を過少申告する脱税者や不正受給者が得をし、正直に申告する給与所得者が損をするという不公平が拡大する懸念がありました。報告書は、マイナンバー制度の導入と定着を前提条件としつつ、消費税率10%への引き上げ時には、より簡易な措置である「簡素な給付措置」や「軽減税率」で対応せざるを得ないという現実的な判断を下しました。この政治的判断により、日本では給付付き税額控除の代わりに軽減税率制度が導入されることとなり、社会保障と税の一体改革は「未完のプロジェクト」として残されることになったのです。

海外における給付付き税額控除の先行事例

給付付き税額控除は、欧米諸国ではすでに社会保障の基幹システムとして定着しています。各国の制度は、その国の労働市場、家族観、そして財政事情を反映して独自に進化しており、日本が制度設計を行う上で貴重な参照事例となります。

米国の勤労所得税額控除(EITC)

米国のEITCは、1975年に導入された世界で最も代表的な給付付き税額控除制度です。その最大の特徴は、対象を「就労している低所得者」に限定し、労働インセンティブの付与を最優先している点にあります。

EITCの給付スケジュールは「台形」を描くように設計されています。まず漸増区間として、所得がゼロから増えるにつれて給付額も比例して増加します。これが「働けば働くほど得をする」インセンティブとなります。次に平坦区間として、所得が一定水準に達すると給付額は上限で一定となります。そして漸減区間として、さらに所得が増えると給付額は徐々に減らされ、最終的にゼロになります。

日本の会計検査院などの試算によれば、この米国型モデルを日本に導入した場合、財政規模は約1.3兆円程度で済むとされています。これは比較的低いコストで高い就労促進効果が得られるモデルですが、一方で「働けない貧困層」や「求職中の失業者」には恩恵が届かないという側面もあります。また、米国では自己申告に基づくため、過誤支給や不正受給の割合が高いことが課題とされています。

カナダのGSTクレジット

カナダのGSTクレジットは、消費税の逆進性対策に特化したモデルです。米国のEITCが労働政策の色合いが濃いのに対し、カナダの制度は純粋な所得保障・負担軽減の意味合いが強くなっています。

特徴として、対象範囲が非常に広く、低所得層から中所得層、さらには高齢者世帯まで多くの世帯をカバーしている点が挙げられます。日本のシミュレーションでは、同様の制度を導入した場合、全世帯の約63%が対象となり、財政規模は1.1兆円程度になるとされています。このモデルのメリットは、消費税増税に対する国民の痛みを広く和らげることができる点にあります。しかし、一人当たりの給付額は年間数万円程度と比較的少額にとどまる傾向があり、これだけで貧困から脱却させるほどのインパクトには欠ける可能性があります。

英国の税額控除とユニバーサル・クレジット

英国はかつて、労働者向けのWTC(Working Tax Credit)と、子育て世帯向けのCTC(Child Tax Credit)を運用していましたが、2013年以降、これらを統合した「ユニバーサル・クレジット」への移行を進めています。

英国モデルは極めて手厚い支援を特徴としており、日本への適用シミュレーションでは、財政規模が約3.8兆円と突出して高額になります。これは、受給者一人当たりの給付額が米国の約4倍、カナダの約12倍に達するためです。英国モデルは貧困削減効果が極めて高い反面、財源確保のハードルが高く、また「働かなくても高い給付が得られる」ことによる労働意欲への影響も懸念されてきました。

国名制度名特徴日本導入時の財政規模(試算)
米国EITC(勤労所得税額控除)就労者限定、労働インセンティブ重視約1.3兆円
カナダGSTクレジット消費税還付型、広範な対象約1.1兆円
英国ユニバーサル・クレジット手厚い給付、複数制度統合約3.8兆円

英国ユニバーサル・クレジットが残した教訓

2010年に発足したキャメロン政権は、複雑化した6つの既存給付を一つの「ユニバーサル・クレジット」に統合する世紀の大改革に着手しました。その目的は、福祉の簡素化、就労インセンティブの強化、そして行政コストの削減でした。しかし、その現実は「悪夢」と形容されるほどの混乱を招きました。

5週間の待機期間がもたらした困窮

ユニバーサル・クレジットの設計における最大の欠陥として糾弾されたのが、申請から最初の給付までの「待ち期間」です。制度設計者は、受給者が月給制の労働者と同じように家計を管理できるよう、給付を「月払い」とし、かつ「後払い」としました。その結果、申請から最初の支払いが行われるまでに、手続き期間を含めて最低でも5週間の待機期間が生じることとなりました。

貯蓄の乏しい低所得層にとって、収入が途絶える5週間は致命的でした。この期間中、多くの申請者が家賃を払えず滞納に陥り、食費を切り詰めてフードバンクに並ぶ事態となりました。英国の支援団体の報告によれば、ユニバーサル・クレジット導入地域ではフードバンクの利用が激増し、受給者の家賃滞納率が導入後12ヶ月で30%以上増加したという衝撃的なデータが示されました。

政府は批判を受けて「前払い」の仕組みを用意しましたが、これは給付ではなく「貸付」であり、後の給付から分割で天引きされる仕組みでした。これにより、受給者は長期間にわたり減額された給付での生活を余儀なくされ、借金を返すために新たな借金を重ねる「負債の螺旋」に陥るケースが多発しました。

ITシステム開発の失敗

ユニバーサル・クレジットは、「デジタル・バイ・デフォルト」を掲げ、申請から管理までをオンラインで完結させることを目指しました。しかし、そのITシステム開発は、要件定義の甘さと複雑すぎる仕様により難航を極めました。

2013年時点で、英国会計検査院は、プロジェクトが「貧弱な管理、非効果的なコントロール、お粗末なガバナンス」によって破綻していると酷評しました。当初開発されたITシステムの資産価値の多くが「廃棄」され、初期段階で約4,000万ポンド(数十億円規模)が無駄になったと報じられました。当初24億ポンドと見積もられた導入コストは、最終的に120億ポンド(約2兆円規模)以上に膨れ上がったとも言われています。

システムは、個々の受給者の複雑な事情に柔軟に対応できず、誤支給や支給遅延が多発しました。特に、歳入関税庁のリアルタイム所得情報と、雇用年金省の給付システムを連携させる際のデータ不整合は深刻で、給与の支払い日と給付の算定期間のズレにより、受給額が不当に減額されるトラブルも相次ぎました。

英国の事例は、給付付き税額控除の導入が、単なる税制改正や福祉政策の変更ではなく、巨大かつ高難易度の「ITプロジェクト」であることを示しています。日本においても、この教訓を踏まえた周到な準備が必要となります。

日本における導入の障壁

日本で給付付き税額控除の導入が長年足踏みしてきた背景には、日本特有の課題が存在します。

所得捕捉の不公平感

いわゆる「クロヨン」や「トーゴーサン」と呼ばれる問題があります。サラリーマンは源泉徴収制度により所得がほぼ100%捕捉され、ガラス張りの状態で納税しています。一方で、自営業者や農業従事者などは、経費の積み上げや現金取引により所得を過少申告する余地があり、捕捉率は相対的に低いとされています。

給付付き税額控除は、申告された所得に基づいて給付額を決定します。もし、所得を意図的に低く申告して、その上で低所得者向けの給付金まで受け取る者がいれば、正直に納税しているサラリーマン層から猛烈な批判が巻き起こることは必至です。この「公平性」の担保が、制度導入の政治的なボトルネックとなってきました。

マイナンバー制度と公金受取口座の現状

2016年に導入されたマイナンバー制度は、この壁を突破するためのインフラとして期待されました。政府は、マイナンバーによって個人の所得情報を名寄せし、さらに銀行口座と紐付けることで資産状況まで含めた正確な資力調査を行うことを目指しています。公金受取口座の登録数は、2024年6月時点で約6,320万件に達し、マイナンバーカード保有者の多くが登録を済ませています。これにより、給付金を振り込むための「パイプ」は整備されつつあります。

しかし、「誰がどれだけの真正な所得を得ているか」を把握する能力には依然として限界があります。銀行口座とマイナンバーの紐付けは義務化されておらず、個人の預貯金残高や資産全体を税務当局が完全に把握することはできません。また、近年増加しているギグワーカーや副業収入、フリマアプリでの売上など、従来の税務捕捉網から漏れやすい所得形態も多様化しています。

執行体制の問題

もう一つの大きな障壁は、実務を誰が担うのかという「執行主体」の問題です。現在の日本の行政システムでは、税の徴収は国税庁と自治体、社会保障給付は自治体の福祉事務所や年金機構と、管轄が完全に分断されています。

給付付き税額控除を導入する場合、税務署が福祉給付の機能を担うのか、あるいは自治体が税務情報を基に給付を行うのか、という問題が生じます。税務署は「徴税」のプロフェッショナルであっても「福祉」の専門家ではありません。生活に困窮する人々からの相談対応や、複雑な家族構成の変化に伴う受給資格の認定業務を、現在の税務署の人員とスキルセットで賄うことは困難です。一方で、自治体の福祉窓口もすでに業務過多の状態にあり、これ以上の負担増には強く抵抗しています。

2024年から2025年にかけての政治動向

2013年の報告書以降、下火になっていた給付付き税額控除の議論は、2024年の衆議院選挙と、それに続く2025年度税制改正論議の中で、政治の表舞台に再浮上しました。きっかけは「年収の壁」問題です。

国民民主党の躍進と基礎控除引き上げ論

2024年の衆議院選挙において、国民民主党は「103万円の壁」の撤廃、具体的には所得税の基礎控除等を現在の103万円から178万円へ大幅に引き上げることを公約に掲げ、若年層を中心に支持を集めて大躍進を果たしました。彼らの主張は、最低賃金の上昇に伴い、働きたくても調整せざるを得ないパートタイム労働者の就労抑制を解消し、現役世代の手取りを増やすという明確なメッセージでした。

しかし、この「基礎控除一律引き上げ」案に対し、多くの経済学者や税制の専門家からは批判的な見解が示されました。基礎控除の引き上げは、所得税の税率構造上、限界税率が高い高所得者ほど減税額が大きくなるという性質を持つからです。試算では、年収2,300万円超の層でも減税の恩恵を受ける一方、そもそも税金を払っていない年収103万円以下の低所得者層には、1円の恩恵もありません。格差是正の観点からは、むしろ逆効果になりかねないという指摘です。

給付付き税額控除への再注目

この「高所得者優遇」という批判への対案として、再び注目されたのが給付付き税額控除です。立憲民主党や日本維新の会は、それぞれの公約の中で給付付き税額控除の導入を明記しています。立憲民主党は、「所得控除から税額控除へ、さらに給付付き税額控除へ」という転換を掲げ、消費税の逆進性対策として中低所得者層に恩恵を集中させる「給付」の側面を強調しました。日本維新の会も、「日本型ベーシックインカム」への足がかりとして、税と社会保障を一体化した給付付き税額控除の導入を提唱しています。

一方、与党である自民党内でも動きがありました。2024年の総裁選において、高市早苗氏は「給付付き税額控除の早期検討」を強く主張しました。高市氏は、マイナンバーを活用した公平で迅速な給付システムの構築を訴え、成長と分配をさらに進めるためのツールとして位置づけました。年収の壁対策の実務者協議において、控除引き上げの代替案として給付案が議論の遡上に載せられました。

財源確保の課題

現在の政治状況は、与野党の勢力が拮抗しており、抜本的な制度改革よりも、有権者に分かりやすい「手取り増」が優先されやすい環境にあります。国民民主党の提案する基礎控除引き上げは、そのシンプルさゆえに世論の支持が高いものの、実現すれば国・地方合わせて7から8兆円規模の恒久的な税収減が見込まれます。

これに対し、給付付き税額控除もまた、数兆円規模の財源を必要とします。英国型の手厚いモデルであれば3.8兆円、米国型でも1.3兆円の財源が必要となります。考えられる財源シナリオとしては、配偶者控除や扶養控除を廃止・縮小してその財源を給付付き税額控除に充てる方法、金融所得課税を強化してそれを原資とする方法、そして国債発行による方法などがあります。それぞれにメリットとデメリットがあり、政治的な合意形成が求められます。

今後に向けた制度設計の方向性

日本において給付付き税額控除を成功させるためには、欧米の失敗に学び、日本独自の事情を加味したハイブリッドな設計が必要です。

日本が目指すべきは、米国のEITCが持つ「就労インセンティブ機能」と、カナダのGSTクレジットが持つ「消費税還付機能」を融合させたモデルと考えられます。具体的には、二階建て構造が考えられます。一階部分として、消費税負担の軽減を目的とし、所得が一定以下の全世帯に対して定額を給付する基礎給付を設けます。これはカナダ型に近い設計です。二階部分として、就労所得がある世帯に対して、所得に応じて給付額を上乗せする勤労加算を設けます。これは米国型に近い設計です。これにより、働けない高齢者や障害者へのセーフティネットを確保しつつ、現役世代には「働くことが損にならない」環境を提供することができます。

英国の失敗を繰り返さないためには、システム設計における「アジャイル開発」と「スモールスタート」が不可欠です。最初から全国民を対象とした複雑なシステムを稼働させるのではなく、まずは特定の自治体や特定の属性に限定したパイロット運用を行い、バグや運用上の課題を洗い出すべきです。また、申請主義からの脱却も重要です。マイナンバーと公金受取口座を活用し、税務データに基づいて対象者を自動判定し、「プッシュ型」の仕組みを構築することが求められます。

財源については、既存の複雑な給付金と、効果の薄い控除を大胆に整理・統合することで、行政コストの削減分も含めて捻出する視点が必要です。これはまさに、2013年の国民会議報告書が目指した「社会保障の重点化・効率化」の精神に立ち返ることであり、国民に対して丁寧な説明と納得を得るプロセスが不可欠です。

給付付き税額控除は、単なる貧困対策や景気対策ではありません。それは、国民と国家の間の新しい「社会契約」のあり方を提示するものです。「働けば必ず報われる」という信頼を回復し、いざという時には複雑な申請なしに生活が保障されるという安心感を提供する、国家の新しいシステムといえます。2013年の宿題を提出する時が、まさに今訪れているのです。

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