毎年春になると、くしゃみや鼻水、目のかゆみに悩まされるスギ花粉症の方にとって、根本的な治療法として注目されているのが舌下免疫療法です。その代表的な治療薬であるシダキュアは、スギ花粉症を体質から改善できる可能性がある画期的な医薬品として、多くの患者さんから期待を集めてきました。しかし、2023年から続く出荷制限により、新たに治療を始めたいと考えている方々が治療開始を待ち続ける状況が続いています。この出荷制限がいつ解除されるのか、なぜこのような事態になったのか、そして今後どのような展望があるのかについて、詳しく解説していきます。スギ花粉症は日本人の約4割が罹患しているとされる国民病であり、根本治療への需要は年々高まっています。舌下免疫療法による体質改善を希望する方にとって、シダキュアの供給状況は切実な問題となっており、出荷制限解除のタイミングは治療計画を立てる上で非常に重要な情報です。

シダキュアの出荷制限解除はいつ?最新の供給状況
2025年におけるシダキュアの出荷制限について、製造元である鳥居薬品は2025年10月以降、秋頃を目処に出荷制限の解除を予定していました。現在は2025年11月となっており、出荷制限解除の時期に差し掛かっている状況です。ただし、具体的な解除日については医療機関や卸業者への正式な通知が必要であり、地域や医療機関によって入手可能になるタイミングには差が生じる可能性があります。
出荷制限の対象となっているのは、新規に舌下免疫療法を開始する患者さんが使用する2,000JAU製剤です。この導入用の低用量製剤が不足しているため、現在スギ花粉症の舌下免疫療法を新たに始めることは多くの医療機関で困難な状況が続いてきました。一方で、すでに治療を継続している患者さんが使用する5,000JAU製剤については通常通り供給されており、既存患者さんの治療には影響が出ていません。
各医療機関では、シダキュアの処方を希望する患者さんをウェイティングリストに登録し、薬剤が入手可能になった時点で順次連絡する対応を取っています。出荷制限が解除されても、待機リストに登録されている患者さんの数が多い場合、すぐに全員が治療を開始できるわけではない可能性があります。そのため、舌下免疫療法を希望される方は、早めに医療機関に相談し、ウェイティングリストに登録しておくことが推奨されます。
出荷制限が続く理由と生産能力拡大への取り組み
シダキュアの出荷制限は2023年から続いており、その主な理由は想定を超える需要の増加です。スギ花粉症に対する根本的な治療法として舌下免疫療法への関心が高まり、シダキュアを希望する患者数が急増しました。従来の抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬は症状を一時的に抑えるだけの対症療法であるのに対し、舌下免疫療法は体質そのものを改善できる可能性があることから、多くの患者さんが根本治療を求めるようになったのです。
製薬会社である鳥居薬品は、供給が需要に追いつかない状況となり、また不測の事態に耐えうる在庫を確保する必要性から、限定出荷を実施することとなりました。原料となるスギ花粉エキスの調達や製造ラインの拡充が追いつかない状況が続いていたため、安定供給を最優先に考えた結果としての措置でした。
鳥居薬品は、シダキュアの安定供給を実現するために、大規模な生産能力拡大に取り組んでいます。具体的には、原料となるスギ花粉の採取量の拡大、原料製造ラインの増設、医薬品製造ラインの確保、そして包装ラインの確保という4つの領域での増強を進めています。
特に重要なのが、2025年7月に完成した新たな原料製造設備です。この新設備の稼働により、年間約50万人分の供給が可能となり、限定出荷前の約2倍の生産能力を実現できる見込みとなっています。スギ花粉を効率的に収集する体制を強化し、安定的な原料確保を目指すとともに、原料から最終製品であるシダキュア錠剤を製造する工程、そして製造された錠剤を適切にパッケージングし出荷可能な状態にする工程まで、サプライチェーン全体の強化が図られています。
これらの取り組みにより、2025年10月頃から卸業者への出荷量を段階的に増やしていく計画が進められてきました。新しい原料製造ラインの稼働に伴い、製品在庫が蓄積され始めることで、出荷量の増加が可能になると見込まれています。ただし、鳥居薬品は限定出荷の解除について明確な時期を確定的に示すことには慎重な姿勢を保っており、供給体制が十分に整った段階で正式な発表が行われる見通しです。
シダキュアとは何か?スギ花粉症の根本治療薬
シダキュアは、スギ花粉症に対するアレルゲン免疫療法の治療薬です。スギ花粉を原料とするエキスから作られており、少量から服用することで体をスギ花粉に慣らし、アレルギー症状を和らげることを目的としています。正式名称は「シダキュアスギ花粉舌下錠」で、鳥居薬品が製造・販売しています。
2018年に発売されたシダキュアは、それまで使用されていた液体タイプの「シダトレン」の後継製品として位置づけられています。シダトレンは液体であり冷蔵保管が必要でしたが、シダキュアは錠剤であるため室温保管が可能で、用量の調整もしやすいという利点があります。この利便性の向上により、患者さんの服薬アドヒアランス(薬を指示通りに服用し続けること)が向上し、より多くの方が治療を継続しやすくなりました。
シダキュアには2つの用量があります。治療開始時に使用する低用量の2,000JAU製剤と、維持療法で使用する高用量の5,000JAU製剤です。治療は2,000JAU製剤から開始し、体を徐々に慣らしていきます。約1週間後には5,000JAU製剤に移行し、その後は毎日5,000JAU製剤を服用し続けることになります。現在出荷制限がかかっているのは新規患者向けの2,000JAU製剤のみで、すでに治療を継続している患者さんが使用する5,000JAU製剤は通常通り供給されています。
日本では、2014年にスギ花粉症に対する舌下免疫療法薬「シダトレン」が初めて承認され、2015年から一般的に使用されるようになりました。その後、2018年に錠剤タイプのシダキュアが発売され、2019年にシダトレンは販売中止となりました。シダトレンからシダキュアへの切り替えは、医師の指導のもとスムーズに行うことができ、すでにシダトレンで治療を継続していた患者さんは、シダキュア5,000JAUに直接切り替えることが可能でした。
舌下免疫療法の仕組みと期待できる効果
舌下免疫療法は、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を少量から徐々に投与し、時間をかけてその量を増やしていくことで、体をアレルゲンに慣らす治療法です。通常、私たちの免疫機能は、スギ花粉を外敵と認識して過剰に反応し、その結果としてくしゃみや鼻水、目のかゆみなどのアレルギー症状が現れます。
舌下免疫療法では、スギ花粉エキスを継続的に投与することで、免疫機能にスギ花粉を外敵ではないと認識させ、アレルギー反応を起こさないように体質を改善していきます。この治療法は、症状を一時的に抑える対症療法とは異なり、根本的な体質改善を目指すものです。
シダキュアの服用方法は、錠剤を舌の下に置き、1分間保持した後、飲み込みます。その後5分間はうがいや飲食を避けます。この方法により、有効成分が舌下の粘膜から体内に吸収され、徐々に体がスギ花粉に慣れていくのです。初回の服用は必ず医療機関で医師の監督下で行います。これは、万が一の重篤な副作用に備えるためです。2回目以降は自宅で毎日服用を続けます。
シダキュアによる舌下免疫療法は、約80~90パーセントの患者さんに何らかの効果があるとされています。具体的には、約6割の人がスギ花粉症の症状が軽くなり、約2割の人が完解する、つまり症状がほとんど出なくなると報告されています。治療が適切に行われた場合、治療開始後の初めてのスギ花粉飛散シーズンから効果が期待できます。
2018年に発表されたアジア人集団を基にした研究によると、舌下免疫療法を受けた患者さんの症状スコアは、鼻炎症状および複合スコアで17~32パーセントの減少を示しました。さらに注目すべきは、2年間の舌下免疫療法を完了した患者さんのうち、治療終了1年後に76.2パーセントの方が症状緩和のための薬を必要としなくなったという結果です。これは、舌下免疫療法が単に症状を一時的に抑えるのではなく、体質そのものを改善する効果があることを示しています。
ただし、個人差があり、3年間治療を継続しても効果が現れない方も10~20パーセント程度いらっしゃいます。効果が出ない場合でも、症状が悪化することはほとんどありません。治療効果には個人差があることを理解した上で、医師と相談しながら治療を継続することが重要です。
治療期間と開始時期について
シダキュアによる舌下免疫療法は、長期間の継続的な治療が必要です。推奨される治療期間は3~5年間です。この期間、毎日欠かさず服用を続けることが重要です。3~5年間治療を継続すれば、治療を中断した後も効果が持続すると考えられています。つまり、一定期間の治療により、体質そのものが改善され、長期的な効果が期待できるのです。
実際に5年間治療を継続した医師の体験では、舌下免疫療法による体質の改善がしっかりと定着するには3~5年かかるとされています。治療を途中で中断してしまうと、期待される効果が得られない可能性があります。そのため、治療開始前には、数年間にわたる継続的な服用が可能かどうか、よく検討する必要があります。
シダキュアによる治療は、スギ花粉が飛散していない時期にのみ開始できます。スギ花粉の飛散時期は一般的に1月から5月であり、この期間中は新規に治療を開始することができません。したがって、治療を開始できるのは6月から12月の間です。6月が、スギ花粉シーズン終了後に治療を開始できる最も早い時期となります。
治療開始時期について、特に推奨されるのは、スギ花粉が飛散し始める少なくとも3ヶ月前までに治療を開始することです。例えば、11月に治療を開始した場合でも、翌年2月のスギ花粉シーズンに効果が現れる可能性がありますが、より早く治療を開始すればするほど、症状管理が容易になります。6月に治療を開始すれば、次の花粉シーズンまでに約7~8ヶ月の準備期間があり、より高い効果が期待できます。
出荷制限が解除された後、治療を希望される方は、できるだけ早い時期、特に6月から夏頃に治療を開始することで、次の春のスギ花粉シーズンに向けて十分な準備期間を確保することができます。
費用について:健康保険適用で負担軽減
シダキュアによる舌下免疫療法は、健康保険が適用される治療です。検査・治療ともに保険適応となり、子ども医療費助成制度の対象にもなります。長期間の治療が必要であるため、費用面での負担が気になる方も多いですが、保険適用により比較的負担を抑えて治療を継続することができます。
3割負担の場合の具体的な費用は以下の通りです。初回、つまり1週間分の処方では、再診料と薬剤料を合わせて約1,530円です。2回目の2週間分の処方では、再診料と薬剤料を合わせて約1,200~1,300円です。3回目以降、つまり4週間分を月1回処方される場合は、シダキュアが約1,800~1,900円です。医療機関での診察料が約600円、調剤薬局での薬剤料が約1,900円で、月1回の受診として、医療機関と調剤薬局を合わせて1ヶ月あたり約2,300~2,900円となります。
別の医療機関の例では、シダキュア5000JAU 28日処方で調剤料込みで1,990円という報告もあります。年間の費用としては、約30,000円前後が目安となります。医療機関によって若干の違いはありますが、3割負担の場合、月額約2,000~2,500円程度が一般的な費用の目安といえるでしょう。
1割負担の場合や子ども医療費助成制度を利用する場合は、さらに負担額が軽減されます。毎日歯磨きができるなら、この治療も継続できるというのが、多くの医療機関での説明です。歯磨きと同じように、毎日のルーティンに組み込むことで、費用面でも無理なく継続できる治療といえます。
シダキュアは発売当初、新薬であるため14日間の処方日数制限がありました。これは、新しい薬の安全性を確認するための制度で、発売から1年間は一度に14日分までしか処方できないという規制でした。2019年5月1日、発売から1年が経過したことにより、この制限が撤廃され、長期処方が可能となりました。現在は、通常1ヶ月分、28日分の処方が一般的です。長期処方が可能になったことで、患者さんの通院負担が軽減され、治療の継続がしやすくなりました。
副作用と注意事項について
シダキュアの使用に際しては、いくつかの副作用に注意が必要です。最も重大な副作用は、アナフィラキシーです。アナフィラキシーとは、じんましん、腹痛、嘔吐、息苦しさ、意識混濁などが現れる重篤なアレルギー反応です。発生頻度は極めてまれですが、万が一に備え、初回服用は必ず医療機関で行います。
アナフィラキシーの症状としては、血圧低下や呼吸困難、全身の紅潮、顔面浮腫、咽頭の腫れなどがあります。これらの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。副作用が起こりやすい時期として、特に注意が必要なのは、服用後少なくとも30分間、服用開始初期のおよそ1ヶ月間、そしてスギ花粉が飛散している時期です。
服用直後は特に注意深く体調を観察する必要があります。体がまだ薬に慣れていない時期は、副作用が起こりやすくなります。花粉シーズン中は、薬の影響に加えて実際の花粉への曝露もあるため、副作用の発現に特に注意が必要です。
副作用を防ぐため、シダキュア服用前後2時間は、激しい運動、アルコール摂取、入浴を避けなければなりません。運動により体温が上昇すると、シダキュアの吸収が促進され、副作用が起こりやすくなります。アルコールは血管を拡張させ、薬の吸収を早めるため、避ける必要があります。入浴により体が温まると、同様に薬の吸収が促進されます。これらの行動で体が温まると、シダキュアの吸収が促進され、副作用のリスクが高まるため、服用前後2時間は避けることが重要です。
アナフィラキシー以外にも、比較的よく見られる副作用があります。最も多いのは、口腔内の症状です。唇や口の中の腫れ、かゆみ、のどの違和感、耳のかゆみなどを訴える患者さんがいらっしゃいます。これらの症状は通常、軽度から中等度で、多くの場合、治療を継続するうちに軽減していきます。その他、口内炎、舌の腫れや痛み、喉の刺激感、咳などの症状が報告されています。これらの症状が強く出る場合や、継続する場合は、医師に相談することが大切です。
シダキュアを服用中でも、他のアレルギー治療薬を併用することが可能です。これは多くの患者さんにとって重要な情報です。具体的には、シダキュア服用中でも抗アレルギー薬の内服、点眼薬、点鼻薬の使用が可能です。特に花粉飛散期間中は、シダキュアを服用していても、既存の抗アレルギー薬の併用が推奨されています。抗アレルギー薬との併用は、シダキュアによる副作用を和らげる効果もあります。
ステロイド薬については、種類によって併用の可否が異なります。ステロイドの飲み薬や注射は、シダキュアと併用することができません。これらは全身的に免疫機能を抑制するため、免疫療法の効果を妨げる可能性があるためです。一方、ステロイドの点鼻薬、外用薬、吸入薬は、シダキュアと併用可能です。これらは局所的な作用であり、舌下免疫療法の効果に大きな影響を与えないためです。
治療を受けられる条件と対象年齢
シダキュアは、5歳以上の患者さんから使用可能です。以前は12歳以上が対象でしたが、適応が拡大され、現在は5歳以上の小児にも処方できるようになりました。スギ花粉症は小児期から発症することが多いため、早期からの治療開始が可能になったことは、大きな意義があります。ただし、小児の場合は、毎日確実に服用できるかどうか、保護者の協力が得られるかどうかなど、治療継続の可能性を慎重に検討する必要があります。
上限年齢については特に制限はありませんが、高齢者の場合は、他の持病や服用している薬との兼ね合いを考慮し、医師と相談しながら治療の適応を判断します。
シダキュアによる治療は、すべての人が受けられるわけではありません。重症の気管支喘息を持つ方は、喘息発作のリスクがあるため、治療は適応となりません。ただし、軽症の気管支喘息で症状が安定している場合は、医師の判断により治療可能な場合もあります。
悪性腫瘍や免疫系の病気がある方、ステロイドや免疫抑制剤を使用している方も、治療を受けることができない場合があります。免疫療法は免疫システムに働きかける治療であるため、これらの疾患がある場合は慎重な判断が必要です。免疫抑制剤は免疫機能を抑制するため、免疫療法の効果が得られない可能性があります。
妊娠している方、または妊娠を予定している方についても注意が必要です。妊娠中の新規治療開始は推奨されていません。ただし、すでに治療を開始している方が妊娠した場合は、医師と相談の上、継続の可否を判断します。β阻害薬を服用している方も注意が必要です。この薬は、万が一アナフィラキシーが起きた際の治療薬であるアドレナリンの効果を弱める可能性があるためです。
これらの条件に該当する場合でも、個別の状況により治療可能な場合もあるため、必ず専門医に相談することが重要です。医療機関では、初診時に治療の概要、必要な検査、患者さんのモチベーション確認、副作用の説明、そして継続のコツについて、約2回の受診をかけて丁寧に説明を行っています。この初期の十分な説明が、長期継続の成功率を高めることにつながっています。
スギ花粉症の現状と今後の展望
日本におけるスギ花粉症は、国民病とも呼ばれるほど患者数が多く、深刻な健康問題となっています。推定では、日本人の約4割がスギ花粉症に罹患しているとされています。全国的な疫学調査によると、有病率は1998年の16パーセントから2019年には約39パーセントへと増加しており、約10年ごとに約10パーセントポイント増加しています。
2016年の東京都の調査では、東京都民の48.8パーセントがスギ花粉症であることが示されました。また、2019年の全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした調査では、有病率は38.8パーセントでした。現在、日本人の10人中4~5人がスギ花粉症に罹患している計算になります。この増加傾向の背景には、戦後の大規模なスギの植林、都市化による大気汚染、住環境の変化、食生活の欧米化など、複数の要因が関係していると考えられています。
スギ花粉症の症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどが主なものです。重症の場合は、日常生活に大きな支障をきたし、仕事や学業のパフォーマンス低下、睡眠障害、生活の質の著しい低下などを引き起こします。従来のスギ花粉症治療は、主に対症療法でした。抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬などにより症状を抑える治療が中心で、これらは花粉シーズン中に継続的に使用する必要があります。しかし、これらの薬は症状を一時的に抑えるだけで、根本的な体質改善にはつながりません。
シダキュアによる舌下免疫療法は、スギ花粉症を根本的に治療できる可能性がある唯一の方法として、注目を集めています。アレルゲン免疫療法自体は、100年以上の歴史を持つ治療法です。従来は、皮下注射によってアレルゲンを投与する皮下免疫療法が主流でした。皮下免疫療法は効果的ですが、定期的な通院と注射が必要であり、患者さんの負担が大きいという問題がありました。また、注射による痛みや、まれに重篤な全身反応のリスクもありました。
舌下免疫療法は、これらの問題を解決する新しい投与方法として開発されました。舌下に薬を投与することで、注射の痛みがなく、自宅で服用できるため、患者さんの負担が大幅に軽減されました。
スギ花粉症以外にも、ダニアレルギーに対する舌下免疫療法薬も存在します。ミティキュアやアシテアなどが、ダニアレルギーによる通年性アレルギー性鼻炎の治療に使用されています。ダニアレルギーは、スギ花粉症と並んで非常に多いアレルギー疾患です。ハウスダストに含まれるダニやダニの死骸、フンなどがアレルゲンとなり、年間を通じて鼻炎症状を引き起こします。
ダニの舌下免疫療法も、シダキュアと同様の仕組みで、3~5年間の継続的な治療により、ダニアレルギーの症状を根本的に改善する効果が期待できます。スギ花粉症とダニアレルギーの両方を持っている方は、医師と相談の上、両方の舌下免疫療法を併用することも可能です。ただし、2剤を同時にスタートすることはできません。一般的には、1剤目の投与開始後、副作用の観察をしながら1ヶ月以上の期間をあけて2剤目の投与を開始します。これは、万が一副作用が出た場合に、どちらの薬が原因かを判別できるようにするためです。
患者さんへのアドバイスと治療成功のポイント
シダキュアの出荷制限解除は、多くのスギ花粉症患者さんにとって待ち望まれるニュースです。2025年10月以降、秋頃の解除を目指して、鳥居薬品は生産能力の拡大に取り組んできました。新しい原料製造設備の稼働により、年間約50万人分の供給が可能になる見込みです。これは、限定出荷前の約2倍の生産能力に相当し、より多くの患者さんが治療を開始できるようになることが期待されます。
ただし、出荷制限が解除されても、当初はすぐにすべての希望者に薬が行き渡るわけではない可能性があります。医療機関では、ウェイティングリストに登録されている患者さんから順次、治療を開始していくことになるでしょう。シダキュアを希望される方は、早めに医療機関に相談し、ウェイティングリストに登録しておくことをお勧めします。また、出荷状況については、かかりつけの医療機関や鳥居薬品の公式情報を定期的に確認することが重要です。
舌下免疫療法は、毎日欠かさず服用を続ける必要があるため、継続が課題となります。しかし、実際に治療を続けている患者さんからは、継続のコツについて有益なアドバイスが提供されています。治療開始前は不安を感じるかもしれませんが、それは運転免許を取得する前や予防接種を受ける前の不安と同じようなものです。いったん習慣化してしまえば、不安は徐々に減少していきます。
実際に治療を受けている患者さんからは、さまざまな体験が報告されています。重度のスギ花粉症で、夜間に鼻づまりと咳で目が覚めるほどだった方が、舌下免疫療法を開始して約1年で効果を実感したという声があります。また、市販の花粉症薬が効かなかった方が、舌下免疫療法を始めてから、スギ花粉シーズンにマスクをする必要がなくなったという報告もあります。
舌下免疫療法は、効果が現れるまでに数ヶ月から1~2年かかる場合がほとんどです。治療期間中に中断してしまうと、元の状態に戻ってしまう可能性があります。そのため、最低でも3年間は継続することが推奨されています。途中で効果を実感できたとしても、体質の改善をしっかりと定着させるためには、医師の指示通りに治療を継続することが重要です。
旅行や出張などで一時的に服用できない日があっても、基本的には治療を中断せず、再開することができます。ただし、長期間、1週間以上服用を中断した場合は、必ず医師に相談する必要があります。
舌下免疫療法は、スギ花粉症を根本から治療できる可能性がある唯一の方法です。治療には長期間の継続が必要ですが、成功すれば、毎年の花粉シーズンの苦しみから解放され、生活の質の大幅な改善が期待できます。2025年の花粉飛散量は多くの地域で増加が予測されており、スギ花粉症に苦しむ方々にとって、シダキュアの出荷制限解除は切実な願いとなっています。出荷制限の解除により、より多くの方がこの画期的な治療を受けられるようになることが期待されます。
スギ花粉症の根本治療を希望される方は、ぜひ早めに専門医に相談し、治療開始の準備を進めていただきたいと思います。医師との十分な相談を通じて、治療のメリットとデメリット、継続の可能性について理解を深め、納得した上で治療を開始することが、成功への第一歩となります。


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