近年、日本ではアレルギー性疾患を持つ子供が急増しており、現在では2人に1人が何らかのアレルギー性疾患を抱えているとされています。特に3歳までに何らかのアレルギー性疾患があると診断された子どもは38.1%にも上り、アレルギーの低年齢化が深刻な問題となっています。お子様に湿疹や鼻水、咳などの症状が続いている場合、「もしかしてアレルギー?」と心配になる親御さんも多いでしょう。アレルギー検査を受けることで原因を特定し、適切な予防策や治療方針を立てることができますが、「何歳から検査できるの?」「費用はどのくらい?」といった疑問をお持ちの方も少なくありません。適切なタイミングで検査を受けることで、お子様の健康を守り、安心して日常生活を送ることができるようになります。

子供のアレルギー検査は何歳から受けられる?0歳でも可能?
お子様のアレルギー検査は、基本的に月齢や年齢の制限はなく、0歳児でも受けることが可能です。ただし、検査の種類や医療機関の方針によって対応が異なるため、事前に確認することが大切です。
血液検査については、技術的には生後すぐからでも実施できますが、1歳未満の子どもの場合、IgE抗体価が低いため検査の精度が落ちる可能性があります。これは、乳児期にはまだ免疫システムが発達途中であり、アレルギー反応の指標となるIgE抗体が十分に産生されていないためです。そのため、一部の小児科クリニックでは6歳未満の乳幼児に対する血液検査を原則として行わない方針を取っているところもあります。
一方、皮膚テスト(プリックテスト)は1歳から受けることができ、赤ちゃんにも痛みや負担が少ないため、乳幼児の感作状態を調べるために積極的に活用されています。プリックテストは15~30分程度で結果が分かるため、即座にアレルギーの原因を知ることができる利点があります。
ドロップスクリーン検査は、指先からたった1滴の血液で41項目のアレルゲンを調べることができる画期的な検査方法で、小さなお子様でも負担が少なく実施可能です。ただし、医療機関によっては「4歳以上」や「原則として6歳以上」といった年齢制限を設けている場合もあります。
重要なのは、検査を受けるタイミングです。医学的には、具体的なアレルギー症状が見られるようになってから検査を受けることが推奨されています。生後1~4ヶ月の時に皮膚に強い湿疹があった赤ちゃんは食物アレルギーになる危険が高いとされており、このような場合には早期の検査が離乳食を安全に進める上で重要な情報となります。
子供のアレルギー検査の費用はいくら?保険適用と自費の違いは?
子供のアレルギー検査費用は、保険適用の有無によって大きく異なります。最も重要なポイントは、医師がアレルギー症状を認め、検査が医学的に必要であると判断した場合に保険が適用されることです。
保険適用の場合、通常3割負担で約5,000円前後が一般的な費用となります。VIEW39(39項目)、MAST36/48mix、ドロップスクリーン検査(41項目)などの主要な検査は、いずれも保険適用時には約5,000円程度の自己負担となります。項目選択式のRAST検査では1項目につき約330円で、保険適用の上限は13項目までとなっています。
しかし、お子様の場合は更にお得になります。多くの自治体で実施されている「子ども医療費助成制度」により、自己負担が無料または非常に低額になることがほとんどです。例えば大分市では、子ども医療証があれば自己負担は500円のみでアレルギー検査を受けることができます。助成の基準や金額は自治体によって異なるため、お住まいの地域の制度を事前に確認しておくことをお勧めします。
一方、自費診療となる場合は費用が大幅に高くなります。医師が検査の必要がないと判断したにもかかわらず保護者の希望で検査を受ける場合や、症状がない状態での予防的な検査は保険適用外となります。VIEW39の場合は約15,000円、総合的な検査費用(診察料含む)では約17,000円~24,000円が相場とされています。
保育園や幼稚園の入園のために医学的必要性がないアレルギー検査結果を求められる場合も自費となり、13項目の採血検査で20,000円以上かかることもあります。このような費用差を考慮すると、症状がある場合には早めに医療機関を受診し、医師の判断のもとで検査を受けることが経済的にも賢明な選択と言えるでしょう。
子供にアレルギー検査を受けさせるべきタイミングはいつ?
アレルギー検査を受けるべき適切なタイミングは、具体的なアレルギー症状が見られるようになった時です。「念のため」や「予防のため」といった理由での検査は医学的意義が低く、かえって不要な心配や食事制限を招く可能性があります。
検査を検討すべき症状として、まず慢性的な症状が続いている場合が挙げられます。長期間にわたってくしゃみ、鼻水、咳、湿疹などの症状が続く場合、アレルギーが原因である可能性が高くなります。特に風邪のような感染症の症状がないにも関わらず、これらの症状が2週間以上続く場合は検査を検討する価値があります。
食後に異常な反応が出る場合も重要なサインです。特定の食べ物を食べた後に、じんましん、かゆみ、嘔吐、下痢などの症状が繰り返し現れる場合は、食物アレルギーの可能性が考えられます。このような症状は食べてから通常2時間以内に現れることが多く、重篤な場合にはアナフィラキシーショックを引き起こす危険性もあるため、早急な検査が必要です。
季節性の症状にも注意が必要です。毎年決まった時期、特に春や秋に症状が悪化する場合、花粉や季節特有のアレルゲンが原因である可能性があります。このパターンが複数年続く場合は、アレルギー検査によって原因を特定し、適切な予防策を講じることができます。
また、既にアレルギーと診断されている場合の除去解除を検討する時も検査のタイミングとして重要です。食物アレルギーは成長とともに自然に治ることも多いため、以前アレルギー症状が出た食材を再び安全に食べられるかどうかを判断する際に、血液検査の結果が貴重な参考情報となります。
逆に避けるべきなのは、症状がない状態での「安心のための検査」です。このような検査で陽性結果が出ても、実際には症状が出ない可能性が高く、不必要な食事制限による栄養不足のリスクを生む可能性があります。
子供のアレルギー検査にはどんな種類がある?痛みや負担は?
子供のアレルギー検査には複数の種類があり、それぞれ特徴と適用場面が異なります。お子様への負担を最小限に抑えながら、正確な診断を行うことが重要です。
血液検査(特異的IgE抗体検査)は最も一般的な検査方法で、一度の採血で様々なアレルゲンに対するIgE抗体の量を測定します。VIEW39では39項目、MAST36/48mixでは36~48項目のアレルゲンを一度に調べることができます。採血は一瞬の痛みはありますが、検査自体は5分程度で終了し、比較的負担の少ない検査と言えます。
画期的な検査としてドロップスクリーン検査があります。これは指先からたった1滴の血液で41項目のアレルゲンを調べることができ、従来の採血と比べて格段に負担が軽減されています。検査結果も翌日以降には判明するため、小さなお子様でも無理なく検査を受けることができます。
皮膚テスト(プリックテスト)は、腕や背中などの皮膚に少量のアレルゲン液を垂らし、軽く針で刺して反応を観察する検査です。15~30分程度で結果が確認でき、小さなお子様でも痛みがほとんどないのが特徴です。血液検査で陰性でも、プリックテストで陽性になることがあるため、より正確な診断につながる場合があります。
イムノキャップ ラピッド アレルゲン8は、指先からの採血でわずか20分で結果が分かる簡易検査で、ハウスダスト系3項目、花粉系5項目の合計8項目を調べることができます。迅速性を重視する場合に有効です。
特殊な検査として食物経口負荷試験(OFC)があります。これは実際にアレルギーが疑われる食品を摂取して症状の有無を確認する検査で、食物アレルギーの確定診断には最も有効とされています。ただし、アレルギー症状が出た際にすぐに適切な対応ができるよう、体制の整った病院で医師の監督のもとで行う必要があります。
パッチテストは接触性皮膚炎の診断に用いられ、アレルゲンを含んだパッチを皮膚に48時間以上貼り付けて反応を見る検査です。結果判定までに約1週間かかり、その間4回程度の通院が必要になるため、お子様には負担が大きい検査と言えます。
これらの検査の中では、ドロップスクリーン検査やプリックテストが特にお子様の負担が少なく、実用的な選択肢として注目されています。
子供のアレルギー検査結果はどう解釈すればいい?注意点は?
アレルギー検査の結果解釈は、数値だけでなく実際の症状と合わせて総合的に判断することが極めて重要です。多くの親御さんが誤解しやすいポイントを含めて、正しい解釈方法を理解しておきましょう。
最も重要な注意点は、IgE抗体値が高いからといって必ずしも症状が出るとは限らないということです。血液検査でIgE抗体の量が高いほどアレルギーの可能性が高いとされますが、逆に数値が低くてもアレルギー症状を起こすケースも存在します。血液検査の結果は、あくまで「感作されているかどうか」を示すものであり、「実際に症状が出るかどうか」を断定するものではありません。
症状との一致こそが診断の決め手となります。アレルギー診断において最も重要なのは、実際にアレルゲンに接触した際にどのような症状が出るかという臨床症状です。検査で陽性でも症状がなければ、その食品を避ける必要はありません。反対に、検査で陰性でも症状が出る場合は、医師と相談して対応を決める必要があります。
食物アレルギーの確定診断については、血液検査は補助的な診断ツールに過ぎないことを理解しておくことが大切です。確定診断のためには、医師の監督のもとで「食物経口負荷試験」を行う必要があります。この試験により、実際に安全に食べられる量や調理法を確認することができます。
不必要な除去食を避けることも重要な注意点です。検査結果のみを鵜呑みにして、不必要に多くの食品を食事から除去してしまうと、栄養不足や栄養の偏りといったリスクが生じます。特に子どもにおいては、成長に必要な栄養が不足する可能性があり、かえって健康を害する結果となりかねません。
近年の研究では、卵やピーナッツなどは生後6ヶ月から積極的に摂取することで、かえってアレルギーの発症を予防できるという報告もあります。これは従来の「アレルゲンを避ける」という考え方とは正反対のアプローチです。
遅発型アレルギー検査(IgG抗体検査)についても注意が必要です。この検査の診断的有用性は、米国や欧州のアレルギー学会、日本小児アレルギー学会によって公式に否定されています。IgG抗体はアレルギーのない人の体内にも存在し、食べ物の摂取量に比例して増えることが分かっているため、この検査で反応が出たからといって必ずしもアレルギー症状を引き起こすわけではありません。
最終的に、専門医との相談が不可欠です。アレルギー検査の結果の解釈は複雑で、慎重に行う必要があります。特に食物アレルギーやぜん息を伴うお子様の場合は、アレルギー専門医での精査と加療を受けることが推奨されます。検査結果に不安を感じた場合は、自己判断せずに必ず医師に相談し、お子様にとって最適な対応方針を決めていくことが大切です。
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