2025年補正予算18兆円が2025年11月28日に閣議決定され、電気・ガス料金補助の再開と子ども1人あたり2万円の給付が実施されることになりました。この補正予算は、コロナ禍後では最大規模となる18兆3034億円の財政出動であり、物価高に苦しむ国民生活を支援するための包括的な経済対策です。本記事では、2025年補正予算18兆円の全容から、電気ガス補助の具体的な支援額、子育て支援給付金の対象条件まで、家計に直結する重要情報を詳しく解説します。

2025年補正予算18兆円とは?閣議決定された経済対策の全体像
2025年補正予算とは、高市早苗政権下で決定された2025年度(令和7年度)の追加予算のことです。一般会計歳出総額は18兆3034億円に達し、2024年度補正予算の約13.9兆円から4兆円以上の大幅増額となりました。この規模は新型コロナウイルス感染拡大時期を除けば、平時としては異例の財政出動といえます。
この18兆円規模の補正予算が組まれた背景には、長期化する物価上昇への対応があります。2025年に入っても食料品やエネルギー価格の高騰が続き、賃金上昇が物価上昇に追いつかない「実質賃金マイナス」の状況が家計を圧迫し続けています。政府はこの状況を「危機」と捉え、財政規律よりも国民生活の安定を優先する「責任ある積極財政」へと政策を転換しました。
補正予算の財源について見ると、2025年度の税収は当初見積もりよりも2兆8790億円の上振れが見込まれています。これは賃上げによる所得税収の増加や、一部企業の好業績による法人税収増が寄与したものです。しかし、18兆円を超える歳出に対して約2.9兆円の税収増では到底足りず、政府は不足分を補うために11兆6960億円もの国債を追加発行することを決定しました。これは補正予算の歳入総額の6割以上を借金で賄うことを意味しており、当初予算と合わせた2025年度の国債発行総額は40兆3431億円に膨張します。
高市首相は自身のSNSで「国債発行額は昨年度の42.1兆円を下回る」と投稿し、財政の持続可能性に配慮している姿勢をアピールしました。しかし、依然として巨額の借金に依存している構造に変わりはなく、積極財政と財政規律の間で政権がギリギリの綱渡りを強いられている状況が続いています。
2025年補正予算18兆円の使い道「3本の柱」を詳しく解説
18兆3034億円の補正予算は、政府が掲げる3つの主要分野に重点配分されています。それぞれの内容と予算規模を詳しく見ていきましょう。
第1の柱「生活の安全保障・物価高への対応」に8兆9041億円
予算全体の約49%、つまり半分近くを占める最大の項目が「生活の安全保障・物価高への対応」です。ここには電気・ガス料金補助や、子育て世帯への給付金など、国民生活に直結する支援策が含まれています。この分野に最も多くの予算が配分された理由は明確で、物価上昇が賃金上昇を上回る状況が長期化し、個人消費が停滞していることへの危機対応が最優先課題とされたためです。衆議院選挙後の支持率維持という政治的な思惑もあり、即効性のある家計支援策に重点が置かれました。
第2の柱「危機管理・成長投資による強い経済の実現」に6兆4330億円
「強い経済」をスローガンとする高市首相の肝煎り政策として、将来の経済成長を牽引する分野への投資が盛り込まれています。特に注目すべきはAI・半導体分野への支援で、次世代半導体の量産を目指すRapidus(ラピダス)への出資やAI開発基盤の整備に1兆円以上が投じられます。これは単なる産業振興ではなく、経済安全保障の観点から戦略物資の国内供給網を確保する狙いがあります。また、造船業の再生支援など地方経済の核となる産業へのテコ入れも含まれており、地方創生と産業再生を同時に進める構想です。
第3の柱「防衛力と外交力の強化」に1兆6560億円
安全保障環境の激変に対応するため、防衛力の抜本的強化を前倒しで進める予算です。装備品の調達加速や南西諸島を含めた防衛インフラの強靭化、外交力強化のためのODA(政府開発援助)拡充などが想定されています。補正予算に防衛費を多額計上することについては「財政法上の緊要性要件を満たすのか」という議論がありますが、現政権は安全保障上の危機を「災害級の緊急事態」と位置づけ、巨額計上を正当化しています。
このほか、今後の災害や予期せぬ物価高騰への備えとして7098億円の予備費も計上されており、不測の事態にも対応できる余力を確保しています。
電気ガス補助が2026年1月から再開|補助金額と対象期間
電気・ガス料金への補助(激変緩和措置)が2026年1月から3月まで再開されることが正式決定しました。2025年秋に一旦終了していたこの補助制度が、冬場の暖房需要期に合わせて復活する形です。
電気ガス補助の具体的な金額と期間
今回の電気ガス補助は、2026年1月から3月までの3ヶ月間限定で実施されます。期間中、最初の2ヶ月間は手厚い支援を行い、最後の1ヶ月で支援幅を縮小して終了する設計となっています。
電気料金については、2026年1月使用分と2月使用分は1キロワット時あたり4.5円の補助が適用されます。3月使用分は1キロワット時あたり1.5円に縮小されます。都市ガスについては、1月使用分と2月使用分は1立方メートルあたり18.0円の補助が適用され、3月使用分は1立方メートルあたり6.0円に縮小されます。
標準的な家庭での電気ガス補助による節約額
標準的な家庭(電気260キロワット時/月、都市ガス30立方メートル/月を使用)の場合、具体的にどれくらいの負担軽減になるのかを計算してみましょう。
1月と2月については、電気代が260キロワット時×4.5円で1170円の軽減、ガス代が30立方メートル×18円で540円の軽減となり、合計で月額1710円の負担軽減となります。3月については、電気代が260キロワット時×1.5円で390円の軽減、ガス代が30立方メートル×6円で180円の軽減となり、合計で月額570円の負担軽減となります。3ヶ月間の総計では約4000円程度の家計支援となる見込みです。
この補助は申請不要で自動的に適用されるため、対象となる電力会社やガス会社と契約している世帯は、特別な手続きをすることなく割引された料金で利用できます。
電気ガス補助に対する評価と課題
電気ガス補助の再開は消費者にとっては朗報ですが、いくつかの課題も指摘されています。まず「ストップ・アンド・ゴー」の弊害があります。補助金の開始・終了・再開が頻繁に繰り返されることで、小売事業者のシステム改修負担が増大し、消費者の価格感覚も麻痺してしまうという問題です。
また、脱炭素への逆行懸念もあります。補助金によってエネルギー価格が人為的に抑えられると、価格メカニズムによる省エネインセンティブが阻害され、GX(グリーントランスフォーメーション)推進という政府の大方針との整合性が問われることになります。
それにもかかわらず補助の再開を決定した背景には、2026年1月の各種商品値上げと重なるタイミングでの光熱費高騰を防ぎたいという強い政治的動機があります。冬場のエネルギー需要がピークを迎える時期に国民負担を軽減することで、政権への支持をつなぎとめたい思惑が透けて見えます。
子育て支援給付金|子ども1人2万円を所得制限なしで支給
2025年補正予算の目玉施策の一つが、子育て世帯への給付金です。児童手当の対象となる子ども1人あたり一律2万円が支給されることが決定しました。
子育て支援給付金の対象者と支給条件
対象となるのは0歳から高校生年代(18歳に達する日以後の最初の3月31日まで)の子どもを持つ全世帯です。特筆すべきは所得制限がないという点です。当初は高所得者を除外する案もありましたが、自民党の小林鷹之政調会長や公明党、国民民主党の強い要望により、所得制限の撤廃が決断されました。
所得制限を設けなかった理由としては、「子育て罰」という批判を避けることと、中間層以上の支持をつなぎとめるための政治的配慮が挙げられます。子どもを育てる家庭はすべて物価高の影響を受けているという認識のもと、世帯の所得に関係なく等しく支援を行うという方針が採用されました。
子育て支援給付金の支給時期
具体的な支給時期については、補正予算成立後できるだけ速やかな支給を目指すとされています。ただし、自治体の事務負担を考慮すると、実際の入金は2026年初頭以降となる見込みです。各自治体から対象世帯への案内が届くことになりますので、届いた案内に従って手続きを行うことになります。
給付金額を「2万円」とした背景には、前回の経済対策などとのバランスや、予算総額の制約の中でのギリギリの調整があったと考えられます。物価高で最も打撃を受けているのは食費や教育費がかさむ子育て世代であるという認識に基づき、子育て世帯への重点的な支援が決定されました。
ガソリン税の暫定税率廃止|約50年ぶりの歴史的税制改革
2025年11月28日、参議院本会議においてガソリン税などに上乗せされている「暫定税率」を廃止する法案が可決・成立しました。これは約50年間にわたり維持されてきた税制の根幹を揺るがす歴史的な決定です。
ガソリン税暫定税率廃止のスケジュール
ガソリン税の暫定税率分(約25.1円/リットル)は、2025年12月31日をもって廃止されます。軽油引取税の暫定税率分(約17.1円/リットル)については、年度替わりの2026年4月1日に廃止となります。
税率廃止にあたっては、消費者への影響を最小限に抑えるための綿密なロードマップが策定されています。もし税率廃止が実施される1月1日に価格が急落すると、直前の12月後半に買い控え(ガソリンスタンドへ行かない現象)が発生し、流通が大混乱する恐れがあります。これを防ぐため、政府は補助金を活用した価格調整を行います。
2025年11月時点では、補助金を175円程度の価格維持からより強力な抑制策へシフトし、補助額をリッター20円へ増額しています。2025年12月11日には補助金を25.1円/リットルまで増額します。この金額は廃止される暫定税率と同額であり、これにより12月中旬の時点で店頭価格は「税率廃止後」と同じ水準まで引き下げられます。そして2026年1月1日以降、暫定税率が廃止されると同時に25.1円の補助金を終了します。結果として、消費者が支払う店頭価格は12月中旬から1月にかけて横ばいで推移し、混乱なく税制移行が完了するシナリオとなっています。
ガソリン税暫定税率廃止の政治的背景
この決定は、国民民主党などが長年主張してきた「トリガー条項の凍結解除」の実質的な恒久化であり、野党側の完全勝利に近い形での決着となりました。少数与党である自民・公明両党は、補正予算案や来年度予算案の成立に野党の協力が不可欠であり、その「対価」として聖域であった税制の抜本改正を飲まざるを得なかったのです。
ガソリン税廃止後の財源問題と走行距離税
暫定税率の廃止により、国・地方合わせて年間数千億円規模の道路特定財源が失われます。この穴埋めについて、政府・与党と野党6党は「1年程度を目途に結論を得る」としていますが、具体的な代替財源は決まっていません。
ここで浮上しているのが、EV(電気自動車)普及時代を見据えた「走行距離税(マイレージ課税)」の導入議論です。走行距離に応じて課税する仕組みで、ガソリン車だけでなくEVからも公平に道路財源を徴収できるというメリットがあります。国民民主党の玉木代表などは地方経済への打撃を理由に反対姿勢を示していますが、失われた財源を補填し道路インフラを維持するためには、新たな負担を国民に求める議論が2026年に向けて加速することは避けられない情勢です。
「103万円の壁」引き上げ議論の進展と今後の見通し
2025年補正予算の成立過程で大きな注目を集めたのが、「年収103万円の壁」を巡る与野党の攻防です。補正予算そのものには税制改正は直接含まれませんが、予算案を成立させるための「交換条件」として、この議論に大きな進展がありました。
103万円の壁とは何か
103万円の壁とは、パートやアルバイトで働く人の年収が103万円を超えると所得税がかかり始める仕組みのことです。この壁があるために、年末になると「働き控え」をする人が増え、人手不足が深刻化する要因となっています。帝国データバンクの調査によれば、企業の約9割が「103万円の壁」の見直し(引き上げや撤廃)を求めています。
与野党協議の結果と今後のスケジュール
国民民主党の玉木雄一郎代表は、103万円の壁引き上げに向けた交渉が「関所(検問)を超え始めた」と表現しました。自民・公明・国民民主の3党間協議において、基礎控除等の引き上げについて「2025年度税制改正の中で議論し、引き上げる方向で調整する」という合意が形成されたのです。
従来、財務省は「基礎控除は最低生活費を保障するもの」として引き上げに消極的でしたが、高市首相が「最低賃金の上昇率などのインフレ要素も踏まえて引き上げる」と明言したことがブレイクスルーとなりました。具体的な引き上げ幅については年末の税制改正大綱で決定される見通しで、国民民主党が主張する178万円への引き上げが実現するかが焦点となっています。
ただし、壁を178万円まで引き上げた場合、国・地方合わせて7兆円〜8兆円規模の減収が発生するという試算もあり、地方自治体からは「行政サービスが維持できない」との懸念の声が上がっています。今回の補正予算決定は、この壁議論を年末の税制改正大綱へと先送りしつつ、まずは手前の経済対策で合意を取り付けたという高度な政治的妥協の産物といえます。
AI・半導体分野への1兆5000億円投資|Rapidusへの集中支援
2025年補正予算には、将来の経済成長を見据えた戦略的投資も盛り込まれています。その象徴がAI・半導体分野への約1兆5000億円の支援です。
次世代半導体製造への巨額投資
経済産業省は、次世代半導体製造技術開発に1兆514億円を計上しました。この大部分が、北海道千歳市で2027年の量産を目指す国策半導体会社「Rapidus(ラピダス)」への支援に向けられると見られています。また、生産拠点整備として工場建設やクリーンルームの整備費等への助成に4714億円が計上されています。
政府が特定の民間企業に対して累計で数兆円規模の支援を行うことについては、「官製プロジェクトは失敗する」という過去の事例(エルピーダメモリなど)を想起させ、リスクが高いとの指摘もあります。しかし、高市政権は「半導体は産業のコメではなく、戦略物資」と位置づけ、台湾のTSMCや韓国のSamsungに対抗できる2ナノメートル世代の最先端ロジック半導体を国内で製造することは、経済合理性を超えた「安全保障上の必須要件」であると判断しています。
日本の製造業の未来を左右する投資
この1.5兆円は、日本の製造業が次世代のグローバルサプライチェーンに残れるかどうかの「入場料」ともいえます。半導体は自動車、スマートフォン、家電、医療機器など、あらゆる産業で不可欠な部品であり、その供給を外国に依存し続けることは国家安全保障上のリスクとなります。最先端半導体の国産化は、経済的な競争力維持と安全保障の両面から重要な国家戦略として位置づけられています。
低所得者向け給付金は見送りか|情報の錯綜に注意
2025年補正予算において、低所得者向けの給付金については注意が必要です。これまで経済対策の定番であった「住民税非課税世帯への給付」については、大きな方針転換が見られました。
一部で期待されていた「一律4万円」や「10万円」といった大規模な低所得者向け給付金は、今回の補正予算の主軸からは外れ、事実上の見送りまたは大幅な縮小となった模様です。実際に、大阪市中央区の公式サイト等では「実施見送り決定」という明確なアナウンスがなされています。
この方針転換の背景には、過去数年にわたり低所得者向け給付(3万円、5万円、7万円、10万円など)が繰り返されてきたことへの「バラマキ批判」や、現役世代との不公平感を是正する意図があると考えられます。今回の補正予算では、リソースを「電気・ガス補助(全世帯が恩恵を受ける)」と「子育て支援(現役世代が恩恵を受ける)」に集中させた形となっています。
「低所得者向け給付金が出る」という情報がSNSなどで出回ることがありますが、今回は見送りや縮小の可能性が高いため、過度な期待は禁物です。正確な情報は各自治体の公式発表を確認することをお勧めします。
2025年補正予算18兆円が家計に与える影響まとめ
2025年補正予算18兆円による家計への具体的な影響を時系列でまとめると、まず2025年12月中旬からガソリン価格が下落し始めます。補助金の増額により、暫定税率廃止後と同じ水準まで価格が引き下げられます。2026年1月からは電気・ガス料金補助が開始され、標準的な家庭で月額約1700円の負担軽減となります。同時にガソリン税の暫定税率が廃止され、ガソリン価格の安さが恒久化されます。2026年2月も引き続き電気・ガス料金補助が継続し、同じく月額約1700円の負担軽減が続きます。2026年3月は電気・ガス料金補助が縮小され、月額約570円の負担軽減となります。また、2026年春頃には子ども1人あたり2万円の給付金が支給される見込みです。そして2026年4月には軽油引取税の暫定税率も廃止され、ディーゼル車の燃料費も安くなります。
これらの施策を合計すると、子どもがいる標準的な家庭では、電気・ガス補助で約4000円、子育て給付金で子ども1人あたり2万円、さらにガソリン代の恒久的な値下げによる節約が見込めます。特にマイカーを日常的に使用する家庭では、ガソリン税暫定税率の廃止による恩恵が大きく、年間で数万円単位の節約になる可能性があります。
2025年補正予算の今後の課題と展望
18兆円という巨額の補正予算は、短期的には国民生活を支援する効果がありますが、中長期的にはいくつかの課題を残しています。
財政の持続可能性への懸念
11兆円以上を国債で賄うという構造は、将来世代への負担の先送りを意味します。金利上昇局面にある中での大量国債増発は、財政規律の弛緩を招くリスクがあります。また、円安の再加速による輸入物価上昇が起きれば、対策の効果が相殺され、逆に「借金だけ増やしてインフレを悪化させた」という批判にさらされる可能性があります。
代替財源の確保
ガソリン税暫定税率の廃止により失われる年間数千億円の道路財源をどう補填するかは、1年以内に結論を出す必要があります。走行距離税の導入議論が進む可能性がありますが、地方経済への影響など慎重な検討が求められます。
政治情勢の変化
少数与党という政治状況が続く中、野党との協議が予算編成の根幹を左右する「部分連合」的な政治が定着しています。来夏の参院選に向けて、政策の一貫性よりも選挙対策が優先される可能性もあり、経済政策の方向性が読みにくい状況が続くことが予想されます。
2025年補正予算18兆円は、物価高に苦しむ国民への緊急支援として一定の効果が期待されます。電気ガス補助や子育て支援給付金、ガソリン税暫定税率の廃止など、家計に直結する施策が盛り込まれており、2026年初頭から順次その恩恵を受けることができます。ただし、これらの施策がもたらす財政への影響や、将来の税負担増の可能性についても、私たち一人ひとりが関心を持ち続けることが重要です。


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