なぜカウンセリングは保険適用外なの?費用を抑える方法も解説

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メンタルヘルスの重要性が高まる現代社会において、カウンセリングを検討する方は増えています。しかし、「カウンセリングを受けたいけれど保険適用にならないのはなぜ?」「費用面で不安がある」といった声も多く聞かれます。実際、公認心理師や臨床心理士が行う個人カウンセリングは、基本的に保険適用外となり、自己負担額が大きくなってしまいます。

これには、医療制度や社会的背景など様々な要因が絡み合っています。この記事では、カウンセリングが保険適用外となる理由や例外的に適用される条件、費用を抑える方法など、カウンセリングと保険に関する疑問に答えていきます。経済的な理由からカウンセリングを諦めていた方も、この記事を読むことで選択肢が広がるかもしれません。

カウンセリングが保険適用外になる主な理由は何ですか?

カウンセリングが保険適用外となる主な理由は、効果の客観的評価が難しいことにあります。日本の健康保険制度では、治療効果が科学的・客観的に評価できる医療行為が保険適用の対象となります。

カウンセリングは、クライアント自身の心の整理や専門家による問題解決のサポートが目的であり、その効果を数値化したり客観的に示したりすることが困難です。例えば、血液検査やレントゲン検査のように明確な数値や画像で効果を判定できるものではありません。

また、日本の医療制度では、公認心理師や臨床心理士が単独で行うカウンセリングは「医療行為」としては認められていないという背景もあります。医師が行う精神療法は保険適用となりますが、心理職が単独で行うカウンセリングは異なる扱いとなっています。

さらに、市場の規模が小さく、普及途上であることも一因です。日本では「恥の文化」の影響もあり、自分の悩みを相談することへの抵抗感がまだ根強く残っています。このような社会的背景も、カウンセリングが保険適用外となっている要因の一つと考えられます。

カウンセリングが例外的に保険適用となる条件はありますか?

はい、いくつかの条件を満たす場合、例外的にカウンセリングが保険適用となることがあります。主な条件は以下の4つです:

  1. うつ病などの気分障害等で医師および看護師による認知行動療法を受ける場合 うつ病、強迫性障害、社会不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などと診断され、医師や看護師による認知行動療法を受ける場合は保険適用となります。
  2. 医師による精神疾患の通院・在宅精神療法を受ける場合 統合失調症、躁うつ病、神経症(不安障害)、中毒性精神障害、パーソナリティ障害などの精神疾患と診断され、その治療として精神科医が行う通院・在宅精神療法は保険適用となります。
  3. 医師による標準型精神分析療法を受ける場合 診療時間が45分を超える標準型精神分析療法として医師がカウンセリングを行う場合は保険適用となります。これは悩みの原因となっている出来事を深く分析する治療法です。
  4. 特定の精神疾患や依存症等の治療を受ける場合 入院・通院集団精神療法、依存症集団療法、小児特定疾患カウンセリングなどの治療として受ける場合も保険適用となります。

重要なポイントは、精神科を担当する医師が行った場合のみ保険適用となることです。心理職(公認心理師や臨床心理士)が単独で行うカウンセリングは基本的に保険適用外となるため、事前に確認が必要です。

保険適用外のカウンセリング費用の相場はどれくらいですか?

保険適用外のカウンセリング費用は、提供場所や地域によって大きく異なります。一般的な相場としては以下のようになっています:

カウンセリングの実施場所別相場(1回約50分~1時間)

  • 国・自治体の相談窓口(精神保健福祉センターなど):基本無料
  • 医療機関(保険適用外):3,000円~10,000円
  • 学校・企業内の相談窓口:基本無料
  • 外部EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)機関:基本無料
  • 大学附属の相談機関(心理臨床センターなど):1,000円~5,000円
  • 私設心理相談機関:5,000円~10,000円

市場調査によると、1回あたりのカウンセリング利用金額の割合は以下のようになっています:

  • 3,000円未満:47%
  • 3,000円~4,999円:18%
  • 5,000円~9,999円:18%
  • 1万円以上:17%

保険適用外のカウンセリングが高額になる主な理由は以下の3つです:

  1. 場所代や人件費が高い:プライバシーが確保された落ち着いた環境を提供するための場所代や、専門的な知識・資格を持ったカウンセラーの人件費がかかります。
  2. カウンセリングの質を担保するためのコストがかかる:質の高いカウンセリングを提供するためには、カウンセラーの継続的な教育や研修が必要で、その費用も料金に反映されます。
  3. 1日に対応できる数に限りがある:カウンセリングは1回につき50分から1時間ほどかかり、1人のカウンセラーが対応できる人数には限りがあるため、1回あたりの料金が高くなりがちです。

カウンセリングを安く受ける方法はありますか?

はい、保険適用外のカウンセリングをなるべく安く受ける方法がいくつかあります:

  1. 大学等併設の心理臨床センターのカウンセリングを利用する 大学や大学院附属の心理臨床センターでは、比較的安くカウンセリングを受けられます。50分から1時間で1,000円〜5,000円ほどが相場です。これらは教育・研究機関であるため、一般の相談機関よりも料金を抑えることができます。ただし予約制が基本なので、事前に確認が必要です。
  2. 自治体のサービスを利用する 自治体が提供しているカウンセリングは基本的に無料です。以下のようなサービスがあります:
    • 精神保健福祉センターの精神保健福祉相談
    • 男女共同参画センターの相談窓口
    • 厚生労働省のこころの健康相談統一ダイヤル
  3. オンラインカウンセリングを検討する 対面カウンセリングに比べて、オンラインカウンセリングは場所代などのコストが抑えられるため、比較的安価に提供されていることがあります。ビデオ通話やチャットなど、様々な形式があります。
  4. 企業のEAP(従業員支援プログラム)を活用する 近年、福利厚生として従業員支援プログラム(EAP)を導入している企業が増えています。このプログラムを通じて、無料または低価格で心理士によるカウンセリングを受けられることがあります。勤め先でこうしたサービスが提供されているか確認してみましょう。
  5. NPO法人や民間団体の無料・低額相談サービスを探す 様々なNPO法人や民間団体が、無料または低額でカウンセリングを提供しています。地域の情報誌やインターネットで探してみると良いでしょう。

有料のカウンセリングはハードルが高いと感じている場合は、まずこれらの選択肢を検討してみてください。

なぜ心理士による単独カウンセリングは保険適用されないのですか?

心理士による単独カウンセリングが保険適用されない理由は、主に以下の点に関係しています:

  1. 医療保険制度の構造的な問題 日本の医療保険制度では、医師が主体となって行う医療行為が保険適用の対象となります。2017年に公認心理師法が施行され国家資格となりましたが、医師と同等の医療行為者としての位置づけではなく、医師の指示の下で働く「コ・メディカル」として位置づけられています。
  2. エビデンスの蓄積不足 カウンセリングの効果については研究が進められていますが、医学的治療と同等のエビデンス(科学的根拠)が十分に蓄積されているとは言えません。保険適用の判断には、治療効果に関する客観的な証拠が必要とされます。
  3. 財政的な問題 もし心理士による全てのカウンセリングが保険適用になれば、医療費の増大につながる可能性があります。医療財政の観点から、保険適用は限定的になっています。
  4. 標準化の難しさ カウンセリングの手法や内容は多岐にわたり、標準化が難しい面があります。診療報酬を設定するためには、提供される医療サービスの内容や質に一定の標準化が必要です。

ただし、状況は少しずつ変化しています。医師と公認心理師が共同で精神療法を行う場合には診療報酬の対象となるなど、限定的ながら保険適用の範囲が広がりつつあります。将来的には、公認心理師の地位向上やエビデンスの蓄積により、保険適用の範囲がさらに拡大する可能性もあります。


カウンセリングが保険適用外となっている背景には様々な要因がありますが、無料や低額で利用できるサービスも存在します。自分に合ったカウンセリングの形を探すことが、心の健康を維持する第一歩となるでしょう。

また、精神疾患と診断され治療が必要な場合は、まずは精神科や心療内科を受診し、医師の指示のもとでカウンセリングを受けることで、保険適用となる可能性があります。経済的な不安からカウンセリングを諦めずに、様々な選択肢を検討してみてください。

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