住基カードは、2025年12月28日をもって有効期限が完全に終了し、翌日の12月29日以降は身分証明書として一切使えなくなります。これは、2015年12月28日に新規発行が終了した住基カードの有効期間が「発行日から10年間」と定められているためであり、最後に発行されたカードが本日その期限を迎えることを意味します。住基カードを身分証として利用してきた方は、マイナンバーカードなどの代替手段を早急に確保する必要があります。
本記事では、住基カードがなぜ2025年12月28日以降使えなくなるのか、その法的根拠から具体的な影響、そして今後の対策まで詳しく解説します。住基カードの有効期限切れによって銀行口座の開設や各種契約手続きにどのような支障が出るのか、また運転免許証を持たない方がどのような代替手段を確保すべきかについても、実務的な観点からお伝えします。

住基カードとは何だったのか
住民基本台帳カード、通称「住基カード」とは、2003年の住基ネット稼働とともに導入された公的な身分証明書です。住基カードは、運転免許証を持たない方にとって貴重な「顔写真付きの本人確認書類」として機能してきました。市区町村の窓口で申請することで交付され、券面には氏名、住所、生年月日、性別、そして顔写真が記載されていました。
住基カードには、対面での身分証明機能に加えて、ICチップに公的個人認証サービスの電子証明書を搭載することができました。この電子証明書を利用すれば、e-Tax(国税電子申告)やコンビニでの住民票取得といったオンラインサービスを利用することが可能でした。しかし、この電子証明書の有効期間は発行から3年間と定められており、住基カード向けの電子証明書発行業務は2015年12月22日に終了しています。そのため、最も遅く発行された電子証明書であっても2018年12月22日には効力を失っており、現在手元にある住基カードのデジタル機能はすでに停止している状態です。
つまり、現在も住基カードを所持している方のカードは、対面での身分証明という「アナログ機能」のみが残っている状態であり、その最後の機能も本日2025年12月28日をもって完全に終了することになります。
2025年12月28日が最終期限となる法的根拠
住基カードの有効期限が2025年12月28日である理由は、住民基本台帳法および関連条例によって明確に定められています。住基カードの有効期間は「発行日から10年間」と規定されており、この規定が全ての住基カードに適用されます。
住基カードの新規発行、再発行、および更新手続きは、マイナンバー制度の導入に伴い、2015年12月28日をもって全国一律に終了しました。この日付は、日本の官公庁における御用納めが12月28日であることに由来しています。行政機関の休日に関する法律および自治体の条例慣習により、官公庁は12月29日から1月3日まで閉庁となるため、2015年の最終発行業務も12月28日で打ち切られました。
この結果、2015年12月29日以降に発行された正規の住基カードは存在しません。したがって、発行から10年後にあたる2025年12月29日以降の日付が有効期限として刻印された住基カードは、理論上も実務上も日本国内に一枚も存在しないのです。制度終了の最終日である2015年12月28日に駆け込みで発行されたカードであっても、その有効期限は正確に10年後の2025年12月28日に到来します。これが、本日をもって全ての住基カードが法的効力を失う根拠です。
2025年はデジタルID制度の大転換期
住基カードの終焉は単独で起きた出来事ではありません。2025年は日本のデジタル行政史において、複数の重大な制度変更が同時に発生した年となりました。
まず、2025年3月24日にはマイナンバーカードのICチップに運転免許証の情報を記録する「マイナ免許証」の運用が開始されました。これにより、従来の運転免許証とマイナンバーカードを2枚持ち歩く必要がなくなり、住所変更手続きを自治体窓口のみで完結させる「ワンストップ化」が実現しています。
続いて、2025年6月24日にはiPhoneのApple Walletにマイナンバーカード機能が搭載されました。Android端末では先行して実現していたスマホ用電子証明書搭載サービスが、日本で高いシェアを持つiPhoneにも対応したことで、物理的なカードを持ち歩かなくても、スマートフォンだけでコンビニでの証明書取得やマイナポータルへのログインが可能になりました。
さらに、健康保険証の廃止スケジュールも進行しています。2024年12月2日をもって従来の健康保険証の新規発行は終了しており、発行済みの保険証は経過措置として2025年12月1日まで有効とされていました。この期限は住基カードの失効時期とほぼ同時期であり、2025年12月という特定の時期に「住基カード」と「従来の健康保険証」という二つの主要な証明書が同時に使えなくなる事態が発生しています。
これらの変化は、日本社会がマイナンバーカードという新たなデジタルID基盤へ本格的に移行したことを示しています。住基カードの終了は、この大きな流れの中で避けられない出来事でした。
住基カードが使えなくなると何が困るのか
2025年12月29日以降、住基カードを身分証明書として提示しても、いかなる場面でも受け付けられなくなります。特に運転免許証を持たない方や、高齢者の方への影響は深刻です。
金融機関での本人確認に支障が出ます。 銀行口座の開設や10万円を超える現金振込、融資の申し込みなど、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認が必要な場面において、住基カードはこれまで「顔写真付きの公的証明書」として運転免許証と同等の効力を発揮してきました。1枚の提示で本人確認が完了する書類として重宝されていましたが、有効期限が切れた本人確認書類は金融機関では一切受け付けられません。さらに、銀行に登録している身分証が住基カードのままになっている場合、有効期限切れを機に取引制限がかかるリスクもあります。
顔写真なし書類のみでの手続きが煩雑になります。 住基カードを失った非免許保持者は、本人確認において「顔写真なし」の書類を使用せざるを得なくなります。健康保険証の資格確認書、年金手帳、住民票の写しなどがこれに該当しますが、現在の法令および実務では、顔写真のない書類は「2点以上の提示」または「1点提示と補完書類(公共料金の領収書等)」が求められるのが通例です。
オンラインサービスから締め出される可能性があります。 ネット銀行の口座開設やスマートフォンのオンライン契約では、カメラで顔写真付き身分証と本人の顔を撮影して照合する方式(eKYC)が一般的になっています。この方式では顔写真のない書類はそもそも利用できないケースが増えており、住基カードの喪失は単に手続きが面倒になるだけでなく、一部のオンラインサービスへのアクセス自体が困難になることを意味します。
高齢者が直面する特有の問題
高齢者の中には、「もう運転しないから」と免許を返納し、住基カードを唯一の顔写真付き身分証としてきた方が多くいます。このような方々が住基カードを失った場合、代替手段の確保には特有の困難が伴います。
運転経歴証明書は免許返納者にとって有力な選択肢ですが、取得には制限があります。2012年4月1日以降に交付された運転経歴証明書であれば、金融機関等においてマイナンバーカードと同等の「顔写真付き本人確認書類」として扱われ、有効期限がなく永年使用できるという利点があります。しかし、免許を持っていない方や、返納から長期間が経過している方は取得することができません。
健康保険の「資格確認書」についても注意が必要です。マイナ保険証を持たない方に交付されるこの書類には原則として顔写真がありません。そのため、資格確認書単体では銀行や役所での厳格な本人確認書類としては機能不足とみなされ、2点確認が必要となる可能性が高いのです。
高齢者の方がマイナンバーカードを新規に申請する場合、申請手続きそのものや窓口での受け取りに際して、移動の困難さや手続きの複雑さが障壁となることがあります。家族や地域のサポート体制を活用することが重要です。
マイナンバーカードを取得する場合の注意点
住基カードの代替として最も推奨されるのはマイナンバーカードの取得です。マイナンバーカードは顔写真付きの公的身分証明書として機能するだけでなく、健康保険証としての利用やコンビニでの各種証明書取得、オンラインでの行政手続きなど、幅広い用途に活用できます。
しかし、マイナンバーカードの申請には注意すべき点があります。通常時であれば、申請から交付通知書が届くまで約1ヶ月程度かかります。2025年はマイナ免許証やiPhone搭載、保険証廃止といったイベントが重なったため、申請が殺到し、自治体によっては交付窓口の予約が数週間先まで埋まる事態も発生しました。
住基カードの有効期限切れに気づいてから慌てて申請しても、交付までに時間がかかる可能性があります。まだマイナンバーカードをお持ちでない方は、できるだけ早く申請手続きを開始することをお勧めします。
マイナンバーカードを受け取る際には、原則として手持ちの住基カードを自治体に返納する必要があります。これは、二つの公的IDカードを重複して所持することを防ぐためです。マイナンバーカードを作らずに住基カードの期限を迎えた場合は、カードを自身で廃棄するか、自治体窓口へ返納することになります。自己廃棄する場合は、ICチップには個人情報が含まれているため、ハサミで切断するだけでなくICチップ部分を物理的に破壊することが重要です。
確定申告を行う方への影響
e-Taxを利用しているフリーランスや個人事業主にとって、ID制度の変化は確定申告にも影響を及ぼします。これまでマイナンバーカードを取得せず、税務署で発行された「ID・パスワード方式」を利用して確定申告を行っていた方に対し、2025年10月以降、このID・パスワードの新規発行が原則停止される方針が示されています。
既存のID・パスワード利用者は当面の間利用継続が可能とされていますが、政府はマイナンバーカード方式への一本化を推し進めています。住基カードの電子証明書が使えなくなって久しい中、ID・パスワード方式の入り口も狭まることで、マイナンバーカードを持たない納税者が手続きに困難を感じる場面が増えることが予想されます。
確定申告をオンラインで行いたい方は、マイナンバーカードの取得を検討されることをお勧めします。マイナンバーカードがあれば、自宅からe-Taxを利用した申告が可能であり、税務署に出向く必要がなくなります。
マイナンバーカードを作らない場合の代替手段
様々な事情や考えにより、マイナンバーカードを取得しない選択をする方もいます。そのような場合に確保できる代替手段について整理します。
運転経歴証明書は、運転免許証を自主返納した方にとって最も強力な代替手段です。2012年4月1日以降に交付されたものであれば、金融機関等においてマイナンバーカードと同等の「顔写真付き本人確認書類」として扱われます。有効期限がなく永年使用できるため、更新の手間がない点ではマイナンバーカードより優れています。ただし、住所変更時には警察署での手続きが必要となります。免許を持っていない方や、返納から5年以上経過した方は取得できないという制限があります。
パスポートも顔写真付きの公的証明書ですが、2020年2月以降に発行された新型パスポートからは「所持人記入欄(住所記載欄)」が削除されています。これにより、本人確認書類として利用する際には、別途住民票の写しなどの住所確認書類の提示が必要となるケースが増えており、住基カードのような「1枚で完結する身分証」としての利便性は低下しています。
顔写真なし書類の組み合わせで対応する方法もあります。資格確認書や年金手帳などの顔写真のない書類を使う場合は、常に「2点提示」または「補完書類」が必要となります。対面窓口であれば手間がかかるだけで済みますが、オンライン手続きにおいてはこれらの書類では対応できないサービスが増えている現状があります。マイナンバーカードを作らない選択をする場合は、住民票を常に手元に用意しておくなど、相応の準備と手間を覚悟する必要があります。
住基カード制度が残した教訓
住基カードの普及率は最終的に人口の約5.6%、約717万枚にとどまりました。この数字は、国家的なインフラとしては決して成功とは言えないものでした。その背景には、利用目的の不明確さ、住基ネットへの根強い不信感、そして「持っているメリット」の少なさがありました。
住基カードは「使える場所が少ないから普及せず、普及しないからサービスが増えない」という悪循環に陥りました。対照的に、現在のマイナンバーカード戦略は、健康保険証や運転免許証といった「生活必需品」としての機能を統合することで、この壁を突破しようとしています。住基カードの終了は、任意の普及に任せるアプローチから、実質的な統合アプローチへと国の戦略が転換したことを示しています。
セキュリティの観点でも進化が見られます。住基カードの時代、電子証明書はカードの中に閉じ込められた静的なものでした。しかし、現在のマイナンバーカード、特にスマートフォン搭載型は、生体認証と連携した動的な認証基盤として機能します。物理的なカードの所持証明に生体認証を組み合わせた多要素認証への進化であり、セキュリティモデルは大きく向上しています。
年末年始に住基カードを使おうとしている方への警告
本日2025年12月28日は、多くの官公庁にとって御用納めの日であり、明日12月29日から1月3日までは閉庁期間となります。この年末年始のタイミングで住基カードが完全に失効することには、特別な注意が必要です。
年末年始は帰省や旅行で移動する機会が増える時期です。宿泊施設でのチェックイン時に身分証明書の提示を求められることがありますが、12月29日以降は住基カードを提示しても有効な身分証明書として認められません。また、旅行先で急な現金の引き出しや振込が必要になった場合、銀行窓口での本人確認において住基カードは使用できなくなります。
さらに深刻なのは、年末年始の閉庁期間中は市区町村の窓口でマイナンバーカードの申請や受け取りができないことです。住基カードの有効期限が切れてから代替手段を確保しようとしても、少なくとも1月4日以降まで行政窓口での手続きは不可能です。急な身分証明が必要になった場合、対応に困る状況が生じる可能性があります。
年末年始に身分証明書が必要となる予定がある方は、住基カード以外の有効な身分証明書を必ず携帯してください。運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど、有効期限内の顔写真付き身分証明書があれば安心です。顔写真付きの身分証がない場合は、健康保険証や年金手帳などの書類を複数用意しておくことで、多くの場面で本人確認に対応できます。
マイナンバーカードと住基カードの根本的な違い
住基カードからマイナンバーカードへの移行は、単なるカードの更新ではありません。両者には制度設計の根本的な違いがあります。
住基カードは「任意取得」を前提とした制度でした。持っていなくても日常生活に大きな支障はなく、運転免許証を持たない方が補助的に利用するものという位置づけでした。そのため、普及率は人口の約5.6%にとどまり、国民的なインフラにはなり得ませんでした。
一方、マイナンバーカードは「社会インフラ」として設計されています。健康保険証機能の統合、運転免許証との一体化、各種行政手続きのオンライン化など、日常生活のあらゆる場面でマイナンバーカードの利用が想定されています。政府は2025年度末までに、ほぼ全ての国民がマイナンバーカードを保有する状態を目指しており、事実上の必携カードとなりつつあります。
この違いは、カードを持たない場合の社会的コストにも表れています。住基カードがなくても特に困らなかった時代とは異なり、マイナンバーカードを持たない場合は、医療機関での受診手続きや行政手続き、民間サービスの利用など、様々な場面で追加の手間や制限が発生します。住基カードの終了は、こうした「新しい社会インフラ」への完全移行を象徴する出来事といえます。
今後の対応についてのまとめ
住基カードの有効期限は本日2025年12月28日で完全に終了します。明日12月29日以降、住基カードはいかなる場面でも身分証明書として使用することができません。
すぐに確認すべきこととして、まず手元の住基カードの有効期限を確認してください。銀行や証券会社など金融機関に登録している本人確認書類が住基カードになっている場合は、登録情報の変更手続きが必要になる可能性があります。年末年始の帰省や旅行中に身分証として住基カードを使おうとする計画がある場合は、別の身分証を用意する必要があります。
代替手段の検討として、マイナンバーカードの取得が最も推奨されます。健康保険証機能、各種証明書のコンビニ取得、オンライン行政手続きなど、幅広い用途に活用できます。運転免許証を返納した方は運転経歴証明書の取得も選択肢となります。パスポートをお持ちの方は、住所確認書類と組み合わせることで本人確認に使用できます。
住基カードという制度が終わりを迎える本日は、日本社会が本格的なデジタルID社会へ移行する象徴的な日となりました。顔写真付きのデジタルIDを持たないことの社会的コストは今後ますます高まることが予想されます。まだ代替の身分証明書を確保していない方は、早急に対応を進めることをお勧めします。

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