近年の物価高騰は、私たちの生活に大きな影響を与えています。特に、限られた収入で暮らす生活保護受給世帯にとって、食料品や光熱費の値上がりは深刻な問題となっています。このような状況を受けて、政府は生活保護受給世帯への支援策として、生活扶助特例加算の増額を決定しました。2025年10月から、特例加算が月額1500円に引き上げられることになり、全国の約94万世帯が恩恵を受けることになります。この特例加算は、長引く物価上昇により困窮する受給世帯を支援するための臨時的・特例的な措置として実施されるものです。本記事では、生活保護特例加算1500円の支給開始時期や具体的な内容、対象世帯、そして生活保護制度全体について、わかりやすく詳しく解説していきます。生活保護を受給されている方、または受給を検討されている方にとって、有益な情報をお届けします。

特例加算1500円の支給開始時期と金額
生活保護の特例加算は、2025年10月から月額1500円に引き上げられます。これは、2023年10月から実施されていた月額1000円の特例加算に、さらに500円が上乗せされる形となります。この増額措置により、受給世帯の家計負担が少しでも軽減されることが期待されています。
厚生労働省は、2024年12月25日にこの特例加算の増額を正式に発表しました。この決定は、現在の物価高騰が生活保護受給世帯の家計を圧迫している状況を踏まえた重要な判断です。特に、食料品や光熱費の価格上昇は、最低限度の生活を送る受給世帯にとって、節約や工夫でカバーできる範囲を超えています。
この特例加算は、2025年度及び2026年度の2年間にわたる臨時的・特例的な対応として実施されることが決定されています。2027年度以降については、社会経済の状況を見ながら改めて検討されることになっており、物価動向や受給世帯の生活状況を注視しながら、継続の可否や金額の見直しが行われる予定です。
特例加算は世帯人員一人当たりの金額として設定されているため、世帯人数が多いほど受け取る加算額も大きくなります。単身世帯であれば月額1500円、2人世帯であれば月額3000円、3人世帯であれば月額4500円、4人世帯であれば月額6000円といった具合に、世帯の構成人数に応じて加算額が増えていきます。
特例加算導入の経緯と背景
特例加算が導入されるに至った経緯を理解するためには、日本における物価上昇の推移を把握する必要があります。2020年以降、日本の消費者物価指数は連続して上昇を続けてきました。
2020年を100とした場合、2024年10月分の消費者物価指数は109.5となっており、前年同月比で2.3パーセントの上昇を記録しています。特に生活に直結する品目の上昇が顕著で、光熱・水道は111.1(前年同月比3.2パーセント上昇)、食料に至っては120.4(前年同月比3.5パーセント上昇)という高い水準に達しています。これは、生活保護受給世帯が日々の生活で最も多く支出する項目において、大幅な物価上昇が起きていることを意味しています。
このような物価高騰の状況を受けて、政府は2022年12月23日の閣議決定において、2023年度及び2024年度の臨時・特例措置として、2023年10月から世帯人員一人当たり月額1000円を加算することを決定しました。この措置は、急激な物価上昇に対する緊急的な対応として実施されたものです。
しかし、物価上昇は2023年以降も継続し、生活保護受給世帯の生活は依然として厳しい状況にあることから、政府は2025年10月からさらに500円を上乗せし、月額1500円とすることを決定したのです。この追加措置は、継続する物価高騰に対して、さらなる支援が必要であるという認識のもとに実施されることになりました。
対象世帯と影響範囲
この特例加算の対象となるのは、生活保護を受給している全世帯です。厚生労働省の発表によると、この特例加算の引き上げにより、約94万世帯が恩恵を受けることになります。これは全生活保護受給世帯の約58パーセントに相当し、多くの受給世帯にとって家計の助けとなることが期待されています。
2024年時点で約164万世帯、約200万人が生活保護を受給しています。受給世帯の内訳を見ると、高齢者世帯が約半数を占めており、次いで傷病・障害者世帯、母子世帯、その他の世帯となっています。高齢化の進展に伴い、高齢者の生活保護受給世帯は増加傾向にあり、年金だけでは生活できない高齢者や、病気や障害により働けない方々が生活保護に頼らざるを得ない状況が続いています。
特例加算は世帯人員一人当たりの金額として設定されているため、世帯人数が多いほど受け取る加算額も大きくなります。例えば、単身世帯であれば月額1500円ですが、母子世帯で母親と子ども2人の3人世帯であれば月額4500円、夫婦と子ども2人の4人世帯であれば月額6000円となり、世帯規模が大きいほど受け取る加算額も増加します。
ただし、この特例加算を加えても、以前の基準額を下回る場合には、以前の水準が維持される措置も講じられています。これは、受給世帯がこれまでの生活水準を下回ることがないよう配慮したもので、どの世帯も不利益を被ることがないように設計されています。
特例加算の支給方法
特例加算は、生活扶助の一部として支給されるため、受給者が特別に申請する必要はありません。すでに生活保護を受給している世帯には、自動的に加算された金額が支給されます。これは受給者にとって非常に便利な仕組みで、複雑な手続きを必要とせず、確実に支援を受けることができます。
生活保護の支給は原則として月単位で行われ、現金で支給されます。特例加算も生活扶助と一体として、毎月の保護費に含まれて支給されることになります。したがって、受給者は従来どおり毎月の保護費を受け取るだけで、自動的に特例加算分も含まれた金額を受け取ることができます。
支給日については、各自治体の福祉事務所によって異なる場合がありますが、一般的には毎月の決められた日に支給されます。多くの自治体では、月初めから月の中旬にかけて支給されることが多く、受給者は安定して生活費を受け取ることができます。
受給者が行うべきことは、これまでどおり収入や生活状況の変化があった場合に福祉事務所に報告することだけです。特例加算の受給に関して、新たな書類の提出や手続きは一切必要ありません。
生活保護制度の概要
特例加算を理解する上で、生活保護制度全体の仕組みを知っておくことも重要です。生活保護制度は、日本国憲法第25条に規定された「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度です。生活に困窮している方に対して、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。
この制度は、すべての国民が利用できる権利として位置づけられており、年齢や性別、職業などに関わらず、生活に困窮している方であれば誰でも申請することができます。生活保護は、単に生活費を支給するだけでなく、受給者の自立を支援することも重要な目的としています。
生活保護制度の基本原則として、以下の4つがあります。まず、国家責任の原則として、国が生活に困窮するすべての国民に対して、その困窮の程度に応じ必要な保護を行う責任を負っています。次に、無差別平等の原則として、すべての国民が要件を満たす限り、この法律による保護を無差別平等に受けることができます。さらに、最低生活保障の原則として、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければなりません。そして、保護の補足性の原則として、資産や能力など、あらゆるものを活用することが保護の要件とされています。
生活保護における8つの扶助
生活保護制度には、8つの扶助が設けられており、それぞれの必要に応じて支給されます。この多様な扶助により、受給者の様々な生活ニーズに対応することができます。
生活扶助は、日常生活に必要な費用として、食費、被服費、光熱水費などをカバーします。今回の特例加算は、この生活扶助に含まれるものです。生活扶助は世帯の人数や年齢、居住地域などによって基準額が設定されており、最も基本的な扶助として位置づけられています。
住宅扶助は、家賃や地代など、住居に関する費用を支給します。公営住宅や民間アパートの家賃が対象となりますが、地域ごとに上限額が設定されています。敷金や礼金などの初期費用も、一定の条件の下で支給される場合があり、安定した住居の確保を支援しています。
教育扶助は、義務教育に必要な学用品費、学校給食費、学級費、PTA会費などが支給されます。対象となるのは小学生と中学生で、公立学校の費用を基準として算定されます。子どもの教育を受ける権利を保障し、貧困の連鎖を断ち切る重要な役割を果たしています。
医療扶助は、病気やけがの治療にかかる費用を支給します。医療扶助は現金ではなく現物給付として提供され、指定された医療機関で必要な治療を受けることができます。原則として、医療を受ける前に福祉事務所への申請が必要で、医療券または調剤券の発行を受けます。
介護扶助は、介護保険のサービスを利用する際に必要な費用を支給します。居宅介護や施設介護など、必要な介護サービスを受けることができ、高齢化社会において重要性が増しています。
出産扶助は、出産にかかる費用を支給します。分娩の介助や衛生材料など、出産に必要な費用が対象となり、安心して出産できる環境を整えています。
生業扶助は、技能を習得したり、就労に必要な費用を支給します。高等学校等の就学費用も生業扶助に含まれ、自立に向けた就労支援の一環として位置づけられています。
葬祭扶助は、葬儀にかかる費用を支給します。遺体の運搬、火葬や埋葬、納骨などに必要な費用が対象となり、人としての尊厳を守る最後の支援となります。
生活扶助基準額の算出方法
生活扶助の基準額は、居住地域、世帯構成、年齢などによって異なります。日本全国は生活水準に応じて1級地、2級地、3級地に分けられ、さらに1級地と2級地はそれぞれ1と2に細分化されています。
基準額は次の要素を合計して算出されます。まず、基準生活費(第1類)は、個人ごとに算定される費用で、年齢によって金額が異なります。子どもから高齢者まで、年齢階層に応じて細かく設定されており、それぞれの生活実態に合わせた金額が定められています。
次に、基準生活費(第2類)は、世帯全体にかかる費用で、世帯人数によって金額が異なります。これは、世帯として共通してかかる光熱費や家具什器費などを考慮したものです。
さらに、各種加算があります。障害者加算は障害のある方がいる場合に支給され、母子加算はひとり親世帯の場合に支給されます。児童養育加算は子どもを養育している場合に支給され、妊産婦加算は妊娠中または出産後の方がいる場合に支給されます。また、介護施設入所者加算、在宅患者加算、放射線障害者加算など、特別な状況に応じた加算も設けられています。その他、冬季には暖房費用として冬季加算が支給される地域もあります。
そして、特例加算として、今回取り上げている物価高騰対策としての臨時的な加算が含まれます。これらを合計した金額が最低生活費となり、この金額と世帯の収入との差額が保護費として支給されます。つまり、収入がゼロの世帯は基準額の全額が支給され、一定の収入がある世帯はその分を差し引いた金額が支給されることになります。
物価高騰と生活保護受給世帯への影響
2020年以降の物価上昇は、すべての国民に影響を与えていますが、特に生活保護受給世帯への影響は深刻です。生活保護受給世帯は、もともと最低限度の生活を送っているため、物価の上昇分を節約や工夫でカバーする余地がほとんどありません。
食費を切り詰めても、光熱費や医療費などの必要不可欠な支出を削ることは困難です。実際、支援団体の調査によると、多くの生活保護受給世帯が「食事の回数を減らした」「栄養バランスの取れた食事ができなくなった」「光熱費を節約するために冷暖房の使用を控えた」などの状況に置かれていることが報告されています。
特に、電気代やガス代などの光熱費の上昇は、冬季や夏季の生活に直接影響を及ぼします。暖房や冷房を我慢することは、高齢者や病気を抱える方にとっては健康リスクにつながります。冬季に暖房を十分に使用できないことで風邪をひきやすくなったり、夏季に冷房を控えることで熱中症のリスクが高まったりするなど、命に関わる問題にもなりかねません。
また、食料品価格の上昇も深刻です。米、パン、肉、魚、野菜など、あらゆる食品の価格が上昇しており、栄養バランスの取れた食事を確保することが困難になっています。特にタンパク質を含む肉や魚の価格上昇は、健康維持に必要な栄養素の摂取を妨げる要因となっています。
特例加算1500円の評価と課題
特例加算が月額1500円に引き上げられることについて、受給世帯からは一定の評価の声が上がっています。少しでも家計の足しになることは確かであり、政府が物価高騰の影響を認識して対応したことは評価できます。
しかし、支援団体や専門家からは、月額1500円の加算では物価上昇分を十分にカバーできないという指摘も多く出ています。前述のとおり、2020年から2024年にかけて、消費者物価指数は約9.5パーセント上昇しており、食料に至っては20.4パーセントもの上昇を記録しています。
例えば、月額10万円の生活費で生活していた世帯の場合、同じ生活水準を維持するためには約9500円の追加費用が必要となる計算です。これに対して、特例加算は単身世帯で1500円にすぎず、物価上昇分を十分に補填できているとは言い難い状況です。
また、この特例加算は2025年度と2026年度の2年間の臨時的な措置であり、2027年度以降は未定です。物価上昇が今後も続く可能性がある中で、2年後にこの加算がなくなってしまうことへの不安の声も上がっています。
日本弁護士連合会をはじめとする支援団体は、特例加算のさらなる増額や恒久的な措置への転換、生活保護基準そのものの見直しなどを求めています。2024年には、全国32の支援団体が連名で、物価高騰を踏まえた生活保護基準の大幅な引き上げを求める要望書を厚生労働大臣に提出しました。
要望の中では、現行の特例加算では物価上昇に追いついていないこと、生活保護基準の算定方法自体を見直す必要があること、夏季加算の創設が必要であること(冬季加算は存在するが、夏季の冷房費用への対応が不十分)、住宅扶助の上限額の引き上げが必要であること(家賃上昇に対応していない)、生活保護の捕捉率を向上させる取り組みが必要であること(生活保護を受けられるのに受けていない人が多い)などが指摘されています。
生活保護の申請方法
生活保護を受けるためには、居住地を管轄する福祉事務所に申請する必要があります。申請の流れは以下のとおりです。
まず、福祉事務所への相談から始まります。福祉事務所の生活保護担当窓口に相談し、生活状況や収入、資産などについて聞き取りが行われます。この段階で、生活保護の仕組みや受給条件について説明を受けることができます。
次に、申請を行います。生活保護の申請書を提出します。申請は口頭でも受け付けられますが、通常は申請書の記入が求められます。申請する権利は誰にでもあり、相談に行った際に申請を断られることはありません。
その後、調査が行われます。福祉事務所の担当者(ケースワーカー)が、収入や資産、扶養義務者の状況などを調査します。必要に応じて家庭訪問も行われ、実際の生活状況を確認します。
審査・決定では、調査結果をもとに、生活保護の要否と保護費の金額が決定されます。原則として、申請から14日以内(最長30日以内)に結果が通知されます。
保護の開始となると、保護が決定された場合、決定日から保護費の支給が開始されます。遡って支給されることもあり、申請日から決定日までの期間の生活費も保障されます。
ケースワーカーの役割と家庭訪問
生活保護を受給すると、ケースワーカーと呼ばれる福祉事務所の担当者が付きます。ケースワーカーは、生活保護受給者の生活を支援し、自立を促すための重要な役割を担っています。
ケースワーカーは、生活が苦しい人からの相談を受けて対策を考えたり、生活保護の申請対応や受給後の管理を担当したりします。具体的には、窓口での相談業務、生活状況の調査、援助計画の立案、自立支援、定期的な状況確認などを行います。
病気や怪我が完治していて就職先が見つかれば就労可能な受給者に関しては、ケースワーカーは適切な指導を行い、受給者の自立を支援します。就労支援プログラムの紹介や、ハローワークとの連携などを行い、受給者が自立した生活を送れるよう支援します。
厚生労働省により「生活保護受給者への家庭訪問は少なくとも年2回以上行うこと」が義務付けられており、ケースワーカーがその業務にあたっています。家庭訪問の目的は、生活状況の調査による自立の促進と、不正受給の防止の2点です。
訪問の頻度は、受給者の状況によって異なります。一般的には1か月から2か月に1回程度行われることが多く、受給者の健康状態、就労状況、収入の変化、生活環境、金銭管理の状況、自立に向けた取り組みなどが確認されます。
収入申告の義務と返還義務
生活保護を受給している方には、収入や資産の状況に変化があった場合、速やかに福祉事務所に届け出る義務があります。この申告義務を怠ると、不正受給とみなされ、深刻な問題となります。
生活保護受給者には、すべての収入を申告する義務があります。申告が必要な収入には、就労収入、年金収入、手当や給付金、その他の収入(親族からの仕送り、保険金の受け取り、資産の売却益、宝くじの当選金など)が含まれます。
世帯の全員の収入を申告する必要があり、これには未成年者や世帯分離している家族の収入も含まれます。仕事を始めたとき、給与を受け取ったとき、年金や手当の受給が始まったときなど、収入が発生した時点で速やかに福祉事務所に報告しなければなりません。
ただし、生活保護を受給しながら働いている場合、得られた収入のすべてが保護費から差し引かれるわけではありません。就労を促進するために、一定の控除制度が設けられています。就労収入に応じた基礎控除、交通費や社会保険料などの必要経費の控除、高校生などの未成年者控除などがあり、働いた分だけ手元に残るお金が増えるため、就労意欲の向上につながります。
収入を申告せずに生活保護を受給し続けると、不正受給とみなされます。不正受給が発覚すると、保護費の返還義務(生活保護法第78条)が生じ、受け取った保護費を全額返還しなければなりません。さらに、不正受給が悪質である場合、または返還を拒否した場合、刑事訴追される可能性があり、最大3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることがあります。
具体的な支給額の例
生活保護の支給額は、居住地域、世帯構成、年齢などによって大きく異なります。ここでは、具体的な支給額の例をいくつか紹介します。
単身世帯の場合、生活保護費は概ね10万円から13万円程度となります。例えば、東京都在住の50歳女性(単身世帯)の場合、生活扶助約83,000円、住宅扶助約53,000円(家賃の上限額)、合計約136,000円に、特例加算(2025年10月以降)1,500円を加えて、総額約137,500円となります。
大阪府在住の40歳男性(単身世帯)の場合、生活扶助約75,000円、住宅扶助約42,000円、合計約117,000円に、特例加算1,500円を加えて、総額約118,500円となります。
地方郡部在住の高齢者(65歳以上、単身世帯)の場合、生活扶助約68,000円、住宅扶助約35,000円、合計約103,000円に、特例加算1,500円を加えて、総額約104,500円となります。
夫婦世帯の場合、支給額は概ね14万円から18万円程度となります。東京都区部在住の高齢者夫婦(2人とも65歳以上)の場合、生活扶助約121,000円、住宅扶助約64,000円、合計約185,000円に、特例加算3,000円(2人分)を加えて、総額約188,000円となります。
子どもがいる世帯の場合、児童養育加算や教育扶助が加わるため、支給額が増えます。東京都区部在住の3人世帯(夫婦と小学生1人)の場合、生活扶助約145,000円、住宅扶助約69,000円、児童養育加算約10,000円、教育扶助約2,600円、合計約226,600円に、特例加算4,500円(3人分)を加えて、総額約231,100円となります。
東京都在住の母子世帯(母親と小学生2人)の場合、生活扶助約155,000円、住宅扶助約69,000円、母子加算約23,000円、児童養育加算約20,000円(2人分)、教育扶助約5,200円(2人分)、合計約272,200円に、特例加算4,500円(3人分)を加えて、総額約276,700円となります。
日本全国は、生活水準に応じて1級地から3級地に分類され、さらに1級地と2級地はそれぞれ1と2に細分化されています。1級地-1は東京都区部、横浜市、大阪市など大都市部、1級地-2は政令指定都市やその周辺都市、2級地-1は中規模都市、2級地-2は小規模都市、3級地-1は町村部、3級地-2は郡部などとなっており、地域によって支給額に大きな差があります。
生活保護に対する誤解と偏見
日本では、生活保護に対する誤解や偏見が根強く存在しています。「生活保護は怠け者が受けるもの」「税金の無駄遣い」といった否定的なイメージが一部にあり、これが生活保護を必要としている人が申請をためらう原因になっています。
実際には、生活保護受給者の多くは、高齢、病気、障害、失業など、やむを得ない事情により生活に困窮している方々です。働きたくても働けない、年金だけでは生活できないといった状況に置かれている人が大半です。
生活保護制度は、憲法で保障された権利であり、生活に困窮している方が利用するのは正当な権利の行使です。しかし、偏見や申請のハードルの高さから、実際には生活保護を受けられる水準にありながら受給していない人(いわゆる捕捉率の問題)が多数存在すると指摘されています。
支援が必要な方が適切に生活保護を利用できるよう、制度への理解を深め、偏見をなくしていくことが社会全体の課題となっています。
2025年度の生活保護制度改定のポイント
2025年度の生活保護制度に関する主な変更点は、以下のとおりです。
まず、特例加算の増額(2025年10月から)として、世帯人員一人当たり月額1000円から1500円に引き上げられます。これが今回の最も重要な変更点です。
次に、生活扶助基準の据え置きです。物価高騰を考慮して、2025年度と2026年度は生活扶助基準の減額を行わないことが決定されています。本来、生活保護基準は定期的に見直しが行われ、一般世帯の消費水準との均衡を図ることになっていますが、現下の物価高騰の状況を踏まえて、減額は見送られました。
そして、各種加算の継続として、障害者加算、母子加算、児童養育加算などの各種加算は引き続き継続されます。これにより、特別な事情を抱える世帯への支援が維持されます。
今後の展望と課題
生活保護制度を取り巻く状況は、今後も厳しい状況が続くと予想されます。高齢化の進展により、生活保護受給者は今後も増加することが見込まれています。また、非正規雇用の増加や経済格差の拡大により、現役世代の受給者も増える可能性があります。
一方で、財政的な制約から、生活保護費の抑制圧力も存在します。政府は社会保障費の増大に頭を悩ませており、生活保護費についても効率化や適正化の名のもとに、様々な見直しが検討されています。
しかし、生活保護は最後のセーフティネットであり、真に困窮している人々の生命と生活を守るための制度です。財政的な制約があるとはいえ、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を実現するために、十分な予算と適切な運用が求められます。
特例加算の増額は、物価高騰に対応した一つのステップですが、これで十分とは言えません。今後も物価動向を注視し、必要に応じてさらなる対応を検討していく必要があります。また、特例加算が2年間の臨時措置であることから、2027年度以降の対応についても早期に方針を示すことが求められます。
さらに、生活保護の捕捉率の向上も重要な課題です。生活保護を受ける資格があるにもかかわらず、偏見や情報不足により申請していない人が多数存在すると推測されています。必要な人が必要な支援を受けられる社会を実現するために、制度の周知と利用しやすい環境づくりが求められています。
まとめ
生活保護の生活扶助における特例加算は、2025年10月から月額1500円に引き上げられます。これは、2023年10月から実施されていた月額1000円の特例加算に、さらに500円が上乗せされる形です。厚生労働省が2024年12月25日に正式発表したこの措置により、約94万世帯、全生活保護受給世帯の約58パーセントが恩恵を受けることになります。
この措置は、長引く物価高騰により困窮する生活保護受給世帯を支援するための臨時的・特例的な対応であり、2025年度と2026年度の2年間にわたって実施されます。2027年度以降については、社会経済の状況を見ながら改めて検討されることになっています。
特例加算は、生活扶助の一部として自動的に支給されるため、受給者が特別に申請する必要はありません。すでに生活保護を受給している世帯には、自動的に加算された金額が毎月の保護費に含まれて支給されます。
特例加算は世帯人員一人当たりの金額として設定されているため、単身世帯であれば月額1500円、2人世帯であれば月額3000円、3人世帯であれば月額4500円と、世帯人数が多いほど受け取る加算額も大きくなります。
しかし、支援団体や専門家からは、月額1500円の加算では物価上昇分を十分にカバーできないという指摘も多く出ています。消費者物価指数が約9.5パーセント上昇、食料に至っては20.4パーセントもの上昇を記録している中で、特例加算だけでは不十分との声が上がっています。
また、この特例加算は2年間の臨時的な措置であり、2027年度以降は未定です。物価上昇が今後も続く可能性がある中で、恒久的な対応や生活保護基準そのものの見直しを求める声も高まっています。
生活保護制度は、日本国憲法で保障された最後のセーフティネットです。真に困窮している人々が安心して利用できる制度であり続けるために、適切な予算措置と運用が求められます。特例加算の増額は一つのステップですが、今後も物価動向を注視し、必要な対応を続けていくことが重要です。
生活保護に対する誤解や偏見をなくし、必要な人が必要な支援を受けられる社会を実現していくことが、これからの日本社会に求められています。生活保護は権利であり、利用することは恥ずかしいことではありません。生活に困窮している方は、ためらわずに居住地の福祉事務所に相談することをお勧めします。
  
  
  
  

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