医療費控除は5年さかのぼり可能!2026年の還付申告で損しない方法

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医療費控除の還付申告は、過去5年分までさかのぼって申請することが可能です。2026年(令和8年)においては、2021年(令和3年)分から2025年(令和7年)分までの医療費控除を申告でき、特に2021年分については2026年12月31日が申告期限となるため、今年中に手続きを完了しなければ権利が消滅します。本記事では、2026年の確定申告に向けて、医療費控除の5年さかのぼり申告の具体的な方法、対象となる医療費の範囲、そして令和7年度税制改正が還付金に与える影響について詳しく解説します。

医療費控除の還付申告とは何か

医療費控除の還付申告とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告を通じて払いすぎた所得税の還付を受ける手続きのことです。この制度の本質は、予期せぬ病気やケガによって生じた経済的負担に対し、税負担を軽減することにあります。

還付申告と通常の確定申告には重要な違いがあります。個人事業主などが毎年2月16日から3月15日までに行う納税のための確定申告とは異なり、還付申告は対象年の翌年1月1日から5年間にわたって提出が可能です。つまり、年末調整のみで完了していた会社員であっても、医療費控除を目的として還付申告を行うことができます。

2026年における確定申告のスケジュールには特殊な事情があります。2025年(令和7年)分の所得に対する通常の確定申告期限は原則として2026年3月15日ですが、この日が日曜日に該当するため、翌日の3月16日(月)が法定申告期限となります。ただし、還付申告を行う場合は2月16日を待つ必要がなく、2026年1月1日から受付が開始されています。税務署の繁忙期を避けて早めに申告することで、還付金をより早く受け取ることが可能です。

2026年に申告できる過去5年分の詳細

2026年において還付申告が可能な過去の年分は、2021年分から2025年分までの5つの期間です。それぞれの申告可能期限を正確に把握することが、医療費控除を最大限に活用するための第一歩となります。

2025年(令和7年)分については、2026年1月1日から還付申告の受付が開始されており、申告期限は2030年12月31日までです。直近の医療費についてはマイナポータル連携を活用することで、データの自動取得が可能となっています。

2024年(令和6年)分は、2029年12月31日まで申告が可能です。昨年分の医療費についても、まだ十分な時間的余裕があります。

2023年(令和5年)分の申告期限は2028年12月31日、2022年(令和4年)分は2027年12月31日までとなっています。

最も注意を要するのが2021年(令和3年)分です。この年分の医療費控除に関する還付申告の権利は、2026年12月31日をもって時効により消滅します。この日を1日でも過ぎた場合、いかに正当な理由があったとしても、還付を受ける権利は法的に失われます。したがって、2026年において最初に確認すべきは2025年分の医療費ではなく、時効が迫っている2021年分の領収書の有無です。

還付申告と更正の請求の違い

過去の医療費控除を申告する際には、自身の申告状況によって適用される手続きが異なります。この区別を誤ると、期限切れにより還付を受けられなくなる可能性があるため、正確な理解が必要です。

還付申告は、過去にその年の確定申告書を提出していない場合に行う手続きです。年末調整のみで完了していた会社員がこれに該当します。還付申告の期限は「対象年の翌年1月1日から5年間」となるため、2021年分であれば2026年12月31日まで申告が可能です。

一方、更正の請求は、過去にその年の確定申告書を既に提出している場合に必要となる手続きです。個人事業主や、住宅ローン控除のために確定申告を行った会社員などが該当します。更正の請求の期限は「その年の法定申告期限から5年以内」となります。2021年分の確定申告期限は2022年3月15日であったため、更正の請求期限は2027年3月15日までとなり、還付申告の期限より約2ヶ月半長い猶予があります。

ただし、制度の混同を避けるため、該当する年分の手続きは早めに完了させることが賢明です。

医療費控除の対象となる費用の境界線

医療費控除の申告において最も判断に迷うのが、何が対象となり何が対象とならないかという線引きです。基本原則は「医師または歯科医師による診療・治療の対価であるか」という点にあり、健康保険の適用の有無は直接的な判断基準ではありません。

歯科治療における判断基準

歯科治療は高額になりやすいため、控除の可否が家計に大きな影響を与えます。虫歯や歯周病の治療、入れ歯の作成費用は当然に対象となります。

インプラント治療については、健康保険適用外の高額治療ですが、欠損した歯の機能を回復させるための治療行為として認められており、医療費控除の対象となります。また、金やセラミックを使用した被せ物についても、一般的に使用されている歯科材料の範囲内であれば治療目的とみなされ対象となります。

ホワイトニングや美容目的のラミネートベニアなどは、容貌を美化するための費用とみなされ、医療費控除の対象外です。

歯列矯正については判断が分かれます。発育段階にある子供の歯列矯正は、不正咬合が将来の咀嚼機能や発音に悪影響を与えることを防ぐための医療行為として広く認められており、原則として対象となります。大人の矯正については、単なる美容目的であれば対象外ですが、噛み合わせの悪さが原因で頭痛や肩こり、消化不良などを引き起こしており、医師が矯正が必要と診断した場合には、対象となる可能性があります。

眼科治療と視力矯正

レーシック手術やオルソケラトロジー治療は、健康保険適用外であっても、角膜の屈折力を調整して視力を回復させる手術・治療であるため、医療費控除の対象となります。

これに対し、眼鏡やコンタクトレンズの購入費用は、原則として日常生活用具の購入とみなされ対象外です。ただし、白内障や緑内障、斜視、弱視などの治療の一環として、医師の指示に基づいて作成された眼鏡等については、特定の要件を満たすことで例外的に医療費控除の対象となる場合があります。

医薬品の取り扱い

薬局やドラッグストアで購入した医薬品も、治療または療養のために必要なものであれば医療費控除の対象となります。風邪薬、胃腸薬、鎮痛剤、傷薬などがこれに該当します。

ビタミン剤や栄養ドリンク、サプリメントについては、原則として健康増進や疲労回復を目的とするものとみなされ対象外です。しかし、医師から治療のためにビタミンの摂取が必要と診断され、処方箋に基づいて購入した場合は対象となります。漢方薬についても同様で、治療目的で購入した医薬品としての漢方薬は対象ですが、体質改善や健康維持を目的としたものは対象外となります。

通院交通費の厳格なルール

通院費は税務調査においても厳しくチェックされる項目の一つです。基本原則は「最も経済的かつ合理的な経路・方法による費用」のみが認められます。

電車やバスを利用して通院した場合の運賃は、領収書がなくても認められます。これは自動券売機等で領収書の発行が困難な事情を考慮したものです。家計簿やメモなどに受診日、利用した機関名・経路、金額を記録しておく必要があります。ICカードの利用履歴を印刷しておくことも有効な証拠となります。

タクシー代は原則として対象外ですが、病状が重篤で電車やバスの利用が困難な場合、深夜の急病で公共交通機関が運行していない場合、突然の陣痛により病院へ急行する場合などは例外的に認められます。

自家用車で通院した場合のガソリン代、駐車場代、高速道路料金は、医療費控除の対象外です。これは私的な資産の維持費としての性格が強いためと解釈されています。

妊娠・出産・不妊治療の費用

不妊治療にかかる検査、投薬、人工授精、体外受精などの費用は、医療費控除の対象となります。保険適用外の先進医療や自由診療部分についても治療費として認められます。なお、自治体から不妊治療助成金を受け取った場合は、その金額を支払った医療費から差し引いて申告する必要があります。

出産費用については、定期検診費、分娩費、入院費が対象となります。無痛分娩のための麻酔費用も医療行為の一環として対象です。ただし、里帰り出産のための交通費は実家へ帰るための費用とみなされ原則対象外です。入院中の食事代は病院が提供するものは対象ですが、出前や外食は対象外となります。

その他の特殊な費用

健康診断・人間ドックは疾病の予防や早期発見を目的とするものであり、原則として対象外です。しかし、健康診断の結果として重大な疾病が発見され、引き続きその病気の治療を行うことになった場合には、その健康診断等の費用も治療の一環とみなされ、遡って医療費控除の対象とすることができます。

マッサージ・指圧・鍼灸については、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術費で、治療を目的とするもの(腰痛、神経痛、リウマチなどの治療)であれば対象となります。単なる疲労回復や慰安を目的とした施術は対象外です。

おむつ代は、傷病によりおおむね6ヶ月以上にわたり寝たきりの状態にあり、おむつの使用が必要であると認められる場合に対象となります。この適用を受けるためには、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要です。

令和7年度税制改正が医療費控除に与える影響

2026年に行われる確定申告(令和7年分)は、基礎控除の大幅引き上げが適用される最初の年となります。この改正は医療費控除の還付金計算に直接的な影響を及ぼすため、従来の感覚で申告を行うと誤算が生じる可能性があります。

基礎控除の引き上げ内容

令和7年度税制改正大綱により、物価高騰への対応策として所得税の基礎控除額が従来の48万円から引き上げられました。具体的には、基礎控除額が一律10万円引き上げられて58万円となります。さらに、低所得者層への配慮として所得階層に応じた上乗せ措置が導入されています。

令和7年・8年分に限り適用される特例措置では、合計所得金額が132万円以下の納税者に対し、基礎控除額に最大37万円が加算されます。これにより基礎控除額は最大で95万円となります。給与所得控除の最低保障額と合わせると、給与収入が約160万円までは所得税がかからない計算となり、従来の「103万円の壁」と比較して非課税枠が大幅に拡大しています。

医療費控除への具体的な影響

この基礎控除の引き上げは、医療費控除の実務に重要な変化をもたらします。

課税所得の減少による還付金への影響として、医療費控除による還付金は「医療費控除額×所得税率」で算出されます。基礎控除が大幅に増えることで課税所得自体が圧縮され、これまで所得税を納めていた層、特にパートやアルバイトで年収103万円から160万円程度の方が、そもそも納税額ゼロになる可能性が高まります。納めた税金がゼロであれば、いくら医療費がかかっていても還付される税金は存在しません。申告前に源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄が0円でないかを確認することが重要です。

足切りライン「所得の5%」ルールへの影響として、医療費控除には支払った医療費から差し引かなければならない足切り額が存在します。原則は10万円ですが、総所得金額等が200万円未満の人は「総所得金額等の5%」が足切り額となります。基礎控除の拡大により、この5%ルールを使って少額の控除を積み上げる層の多くが非課税となるため、適用の意義が変化する可能性があります。

世帯単位での申告戦略として、医療費控除は生計を一にする親族の分を合算して申告できます。基礎控除の拡大により配偶者や子供が非課税となるケースが増えるため、家族全員分の医療費を最も所得税率が高い世帯主に集約して申告する戦略の重要性が高まっています。

マイナポータル連携を活用した申告手続き

2026年の確定申告では、国税庁が進めるデジタルトランスフォーメーションがさらに進化し、スマートフォンとマイナンバーカードを基軸とした申告プロセスが標準化されています。

医療費データの自動取得

健康保険組合や国民健康保険団体連合会が保有する医療費データは、マイナポータルを通じてXMLデータとして取得可能です。このデータには、受診した医療機関名、支払った医療費の額、診療年月などが網羅されています。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」とマイナポータルを連携させることで、このデータを直接申告書に取り込むことができ、手入力の手間や計算ミスを防ぐことができます。例年、2月9日頃から前年1年分のデータが一括取得可能となります。

事前にマイナポータル上で代理人設定を行うことで、世帯主が配偶者や子供の医療費データをまとめて取得することも可能です。これには家族それぞれのマイナンバーカードと暗証番号が必要となりますが、一度設定すれば翌年以降も継続して利用できます。

過去分を申告する場合の操作方法

国税庁「確定申告書等作成コーナー」のトップページにアクセスすると、通常は最新年分の作成ボタンが大きく表示されています。過去分の申告を行う場合は、画面下部やサイドメニューにある「過去の年分の申告書等の作成」というリンクから、申告したい年度を選択します。

年度を選択した後は通常の申告と同様の手順で進めます。e-Taxを利用する場合、マイナンバーカードを使ってログインし、源泉徴収票の内容や医療費控除の明細を入力します。過去複数年分を同時に申告する場合、それぞれの年度ごとに申告書を作成する必要がありますが、郵送の際は一つの封筒にまとめて送付することができます。

領収書の保存義務

デジタル化が進んでも、紙の領収書の重要性は変わりません。マイナポータル連携に含まれない自由診療やOTC医薬品、交通費については、領収書や記録に基づいた手入力が必要です。また、申告書への添付は不要となりましたが、領収書の原本は自宅で5年間保存する義務があります。税務署から提示を求められた際にこれに応じられなければ、控除が否認されるリスクがあります。年ごとに封筒やクリアファイルに分けて保管する習慣が重要です。

還付申告における注意点とリスク

医療費控除は税金が戻ってくるメリットが強調されがちですが、申告には無視できないリスクが存在します。

ふるさと納税ワンストップ特例の無効化

医療費控除を行う給与所得者が最も陥りやすい罠として、ふるさと納税のワンストップ特例制度との関係があります。ワンストップ特例制度は確定申告を行わないことを条件に寄附金控除を受けられる制度です。しかし、医療費控除のために確定申告を行うと、提出済みのワンストップ特例申請書はすべて無効となります。

具体例として、6万円のふるさと納税を行いワンストップ申請を済ませていた場合、その後に医療費控除のために確定申告を行い、申告書に寄附金控除の記載を含めなかったとします。この場合、ワンストップ特例は無効となり、確定申告にも含まれていないため、約5万8000円の減税効果がすべて消滅します。数千円の医療費還付を得るために数万円の損失を出すことになりかねません。

回避策として、医療費控除の確定申告を行う場合は、必ずふるさと納税の情報も入力して寄附金控除として一緒に申告することが重要です。過去の年分を遡及申告する場合も、その年にワンストップ特例を利用していなかったかを確認し、利用していた場合はその寄附金情報も併せて申告書に記載する必要があります。

住民税と国民健康保険料への影響

所得税の還付金は指定口座に現金で振り込まれますが、住民税は原則として現金還付ではなく、将来支払う住民税からの減額という形で調整されます。2026年に還付申告を行うと、2026年6月から支払う住民税が安くなります。既に納付済みの過去の住民税については、遡って減額処理が行われ後日自治体から還付されるケースもありますが、処理には数ヶ月を要することが一般的です。

国民健康保険料についても、医療費控除を行って所得が下がれば安くなる可能性があります。しかし、所得税の還付申告は5年前まで遡れるのに対し、国民健康保険料の賦課決定ができる期間は原則として2年とされています。5年前の医療費控除を申告して所得税が還付されても、国民健康保険料については時効により減額・還付されない場合があります。

まとめ

2026年の医療費控除の還付申告において、最も重要なポイントは2021年分の時効管理です。2026年12月31日をもって2021年分の申告権が消滅するため、過去の領収書が残っていないか早急に確認することが必要です。医療費控除は申告しなければ1円の恩恵も受けられない申告主義の制度です。タンスや引き出しに眠っている領収書は、正当な手続きを経ることで還付金として受け取ることができます。令和7年度税制改正による基礎控除の引き上げで納税状況が変化している可能性もあるため、源泉徴収票を確認した上で、適正な還付を受け取ってください。

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