介護保険の訪問看護は週何回まで利用できる?回数制限と費用を徹底解説

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介護保険における訪問看護の利用回数について多くの方が疑問に思われることでしょう。医療保険では週3回までという明確な制限がある一方で、介護保険における訪問看護の回数制限はどのようになっているのでしょうか。実は、介護保険の訪問看護には医療保険のような週あたりの明確な上限回数は設定されていません。これは利用者の個々の状態やニーズに合わせて柔軟なサービス提供を可能にするためです。ただし、要介護度に応じた支給限度額という枠組みの中で利用する必要があり、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づいて適切な回数が決定されます。本記事では、介護保険における訪問看護の利用回数の仕組みから、医療保険との違い、費用負担、特例措置まで、最新の制度改正情報を含めて詳しく解説していきます。

介護保険の訪問看護は週何回まで利用できる?回数制限の仕組みを解説

介護保険における訪問看護の最大の特徴は、週あたりの明確な回数制限がないという点です。医療保険では原則として週3回までという制限がありますが、介護保険ではこのような上限は設けられていません。

代わりに、介護保険では要介護度に応じた支給限度額という仕組みで利用量が調整されます。例えば、要介護1の場合は月額167,650円、要介護5の場合は月額362,170円といった具合に、要介護度が高くなるほど利用できる金額が増加します。この支給限度額の範囲内であれば、訪問看護を含む様々な介護サービスを組み合わせて利用することができます。

訪問看護の具体的な回数や内容は、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づいて決定されます。ケアプランは利用者の心身の状態、家族の希望、医療的ニーズなどを総合的に考慮して作成され、定期的に見直しが行われます。厚生労働省も、訪問看護の日数や回数は画一的ではなく、利用者の個別の状況を踏まえて検討すべきであると強調しています。

さらに、介護保険の訪問看護では1日に複数回の訪問も可能です。ただし、「2時間ルール」という原則があり、同一の利用者に対して同日に複数回訪問する場合、原則として訪問と次の訪問の間を2時間以上空ける必要があります。これは短時間訪問の繰り返しによる過剰な報酬請求を防ぐためのルールです。ただし、緊急時対応や20分未満の短時間訪問、異なる職種による訪問などは例外として認められています。

介護保険と医療保険の訪問看護はどう違う?利用条件と回数の比較

訪問看護には介護保険と医療保険の2つの制度があり、どちらが適用されるかは利用者の年齢や疾患、状態によって決まります。同時併用は原則としてできませんので、適切な保険制度を選択することが重要です。

医療保険が適用される条件は以下の通りです。40歳未満の方はすべて医療保険が適用されます。40歳以上65歳未満の方は、医師が訪問看護の必要性を認め、かつ16特定疾病の対象ではない場合、または16特定疾病の対象であっても要支援・要介護に該当しない場合に医療保険が適用されます。65歳以上の方は、医師が訪問看護の必要性を認め、かつ要支援・要介護に該当しない場合に医療保険が適用されます。

医療保険適用での訪問看護は基本的に週3回までという制限があり、1日1回、1回あたり30分から90分が標準です。ただし、厚生労働大臣が定める疾病(別表7)や身体状態(別表8)に該当する方、医師から特別訪問看護指示書が交付された期間中は、週4回以上の訪問や1日に複数回の訪問が認められます。

一方、介護保険が適用される条件は、要支援・要介護認定を受けている方で、別表7の疾病に該当しない場合です。介護保険では前述の通り週あたりの回数制限はありませんが、要介護度に応じた支給限度額の範囲内での利用となります。

保険適用の優先順位として、介護認定を受けている場合は原則として介護保険が優先されますが、別表7の疾病等に該当する場合や特別訪問看護指示書が発行された期間中は医療保険が適用されるという例外があります。この判断は複雑なため、主治医やケアマネジャー、訪問看護ステーションと連携して適切な制度を選択することが大切です。

訪問看護の回数を増やしたい時はどうすればいい?相談方法と手続きを紹介

訪問看護の回数を増やしたいと考える場合、適用されている保険制度によって相談先と手続きが異なります。

医療保険を利用している場合は、主治医への相談が必要です。医療保険では医師が発行する訪問看護指示書に基づいてサービスが提供されるため、回数を増やすには医師の判断が不可欠です。訪問看護ステーションから主治医に提出される訪問看護報告書に、利用者の状態変化や訪問頻度を増やす必要性を具体的に記載してもらい、医師が判断しやすい情報を提供することが重要です。

特に、利用者の状態が急性増悪した場合は、特別訪問看護指示書の発行を検討してもらいましょう。この指示書があれば、通常の週3回制限を超えて頻回な訪問が可能になり、有効期間は通常14日間です。また、別表7の疾病に該当するかどうかの確認も重要で、該当する場合は回数制限なく訪問看護を受けることができます。

介護保険を利用している場合は、ケアマネジャーへの相談が第一歩です。ケアマネジャーは要介護度の支給限度額の範囲内で訪問看護サービスを増やすことができるか、他の介護サービスとの調整が可能かなどを検討し、必要に応じてケアプランの見直しを行います。

介護保険では利用者の状態やニーズの変化に応じて柔軟にサービス量を調整できるため、定期的にケアマネジャーや訪問看護ステーションの看護師とコミュニケーションを取ることが大切です。支給限度額を超えてサービスを利用したい場合は、超過分を自己負担で利用することも可能です。実際に、2022年の調査では、27.2%の事業所でケアプランで設定された回数を超えて訪問したケースがあったと報告されています。

どちらの保険制度でも、保険外の自費サービスを併用することで、公的保険では対応しきれないニーズに応えることも可能です。自費サービスは回数や時間の制限がなく、公的保険と併用できるため、必要に応じて検討してみましょう。

訪問看護の費用はいくら?介護保険と医療保険の自己負担額を比較

訪問看護の費用は適用される保険制度によって大きく異なるため、それぞれの特徴を理解することが重要です。

介護保険の費用構造では、指定訪問看護の費用は介護報酬として支払われ、「単位」で計算されます。1単位あたりの金額は地域によって異なり、例えば1単位10〜12円程度です。基本報酬は訪問する職種とサービス提供時間によって決まり、20分未満で310単位、30分未満で463単位、30分以上1時間未満で814単位、1時間以上1時間30分未満で1,117単位となっています。

これに加えて、利用者の状態や事業所の体制に応じて様々な加算があります。緊急時訪問看護加算(600単位)、特別管理加算、ターミナルケア加算(2,000単位/月)、看護体制強化加算(300単位/月)などが代表的です。自己負担割合は基本的に1割ですが、65歳以上で所得が一定以上ある場合は2割または3割負担となります。

医療保険の費用構造では、訪問看護基本療養費として1回1時間30分未満のサービスで一般的に5,550円〜6,550円が設定されています。訪問看護管理療養費は月の初日が7,440円、2日目以降は3,000円が基本で、機能強化型の訪問看護ステーションでは月の初日の管理療養費が8,470円〜12,830円と高くなります。

医療保険には24時間対応体制加算(5,400円/月)、難病等複数回訪問加算などの加算制度もあります。自己負担割合は利用者の年齢や所得によって1割または3割が基本で、70歳以上は1割または2割となります。

費用負担の軽減策として、医療保険では高額療養費制度を利用でき、月の医療費が一定額を超えた場合に超過分が払い戻されます。介護保険では高額介護サービス費制度があり、月の利用者負担が上限額を超えた場合に超過分が支給されます。

実際の費用比較では、短時間で頻回な訪問の場合は介護保険の方が有利な場合が多く、長時間で専門的な医療処置が必要な場合は医療保険の方が適している傾向があります。ただし、利用者の状態や必要なケア内容によって最適な選択は変わるため、ケアマネジャーや訪問看護ステーションと相談して判断することが大切です。

特別な疾患がある場合の訪問看護は?別表7・別表8による特例措置を詳しく解説

訪問看護において、厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)厚生労働大臣が定める身体状態(別表8)に該当する利用者には、通常とは異なる特例措置が設けられています。これらの制度を理解することで、より充実した訪問看護サービスを受けることができます。

別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)には、医療的介入の必要性が高い20の難病がリストされています。末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病関連疾患、人工呼吸器を使用している状態などが含まれます。注意すべき点は、難病であっても別表7に該当しない場合は医療保険適用とはならないことです。

別表7に該当する場合の特例措置は非常に手厚く、要介護認定者でも医療保険で訪問看護を受けられ、最大3カ所の訪問看護ステーションを利用できます。主治医が必要と認めれば1日に複数回の訪問看護を利用でき、退院当日の訪問看護や入院中の外泊期間にも2回まで訪問看護を利用できます。さらに、高額療養費制度の対象となり、高齢者施設入所者でも利用可能です。

別表8(厚生労働大臣が定める身体状態)は、病名ではなく現在の身体的な状態で判断されます。在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態、気管カニューレや留置カテーテルを使用している状態、人工肛門や人工膀胱を設置している状態、真皮を超える褥瘡の状態などが含まれます。2024年4月の診療報酬改定では、在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法注射指導管理、在宅強心剤持続投与指導管理が新たに追加されました。

別表8のみに該当する場合は原則として介護保険が優先されますが、介護保険の支給限度額の範囲内で訪問回数や訪問ステーションの数に制約はありません。ただし、別表8の状態かつ別表7の疾病に該当する場合は医療保険が適用され、90分を超える長時間の訪問看護を受けることができるという大きな特徴があります。

これらの制度と混同されやすいのが16特定疾病ですが、こちらは加齢に伴う心身の変化によって要介護状態を引き起こしやすい疾病で、40歳から65歳未満の方が介護保険の対象となるための条件です。関節リウマチや骨折を伴う骨粗鬆症などは16特定疾病に含まれますが別表7には含まれていないため、区別が必要です。

特別な疾患や状態がある場合は、主治医やケアマネジャー、訪問看護ステーションと連携して、どの制度が最も適しているかを検討し、利用者にとって最適なケアプランを構築することが重要です。

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