スマホ新法は2025年12月18日に全面施行され、Google PlayやApp Storeにおける課金システムが大きく変わります。この法律により、これまでAppleとGoogleが独占的に運営してきたアプリストアの課金ルールが緩和され、開発者は外部決済システムの導入やアプリ内から自社Webサイトへの誘導が可能になります。
正式名称は「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」で、2024年6月に国会で可決・成立しました。Google Playでは外部決済を選択した場合の手数料が標準30%から26%に引き下げられ、App Storeでは27%となる見込みです。本記事では、スマホ新法の施行時期から具体的な変更点、開発者やユーザーへの影響まで、2025年の最新情報を詳しく解説します。

スマホ新法とは何か:日本のデジタル市場を変える競争促進法
スマホ新法とは、スマートフォンのアプリストアやOS、ブラウザ、検索エンジン市場における競争を促進するために制定された法律です。長らくAppleとGoogleの2社による複占状態にあったモバイルエコシステムを開放し、新たな事業者の参入や開発者の選択肢を広げることを目的としています。
この法律の最大の特徴は、問題が発生してから対処する従来の独占禁止法のような「事後規制」ではなく、あらかじめ禁止事項と遵守事項を定めておく「事前規制」である点にあります。これは欧州連合(EU)のデジタル市場法(DMA)と同様のアプローチであり、変化の速いデジタル市場において迅速な競争回復を目指すための手法として採用されました。
規制対象となる4つの分野
スマホ新法が「特定ソフトウェア」として規制対象に定めているのは、4つの分野です。第一に、スマートフォンの基盤となる「基本オペレーティングシステム(OS)」として、iOSとAndroidが対象となります。第二に、アプリを入手するための「アプリストア」として、App StoreとGoogle Playが対象です。第三に、ウェブサイトを閲覧するための「ブラウザ」として、SafariとChromeが該当します。第四に、情報を検索するための「検索エンジン」として、Google検索などが規制の対象となります。
これらの分野において市場支配力を持つ事業者は「指定事業者」として公正取引委員会から指定を受け、法律が定める禁止事項と遵守事項を守る義務を負うことになります。
スマホ新法の施行時期はいつから:2025年12月18日までのタイムライン
スマホ新法は段階的に施行が進められており、全面施行日は2025年12月18日と定められています。この日から、AppleとGoogleは日本国内において第三者アプリストアの容認、外部決済システムの許可、ブラウザ選択画面の実装などを完了し、運用を開始しなければなりません。
施行に向けた3つのマイルストーン
施行に向けたスケジュールには3つの重要なマイルストーンがあります。
第一のマイルストーンは、2024年12月19日に実施された規制対象事業者の指定に関する規定の先行施行です。これにより、公正取引委員会は事業者の規模や市場支配力に基づく調査を開始しました。
第二のマイルストーンは、2025年春(3月頃と予測されています)に行われる「指定事業者」の正式指定です。市場シェアと事業規模から見て、Apple Inc.(およびその日本法人であるiTunes株式会社)とGoogle LLCが指定されることは確実視されています。指定された事業者は、法律が定める禁止事項と遵守事項に対応するためのシステム改修や規約変更を行う猶予期間に入ります。
第三のマイルストーンが、2025年12月18日の全面施行日です。この期日に遅れた場合、あるいはコンプライアンスが不十分と判断された場合、公正取引委員会による排除措置命令や課徴金納付命令の対象となります。
課徴金は売上高の20%という厳しい設定
スマホ新法における課徴金は、違反行為に関連する売上高の20%(再犯の場合は30%)という極めて高額な設定がなされています。これは独占禁止法の6%と比較しても破格の厳しさであり、プラットフォーマーに対する強力な抑止力として機能することが期待されています。
指定事業者に課される義務と禁止事項の詳細
スマホ新法では、指定事業者に対して競争を阻害する行為として複数の事項が禁止、または義務付けられます。これらの規制により、アプリ開発者やユーザーの選択肢が大幅に広がることになります。
アプリストアにおける開放義務
指定事業者は、自社のOS上で競合他社がアプリストアを提供することを妨げてはなりません。Androidでは既に部分的に可能でしたが、iOSにおいてはこれが歴史的な転換点となります。いわゆる「サイドローディング」や「代替マーケットプレイス」が公式に認められることで、Epic Games StoreやMicrosoftのモバイルストアなど、ゲームに特化した独自ストアが登場する可能性があります。
決済システムの自由化とアンチ・ステアリングの禁止
指定事業者は、アプリ開発者が自社の決済システム(Google Play BillingやApp Store In-App Purchase)を利用することを強制してはなりません。また、アプリ内から外部のウェブサイトへ誘導し、そこでデジタルコンテンツを購入させること(リンクアウト)を禁止することも認められなくなります。これまでは「アプリ内課金の手数料を回避するための外部誘導」は厳しく制限されていましたが、スマホ新法により全面的に解禁されます。
デフォルト設定の変更と選択画面の表示義務
指定事業者は、OSの初期設定において自社のブラウザや検索エンジンを優先的に扱うことを是正しなければなりません。具体的には、ユーザーがデバイスを初期設定する際やブラウザを初めて起動する際に、「どのブラウザを使用しますか?」「どの検索エンジンを使用しますか?」という選択肢を提示する画面(チョイススクリーン)を表示する義務が課されます。
データの分離と公平性の確保
指定事業者は、OSやアプリストアの運営を通じて取得した競合他社のデータを、自社の競合サービス(Apple MusicやYouTube Musicなど)の開発や競争力強化のために利用してはなりません。これにより、プラットフォーマーが持つ情報の優位性を利用した不公正な競争が防止されます。
Google Playにおける課金システムの変更点2025
Googleは、2025年12月18日の施行に向けて日本市場においてスマホ新法への対応策を先行して発表・導入し始めています。開発者にとって重要なのは、Googleが提供する「2つの新しい課金モデル」の違いと、その具体的な手数料構造です。
ユーザー選択型決済(User Choice Billing)とは
Googleは、日本を含む特定の国々で「ユーザー選択型決済(User Choice Billing)」のパイロットプログラムを実施しており、施行に合わせてこれを正式な制度として運用します。
このモデルでは、アプリ内の購入画面において、Google Playの標準課金システムと並列して、開発者が選択したサードパーティの決済システム(クレジットカード決済、PayPay、キャリア決済など)を表示することが許可されます。ユーザーは、どちらの決済手段を利用するかをその場で選択できるようになります。
外部決済選択時の手数料は4%引き
重要な点は、外部決済を選んだからといってGoogleへの手数料がゼロになるわけではないということです。Googleは、AndroidとPlayストアのエコシステム維持への対価(サービスフィー)として、標準手数料から4%を差し引いた金額を徴収します。
具体的な手数料率を見ると、標準の手数料率が30%のアプリの場合、ユーザーが外部決済を選択した際のGoogleへの手数料は26%となります。標準が15%(サブスクリプションや小規模事業者)の場合は、11%となります。
開発者は、このGoogleへの手数料(26%または11%)に加え、外部決済プロバイダー(StripeやPayPalなど)に支払う決済手数料(一般的に2.5%〜3.6%程度)を負担する必要があります。したがって、開発者の総コストは「Googleへの26% + 決済会社への3% = 約29%」となり、標準の30%と比較してコストメリットは1%程度に留まります。決済会社の手数料次第ではコスト増になる可能性さえあります。
外部オファープログラム(External Offers Program)の仕組み
Googleはさらに、アプリ内から外部のウェブサイトへリンクを張り、そこでコンテンツを購入させる「外部オファープログラム」を日本市場向けに拡大します。このプログラムを利用すると、アプリ内に「Webサイトで購入する」といったボタンを設置し、ブラウザを起動させて自社サイトへ誘導できます。自社サイト上であれば、アプリストアの価格制約を受けずに独自の価格設定やプロモーションを行うことが可能です。
外部オファーの二階建て手数料構造
Googleはこの外部オファーについても、「エコシステムへの貢献」を理由に手数料を課す方針です。欧州経済領域(EEA)ですでに導入されているモデルに基づくと、日本でも二階建ての手数料構造が適用される可能性が高いです。
第一の手数料は「初期取得手数料(Initial Acquisition Fee)」です。これは、ユーザーがアプリをインストールしてから一定期間(例えば2年間)に行われた外部取引に対して課されるもので、Google Playがユーザー獲得(集客)に貢献したことへの対価です。料率は5%〜10%程度と想定されます。
第二の手数料は「継続的サービス手数料(Ongoing Service Fee)」です。これは、Google Playが提供するセキュリティ、アップデート配信、開発ツールなどの利用対価であり、10%〜17%程度の手数料がかかります。
これらを合計すると、外部決済を利用しても標準の手数料率に近い金額をGoogleに支払う構造になっています。開発者はAPIを通じて外部での取引実績をGoogleに報告する義務を負い、それに基づいて請求が行われます。
技術的実装における開発者の負担
これらの新機能を利用するためには、単に規約に同意するだけでなく、技術的な実装が必要です。開発者はGoogle Play Consoleでプログラムへの参加申請を行い、承認を受ける必要があります。
また、アプリ内にはGoogleが指定するAPIを組み込む必要があります。外部サイトへ遷移する前に、「Google Playの保護対象外となります」といった内容をユーザーに警告する「情報スクリーン(Information Screen)」を必ず表示しなければなりません。さらに、外部で行われたトランザクション(取引)を追跡し、そのデータをGoogle Play Developer APIを通じて報告するバックエンドシステムを構築する必要があります。このシステム開発と運用のコストも、開発者にとっては無視できない負担となります。
Apple App Storeにおける課金システムの変更点2025
Appleにとって、スマホ新法への対応はGoogle以上に大きなビジネスモデルの転換を意味します。特にiOSにおける「聖域」であったApp Store以外のアプリ配信と決済の開放は、Appleが掲げてきたセキュリティとプライバシーの概念と、競争促進法の要請との間で激しいせめぎ合いを生んでいます。
外部購入リンク・エンタイトルメント(Link Entitlement)の導入
Appleは、日本市場においても「StoreKit External Purchase Link Entitlement」を導入し、アプリ内から外部ウェブサイトへの誘導を許可することになります。これまで、いわゆる「リーダーアプリ(雑誌、書籍、音楽、動画)」に限って許可されていた外部リンクが、ゲームを含む全カテゴリーのアプリに開放されます。
開発者は、XcodeのInfo.plistファイルに特定のエンタイトルメント(権限)を記述し、Appleの審査を受けることで、アプリ内に「Webで購入」ボタンを設置できるようになります。
ユーザー体験に導入される「フリクション」
Google同様、Appleもユーザー体験に意図的な「フリクション(摩擦)」を導入する可能性があります。リンクをタップした瞬間に、iOSシステム側で全画面の警告シートを表示し、「App Storeの外部で取引を行います。Appleはこの取引の安全性やプライバシーに責任を負いません。返金や購入履歴の管理もApp Storeでは行えません」といった強い警告を発し、ユーザーに再考を促す仕様になることが予想されます。
App Storeの外部決済手数料は27%
Appleは、米国でのEpic Games裁判や韓国での法改正対応において、「App Storeの手数料は決済処理の手数料ではなく、Appleの知的財産(IP)とユーザーベースへのアクセス権に対するライセンス料である」という主張を一貫して展開しています。
この論理に基づき、日本市場においても、外部決済や外部リンクを利用した場合の手数料は「標準手数料マイナス3%」となることが確実視されています。具体的には、標準手数料が30%のアプリ開発者の場合、外部決済を利用した売上に対して27%の手数料をAppleに支払う義務が生じます。年間売上100万ドル以下の小規模事業者(スモールビジネスプログラム適用者)で標準手数料が15%の場合は、12%となります。
開発者は、毎月の外部売上レポートをAppleに提出し、それに基づいて手数料を支払います。ここでも、外部決済プロバイダーの手数料(約3%)を加算すると、トータルのコストはApp Storeの標準決済(In-App Purchase)を利用する場合とほとんど変わらないか、むしろ高くなる計算になります。
コアテクノロジーフィー(CTF)導入の可能性
さらに懸念されているのが、欧州(EU)で導入された「コアテクノロジーフィー(CTF)」という新しい料金体系の日本への波及です。EUのDMA対応において、Appleは外部マーケットプレイス(サードパーティストア)からのアプリ配信を認める条件として、年間100万インストールを超えるアプリに対し、1インストール(アップデート含む)あたり0.50ユーロ(約80円)の手数料を課す制度を導入しました。
もし日本でもサイドローディングや代替ストアが解禁される際にこのCTFが導入されれば、ダウンロード数は多いが課金率が低い無料アプリやハイパーカジュアルゲームなどは、売上以上の手数料を請求されるリスクに直面する可能性があります。現時点では日本でのCTF導入は明言されていませんが、Appleが「フリーライド(ただ乗り)は許さない」という姿勢を崩していない以上、導入される可能性は高いと分析されています。
iOSにおけるブラウザエンジンの開放
課金以外の重要な変更点として、iOSにおけるブラウザエンジンの制限撤廃が挙げられます。これまでiOS上のすべてのブラウザ(ChromeやFirefoxを含む)は、Appleが開発した「WebKit」というレンダリングエンジンの使用を強制されていました。これにより、他社ブラウザは機能や性能面でSafariと差別化することが困難でした。
スマホ新法によりこの制限が撤廃されると、Googleは「Blink」エンジンを、Mozillaは「Gecko」エンジンを搭載した「本物の」ChromeやFirefoxをiOS向けに提供できるようになります。これにより、Webアプリ(PWA)の動作速度が向上したり、Safariが対応していない最新のWeb標準機能が使えるようになったりすることで、ネイティブアプリに頼らないWebベースのサービス展開が加速する可能性があります。
スマホ新法で課金手数料は本当に安くなるのか:コスト構造の実態
「結局、課金手数料は安くなるのか?」という問いに対しては、「多くのケースで安くならない、むしろ手間とコストが増える可能性がある」というのが専門的な分析の結論です。
従来モデルと新モデルのコスト比較
従来のストア決済モデルでは、手数料30%の中に「集客」「決済処理」「税務処理」「返金対応」「サーバー代」「開発ツール利用料」のすべてが含まれていました。
一方、新モデルの外部決済では、プラットフォームに支払う26%〜27%に加え、決済代行会社への3%〜4%が発生します。さらには自前での「売上管理システムの構築費」「ユーザーサポート(返金対応)の人件費」「税務処理のコスト」も必要になります。
損益分岐点を超えるのは、自社ですでに巨大な決済基盤を持っている大手企業(楽天、Amazon、大手ゲームパブリッシャーなど)や、独自のポイント経済圏を活用してユーザーを囲い込める事業者に限られるでしょう。中小規模の開発者にとっては、ストア決済を使い続けることが最も合理的である可能性が高いです。
「Webストア」という新たなビジネスチャンス
しかし、手数料削減以外の面で大きなチャンスがあります。それは「Webストア(公式サイト)」の活用です。スマホ新法により、アプリ内からWebストアへのリンク(誘導)が堂々と行えるようになります。
ゲーム会社などは、アプリ内アイテムを販売するWebストアを強化し、「アプリ内で買うと1000円だが、Webストア経由なら10%ボーナスコインがつく」といったキャンペーンを展開することが可能になります。ユーザーをWebストアに会員登録させることで、プラットフォーム(Apple/Google)に遮断されていた「顧客の直接的な連絡先(メールアドレス等)」を取得でき、メルマガなどで直接アプローチできるようになります。この「顧客データの直接保有」こそが、手数料削減以上に長期的なビジネス価値を生む可能性があります。
スマホ新法がユーザーにもたらすメリットとリスク
一般のスマートフォンユーザーにとって、2025年12月以降の世界はどのように変わるのでしょうか。メリットとリスクの両面から解説します。
「選択の自由」が広がるユーザー体験
最もわかりやすい変化は、iPhoneやAndroid端末のセットアップ時や、ブラウザ・検索アプリの初回起動時に現れる「選択画面(チョイススクリーン)」です。これまでは、iPhoneを買えばSafari、Androidを買えばChromeとGoogle検索が当たり前のようにデフォルトでしたが、今後は「どのブラウザを使いますか?」「どの検索エンジンを使いますか?」と問われ、リストからDuckDuckGoやBrave、Bingなどを選べるようになります。これにより、ユーザーは自分のプライバシー方針や好みに合ったサービスを容易に選べるようになります。
課金プロセスの複雑化
一方で、アプリへの課金プロセスは複雑になる可能性があります。これまでは、Face IDや指紋認証を一度通すだけで支払いが完了する「ワンタップ決済」が主流でした。しかし、外部決済が増えると、アプリごとにクレジットカード番号を入力したり、毎回PayPayアプリに遷移して承認したりといった手間(フリクション)が発生します。「少し安くなるなら手間を惜しまない」層と、「面倒だからいつものストア決済でいい」層に二極化することが予想されます。
セキュリティリスクと自己責任の拡大
最大の懸念点はセキュリティです。アプリ内から外部サイトへ誘導されることにユーザーが慣れてしまうと、その心理的な隙を突いた「フィッシング詐欺」が増加する恐れがあります。正規のアプリに見せかけた悪意あるアプリが、偽の決済サイトへ誘導し、クレジットカード情報を盗み取る手口が考えられます。これまでは「Apple/Googleの決済画面以外は怪しい」という単純な判断基準がありましたが、今後は「正規の外部決済」と「詐欺サイト」を見分けるリテラシーがユーザーに求められます。
また、サイドローディングにより公式ストアの審査を通っていないアプリをインストールする場合、ウイルスやスパイウェアのリスクは必然的に高まります。プラットフォーマーは「公証(Notarization)」などの仕組みで最低限のチェックは行いますが、最終的にはユーザーの自己責任の領域が拡大することになります。
スマホ新法施行後の開発者戦略とユーザーへのアドバイス
2025年12月のスマホ新法施行は、単なるルールの変更ではなく、モバイルエコシステムの再定義です。開発者と一般ユーザーそれぞれの視点から、今後の対応について解説します。
ユーザーが知っておくべき3つのポイント
第一に、「安くなる」への過度な期待は禁物です。開発者のコスト構造が変わらない限り、アプリの定価が下がることは稀です。ただし、「Webストア限定キャンペーン」などでお得に買えるルートは増えるでしょう。
第二に、セキュリティ意識のアップデートが必要です。アプリから外部サイトに飛んで決済する場合は、URLやサイトの信頼性を必ず確認する癖をつける必要があります。
第三に、多様なアプリストアの登場に注目です。今後、Epic Games StoreやMicrosoftのモバイルストアなど、ゲームに特化した独自ストアが登場し、そこでしか遊べないゲームや特典が出てくる可能性があります。
開発者が検討すべきハイブリッド戦略
開発者にとっては、アプリ内課金を完全に廃止するのではなく、ハイブリッド運用が主流になると予想されます。ライトユーザーには手軽なストア決済を、ヘビーユーザーには特典付きのWebストア決済を案内するという戦略です。
外部決済導入時の「画面遷移の多さ」による離脱(カゴ落ち)を防ぐため、ログイン状態の保持や入力補助など、Web側のUI/UX改善が急務となります。
まとめ:2025年12月18日から始まる新しいモバイルエコシステム
スマホ新法(スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律)は、2025年12月18日に全面施行されます。Google Playでは外部決済選択時の手数料が標準30%から26%に、App Storeでは27%に引き下げられますが、外部決済プロバイダーへの手数料を加えると、実質的なコストメリットは限定的です。
この法律はデジタル市場に競争と自由をもたらしますが、その恩恵を享受するためには、事業者には「賢いビジネスモデルの構築」、ユーザーには「高いリテラシーと自己防衛」が求められる時代が到来します。特にセキュリティリスクへの備えは、ユーザー・開発者双方にとって重要な課題となるでしょう。2025年12月18日は、日本のモバイルエコシステムにとって新しい時代の幕開けとなる重要な日付です。

コメント