2026年度から公立小学校の給食費が無償化されることで、保護者の負担は年間約5.2万円、6年間で約30万円が軽減される見込みです。2025年2月に石破茂首相が衆議院予算委員会で方針を表明し、自民党・公明党・日本維新の会の三党合意によって、まずは小学校から給食費無償化を開始し、中学校についてもできる限り速やかに実施することが決定しました。この記事では、給食費無償化の具体的な内容から財源、保護者への影響、今後の展望まで詳しく解説します。

- 給食費無償化とは何か 2026年度から始まる国の新制度
- 現在の給食費の実態 全国平均と地域差
- 給食費無償化の現状 すでに4割の自治体が実施
- 保護者負担はどう変わるのか 経済的負担の軽減効果
- 給食費徴収事務からの解放 学校側のメリット
- 財源はどう確保するのか 約4900億円の予算規模
- 国と地方の負担割合 誰がどれだけ負担するのか
- 法改正の動き 学校給食法の見直し
- 給食費無償化のメリット 家計から食育まで
- 給食費無償化の課題 公平性と財政負担
- 中学校への拡大はいつか 今後の展望
- 物価高騰と給食への影響 食材費上昇の現実
- 自治体の物価高騰対策 保護者負担を抑える取り組み
- 学校給食の役割と栄養基準 子どもの健康を支える制度
- 地産地消と食育 給食が担う教育的役割
- 学校給食の歴史 戦後から現在まで
- 子育て費用の現状 保護者が感じる負担
- 困窮子育て家庭への支援 給食費無償化の意義
- 第3子以降の無償化制度 多子世帯への支援
- まとめ 2026年度からの給食費無償化で保護者負担は大幅軽減へ
給食費無償化とは何か 2026年度から始まる国の新制度
給食費無償化とは、これまで保護者が負担していた学校給食の食材費を国や自治体が負担することで、保護者の支払いをゼロにする制度です。学校給食法では、給食の実施に必要な施設・設備費用と運営費用は学校設置者である自治体が負担し、食材費については保護者が負担する仕組みとなっていました。2026年度からの無償化は、この食材費相当額を国が補助することで実現します。
2025年2月17日、石破茂首相は衆議院予算委員会において「給食無償化につきましては、まずは小学校を念頭に、地方の実情等を踏まえ令和8年度(2026年度)に実現する」と述べました。この表明を受けて、同年2月21日にはあべ俊子文部科学大臣が記者会見を行い、2026年度以降の可能な限り早期の制度化を目指す方針を示しています。
2025年2月25日には、自由民主党、公明党、日本維新の会の三党が給食費無償化について合意文書を交わしました。この合意では、2026年度にまずは小学校から給食費無償化を開始し、中学校についてもできる限り速やかに実施することが盛り込まれています。この三党合意は2025年度予算案の成立に向けた協議の中で実現したものであり、給食費無償化が国の政策として本格的に動き出す重要な転換点となりました。
現在の給食費の実態 全国平均と地域差
2023年5月1日時点の調査によると、公立小学校の給食費は月額平均4,688円です。都道府県別に見ると、最も安価な滋賀県が月額3,933円、最も高価な福島県が月額5,314円と、地域間で約1.4倍の開きがあります。公立中学校の給食費は月額平均5,367円で、小学校よりも高くなっています。
年間の保護者負担額に換算すると、小学校で約5.2万円、中学校で約5.8万円となります。小学校6年間では約30万円、中学校3年間では約16万円の負担となり、義務教育期間全体では約46万円もの給食費を保護者が負担している計算になります。
給食費は学校や自治体によって金額が異なりますが、これは使用する食材の違い、地域の物価差、調理方式の違いなどが影響しています。センター方式と自校調理方式でも費用構造が異なり、それが給食費の差に反映されています。全国平均から概算すると、一食の給食にかけられる食材費は約293円程度であり、物価変動の影響を受けやすい状況にあります。
給食費無償化の現状 すでに4割の自治体が実施
文部科学省が2024年6月に発表した調査によると、学校給食費の無償化を何らかの形で実施している自治体は722にのぼり、全国1,794自治体の40.2%を占めています。このうち、小中学校の全員を対象に完全無償化を実施している自治体は547で、全体の30.5%となっています。
この数字は2017年度の同様の調査で76自治体だったことと比較すると、6年間で約7倍に増加しており、給食費無償化の動きが全国的に広がっていることがわかります。全国的に見ると、給食費無償化を実施している自治体の73%が人口1万人以下の町村です。子どもの人数が少ないため、無償化に必要な予算規模が小さく、実施しやすい環境にあるといえます。
東京都は給食費無償化の先進地域です。2024年4月からは23区すべての公立小中学校で給食費が無償化されました。これは東京都が区市町村への補助制度を設け、都が給食費の半額を負担する仕組みを構築したことが大きな要因です。さらに東京都は2024年9月6日に、市町村に対する新たな財政支援の拡充を発表しました。これを受けて東村山市では、2025年1月から当面の間、市立小・中学校の給食費無償化を実施すると発表しています。
ただし、多摩地域の市部では26市中15市で無償化が実施されておらず、都内未実施自治体のすべてを占めています。児童・生徒数が多い市部では財政負担が重くなることや、東京都が2025年度以降の方針を示していないことが実施の障壁となっています。
保護者負担はどう変わるのか 経済的負担の軽減効果
給食費無償化が実現すれば、保護者の経済的負担は大幅に軽減されます。小学校の場合、年間約5.2万円、6年間で約30万円の負担がなくなることになります。これは子育て世帯にとって非常に大きな支援です。
特に複数の子どもがいる世帯では効果が顕著です。例えば3人の子どもが小学校に通っている場合、年間で約15万円の負担軽減となります。この資金を他の教育費や生活費に充てることができ、家計の安定に寄与します。
給食費無償化の恩恵は、全ての所得階層の保護者に及びますが、その影響度は異なります。低所得世帯にとっては、給食費が家計に占める割合が大きいため、無償化による負担軽減効果は相対的に大きくなります。一方、経済的困窮世帯(全体の約14%)については、すでに生活保護による教育扶助や就学援助制度により給食費が基本的に無償化されているため、追加的な恩恵は限定的です。
中高所得世帯についても給食費負担がなくなるため、一律無償化に対しては「高所得者にも恩恵を与えることは社会的公平性に欠ける」との批判もあります。ただし、所得制限を設けると事務負担が増加し、制度が複雑化するというデメリットもあるため、全員無償化が選択されました。
給食費徴収事務からの解放 学校側のメリット
給食費無償化は、保護者だけでなく学校側にもメリットをもたらします。現在、多くの学校では給食費の徴収事務に多大な労力を費やしています。口座振替の管理、未納者への督促、会計処理など、教職員の負担は小さくありません。
平成28年度の調査によると、学校給食費が未納の児童生徒の割合は、小学校で0.8%、中学校で0.9%となっています。1クラス35人程度とすると、3クラスに1人ほど給食費未納の児童生徒がいる計算になります。文部科学省が平成30年に発表した調査では、給食費が未納になっている学校数は、全国の完全給食実施小中学校のうち45.6%に上ることが判明しています。
無償化が実現すれば、これらの事務負担が大幅に軽減され、教職員が本来の教育活動に専念できる環境が整います。また、給食費未納による保護者と学校の関係悪化といった問題も解消されます。給食費未納を理由とした保護者と学校の関係悪化、子どもへの影響といった問題も解決され、これは無償化の大きなメリットの一つです。
財源はどう確保するのか 約4900億円の予算規模
文部科学省の試算によると、全国の公立小中学校で全員を対象に給食費を無償化するには、約4800億円から約4900億円の財源が必要とされています。これは文部科学省予算の約1割に相当する大きな金額です。野村総合研究所の分析でも同様の試算が示されており、年間約4,900億円という財源確保が給食費無償化の最大の課題となっています。
給食費無償化が小学校から先行して実施される背景には、予算規模の問題があります。小中学校を同時に無償化すると、必要な財源が約4800億円から約4900億円と試算されており、段階的な導入が現実的と判断されました。また、小学校は義務教育の入口であり、子育て支援の効果が最も期待できる段階であることも理由として挙げられます。
国と地方の負担割合 誰がどれだけ負担するのか
給食費無償化の財源をどのように分担するかは重要な論点です。現在、自治体が独自に無償化を実施している場合、その財源は自己財源が最も多く(722自治体中475)、次いで地方創生臨時交付金(233自治体)、ふるさと納税(74自治体)となっています。
しかし、自治体の財政力には大きな差があり、無償化を地方任せにすると地域間格差が生じる懸念があります。千葉県の熊谷俊人知事は「財政力によって格差が生じかねないため、国の財源による制度設計がなされるべき」との見解を示しています。
2026年度からの全国一律実施に向けては、国が主要な財源を負担する方向で検討が進んでいます。具体的には、公立小学校の児童1人あたり月額4,700円を国が補助する案が自民・公明・維新の三党から提示されています。この補助額と実際の給食費との差額については、自治体が負担する可能性が高いとみられています。
法改正の動き 学校給食法の見直し
給食費無償化を法制度として確立するため、学校給食法の改正に向けた動きも活発化しています。2024年12月23日には、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の野党三党が共同で「学校給食無償化法案」を衆議院に提出しました。
この法案では、学校給食に要する経費を義務教育諸学校の設置者が支弁し、国がその一定額を負担するという仕組みが提案されています。開始時期は2025年4月1日と盛り込まれていましたが、実際の施行は政党間協議を経て決定される見込みです。
与党側も2025年8月までに法制度案を固める方針を示しており、給食を教育の中に位置付けた上で、地産地消を推進し、国が保護者に代わり給食費の負担者となる法改正が検討されています。
給食費無償化のメリット 家計から食育まで
給食費無償化には多くのメリットがあります。第一に、家計負担の軽減です。毎月の給食費支払いがなくなることで、子育て世帯の経済的負担が軽くなり、家計に余裕が生まれます。特に低所得世帯や多子世帯にとっては大きな支援となります。
第二に、栄養摂取の確保です。学校給食は子どもたちに必要な栄養素を適切に摂取できるよう計算されています。家庭によっては経済的理由から十分な食事を提供することが難しい場合もあり、無償で栄養バランスの取れた給食が提供されることは、子どもたちの健康にとって重要です。
第三に、教育的効果です。給食は単なる食事ではなく、食育の重要な教材でもあります。地産地消の食材を使用することで、地域の自然・文化・産業への理解を深め、生産者への感謝の気持ちを育むことができます。
第四に、少子化対策としての効果です。給食費無償化は子育て支援策の一環として位置付けられており、子育てにかかる経済的負担を軽減することで、出生率の向上に寄与することが期待されています。
給食費無償化の課題 公平性と財政負担
一方で、給食費無償化にはいくつかの課題も指摘されています。第一に、公平性の問題です。給食未実施校の児童・生徒、アレルギーや不登校等で給食を利用していない児童・生徒には無償化の恩恵が及びません。
第二に、財政負担の問題です。約4900億円という巨額の財源を確保するためには、他の公共サービスの削減や新たな税制の導入を検討する必要が出てくる可能性があります。
第三に、給食の質への影響です。財政負担の増加により、食材費や調理費が削減される可能性があり、給食の質や量の低下が懸念されています。
第四に、効果検証の不足です。無償化を実施している自治体のうち、成果目標の設定や効果検証を行っているのは2割弱にとどまっており、政策の効果測定と評価が十分でない状況にあります。
第五に、継続性の問題です。文部科学省の調査では、一度無償化に踏み切ったものの「2024年度以降に続ける予定はない」と回答した自治体が全体の11.4%に上っています。また、現在の法案では公立学校のみが対象となっているため、私立学校や国立学校への対応も検討課題です。
中学校への拡大はいつか 今後の展望
三党合意では、小学校での無償化実施後、中学校についてもできる限り速やかに無償化を実施することが盛り込まれています。中学校の給食費は小学校よりも高額であり、追加で必要な財源は相当な規模になる見込みです。中学校への拡大時期については明示されていませんが、小学校での実施状況を踏まえて検討が進められることになります。
また、給食未実施校への対応も残された課題です。全国には給食を実施していない学校もあり、これらの学校の児童生徒との公平性をどう確保するかが課題となります。
物価高騰と給食への影響 食材費上昇の現実
2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、世界的なエネルギー価格や食料価格の上昇が続いています。この影響は学校給食にも及んでおり、給食費の値上げ圧力が強まっています。
文部科学省が2024年6月に公表した給食費の全国平均月額は、小学校で4,688円であり、3年前の前回調査と比較して4%以上、10年前の調査からは10%以上も値上がりしています。2024年後半には、米類の価格が前年比64.5%という記録的な水準まで上昇しました。チョコレート等の菓子類、飲料、加工肉類等の価格上昇も続いており、給食現場は厳しい状況に置かれています。
管理栄養士・栄養士を対象とした調査では、ほぼ全数(99.6%)が食材の値上がりを実感しており、約7割が物価高騰の影響によるメニュー開発や献立について悩んでいることがわかっています。「牛肉は使わなくなった」「サンマ、鮭を減らしてホキ、メルルーサなどの白身魚に一部変更」「季節ものの果物が減り、バナナやオレンジが増えた」「肉料理を減らして豆腐・大豆製品を使用する料理を多くした」などの工夫が行われています。
調査によれば、たまごは2人に1人、果物は4人に1人、魚類は5人に1人が使用頻度を減らしています。物価高騰により栄養素基準値を満たすのに苦労するようになった項目は「たんぱく質(37.1%)」が最多となっており、成長期の子どもたちへの影響が懸念されています。
自治体の物価高騰対策 保護者負担を抑える取り組み
食材の値上がりに対応するため、各自治体では様々な対策が講じられています。多くの自治体では、保護者が支払う給食費は据え置きとし、値上げ幅を減らすために補助金で物価高騰分の食材費を補っています。
このような自治体による補助金支援がなければ、給食費のさらなる値上げか、給食の質の低下を招く可能性があります。給食費無償化が実現すれば、物価高騰の影響を保護者が直接受けることはなくなりますが、国や自治体の財政負担は増加することになります。
2025年に入っても物価上昇の傾向は続いています。食品業界では4月までに6千品目の値上げが予定されており、2024年比で6割増のペースで値上げラッシュが続いています。年間では1.5万から2万品目前後の値上げに到達する可能性があります。少子高齢化の進行による慢性的な人手不足も深刻化しており、人件費の上昇や「2024年問題」(働き方改革による労働時間制限)による物流コストの上昇も、食材価格の上昇に影響を与えています。
このような状況下で給食費無償化が実施されることは、保護者にとって物価高騰の影響から給食費負担を切り離すことができるという点で、タイムリーな政策といえます。
学校給食の役割と栄養基準 子どもの健康を支える制度
学校給食は、成長期にある児童生徒の心身の健全な発達のため、栄養バランスのとれた豊かな食事を提供することを目的としています。健康の増進、体位の向上を図るとともに、食に関する指導を効果的に進めるための重要な教材としても活用されています。また、学校給食は家庭における日常の食生活の指標ともなり、児童生徒の日常または将来の食事作りの手本となる役割も担っています。
学校給食摂取基準は、厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を参考に、児童生徒の健康の増進および食育の推進を図るために望ましい栄養量を算出したものです。この基準は児童生徒の1人1回当たりの全国的な平均値を示したものであり、実際の適用にあたっては、児童生徒の個々の健康および生活活動等の実態、地域の実情等に配慮して弾力的に運用することとされています。
栄養量の算出方法としては、食事摂取基準で定められた栄養素の目標量または推奨量から、昼食以外(家庭における朝食、夕食および間食)での栄養摂取量を差し引くことで、学校給食において摂取が期待される栄養量を算出しています。
地産地消と食育 給食が担う教育的役割
学校給食における地産地消は、食育の観点からも重要視されています。地場産物を使用し、「生きた教材」として活用することで、児童生徒に地域の自然、文化、産業等に関する理解や生産者への感謝の念を育むことができます。
文部科学省は「令和4年度学校給食における地場産物・国産食材の使用状況調査」を実施しており、第4次食育推進基本計画の目標に掲げられている「学校給食における地場産物・国産食材を使用する割合」の把握に取り組んでいます。各地では様々な取り組みが行われており、例えば千葉県では「千産千消」という取り組みがあり、毎年11月には「千産千消」デーを設定して、各学校で地産地消の食材を使った献立を作成しています。
近年、国のみどり戦略を追い風に「有機給食(オーガニック給食)」を行う各地の実践が広がっています。40年以上にわたり地場産給食・有機給食に取り組む愛媛県今治市や、2018年に学校給食の100%有機米を実現した千葉県いすみ市などが先進事例として知られています。有機給食は、子どもたちに安全で環境に配慮した食材を提供するとともに、地域の有機農業を支援する効果もあります。給食費無償化と有機給食の推進を組み合わせることで、より質の高い学校給食の実現が期待されています。
学校給食の歴史 戦後から現在まで
日本における学校給食は明治22年に始まって以来、各地に広がっていきましたが、戦争の影響により一時中断されました。戦後、深刻な食糧難により子どもたちの栄養状態が悪化する中、学校給食の再開を求める国民の声が高まりました。
昭和21年(1946年)6月、米国のLARA(アジア救済公認団体)から給食用物資の寄贈を受け、昭和22年(1947年)1月から学校給食が再開されました。1946年12月に都内の学校で初めて実施された学校給食のメニューは、小さく刻まれたダイコン、ニンジン、鮭、マカロニの入ったクリームスープでした。戦後の深刻な食糧難の中、育ち盛りの子どもたちは空腹にあえいでいました。学校給食はこうした子どもたちの栄養状態を改善することを目的として始まったものです。
1950年には、主食(コッペパンもしくは米飯)を含む「完全給食」が実施されるようになりました。しかし、1951年のサンフランシスコ講和条約調印を受けて、ガリオア資金による小麦の贈与などが打ち切られると、学校給食の継続が困難となりました。給食費の値上がりにより、給食を中止する学校が続出しました。
この危機を救ったのは、給食継続を求める国民の声でした。1954年(昭和29年)には「学校給食法」が成立し、学校給食の実施体制が法的に整備されました。これにより、学校給食は1日に必要な栄養素の約3分の1が摂取できるよう、バランスを考えながら作られるようになりました。
戦後は米国からの援助物資として脱脂粉乳を得て、全児童を対象に給食が拡大されました。その後、脱脂粉乳から牛乳へ、パンから麺やカレーへ、そして米飯給食へと、内容を充実させながら発展してきました。現在当たり前となっている「米飯給食」の開始は、実は戦後30年以上経ってからのことです。1976年から全国で正式導入され、給食向け米価の値引き率が引き上げられた1979年以降に、ようやく米飯導入が各地で進みました。
現在の学校給食は、和食、洋食、中華など多彩なメニューが提供されています。地産地消の観点から地元食材を使用した献立や、郷土料理、行事食なども取り入れられ、食育の重要な教材としての役割も果たしています。
子育て費用の現状 保護者が感じる負担
明治安田生命が2024年に実施した調査によると、子育てにかかる費用は月額平均41,320円で、前年から1,187円アップしています。子育て費用を負担に感じている人は約9割(88.7%)にのぼり、負担を感じる項目として「食費」(45.0%)が最も多く、「保育園・幼稚園代」(40.2%)、「習い事やお稽古事」(36.8%)と続いています。
物価高騰が子育て費用に打撃を与える中、約9割(88.5%)の人が子どもに与える影響について懸念を示しています。具体的には、6割の人が「教育格差の広がり」「将来の進学への影響」「子どもの習い事・体験機会の減少」など、子どもの教育に関する懸念を抱いています。
保護者からは様々な声が上がっています。「母親の孤独な子育て」「家事や子育てはいまだに母親中心」「父親が子育てや家事を担うための支援が十分ではない」「保育の量が足りない」「子育てや教育にかかる費用の負担が大きい」といった意見が聞かれています。給食費無償化は、こうした保護者の経済的負担軽減ニーズに直接応える政策です。月額約5,000円の給食費負担がなくなることは、家計に占める割合として決して小さくなく、特に複数の子どもを持つ世帯では効果が大きくなります。
困窮子育て家庭への支援 給食費無償化の意義
NPO法人キッズドアが2024年6月に実施した調査では、困窮子育て家庭が夏休みにはさらに厳しい状況になること、また賃金が上昇していない家庭も多いことが報告されています。キッズドアは厚生労働省に対し、速やかな現金給付、体験格差を埋める支援、中小・零細企業の賃上げなどについて提言を行っています。給食費無償化は、こうした困窮家庭にとっても重要な支援策の一つとなります。
令和6年度のこども家庭庁予算は、「こども未来戦略」に基づくこども・子育て政策の抜本的な強化に向けて、一般会計と特別会計の合計で前年度比0.5兆円増(+10%)の5.3兆円となっています。給食費無償化は、このような国を挙げた子育て支援策の一環として位置付けられており、少子化対策、子育て世帯の経済的負担軽減、子どもの貧困対策など、複合的な政策目的を持つ施策として推進されています。
第3子以降の無償化制度 多子世帯への支援
全員を対象とした無償化とは別に、多子世帯への支援として第3子以降の給食費を無償化している自治体もあります。千葉市では2025年度から、平成31年4月1日以前に生まれた子を3人以上扶養している保護者を対象に、第3番目以降の子の学校給食費を無償化しています。
柏市でも同様に、多子世帯の子育てを応援するため、市立小中学校に通う第3子以降の児童・生徒の学校給食費を無償化しています。このような多子世帯向けの支援策は、少子化対策の一環として各地で広がりを見せています。
まとめ 2026年度からの給食費無償化で保護者負担は大幅軽減へ
2026年度からの公立小学校における給食費無償化は、子育て世帯にとって待望の政策です。年間約5万円、6年間で約30万円という保護者負担がなくなることは、家計に大きな余裕をもたらします。
この政策は単なる経済的支援にとどまらず、子どもたちの栄養摂取の確保、食育の推進、少子化対策など、多面的な効果が期待されています。一方で、財源の確保、給食の質の維持、地域間格差の解消など、解決すべき課題も多く残されています。
物価高騰が続く中、給食費無償化は保護者にとってタイムリーな支援策となります。約9割の保護者が子育て費用を負担に感じている現状において、給食費という固定的な支出が軽減されることの意義は大きいといえます。
学校給食は戦後の食糧難から子どもたちを救った歴史を持ち、現在も子どもたちの健康と成長を支える重要な役割を果たしています。無償化によって、すべての子どもが経済的な理由に関わらず、栄養バランスの取れた給食を食べられる環境が整うことは、社会全体にとっても意義のあることです。国、自治体、学校、保護者が協力して、すべての子どもたちが安心して栄養バランスの取れた給食を食べられる環境を整備していくことが求められています。

コメント