セルフメディケーション税制2027年改正で恒久化!対象OTC医薬品の拡大内容を解説

社会

セルフメディケーション税制は、2027年(令和9年)から大幅に改正され、スイッチOTC医薬品については適用期限が撤廃されて恒久化されます。2025年末に公表された税制改正大綱により、対象となるOTC医薬品の範囲も劇的に拡大し、新たに薬局製造販売医薬品や消化器官用薬、体外診断用医薬品(検査キット)が追加されることが決定しました。非スイッチOTC医薬品についても5年間延長され、2031年(令和13年)12月31日まで制度が継続されます。

この改正は、日本の医療制度が抱える財政的課題に対応するための重要な政策転換を示しています。高齢化の進展により国民医療費が増大し続ける中、軽微な症状については市販薬で対処する「セルフメディケーション」の推進は、国家的な課題となっています。2027年の制度改正により、対象医薬品の購入費用を所得控除できる範囲が広がり、より多くの方がこの税制メリットを活用できるようになります。本記事では、2027年以降のセルフメディケーション税制の詳細な変更点から、対象となるOTC医薬品の見分け方、従来の医療費控除との賢い使い分け、そして確定申告の具体的な手続きまでを詳しく解説します。

セルフメディケーション税制とは何か

セルフメディケーション税制とは、健康の維持増進や疾病予防のために一定の取り組みを行っている個人が、特定のOTC医薬品を購入した場合に、その費用を所得控除できる制度です。正式名称は「医療費控除の特例」であり、2017年(平成29年)に創設されました。世界保健機関(WHO)はセルフメディケーションを「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義しており、日本でもこの考え方に基づいた行動変容を経済的インセンティブによって後押しする目的で本税制が設けられています。

従来の医療費控除は、原則として年間の医療費支出が10万円を超えた場合に適用されるため、健康で医療機関にあまりかからない方には縁遠い制度でした。一方、セルフメディケーション税制では、対象OTC医薬品の年間購入額が1万2,000円を超えれば控除が受けられます。この足切り額の低さが最大の特徴であり、風邪薬や頭痛薬、湿布、花粉症薬などを常備薬として購入している世帯にとって、現実的な節税手段となっています。控除額の上限は8万8,000円であり、年間10万円までの購入分が計算対象となります。

制度利用に必要な「一定の取組」要件

セルフメディケーション税制を利用するには、単に対象医薬品を購入するだけでなく、自らが健康管理に努めていることを証明する必要があります。具体的には、保険者(健康保険組合、協会けんぽ、市町村国保など)が実施する健康診査や人間ドック、市区町村による健康増進事業としての健康診査、予防接種法に基づく定期予防接種またはインフルエンザワクチン接種、勤務先での定期健康診断(事業主健診)、特定健康診査(いわゆるメタボ健診)または特定保健指導のいずれかを行っていることが条件です。これらの取り組み自体の費用は控除対象外ですが、「制度を利用する資格」として必要な要件となっています。

2027年からの制度改正の全貌

2025年末に公表された税制改正大綱により、セルフメディケーション税制は大きな転換点を迎えます。最大のポイントは、これまで時限措置として延長が繰り返されてきた制度が、一部について恒久化されることです。

スイッチOTC医薬品の恒久化という政策転換

今回の改正で最も重要な変更点は、スイッチOTC医薬品に係る税制措置の適用期限が撤廃され、恒久的な制度として定着することです。スイッチOTC医薬品とは、医療用医薬品として長年使用され、有効性と安全性が確認された成分を、薬局で販売できる一般用医薬品(OTC)に転用したものを指します。これまでは数年ごとの延長が必要であったため、制度の存続自体が不透明で国民への定着を阻害する要因となっていました。しかし、2027年以降はスイッチOTC医薬品の購入費用について、期限を気にすることなく永続的に控除の対象となります。

政府がこのカテゴリーを恒久化したことは、「医療用からOTCへの転換(スイッチ)」を国策として強力に推進し、軽医療を自助努力に委ねるという社会システムを構築する明確な意思表示と言えます。

非スイッチOTC医薬品は5年間延長

一方で、スイッチOTC以外の対象医薬品(非スイッチOTC医薬品)については恒久化は見送られましたが、適用期限が5年間延長され、2031年(令和13年)12月31日まで継続されることとなりました。非スイッチOTC医薬品とは、医療用からの転用ではないものの、スイッチOTC医薬品と同種の効能・効果を有すると認められる既存の医薬品群です。伝統的に使用されてきた漢方製剤や、古くからある風邪薬の配合成分などがこれに該当します。

対象医薬品の大幅拡充

2027年の改正では、対象となる医薬品の範囲が大幅に拡充されます。これまで対象外であったカテゴリーが新たに取り込まれることで、制度の利便性が格段に向上します。

薬局製造販売医薬品の新規追加は、今回の改正における最も革新的な変更点です。薬局製造販売医薬品とは、大手製薬メーカーが工場で大量生産する市販薬とは異なり、地域密着型の薬局において薬剤師が自らの設備と器具を用いて調合・製造し、その薬局の店頭で直接消費者に販売する医薬品を指します。対象となるのは一般用医薬品等と同じ有効成分を含有するものに限られますが、薬局独自の処方で作られる解熱鎮痛剤や皮膚用軟膏、生薬を組み合わせた煎じ薬などが想定されます。これにより、ドラッグストアだけでなく地域の調剤薬局も本税制の重要なプレイヤーとして位置づけられることになります。

消化器官用薬と呼吸器用薬の拡充も注目すべき変更点です。これまでは「かぜ薬」「胃腸薬」「鼻炎薬」「痛み止め」などが中心でしたが、新たに「消化器官用薬」や特定の生薬を含む「鎮咳去痰薬」が追加されます。薬局での相談が多い症状の上位には「便秘」「下痢」「腹痛」といった消化器系の不調が常にランクインしていますが、これらに対応する便秘薬や整腸剤の多くは、従来の基準では税制対象外でした。今回の改正により、便秘薬や整腸剤などの消化器官用薬が幅広く対象となり、日常的なお腹のトラブルに対するセルフケアが税制面でもサポートされることになります。

体外診断用医薬品(検査キット)の正式採用も重要な追加項目です。一般用医薬品のうち、尿糖や尿蛋白を検査する試験紙に加え、新型コロナウイルスやインフルエンザの抗原検査キットが対象に含まれると想定されます。コロナ禍を経て、自身の感染状況を検査キットで確認して行動を判断するという「セルフチェック」の習慣が定着しました。検査薬による自己診断は、適切な受診行動や自宅療養の判断材料となるため、広い意味でのセルフメディケーションに資するものとして税制対象に加えられます。

除外される医薬品について

対象が拡大される一方で、制度の趣旨にそぐわない医薬品については除外する方向で調整が進められています。具体的には、「痩身(ダイエット)または美容を目的として使用される可能性がある医薬品」については、一定の経過措置期間を設けた上で対象から外される見込みです。ビタミン剤や一部の漢方薬などは、本来の治療目的以外に美容やダイエット目的で購入・使用されるケースがあります。セルフメディケーション税制の原資は税金であり、その目的はあくまで「疾病の治療・予防による医療費の適正化」にあるため、美容目的の消費行動に対する税制優遇は政策的整合性を欠くと判断されました。

対象OTC医薬品の見分け方と主要成分

セルフメディケーション税制を活用するためには、膨大な数の市販薬の中から対象商品を正確に見分ける知識が必要です。

共通識別マークとレシートによる確認

対象医薬品を見分けるための最も視覚的な手がかりは、製品パッケージに印刷された「セルフメディケーション税制 共通識別マーク」です。これは日本一般用医薬品連合会が定めたもので、多くの対象製品のパッケージ正面や側面に記載されています。

しかし、すべての対象製品にマークがついているわけではありません。製造の都合やパッケージデザインの制約から、マークがない対象品も存在します。そこで最も確実な証拠となるのがレシート(領収書)です。対象医薬品を購入した際のレシートには、商品名の前に「★」や「●」といった特定の記号が印字され、レシートの下部や余白部分に「★印はセルフメディケーション税制対象商品です」といった注釈が記載される仕組みになっています。このレシート上の記載は確定申告を行う際の証明データとしても機能するため、商品パッケージのマーク以上に重要です。

主要薬効群における対象成分

対象となる医薬品は、厚生労働省が指定した特定の成分を含むものに限られます。以下、消費者が頻繁に購入する主要なカテゴリーごとに代表的な成分とその特徴を解説します。

解熱鎮痛薬(痛み止め・熱さまし)は最も身近なカテゴリーです。スイッチOTC成分としてロキソプロフェンナトリウム水和物が代表格であり、「ロキソニンS」シリーズなどに配合されています。イブプロフェンも広く使用されており、「イブA錠」や「リングルアイビー」などに含まれています。非スイッチOTC成分としてはアセトアミノフェンが挙げられ、「タイレノールA」や「カロナールA」の主成分となっています。胃への負担が比較的少なく、小児やインフルエンザ時の発熱にも使用されることが多い成分です。

かぜ薬(総合感冒薬)は多成分配合の製品が多いため、その中に一つでも対象成分が含まれていれば製品全体が控除の対象となります。「ルルアタックEX」などはトラネキサム酸やイブプロフェンなどのスイッチ成分を含んでいます。

外用鎮痛消炎薬(湿布・塗り薬)では、スイッチOTC成分としてジクロフェナクナトリウム(ボルタレンEXなど)、フェルビナク(フェイタスなど)、インドメタシン(バンテリンコーワなど)が強力な抗炎症作用を持つ成分として対象になっています。非スイッチOTC成分では、サリチル酸メチルサリチル酸グリコールを主成分とする「サロンパス」や「エアーサロンパス」などの伝統的な製品も対象に含まれています。

アレルギー用薬・鼻炎薬は花粉症対策の要となる薬です。スイッチOTC成分として、フェキソフェナジン塩酸塩(アレグラFX)、エピナスチン塩酸塩(アレジオン20)、ロラタジン(クラリチンEX)などの「第2世代抗ヒスタミン薬」が対象です。これらは眠くなりにくく、口が乾きにくいという特徴があります。点鼻薬においても、ベクロメタゾンプロピオン酸エステルなどのステロイド成分を含むものが対象となっています。

胃腸薬・消化器官用薬では、これまでは「ガスター10」(ファモチジン)などのH2ブロッカー胃腸薬が中心でしたが、2027年からは便秘薬や整腸薬も対象となります。具体的な成分としては、酸化マグネシウム(非刺激性便秘薬)や、ビフィズス菌・乳酸菌製剤などのうち医療用と同等の効果が認められるものがリストアップされる見込みです。

漢方薬・生薬製剤も多くの処方が対象となっています。葛根湯(かっこんとう)小青竜湯(しょうせいりゅうとう)防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)麻黄湯(まおうとう)などが代表的です。

医療費控除との賢い使い分け

セルフメディケーション税制は「医療費控除の特例」という位置づけであり、従来の医療費控除と併用することはできません。どちらか一方を選択する必要があるため、事前のシミュレーションと戦略的な判断が求められます。

基本的な判断基準

制度選択の基本的な判断基準は、年間の医療費支出額にあります。従来の医療費控除は、原則として年間支払医療費が10万円を超えた場合に、その超過分が控除対象となります。対象となる費用は広く、医師の診療費、入院費、処方薬代、通院交通費、歯科治療費(自由診療含む)、そして市販薬の購入費も含まれます。大きな病気や怪我で入院した場合や、歯科矯正などで高額な出費があった年は、従来の医療費控除を選択すべきです。

一方、健康で病院にはほとんど行かないが、常備薬として風邪薬や頭痛薬、湿布、花粉症薬などを家族分含めて年間2〜3万円程度購入している世帯にとっては、従来の医療費控除(足切り10万円)では控除額ゼロとなるところ、セルフメディケーション税制ならば確実に減税メリットを享受できます。

「総所得金額等の5%」ルールによる逆転現象

見落としがちなのが、従来の医療費控除における足切り額の例外規定です。足切り額は「10万円、または総所得金額等の5%のいずれか低い方」が適用されます。年収が低い方(概ね年収311万円未満、総所得金額等が200万円未満の方)にとっては非常に重要なルールです。

例えば、パートタイム勤務で年収200万円(給与所得控除後の総所得金額等が約130万円)の方の場合、従来の医療費控除の足切り額は130万円の5%である6万5,000円となります。もしこの方が年間で医療費(通院費+市販薬代)を7万円支払っており、そのうち対象OTC医薬品が2万円だったとします。

制度計算控除額
従来の医療費控除7万円 − 6万5,000円5,000円
セルフメディケーション税制2万円 − 1万2,000円8,000円

このケースではセルフメディケーション税制の方が有利になります。しかし、医療費全体が8万円(うちOTC2万円)だった場合は、従来の医療費控除が1万5,000円控除となり、セルフメディケーション税制の8,000円を上回る「逆転現象」が発生します。特に所得が低い層においては、自身の「総所得金額等の5%」を計算した上で比較検討することが不可欠です。

178万円の壁改革との関係

2027年からのセルフメディケーション税制改正を考える上で重要なのが、同時期に進行している所得税改革、いわゆる「年収の壁」の見直しです。2026年度税制改正大綱では、所得税の基礎控除等を現在の103万円から178万円へと大幅に引き上げることが合意されました。

所得税非課税枠拡大の影響

セルフメディケーション税制は「所得控除」の一種です。所得控除とは、課税対象となる所得を減らすことで結果として税金を安くする仕組みです。したがって、そもそも納めるべき所得税がゼロであれば、いくら控除額を積み上げても還付金は発生しません。

これまでの「103万円の壁」の下では、年収103万円を超えるパート・アルバイト従業員には所得税が発生していました。しかし、新たな「178万円の壁」が適用されると、年収178万円以下の層は原則として所得税が非課税となります。この層に関しては、セルフメディケーション税制を利用して所得税を減らすというメリットが消滅することになります。

住民税におけるメリットの残存

ただし、所得税のメリットが消滅しても、住民税のメリットまで消えるとは限りません。住民税の非課税ラインは一般的に年収100万円前後(自治体により異なる)であり、今回の「178万円の壁」議論は主に所得税(国税)に関するものです。もし住民税の課税最低限が178万円まで引き上げられず従来の100万円程度のままであった場合、年収103万円〜178万円の層には「所得税は0円だが、住民税は発生する」という状況が生まれます。

この場合、セルフメディケーション税制を利用することで住民税の課税所得を圧縮し、住民税額を減らすことは可能です。住民税率は一律10%ですので、例えば控除額が3万円あれば住民税3,000円の節税になります。所得税が非課税になったからといって直ちにレシートを廃棄せず、住民税の申告のために制度を活用する道は残されています。

確定申告の具体的な手続き

制度の恩恵を受けるためには、日々の管理と正確な申告手続きが必要です。サラリーマンであっても、セルフメディケーション税制を利用するためには確定申告が必要であり、年末調整では処理できません。

証明書類の保管義務

本税制の利用には健康診断等の「一定の取組」が必要ですが、現在は確定申告書への添付や提示は不要となり、代わりに自宅で5年間保管することが義務付けられています。税務署から確認を求められた際には速やかに提示できるよう、健康診断の結果通知表や予防接種の領収書(氏名、接種日、医療機関名が記載されたもの)を当該年度の確定申告控えと一緒に保管しておく必要があります。健診結果の数値部分(健康情報)はプライバシー保護の観点から黒塗り(マスキング)して保管しても問題ありません。

対象医薬品を購入したレシートも同様に5年間の自宅保管が必要です。感熱紙のレシートは経年劣化で文字が消えることがあるため、内側に折って保管するか、スマートフォンのカメラで撮影して画像データとしてバックアップをとっておくことが推奨されます。

デジタルツールの活用

近年では、ドラッグストアのポイントアプリや電子レシートサービスがe-Taxやマイナポータルと連携する動きが進んでいます。これらを利用すれば、年間の購入履歴データ(XMLデータ等)をダウンロードし、確定申告書作成コーナーに取り込むだけで、面倒な手入力を省略して明細書を自動作成することが可能になりつつあります。2027年以降、薬局製造販売医薬品などの複雑な品目が増える中で、こうしたデジタルツールの活用は重要なテクニックとなります。

申告の具体的ステップ

現在はスマートフォンのみで完結する申告フローが確立されています。まず、源泉徴収票、マイナンバーカード、対象医薬品のレシート合計額、健康診断の証明書を手元に用意します。次に、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にスマホからアクセスし、マイナンバーカードを使って認証を行います。「医療費控除」の項目を選択し、さらに「セルフメディケーション税制」を選びます。購入した医薬品の明細(医薬品名、金額、購入店、該当する人の氏名)を入力すると、自動的に控除額(購入額−1万2,000円)が計算されます。最後に、計算結果を確認し、還付金を受け取る銀行口座情報を入力してデータを送信すれば完了です。

2027年改正がもたらす意義

2027年のセルフメディケーション税制改正は、単なる税制の微修正ではありません。スイッチOTC医薬品の恒久化と対象範囲の劇的な拡大は、日本という国家が「自らの健康は自ら守る」というセルフメディケーションの理念を社会の基本システムとして構築しようとしていることを示しています。

「薬局製造販売医薬品」の追加や「消化器官用薬」の拡充は、制度をより使いやすく、より生活者の実感に近いものへと進化させます。「178万円の壁」による所得税非課税枠の拡大は、一部の層にとって本税制の金銭的メリットを減殺する側面もありますが、住民税の節税効果や、何より「医療費支出そのものを抑える」という家計防衛の本質的価値は変わりません。

ドラッグストアで「★マーク」を確認し、レシートを集めるという小さな行動は、自分自身の健康状態に向き合い、無駄な医療費を使わず、賢く税制を活用するという自律した生活者としての第一歩です。2027年という変革の年を前に、今からこの習慣を身につけておくことが、人生100年時代を生き抜くための確かな備えとなります。

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