東京都の中古マンション平均価格が2025年に初めて1億円を突破しました。この歴史的な価格上昇の要因は、新築マンション供給の減少、建設コストの急騰、パワーカップルと呼ばれる高所得共働き世帯の増加、そして円安を背景とした海外投資家の資金流入が複合的に作用した結果です。かつて「億ション」は一部の富裕層だけのものでしたが、今やそれが「平均」となる時代が到来しました。本記事では、東京都中古マンション市場における1億円時代の到来について、データに基づく詳細な分析と複合的な要因の解説、そして今後の市場展望までを網羅的にお伝えします。

- 東京都中古マンション価格1億円突破の衝撃とその軌跡
- 東京都全体での1億円到達が持つ重大な意味
- 新築マンション供給の枯渇が中古価格を押し上げる構造
- 建設コストの記録的上昇と2024年問題の影響
- 中古マンション在庫の減少と売り惜しみの心理
- パワーカップルと呼ばれる高所得共働き世帯の台頭
- 住まいから資産へと変化する購買心理
- 円安を背景にした海外投資家の東京不動産購入
- 東京が海外投資家に選ばれる理由
- 都心6区における異次元の価格高騰
- 城北・城東エリアへの価格上昇の波及
- 首都圏近郊の埼玉・千葉・神奈川への需要拡散
- リノベーションが中古マンション市場の価値を高める
- 2026年度税制改正が中古マンション市場に与える追い風
- バブル期との比較から見る現在の価格高騰の性質
- 2026年以降の市場展望と価格動向の予測
- 金利上昇が東京中古マンション市場に与えるリスク
- 今後の市場は多極化へと移行する見通し
- 東京都中古マンション1億円時代のまとめと今後への示唆
東京都中古マンション価格1億円突破の衝撃とその軌跡
東京都の中古マンション価格は2025年、統計開始以来の歴史的な節目を迎えました。不動産専門のデータ会社である東京カンテイの調査によれば、東京23区における中古マンションの70平米換算価格は、2025年5月に初めて1億円の大台を突破し、1億88万円を記録しました。この70平米換算価格とは、ファミリー層が住む標準的な広さである3LDKを想定した指標であり、一般消費者の肌感覚に近い価格水準を示すものとして市場分析において重要視されています。
さらに注目すべきは、1億円という大台に乗った後の価格推移です。価格は調整局面に入ることなく、むしろ加速しました。同社のデータでは、2025年12月時点で東京23区の価格は1億1,960万円に達し、前月比でプラス4.1%の上昇を記録しています。これは20ヶ月連続の上昇であり、わずか半年あまりで約2,000万円近くも価格が上昇したことになります。年収に相当する金額が短期間で上乗せされるという、極めて異例の事態となりました。
LIFULL HOME’Sのマーケットレポートにおいても同様の傾向が確認されています。同社のデータでは、ファミリー向き中古マンションの平均掲載価格が2025年9月に1億円を突破しました。年末の12月時点では1億1,549万円に達しており、2024年12月の7,624万円と比較すると、わずか1年間で51.5%もの上昇率を記録しました。この驚異的な数字は、市場が通常のインフレや需給変動の枠を超えた、構造的な価格再設定のフェーズにあることを示しています。
東京都全体での1億円到達が持つ重大な意味
特筆すべきは、23区内にとどまらず、東京都全体の平均価格においても1億円に到達したという事実です。東京カンテイのレポートによると、2025年12月、東京都全体の中古マンション平均価格(70平米換算)がついに1億円の大台に到達しました。
この事実は極めて重大な意味を持っています。東京都には23区以外にも多摩地域として八王子市、立川市、武蔵野市などが含まれており、従来であればこれらの市部エリアが平均値を押し下げる要因となっていました。しかし、都心部の価格があまりに突出して上昇したこと、そしてその波及効果で市部の価格も底上げされたことにより、「東京都でマンションを買うなら平均1億円」という事態が現出したのです。首都圏全体で見ても、2025年12月の平均価格は6,554万円となり前月比でプラス4.9%と上昇していますが、東京都の突出ぶりは群を抜いています。
「東京で普通の広さの家を買おうとしたら、いくらかかるのか」という問いへの答えが1億円を超えたということは、平均的な給与所得者層にとって、都内のファミリーマンションが物理的に到達不可能な領域に突入したことを意味しています。これは単なる経済指標の変化を超え、東京という都市の居住者属性が入れ替わる社会的な変曲点とも言えるでしょう。
新築マンション供給の枯渇が中古価格を押し上げる構造
中古マンション価格高騰の根本的な原因の一つは、深刻な供給不足と調達コストの上昇にあります。需要に対して供給が圧倒的に足りていない、あるいは供給しようにもコストが高すぎて価格を上げざるを得ない状況が続いています。
中古マンション価格の高騰を語る上で避けて通れないのが、新築マンション市場の動向です。従来、中古価格は新築価格に連動して動く性質がありますが、近年の東京では「新築があまりに高すぎて買えないため、需要が中古に雪崩れ込む」という代替需要の爆発が起きています。
不動産経済研究所等のデータによれば、新築マンションの供給戸数は減少の一途をたどっています。2024年の供給戸数は前年比で14.4%減少し、2万3,000戸前後にとどまりました。2025年には若干の回復として2万6,000戸程度が見込まれていましたが、かつての水準には程遠い状況です。
供給減少の背景には、都心部におけるマンション適地の枯渇があります。千代田区、港区、中央区などの都心一等地では、まとまった用地の取得が極めて困難になっており、開発業者は再開発案件や建て替え事業に頼らざるを得ません。その結果、供給される新築物件は超高級物件に偏重し、価格は青天井となります。新築の価格が跳ね上がれば、周辺の中古物件のオーナーも強気の価格設定を行うようになり、市場全体の相場が引き上げられるというメカニズムが働いています。
建設コストの記録的上昇と2024年問題の影響
新築マンション価格を押し上げ、ひいては中古市場の価値を高めている根本的な要因の一つが、建設コストの記録的な上昇です。これは一時的な現象ではなく、構造的なインフレと言えます。
建設資材価格は、世界的なインフレや円安の影響を受け、鉄鋼、コンクリート、木材などの主要資材が軒並み高騰しています。さらに深刻なのが人手不足による労務費の上昇です。建設業界では「2024年問題」として知られる働き方改革関連法による残業規制の強化が施行され、労働供給量が物理的に制約されました。これにより、工期の長期化と人件費の高騰が同時に発生しました。
国土交通省の建設工事費デフレーターや各種指数を見ると、2020年を100とした場合の建設コスト指数は、2025年には130から140近くまで上昇していると推測されるデータが散見されます。マンション(鉄筋コンクリート造)の建築費指数は、底値であった2012年から2024年までの間に約154.7%も上昇したとされています。
このコスト増は、新築マンションの販売価格に直接転嫁されます。デベロッパーは利益を確保するために販売価格を上げざるを得ず、結果として新築価格が高騰します。それが「相対的に割安」に見える中古マンションへの需要シフトを引き起こし、中古価格をも押し上げているのです。特に、過去に安価なコストで建設された中古マンションは、現在の再調達原価と比較して圧倒的な価格競争力を持つことになり、その価値が見直されています。
中古マンション在庫の減少と売り惜しみの心理
需要が旺盛であるにもかかわらず、市場に出回る在庫数は減少傾向にあります。LIFULL HOME’Sや東日本不動産流通機構のデータによると、首都圏の中古マンション在庫件数は2025年後半にかけて4ヶ月連続で減少しています。
在庫減少の要因は複合的です。第一に、成約のスピードが早まり、市場に滞留する期間が短くなっていることが挙げられます。第二に、既存のオーナーが「まだ上がるかもしれない」という先高観から売り惜しみをしている可能性があります。第三に、住み替え先となる新築マンションやより広い中古マンションの価格も高騰しているため、現在の住居を売却して次に移るという住み替えサイクルが停滞していることも、新規の売り出し物件が出てこない一因と考えられます。
需要過多・供給不足のバランスが崩れた状態では、売り手が圧倒的に有利な「売り手市場」が形成されます。価格を相場より高く設定しても買い手がつくため、価格上昇のスパイラルが止まらない状況が生まれています。
パワーカップルと呼ばれる高所得共働き世帯の台頭
供給側の要因だけでは、これほどの価格上昇を説明しきれません。1億円を超える物件を購入できる層が確かに存在し、活発に動いているという需要側の変化が重要です。
現代の東京のマンション市場を牽引している主役は、いわゆる「パワーカップル」と呼ばれる高所得の共働き世帯です。一般的に世帯年収1,500万円以上、あるいは夫婦それぞれが700万円から1,000万円以上を稼ぐ世帯を指します。
リクルートの調査などによると、首都圏の新築マンション契約者に占める既婚世帯の共働き比率は年々上昇しており、2024年には70%を超える水準に達しました。彼らは単独の年収では手が届かない高額物件でも、二人の与信を合わせた「ペアローン」を活用することで購入を可能にしています。
ペアローンの利用率は、特に東京23区で顕著に伸びており、過去10年で3倍に増加したというデータもあります。また、借入期間を最長の35年、あるいは一部の金融機関で始まった40年、50年という超長期ローンを組むことで、月々の返済額を抑制しつつ、借入可能額を最大化させています。
彼らにとって、1億円のマンションは「贅沢品」ではありません。職住近接を実現し、通勤時間を削減して仕事と子育てを両立させるための「必要経費」として捉えられています。時間を買うための投資として、1億円という価格が正当化されているのです。
住まいから資産へと変化する購買心理
かつての日本人の住宅観は「終の棲家」として、一生に一度の買い物をしてローンを完済するというものでした。しかし、現在の都心マンション購入層、特に若年層の富裕層やパワーカップルにおいては、住宅を「資産」として捉える傾向が強まっています。
「資産性が維持できるか」「将来高く売れるか」というリセールバリューが購入の最重要基準となり、多少無理をしてでも一等地の物件、駅近の物件、ブランド力のある物件を選ぼうとします。この資産性重視の姿勢が、価格が下がりにくい人気エリアへの需要集中を招き、さらなる価格上昇を誘引しています。
また、近年の株高や新NISA制度の拡充により、金融資産を増やした層が、含み益を確定させて実物資産である不動産に資金をシフトさせる「資産の組み替え」需要も観測されています。株式市場の不透明感が高まる中で、インフレヘッジとしての不動産の魅力が再評価されているのです。
円安を背景にした海外投資家の東京不動産購入
東京都心の不動産価格高騰を語る上で、外国人投資家の存在を無視することはできません。円安を背景とした「割安感」が、グローバルな資金を東京に引き寄せています。
2024年から2025年にかけて、外国人による東京の不動産購入は加速しました。国土交通省が実施した不動産登記情報を活用した調査によると、東京23区の新築マンションにおける海外居住者による取得割合は、2024年の1.6%から、2025年1月から6月期には3.5%へと倍増しました。
この数字は全体平均であり、エリアを絞るとさらに顕著になります。千代田区、港区、中央区、新宿区、文京区、渋谷区の「都心6区」に限れば、その割合は7.5%という高い水準に達しています。特に新宿区では14.6%という驚異的な数値を記録しており、一部のエリアでは実質的に海外マネーが相場を形成していると言っても過言ではありません。
購入者の内訳を見ると、2025年上半期において台湾からの投資家が最も多く、全体の6割以上を占めています。次いで中国、シンガポールと続いており、アジア圏の富裕層が東京の不動産を積極的に買い進めている実態が浮き彫りになっています。
東京が海外投資家に選ばれる理由
海外投資家が東京の不動産を買う理由は明確です。第一に、圧倒的な割安感があります。ニューヨーク、ロンドン、香港、シンガポールといった世界の主要都市と比較すると、東京の不動産価格は依然として安価です。さらに近年の円安傾向が、外貨を持つ投資家にとっての「バーゲンセール」状態を作り出しています。
第二に、安定性があります。日本の政治・経済は相対的に安定しており、所有権の保護など法制度もしっかりしているため、カントリーリスクが低いと評価されています。賃貸市場も成熟しており、安定した家賃収入が見込めることも魅力です。
第三に、再開発への期待があります。虎ノ門・麻布台エリアや高輪ゲートウェイ周辺など、東京では大規模な再開発が続いており、将来的な街の発展と地価上昇が期待されています。
海外投資家の資金は、主にタワーマンションや高級レジデンスに向かいます。これらの物件が高値で取引されることで、周辺の中古マンション価格も「連れ高」となり、エリア全体の平均価格を押し上げているのです。
都心6区における異次元の価格高騰
千代田区、港区、中央区、新宿区、渋谷区、文京区の「都心6区」は、もはや別格の市場を形成しています。これらのエリアでは、1億円は通過点に過ぎず、平均価格が1億5,000万円から2億円に迫る勢いを見せています。
LIFULL HOME’Sのデータによれば、都心6区のファミリー向き中古マンションの平均掲載価格は、2025年11月時点で1億6,940万円に達し、前年同月比で147.6%となりました。渋谷区や港区では、70平米換算で2億円を超えることも珍しくなく、坪単価が1,000万円を超える物件も散見されます。ここは実需層よりも、富裕層や投資家、外国人バイヤーが主戦場となるマーケットに変貌しています。
城北・城東エリアへの価格上昇の波及
都心部の価格が一般層の手の届かないレベルに達したことで、需要は相対的に価格の低い周辺区へと流れています。これを「価格の染み出し効果」と呼びます。
かつては庶民的な価格帯であった城北エリアの北区や板橋区、城東エリアの江東区、墨田区、台東区などでも、価格上昇が著しくなっています。北区では平米単価の上昇率が非常に高く、9年前と比較して50%以上の上昇を見せています。
特に注目すべきは、これまで「穴場」とされていた足立区や葛飾区、江戸川区の動きです。これらの区でも価格上昇が始まっており、足立区の平均価格(70平米換算)は3,000万円台後半から4,000万円台へとシフトしつつありますが、それでも23区内では「まだ買える」価格帯として、予算に制約のあるファミリー層の受け皿となっています。しかし、LIFULL HOME’Sのデータでは、東京都下(23区外)でも平均価格が過去最高を更新しており、安価なエリアが急速に消滅しつつある現状が浮き彫りになっています。
首都圏近郊の埼玉・千葉・神奈川への需要拡散
東京23区の価格高騰は、神奈川、埼玉、千葉の近隣3県にも波及しています。「セカンドベスト」の選択肢として、都心へのアクセスが良い横浜、川崎、さいたま市、市川市などのエリアが選ばれています。
東京都心からの転出超過データを見ると、特に子育て世代において東京から近隣県への流出が見られます。2024年の転入超過数は、東京が依然としてトップですが、埼玉県や千葉県への転入も高水準で推移しており、価格高騰による「脱東京」の動きが一部で顕在化しています。これらのエリアでも価格は上昇していますが、東京23区の異常な高騰と比較すればまだ抑制されており、現実的な選択肢として機能しています。
しかし、埼玉県や千葉県の一部の人気駅周辺では、新築マンション価格が東京の城東エリアを上回る逆転現象も起きており、首都圏全体が価格上昇の熱波に包まれています。
リノベーションが中古マンション市場の価値を高める
新築信仰が根強い日本において、中古マンション価格がこれほど上昇した背景には、「リノベーション」という価値再生手法の一般化があります。
LIFULL HOME’Sのレポートで指摘されている興味深い現象として、市場に流通する物件の「築年数の若返り」があります。都心部では、築浅の中古物件が積極的に取引されるようになり、平均築年数が若くなっています。これは、新築物件の供給が少ないため、築5年から15年程度の比較的新しい中古物件が、新築の代替として選好されていることを示しています。
一方で、築20年、30年を超える物件でも、内装をすべて解体し、配管から設備までを一新した「フルリノベーション済み物件」が高い人気を博しています。これらの物件は、新築同様の室内環境を持ちながら、新築よりも割安で手に入るため、合理的な選択肢として定着しました。
買取再販業者が市場で活発に活動しており、彼らが競って仕入れを行うことが、中古マンションの成約価格を下支えし、押し上げる要因の一つにもなっています。矢野経済研究所の予測によれば、住宅リフォーム市場規模は拡大傾向にあり、2025年には7兆円規模を超えると見込まれています。
2026年度税制改正が中古マンション市場に与える追い風
今後の中古市場にとって強力な追い風となるのが、政策的な支援です。2026年度(令和8年度)の税制改正において、住宅ローン減税の拡充が決定されました。
特筆すべきは、中古住宅に対する優遇措置の強化です。従来、新築住宅に比べて控除期間や限度額で劣後していた中古住宅ですが、一定の省エネ基準を満たすリノベーションや改修を行うことで、新築並みの控除として期間13年などが受けられるようになります。これは国が明確に「ストック活用型社会」への転換を促しているシグナルであり、中古マンション購入の経済的メリットを高め、需要をさらに喚起する可能性があります。
バブル期との比較から見る現在の価格高騰の性質
現在の価格高騰を、1990年代初頭のバブル景気と比較する議論があります。しかし、データを見るとその性質は大きく異なります。
東京カンテイの分析によれば、バブル絶頂期の1990年、東京都の新築マンション年収倍率(年収の何倍の価格か)は18.12倍に達していました。これに対し、現在は10倍から11倍程度で推移しています。エリアによってはこれを超える場合もありますが、全体平均としてはバブル期よりは低い水準です。
ただし、当時の金利は7から8%と非常に高く、月々の返済負担は極めて重いものでした。対して現在は、変動金利であれば0.3から0.5%程度という超低金利です。そのため、物件価格自体はバブル期並みかそれ以上であっても、毎月の返済額ベースで見れば「買えてしまう」状況が続いています。これが価格上昇を許容する大きな要因となっています。
バブル期は「土地神話」に基づく投機的な値上がりが中心でしたが、現在は「都心回帰」や「職住近接」といった実需に基づく需要と、供給不足という物理的な制約が価格を押し上げています。また、建物の品質として耐震性、断熱性、設備なども当時とは比較にならないほど向上しており、価格上昇には品質向上の側面も含まれています。
2026年以降の市場展望と価格動向の予測
この「1億円時代」は今後も続くのでしょうか。2026年以降の市場展望について考察します。
多くの専門家や市場データは、短期的には価格の高止まり、あるいは緩やかな上昇が続くと予測しています。その理由として、まず供給制約の継続が挙げられます。新築マンションの供給が劇的に増える見込みはなく、建設コストの高止まりも続くため、需給の引き締まりは解消されません。
次に、インフレ定着があります。日本経済全体がデフレからインフレへと転換しており、モノの値段が上がるのが当たり前というマインドセットが定着しつつあります。
さらに、底堅い需要も要因です。人口減少社会にあっても、東京への人口流入は続いており、特に職住近接を求める現役世代の需要は衰えていません。
一方で、急激な上昇に対する反動としての調整の可能性も否定できません。実需層の購入能力は限界に達しつつあります。
金利上昇が東京中古マンション市場に与えるリスク
最大の懸念材料は「金利」です。日本銀行は金融緩和政策の修正を進めており、市場では利上げ観測が強まっています。2025年末にかけて変動金利の上昇が現実味を帯びてきた中で、これまでの超低金利を前提とした「変動金利依存のペアローン」という資金調達モデルが、今後も持続可能かどうかが問われています。
一般的に金利上昇は不動産価格の下落圧力となります。ローンの返済負担が増えれば、購入できる物件価格の上限が下がるからです。しかし、現時点では「金利が本格的に上がる前に買ってしまおう」という駆け込み需要が発生しており、これが足元の価格をさらに押し上げている側面もあります。
また、インフレ下では現金の価値が目減りするため、借金をしてでも実物資産を持つべきだというインフレヘッジの論理も働いており、金利上昇即価格暴落という単純な図式にはなっていません。
今後の市場は多極化へと移行する見通し
今後は、単純な「全域上昇」から、選別色の強い「多極化」へと移行する可能性があります。
「超」都心エリアでは、グローバル価格に収斂し、海外富裕層の需要によりさらに上昇する可能性があります。利便性の高い準都心・近郊エリアでは、実需層であるパワーカップルに支えられ、価格は維持または微増となる見込みです。一方、条件の劣るエリアでは、駅遠、築古、旧耐震などの物件は、需要が及ばず価格が調整される可能性があります。
つまり、「東京なら何でも上がる」時代は終わり、個別の物件力やエリアのポテンシャルがよりシビアに問われる時代になるでしょう。
東京都中古マンション1億円時代のまとめと今後への示唆
2025年の「中古マンション平均価格1億円突破」は、一時的な異常値ではなく、東京がロンドンやニューヨークと並ぶ「世界都市」としての価格水準へと構造転換を果たした証左である可能性が高いです。
建設コストの上昇、供給の構造的不足、そしてインフレ経済への移行というファンダメンタルズが変わらない限り、価格が劇的に下落して昔の水準に戻ることは考えにくいでしょう。1億円という価格は、もはや「居住するための箱」への対価としては説明がつかず、東京という都市が持つアクセスの利便性、教育環境、資産保全機能、ステータスなど、あらゆる無形の価値をパッケージした金融商品としての価格となっています。
これから購入を検討する層にとっては、厳しい現実が突きつけられています。「待てば下がる」という期待は裏切られ続けてきました。今後は、従来の「新築・70平米・南向き」といった固定観念を捨て、「中古・リノベーション・50平米・資産性」といった柔軟な基準で物件を選定し、資産価値を見極めるリテラシーを持つことが、この過酷な市場を生き抜くための重要な視点となるでしょう。
東京都心の中古マンション市場は、完全に新しいフェーズに入りました。1億円はゴールではなく、新たなスタートラインに過ぎないのかもしれません。

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