オーケー、ヤオコー、ロピアの3社が好調を続けている理由は、それぞれが独自の戦略で高い利益率を実現しているためです。食品スーパー業界の平均営業利益率が約1.60%にとどまる中、オーケーは約6.6%という驚異的な数字を達成しました。ヤオコーは35期連続の増収増益を記録し、ロピアは年率15%以上の成長を続けています。
これら3社の好調の背景には、単なるコスト削減にとどまらない経営哲学があります。オーケーは徹底した「EDLP(毎日安売り)」と正直な情報開示で顧客の信頼を勝ち取りました。ヤオコーは惣菜部門を核とした付加価値戦略と個店経営で差別化を図っています。ロピアは精肉の専門性と現場主導の経営で買い物体験そのものを変革しました。この記事では、オーケー、ヤオコー、ロピアがなぜ好調なのか、高い利益率を支える戦略の本質と収益構造を詳しく解説します。原材料価格の高騰や人手不足といった逆風の中で、なぜこの3社だけが突出した業績を維持できているのか、その理由に迫ります。

オーケーが好調な理由とは?EDLP戦略と高い利益率の秘密
「毎日安売り」を貫くEDLP戦略の強み
オーケーの好調を支える最大の戦略は、EDLP(Every Day Low Price=毎日安売り)です。多くの競合スーパーが特定の曜日や時間帯に「特売」を実施しています。こうした「ハイ・ロー戦略」とは対照的に、オーケーは一年を通じて常に低価格を維持する方針を貫いています。
この戦略は、短期的には新店舗の認知に時間を要するデメリットがあります。しかし「オーケーはいつでもどこよりも安い」という認識が定着すれば、極めて強固な顧客基盤が形成されます。実際にオーケーでは、長年かけて蓄積した信頼が圧倒的な集客力へとつながっています。毎日安い価格を提供し続けることで、顧客は特売日を気にする必要がなくなり、いつ来店しても損をしないという安心感が生まれるのです。
オネストカードが生み出す顧客からの絶大な信頼
オーケーの経営で最も特徴的な仕組みが「オネスト(正直)カード」です。これは、商品の品質に問題がある場合にその事実を店頭POPで正直に伝える取り組みです。「今回のグレープフルーツは酸味が強い」といった情報や、「長雨の影響でレタスの品質が落ちているため他の野菜での代用を推奨する」といった案内を、あえて開示しています。
通常であれば販売を阻害しかねないこうした情報を公開する背景には、合理的な経営判断があります。品質に納得して購入してもらうことで、購入後の不満やクレームを未然に防げます。結果として顧客の再来店率が高まるのです。さらに、品質が悪い日には無理に仕入れず、正直に伝えて売り切ることで廃棄ロスの削減にも寄与しています。創業家である飯田家の「商売は正直であるべきだ」という哲学が、この仕組みの根底にあります。顧客と同じ視点に立つことで長期的なロイヤリティを勝ち取る、これがオーケーの信頼構築戦略です。
オーケーの利益率が高い理由は圧倒的な売上効率にある
オーケーの営業利益率は2024年3月期で約6.6%を記録しました。業界平均の1.60%を4倍以上も上回る驚異的な数字です。この高い利益率を支えているのは、単なるコスト削減ではありません。同社はCAS(Cells Alive System)と呼ばれる最先端の冷凍技術など、品質維持のための設備投資に巨額の資金を投じています。
利益率が高い真の理由は、一店舗あたりの平均売上高が約37億6900万円という圧倒的なボリュームにあります。売上高が大きいほど、光熱費や賃料、本部経費といった固定費の売上高に占める割合は低下します。高密度な店舗運営が低価格の原資を生み出し、その低価格がさらに集客を呼ぶという好循環が生まれています。「規模の経済」の正の循環が完璧に機能している点こそ、オーケーの利益率が高い最大の理由です。
競合店対抗値下げとオーケークラブ会員制度の相乗効果
オーケーは「地域一番の安値」を保証するために、熾烈な価格調査を日々行っています。社員が競合店の価格を調査し、自社の価格が一円でも高い場合には即座に値下げします。「競合店に対抗して値下げしました」というPOPを掲げるこの姿勢は、顧客に絶対的な安心感を与えています。
この安さをさらに補強するのが「オーケークラブ」会員制度です。現金払いの場合、食料品の本体価格から約3%分が割り引かれます。キャッシュレス決済の手数料負担を回避しつつ、その分を顧客に直接還元する合理的な仕組みです。会員カードを利用する顧客の割合は8割に達しており、強力な囲い込み戦略として機能しています。EDLPと会員制度の組み合わせが、オーケーの好調を支える両輪となっているのです。
ヤオコーが好調な理由とは?35期連続増収増益を支える戦略
利益率を押し上げるデリカ(惣菜)部門の圧倒的な競争力
埼玉県を拠点とするヤオコーは、「豊かで楽しい食生活」の提案という付加価値路線で好調を維持しています。35期連続増収増益という日本の小売業でも稀有な記録を持つヤオコーの最大の武器は、デリカ(惣菜)部門の競争力です。多くのスーパーが工場製のアウトパック商品を並べる中、ヤオコーは「店内で手間をかける」ことにこだわり抜いています。
看板商品である「手握りおはぎ」や「厚焼き玉子」、「ポテトサラダ」は、家庭で作るには手間がかかる料理です。しかし出来たてが最も美味しい料理の代表格でもあります。デリカ部門の強みがヤオコーにもたらすメリットは大きく分けて二つあります。第一に、生鮮食品より加工度が高い惣菜は、技術力があれば高い付加価値を価格に転嫁でき、高い粗利率を確保できます。第二に、「ヤオコーのおはぎが食べたい」という明確な目的での来店が、ついで買いによる客単価向上と来店頻度の上昇を同時にもたらします。この高付加価値戦略により、ヤオコーは不毛な価格競争を避けながら安定した利益率を確保しています。
個店経営がもたらす地域密着と高い資産効率
ヤオコーの真の強さは、200店舗近い規模でありながら一店一店が地域のニーズに合わせて対応を変えている点です。同社は店長や各部門の担当者に、仕入れ、陳列、価格設定の大きな権限を委譲しています。ある店舗では地域の祭りに合わせて特定の食材を大量に仕入れます。別の店舗では近隣の競合店の状況を見て機動的に価格を変更します。本部主導のマニュアル経営では実現できないスピード感と柔軟性が、ヤオコーの個店経営にはあります。
この「現場の自律性」は、機会損失と廃棄ロスの最小化に大きく寄与しています。現場の人間が「自分たちの店で何を売るべきか」を主体的に考えるため、売れ残りのリスクを自分事として捉えます。売り切るための工夫が自然と生まれる構造が出来上がっているのです。これが、ヤオコーがROA 8%台後半という高い資産効率を維持している背景です。
DXとLSPで「手間をかける戦略」の収益性を担保
「手間をかける」ヤオコーの戦略は、一歩間違えれば人件費の増大を招く諸刃の剣です。しかしヤオコーは「LSP(レイバースケジュールプログラム)」と「カイゼン」活動で科学的に管理しています。トヨタ生産方式を彷彿とさせる作業工程の最適化により、従業員の無駄な動きを排除しています。高いサービスレベルを維持しながら生産性を向上させる仕組みが確立されています。
さらに、AIを用いた自動発注システムやフルセルフレジの導入、ペーパーレス化も推進しています。これらのDXは単なるコスト削減が目的ではありません。従業員を単純作業から解放し、「メニュー提案」や「顧客対応」に時間を割けるようにする攻めの投資です。2024年度の決算では、給料や手当が増加しながらも営業利益を2ケタ増で伸ばしました。生産性向上の取り組みが確実に実を結んでいることを示す結果となっています。
ロピアが好調な理由とは?精肉の専門性と年率15%成長の戦略
垂直統合で実現する「肉のロピア」の圧倒的コストパフォーマンス
「ロープライスのユートピア」を掲げるロピアは、元精肉店という出自を武器に急成長を遂げました。年率15%以上の成長を続け、1店舗あたりの平均売上高は30億円を超えています。ロピアの好調の根源は、精肉部門における他社の追随を許さないコストパフォーマンスと品質です。
創業以来培ってきた目利きの力に加え、自社で食肉の輸入から加工、ハム・ソーセージの製造までを手掛けています。この「垂直統合型ビジネスモデル」が、ロピアの競争力の核心です。中間マージンを徹底的に排除し、大量仕入れと大量販売を行うことで、高品質な肉を圧倒的な価格とボリュームで提供しています。精肉部門の強さは単に肉が売れるだけにとどまりません。店舗全体の集客エンジンとして機能し、週末に家族でまとめ買いに訪れるという強力な来店動機を生み出しています。
部門チーフへの全権委譲が生む現場主導の高収益経営
ロピアの経営スタイルで最も特徴的なのは、各部門チーフへの大幅な権限委譲です。精肉、鮮魚、青果、惣菜の各部門チーフが、仕入れから価格設定、販促、利益管理まで一手に担います。あたかも一つの個人商店を経営しているかのような権限が与えられており、部門ごとの独立採算制に近い形態です。
この仕組みにより、「今日はこの魚を安く仕入れたから大胆な値引きで売り切ろう」といった機動的な判断が可能です。若手社員であっても実力があれば数億円規模の予算を動かす責任者に抜擢されます。そのため社内の士気は極めて高い状態が保たれています。平均年齢30.5歳という若さが生み出すエネルギーが、独創的な店舗演出やPB商品の開発を支えています。
買い物をエンターテインメントに変える店舗戦略
ロピアは、買い物を単なる日常の「作業」ではなく家族で楽しめる「イベント」へと昇華させました。店内は「ロピアワールド」と称される独特の空間です。ボリューム陳列やカラフルな装飾、SNSで話題になるユニークなオリジナル商品が所狭しと並んでいます。
この「期待感・ワクワク感」を演出する店作りは、機能的な安さを追求するディスカウントストアとは一線を画します。「ロピアに行けば何か面白いもの、新しい発見がある」と顧客に思わせることが重要です。単なる価格比較を超えた情緒的な価値の提供が、激戦区でも圧倒的な支持を獲得している要因となっています。
オーケー・ヤオコー・ロピアの利益率と戦略を比較
3社に共通する高い利益率の構造
オーケー、ヤオコー、ロピアは一見すると全く異なる戦略を展開しています。しかしその深層を分析すると、高い利益率を維持するための共通構造が浮かび上がります。以下の表で3社の戦略を比較します。
| 比較項目 | オーケー | ヤオコー | ロピア |
|---|---|---|---|
| 主な戦略 | EDLP(毎日安売り) | 個店経営・デリカ戦略 | 精肉特化・現場主導 |
| 強みの源泉 | 圧倒的な売上効率 | 高付加価値の惣菜 | 垂直統合モデル |
| 1店舗あたり売上 | 約37億6900万円 | ― | 30億円超 |
| 顧客への提供価値 | 安さと信頼 | 美味しさと提案力 | 体験とエンターテインメント |
| ロス削減手法 | オネストカード・CAS技術 | 精緻な在庫管理 | チーフ裁量による売り切り |
3社が提供する価値はそれぞれ異なります。オーケーは「機能的価値」としての安さと信頼を追求しています。ヤオコーは「情緒的・提案的価値」として美味しさと楽しさを届けています。ロピアは「体験的価値」として圧倒的な肉とエンターテインメントを提供しています。しかしいずれも、現場での情報の解像度を高め即座にアクションにつなげる点で共通しています。
廃棄ロスとチャンスロスを最小化する仕組みの違い
食品スーパーにおいて最も利益を蝕むのは「廃棄ロス」と「チャンスロス(機会損失)」です。この課題に対し、3社はそれぞれ異なるアプローチで取り組んでいます。
オーケーは、オネストカードによる情報の透明化とCAS技術による鮮度保持で廃棄を抑制しています。ハードとソフトの両面から対策を講じている点が特徴です。ヤオコーは、個店経営で地域ニーズを精緻に捉え、過不足のない在庫管理を実現しています。ロピアは、部門チーフの裁量による機動的な価格変更で商品をその日のうちに完売させます。「売り切る力」でロスを防ぐ手法です。手法は異なりますが、現場レベルでの迅速な判断が業界平均を大きく上回る利益率の源泉となっています。
PB商品と製造小売業化が支える収益力
3社ともNB(ナショナルブランド)商品では厳しい価格競争にさらされています。しかし利益の柱となっているのは、独自のPB(プライベートブランド)や店内調理商品です。
オーケーはNB商品を極限まで安く提供して集客し、高品質な自社開発商品で利益を補完しています。ヤオコーはデリカ部門を中心とした「Yes! YAOKO」ブランドを磨き上げてきました。他社が真似できない品質を武器にSPA(製造小売業)への進化を図っています。ロピアはグループ内の専門メーカーを活用し、精肉や惣菜、スイーツなどで独自性の高い商品を次々と投入しています。中間流通を排除して自ら製造・加工に関与する「製造小売業化」こそが、インフレ下でも収益性を維持できる強力な武器です。
3社の経営哲学に見る好調の本質的な理由
オーケーの経営哲学:誠実さと倹約が築く揺るぎない信頼
戦略やシステムは模倣できても、その背後にある経営哲学を模倣することは困難です。オーケーの飯田社長(現・最高顧問)は、「利益の上乗せはほどほどにして、質素倹約を心がける」という父親の教えを忠実に守り続けてきました。オネストカードは、単なる販売手法ではなくこの「誠実さ」を具体的な行動に落とし込んだものです。実業で社会に貢献すべきだという哲学が、目先の利益に惑わされず長期的な視点でEDLPを追求できる背景となっています。
ヤオコーの経営哲学:「おかげさま」の精神と全員経営
ヤオコーの根底にあるのは、川野会長の母トモ氏の口癖であった「おかげさま」の精神です。周囲の支えがあって生かされているという謙虚な姿勢が、従業員を大切にする文化を育んでいます。「自分の持つ力を期待されて働いている」という実感が、現場の情熱を引き出しています。経営理念が単なるお題目ではなく行動指針として現場に浸透していることが、ヤオコーの「全員参加の商い」を可能にしているのです。
ロピアの経営哲学:食生活に愛と楽しさを届ける情熱
ロピアのロゴである赤いハートマークには、「食生活に愛と楽しさを届けたい」という想いが込められています。創業時の精肉店としての誇りを持ちつつ、常にお客様を驚かせ喜ばせることを第一に考えています。若手にチャンスを与え、失敗を恐れずに挑戦させる企業風土は、変化の激しい時代において最大の強みです。3社それぞれの経営哲学は異なりますが、「顧客の暮らしをより良くしたい」という商いの本質は共通しています。
食品スーパー業界の未来と3社の戦略が示す方向性
人への投資と財務健全性が支える持続的な好調
好調な業績は、さらなる成長への投資を可能にする好循環を生んでいます。ヤオコーは増収増益で蓄積した内部留保を活用しています。物流センターの自動化や店舗のスクラップ&ビルド、M&Aへの戦略的な投資を進めています。オーケーも125.5%という営業利益の成長を背景に、豊富な現金を活用した攻めの出店を続けています。
特筆すべきは、3社とも「人」への投資を惜しんでいない点です。ヤオコーの待遇水準は業界上位にあり、能力に応じた成果主義も取り入れています。オーケーは業績に応じた特別賞与を支給しています。ロピアは若手に権限を与えることで自己実現の場を提供しています。労働人口が減少する中で優秀な人材を惹きつけ定着させる「人的資本経営」の実践が、長期的な競争力の源泉となっています。
オーケー・ヤオコー・ロピアが示すスーパーマーケットの未来像
日本の食品小売業界は、物流コストの増大や原材料価格の不安定化、デジタル技術の浸透など、大きな環境変化の渦中にあります。こうした中で3社の戦略が示す未来像は、3つのポイントに集約されます。
第一に、「一貫した価値提案」の重要性です。「安さ」か「美味しさ」か「楽しさ」か。どれか一つの軸で「ここでなければならない」と思わせる圧倒的な価値を提供し続けることが、選ばれるための絶対条件となります。
第二に、「現場の主体性」と「デジタルの融合」です。ヤオコーの個店経営やロピアのチーフ裁量制度のように、現場が考え動く組織こそが変化に迅速に対応できます。同時にオーケーのCAS技術やヤオコーのAI自動発注のように、テクノロジーで現場を支援する取り組みも欠かせません。
第三に、「信頼という無形資産」の構築です。オーケーのオネストカードが象徴するように、顧客の利益を第一に考える誠実な姿勢が最も強固な参入障壁となります。不都合な情報も共有する透明性こそ、これからの消費社会で最も価値ある経営資源です。
オーケー、ヤオコー、ロピアの3社は、単なるスーパーマーケットの枠を超えた経営モデルとして確立されています。それぞれの戦略は異なりますが、根底にある「顧客の暮らしをより良くしたい」という商いの本質は共通です。食品スーパー業界が厳しい環境に直面する中、この3社の好調を支える戦略は、すべての小売業にとって多くの学びと示唆に満ちているといえるでしょう。

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