高市内閣の支持率71%!最新の世論調査で見えた国民の期待と今後の課題

社会

2025年10月21日、日本政治史において記念すべき瞬間が訪れました。高市早苗氏が第99代内閣総理大臣に就任し、日本初の女性総理大臣として高市内閣が発足したのです。この歴史的な出来事を受けて実施された緊急世論調査では、内閣支持率が71%という驚異的な数字を記録しました。この高い支持率は、国民の政治に対する期待の大きさを如実に示しています。過去の内閣発足時と比較しても、石破内閣の50.7%、岸田内閣の55.7%を大きく上回る水準であり、高市新総理への期待がいかに高いかがわかります。しかし、この高い支持率の背景には何があるのでしょうか。また、高市内閣が掲げる政策は実際にどのような内容なのでしょうか。本記事では、最新の支持率データをもとに、高市内閣の政策方針、国民の期待、そして今後の課題について詳しく解説していきます。

高市内閣の支持率71%が示す国民の期待

高市内閣の発足直後に実施された世論調査で明らかになった71%という支持率は、近年の日本政治において極めて高い水準です。この数字が何を意味するのか、詳しく見ていきましょう。

内閣を支持する理由として最も多かったのが「政策に期待できる」という回答で、全体の41%を占めました。これは、高市氏が自民党総裁選挙期間中から一貫して訴えてきた具体的な政策ビジョンが、多くの国民の共感を得たことを示しています。次いで「ほかによい人がいない」が20%、「首相に指導力がある」が15%と続いています。

特に注目すべきは、国民が期待を寄せている政策分野です。物価高対策が最も高い関心を集めており、長引くインフレに苦しむ国民生活への対応が急務であることがわかります。また、外交・安全保障年金などの社会保障といった、国家の根幹に関わる分野への期待も高く、高市内閣にはこれらの課題への実効性のある対応が求められています。

過去の内閣との比較で見える高市内閣の特徴

高市内閣の71%という支持率を、過去の内閣発足時の数字と比較すると、その際立った高さが一層明確になります。

直近の石破内閣は発足時に50.7%の支持率でスタートしました。また、岸田内閣は55.7%でした。これらと比較すると、高市内閣の71%は約20ポイント近く高い水準です。この差は、単なる数字以上の意味を持っています。

高市氏は自民党総裁選挙の段階から、「次の首相にふさわしい人物」として常に上位に名前が挙がっていました。ある調査では、小泉進次郎氏と並んでトップに立つなど、国民の間で高い期待が寄せられていたことがうかがえます。この期待が、発足時の高い支持率として結実したと言えるでしょう。

しかし、歴史を振り返ると、発足時の高い支持率が必ずしも長期的な政権の安定を保証するわけではありません。過去には、高い支持率でスタートしながらも、政策の実行段階で支持を失った内閣も少なくありません。高市内閣にとって重要なのは、この高い期待にどう応えていくかという点です。

連立政権の新たな枠組みと課題

高市内閣の大きな特徴の一つは、その連立政権の枠組みにあります。高市内閣は、自民党日本維新の会による連立政権として発足しました。

これまで長年にわたって自民党と連立を組んできた公明党が連立を離脱したことは、日本の政治地図に大きな変化をもたらしました。新たなパートナーとなった日本維新の会は、規制緩和や地方分権など、独自の政策理念を持つ政党です。この新しい枠組みで、いかに安定した政権運営を行うことができるかが、高市内閣の最初の試金石となります。

さらに深刻な課題は、高市内閣が少数与党であるという点です。衆参両院で過半数を確保できていないため、法案の成立には野党の協力が不可欠です。特に重要法案については、連立パートナーである日本維新の会はもちろん、政策的に近いとされる国民民主党などとの協調が鍵を握ります。

この政治状況は、高市内閣の政策推進に困難をもたらす一方で、より幅広い合意形成を促す効果も期待できます。野党との対話を通じて、国民の多様な意見を反映した政策が実現される可能性もあるのです。

サナエノミクスの全貌:経済政策の理念と具体策

高市内閣の経済政策は「サナエノミクス」と呼ばれ、アベノミクスの流れを汲みながらも、独自の色彩を持っています。その核心にあるのは「責任ある積極財政」という理念です。

この「責任ある積極財政」とは何を意味するのでしょうか。高市氏の考える「責任」とは、単に財政収支を均衡させることではありません。むしろ、国民の生活や安全、そして未来の成長に対して投資を行う国家としての責任を指しています。この哲学に基づき、デフレからの完全脱却と持続的な成長軌道に乗るまでは、プライマリーバランス黒字化目標を一時凍結し、未来への投資を優先する姿勢を鮮明にしています。

具体的な経済政策として、まず物価高対策が挙げられます。高市氏は、ガソリン税や軽油引取税の暫定税率廃止を提言しています。これにより、エネルギーコストを抑制し、国民生活や経済活動への負担を軽減する狙いがあります。日々の生活でガソリン価格の高騰に悩む多くの国民にとって、これは直接的な恩恵をもたらす政策と言えるでしょう。

また、日本経済の持続的な成長のため、官民連携と税制優遇を活用した成長投資を重視しています。特に、次世代半導体AI量子技術といった戦略的産業分野への集中的な国家投資を掲げ、民間だけでは難しい分野へ国家が主導的に介入することで、日本の技術的優位性と産業競争力を確保しようとしています。

中小企業支援も重要な柱です。現行の賃上げ促進税制は、利益を上げている企業には恩恵がありますが、赤字に苦しむ中小企業には効果が及びにくいという課題があります。高市氏は、こうした赤字法人に対しても助成金などの直接支援策を検討しており、経済の底上げを図る構えです。医療・介護分野においても、報酬改定を前倒しで検討するなど、現場の実情に即した迅速な対応を打ち出しています。

給付付き税額控除:中低所得者層支援の切り札

サナエノミクスの中でも特に注目されているのが、「給付付き税額控除」の導入検討です。この制度は、所得再分配の観点から画期的な仕組みとして期待されています。

従来の税額控除は、一定額以上の所得税を納めている人にのみ恩恵があり、所得が低く納税額が少ない層や非課税世帯には効果が及びませんでした。しかし、給付付き税額控除では、控除しきれない額を現金で給付することにより、低所得者層にも直接的な支援を届けることができます。これは、逆進性が指摘される消費税負担の緩和策としても機能し、より公平な再分配を実現する手法として評価されています。

しかし、その導入には複数の課題があります。第一に財源の問題です。減税と給付を同時に行うため、恒久的な制度として実施するには大規模な財源が必要となります。第二に所得把握の技術的な問題です。給与所得者は源泉徴収である程度正確に所得を把握できますが、自営業者やフリーランス、さらには富裕層が持つ多様な金融資産や不動産所得などを、いかに正確かつ迅速に把握するかという課題があります。

マイナンバー制度の活用が前提となりますが、現状では全ての資産を紐付けるまでには至っておらず、申告漏れや不正受給をどう防ぐかという課題も残ります。第三に、年に一度の給付では、日々の生活に困窮する層への継続的な支援としては機能しにくいという制度設計上の問題も指摘されています。

これらの課題をどう克服し、実効性のある制度として設計できるかが、サナエノミクスの成否を左右する重要なポイントとなります。

安全保障政策:総力戦体制への転換

高市氏の安全保障政策は、従来の専守防衛の枠組みを超える野心的な構想を含んでいます。地政学リスクが高まる現代において、サイバー宇宙情報戦といった多層的な脅威に対応するため、国家のあらゆる資源を動員する「総力戦体制」への転換を志向しています。

この構想には、情報機関の統合有事を想定した法制度の抜本的な改革が含まれており、平時から国家機能の再設計を進めることを目指しています。諸外国では、情報機関が一元化され効率的な情報収集・分析が行われていますが、日本では各省庁に情報機能が分散しており、迅速な意思決定に支障をきたすという課題があります。高市内閣では、こうした縦割り行政の弊害を解消し、統合的な安全保障体制を構築する方針です。

経済安全保障担当大臣としての経験から、高市氏は貿易、投資、技術、人材の流れを国家安全保障の観点から厳格に管理する戦略的通商政策を提唱しています。自由貿易の効率性追求だけでなく、国家主権と技術的優位性の確保を優先する姿勢を鮮明にしています。

特に、海外からのサイバー攻撃の脅威を深刻に受け止めており、金融、交通、医療、エネルギーといった重要インフラ分野におけるサイバー防御体制の強化を急ぐ考えです。近年、世界各地でサイバー攻撃による重要インフラの機能停止が報告されており、日本もその例外ではありません。量子暗号通信技術のような先端技術の研究開発と社会実装も、その一環として位置づけられています。

経済安全保障推進法とセキュリティ・クリアランス

高市氏の経済政策の根幹をなすのが、経済安全保障の強化です。経済安全保障担当大臣としての経験から、経済と安全保障が不可分であるとの強い信念を持っており、関連政策の具体化と法整備を強力に推進しています。

その第一歩が、2022年5月に成立した「経済安全保障推進法」です。この法律は、「サプライチェーンの強靭化」「基幹インフラの安全性確保」「先端技術の官民協力」「特許出願の非公開」を4つの柱としています。しかし高市氏はこれを「第一弾」と位置づけており、さらなる法整備の必要性を訴えています。

残された最大の課題としているのが、国際標準の「セキュリティ・クリアランス(適格性評価)」制度の法制化です。これは、政府が指定した安全保障上の重要な情報にアクセスできる人物を、政府がその信頼性を審査・確認する制度です。この制度がなければ、同盟国や同志国との間で機微な技術情報を含む国際共同研究開発に参加することができず、日本の産業界がグローバルなサプライチェーンから排除されかねないという強い危機感があります。

2024年に成立した「重要経済安保情報の保護・活用法」は、このセキュリティ・クリアランス制度の創設を目的としたものであり、高市政権下でその運用基準の策定と実効性の確保が急がれることになります。さらに将来的には、産業スパイや技術流出を厳しく取り締まるため、「スパイ防止法」に近い内容を経済安全保障関連法に組み込むことにも意欲を見せています。これは、日本の優れた技術が他国に渡り、軍事転用されるといった事態を防ぐための措置です。

憲法改正への強い意志

高市氏は、長年にわたり憲法改正の必要性を訴えてきました。特に、自衛隊の存在を憲法に明確に位置づけることを重視しています。

現行憲法第9条の解釈をめぐっては、長年にわたり議論が続いてきました。自衛隊は国民の間では広く認知され、災害救助などでも活躍していますが、憲法上の位置づけが明確でないという問題があります。高市氏は、国防に任ずる自衛隊員の誇りを守り、その法的地位を安定させることで、いかなる脅威に対しても揺るぎない実力組織として機能させる必要があると主張しています。

また、現行憲法が制定された1947年には想定されていなかった新たな課題に対応するため、日本人の手による新しい憲法の制定が必要だとも主張しています。例えば、インターネットの普及に伴うプライバシーや表現の自由の問題、環境権、デジタル時代の新たな人権など、70年以上前の憲法では十分に対応できない課題が増えています。

これは、単なる条文の変更にとどまらず、時代の要請に応え、未来の世代に対する責任を果たすという強い信念に基づいています。しかし、憲法改正には衆参両院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要であり、さらに国民投票で過半数の賛成を得なければなりません。少数与党である高市内閣にとって、憲法改正の実現は極めて高いハードルと言えるでしょう。

エネルギー政策:現実主義的なアプローチ

高市氏のエネルギー政策は、「脱炭素」一辺倒の風潮に警鐘を鳴らし、より現実的なアプローチを提唱している点が特徴です。

太陽光発電については、中国製パネルへの依存や乱開発による環境破壊といった問題点を指摘し、補助金制度の見直しを主張しています。実際、日本で使用される太陽光パネルの多くは中国製であり、経済安全保障の観点から懸念があります。また、山林を切り開いて大規模な太陽光発電施設を建設することで、土砂災害のリスクが高まったり、生態系が破壊されたりする事例も報告されています。

高市氏は、供給の安定性と安全保障を最優先に考え、天然ガスや高効率な石炭火力、そして原子力発電といった選択肢も活用しながら、バランスの取れたエネルギーミックスを追求する姿勢を示しています。これは、「低炭素」社会への移行を現実的なペースで進めようとする考えの表れです。

さらに長期的な目標として、「エネルギー自給率100%」という壮大なビジョンを掲げています。その中核となるのが核融合炉の実用化です。核融合は、安全性が高く、CO2や高レベル放射性廃棄物を出さない夢のエネルギーとして期待されています。しかし、その技術はまだ発展途上であり、商業ベースでの発電が実現するのは数十年先と見られています。国家プロジェクトとして推進する強い意志は示していますが、これが短期・中期的なエネルギー問題を解決する即効薬とはなり得ないのが現実です。

地方創生:地域主体の成長戦略

高市氏は「地方には大きな伸び代がある」との認識のもと、画一的な中央集権型の政策ではなく、地域が主体となって成長戦略を描くことを重視しています。

その具体的なツールとして注目されるのが「重点支援地方交付金」の活用です。これは、従来の使い道が自由な地方交付税とは異なり、「物価高騰対策」「賃上げ促進」「人口減少対策」といった国の重要政策と連動する形で、地方自治体の取り組みを支援する政策誘導型の資金です。

例えば、赤字に苦しむ地域の中小企業や、人手不足が深刻な医療・介護施設への賃上げ支援、あるいは地域独自のデジタル化(DX)推進プロジェクトなど、国が示す大きな方向性に沿って自治体が企画した事業に対し、重点的に予算が配分されます。これにより、国と地方が連携して共通の課題解決にあたることを目指しており、高市氏の「現場主義」を反映した政策アプローチと言えます。

それぞれの地域が持つ独自の強みを活かした産業育成、デジタル化の推進、インフラの維持・更新などを包括的に支援する政策を打ち出しています。また、外国人労働者の問題についても、地域の治安や社会との共存という観点から、適切な管理と共生策の必要性を指摘しています。人手不足が深刻化する中、外国人労働者の受け入れは避けられない課題ですが、同時に地域社会との調和をいかに図るかという視点も重要です。

科学技術・イノベーション政策への大規模投資

サナエノミクスの成長戦略において、科学技術とイノベーションへの投資は「明日への投資」として極めて重要な位置を占めています。高市氏は、過去に科学技術政策担当大臣を務めた経験からも、この分野への深い理解と強い意志を持っています。

その具体的な政策ツールとして注目されるのが、経済安全保障推進法に基づき創設された「経済安全保障重要技術育成プログラム(通称:K Program)」です。これは、内閣府が司令塔となり、JST(科学技術振興機構)とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)に造成された総額5000億円規模の基金を活用し、経済安全保障上不可欠な先端重要技術の研究開発から社会実装までを、長期的かつ大規模に支援するものです。

支援対象となる「特定重要技術」は、政府が策定する研究開発ビジョンによって定められます。第一次・第二次ビジョンでは、AI、量子、宇宙・航空、海洋、サイバーセキュリティ、バイオ、マテリアル、エネルギーといった広範な分野が対象となりました。例えば、JSTが担当する分野では「AIの信頼性確保技術」や「量子セキュリティ・ネットワーク基盤技術」、NEDOが担当する分野では「次世代グリーンデータセンター技術」や「バイオ生産システム」などが具体的な研究開発項目として挙げられています。

このプログラムの特徴は、単に研究費を配分するだけでなく、政府関係機関が「伴走支援」を行い、研究開発の進捗管理や成果の社会実装までを一体的にサポートする点にあります。従来の研究助成では、研究成果が実用化に結びつかないという課題がありましたが、この仕組みによって研究から実用化までの「死の谷」を乗り越えることを目指しています。

さらに、大学の研究能力向上とスタートアップ創出の強化も重要なテーマです。10兆円規模の大学ファンドの運用益を活用し、国際的に卓越した研究大学の育成を推進するとともに、大学発のスタートアップ・エコシステムを全国に展開することを目指しています。高市氏は、特にAIやゲーム、アニメといった日本の強みを持つコンテンツ産業を知的財産として保護・活用し、新たな成長産業として育成することにも意欲を示しています。

国土強靭化:危機管理投資の推進

「危機管理投資」のもう一つの大きな柱が、「令和の国土強靭化」です。これは、過去の公共事業のような需要喚起策という側面だけでなく、激甚化・頻発化する自然災害や、インフラの老朽化、さらにはサイバー攻撃といった新たな脅威から国民の生命と財産を守るための、総合的な安全保障政策として位置づけられています。

具体的には、今後10年間で100兆円規模の中期計画を策定し、治水対策(緊急浚渫推進事業など)、土砂災害防止、建築物の耐震化などを集中的に実施するとしています。近年、日本各地で記録的な豪雨による河川の氾濫や土砂災害が頻発しており、国民の生命を守るための防災インフラの整備は急務となっています。

また、物理的なインフラだけでなく、電力網や通信網といったライフラインの強靭化も急務とされます。特に、大規模停電を防ぐための送配電網の多重化・分散化や、サイバー攻撃から重要インフラを防護する体制の強化が重点項目となります。

さらに、老朽化した集合住宅の建て替えを促進するための新たな仕組みや、厳しい気候変動に耐えうる新たな土木・建築技術、河川流域全体を捉えた「グリーンインフラ」といった未来志向の研究開発にも投資する方針を示しています。グリーンインフラとは、自然環境が持つ機能を活用して社会資本整備や土地利用を行う手法であり、環境保全と防災を両立させる新しいアプローチとして注目されています。

社会保障政策と保守的な価値観

高市氏の社会保障政策は、国民生活の安心を確保すると同時に、その根底にある保守的な家族観を反映したものとなっています。

子育て支援策として特徴的なのが、「家事支援サービスの利用料に対する税額控除」の導入です。これは、ベビーシッターや家事代行サービスの利用を促進することで、特に女性の就労と育児の両立を支援する狙いがあります。この政策の前提として、家事支援人材の「国家資格化」もセットで提唱されており、サービスの質の担保と市場の健全な育成を目指しています。

ただし、この税額控除策は、高所得者層ほど恩恵が大きくなる可能性や、財源確保の問題から、過去の政権では導入が見送られた経緯があり、実現にはハードルも存在します。また、税額控除を受けられない低所得者層には恩恵が及ばないという指摘もあり、より公平な支援策の設計が求められます。

一方で、その保守的な価値観は、選択的夫婦別姓制度同性婚の法制化に対して慎重・反対の立場を取る姿勢にも表れています。これは、日本の伝統的な家族のあり方を尊重すべきだという考えに基づくものです。

経済界の一部(例えば経済同友会)やリベラル層が求める「多様な家族観を前提とした社会制度改革」とは明確な対立軸を生んでいます。経済同友会は、多様な人材の活躍を促すため選択的夫婦別姓制度の導入を強く要請していますが、高市政権下では実現は困難と見られています。

労働規制改革:働き方の自由度拡大か過労助長か

雇用・労働分野においては、高市氏の「ワークライフバランスを捨てる」という過去の発言が大きな波紋を呼びました。しかし、その真意は、画一的な労働時間の短縮を強制するのではなく、個人の選択の自由を最大限に尊重することにあると説明されています。

つまり、「休み方改革」だけでなく、「働きたい人が意欲に応じて働ける」環境整備も同時に進めるべきだという考え方です。この理念に基づき、具体的な政策として「労働時間規制の緩和」の検討を指示しています。

例えば、現行の労働基準法では管理職以外に厳格な時間外労働の上限が課されていますが、これが意欲ある労働者の選択肢を狭め、結果的に管理職への業務のしわ寄せを生んでいるといった副作用を問題視しています。そのため、本人の健康状態と自由な意思を大前提とした上で、より柔軟な働き方を可能にする制度(例えば、高度プロフェッショナル制度の対象拡大裁量労働制の見直しなど)を検討する可能性があります。

もちろん、こうした規制緩和に対しては、「結果的に長時間労働を助長し、過労死や健康被害のリスクを高める」といった根強い批判も存在します。労働界からは、労働規制緩和の動きに対して強い警戒感が出ています。「働きたい人が働けるように」という理念が、結果として企業の論理を優先し、労働者の自己責任を強調することに繋がりかねないとの批判です。

規制緩和を進めるのであれば、労働時間管理の厳格化や、従業員の健康を確保するためのセーフティネットをいかに構築するかが極めて重要な課題となります。

国際経済戦略:戦略的通商管理への転換

高市氏の通商政策は、これまでの「自由貿易による効率性の追求」を第一とする路線から、「国家主権と経済安全保障を優先する戦略的通商管理」へと大きく舵を切っている点が特徴です。

これは、米中対立の先鋭化やロシアによるウクライナ侵攻といった地政学リスクの高まりを受け、経済的な相互依存が安全保障上の脆弱性になり得るという認識に基づいています。特定の国に依存しすぎることで、その国の政治的な圧力に屈せざるを得なくなるという事態を避けるためです。

外交の基本方針である「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想においても、経済的な連携が重要な柱となります。具体的には、日米豪印4カ国による「QUAD(クアッド)」の枠組みを活用し、半導体や重要鉱物といった戦略物資のサプライチェーン再編、質の高いインフラ整備、次世代通信規格(5G/6G)のルール形成などで協力を主導します。これにより、特定の国への過度な依存から脱却し、信頼できる同志国との間で強靭な経済圏を構築することを目指します。

また、基本的価値を共有する同志国だけでなく、近年国際社会で影響力を増している「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国との経済協力も重視しています。政府開発援助(ODA)やインフラ投資を通じて、これらの国々との関係を強化し、日本の経済的な影響力を維持・拡大するとともに、国際秩序の安定に貢献する考えです。RCEPやCPTPPといった既存の多国間貿易の枠組みも活用しつつ、安全保障の観点から是々非々で臨むという、より戦略的で現実主義的なアプローチが取られることになるでしょう。

サナエノミクスへの評価:期待と懸念

高市氏の掲げる経済政策「サナエノミクス」に対しては、市場や専門家から期待と懸念が入り混じった賛否両論の評価がなされています。

短期的な視点では、積極財政と金融緩和の継続姿勢が株式市場から好感され、「高市トレード」と呼ばれる株高現象を引き起こしました。建設・インフラ関連や、経済安全保障の文脈で重視される半導体、防衛、宇宙関連などのセクターに資金が向かい、短期的な経済の押し上げ効果を期待する声は大きいです。

一方で、その政策には数多くの中長期的な課題やリスクが指摘されています。最も大きな懸念は、財政規律の緩みです。「責任ある積極財政」という言葉とは裏腹に、財源の裏付けが乏しいまま大規模な財政出動を行えば、国債の信認が低下し、長期金利の急騰や制御不能な円安を招くリスクがあります。

2022年にイギリスで起きた「トラスショック」のように、市場の反乱を引き起こしかねないという警鐘を鳴らす専門家も少なくありません。当時、トラス首相が財源の裏付けのない大規模減税を発表したことで、金融市場が混乱し、英国債の価格が急落、ポンドも急落するという事態が発生しました。トラス首相はわずか数週間で政策を撤回せざるを得なくなり、最終的に辞任に追い込まれました。

ただし、日本は世界最大の対外純資産国であり、経常収支も黒字基調であるため、当時のイギリスとは状況が異なり、同様の事態には陥りにくいとの反論もあります。日本国債の多くは国内で保有されており、海外投資家の動向による影響を受けにくいという特徴もあります。

また、金融緩和の継続と円安容認姿勢は、輸出企業にとっては追い風となる一方で、輸入物価の高騰を通じて国民生活を圧迫し、国内の格差をさらに拡大させる可能性もはらんでいます。物価高対策として財政出動を行いつつ、その副作用としてさらなるインフレを助長しかねないという政策的なジレンマを抱えているとの指摘もあります。

政策実現の政治的ハードル

政策実現のプロセスにも課題は山積しています。高市政権は衆参両院で過半数を確保できていない少数与党であり、政策の推進には野党との連携が不可欠です。

特に、連立を組む日本維新の会や、政策的に近いとされる国民民主党との協調が鍵を握ります。日本維新の会は、規制緩和や身を切る改革を重視する政党であり、積極財政には慎重な面もあります。一方、国民民主党は給付付き税額控除など経済政策では親和性が高い部分もありますが、憲法改正などでは立場が異なる可能性があります。各党の思惑も絡み、合意形成は容易ではありません。

さらに、自民党内にも麻生太郎副総裁をはじめとする財政規律を重視する勢力が存在し、高市氏の積極財政路線がそのまま実行できるかは不透明な状況です。麻生氏は財務大臣経験者として財政健全化を重視しており、無制限な財政出動には慎重な姿勢を示すと見られています。党内の異なる意見をどう調整し、一枚岩の政策推進体制を築けるかが、高市政権の政治手腕の見せ所となります。

経済界・労働界からの評価と注文

高市政権の誕生に対し、経団連、経済同友会、日本商工会議所といった経済3団体は、初の女性総理の誕生を歓迎し、政治の安定と迅速な政策実行への期待を表明しています。

しかし、その政策内容については、評価と注文が入り混じっています。特に経済同友会は、より踏み込んだ提言を行っています。高市氏が掲げる積極財政に対しては、「財源や効果を踏まえた優先順位付けを徹底すべき」と釘を刺し、安易な財政出動には慎重な姿勢を求めています。

さらに、日本経済の構造改革として、「最低賃金の全国加重平均1500円への引き上げ」や、多様な人材の活躍を促すための「選択的夫婦別姓制度の導入」を強く要請しています。これらの提言は、高市氏の「頑張る人が報われる」という理念や保守的な家族観とは必ずしも一致しておらず、今後の政権運営において、経済界との対話と緊張関係が続くことを示唆しています。

最低賃金の大幅引き上げについては、高市氏は一律の引き上げよりも、個人のリスキリング(学び直し)や能力開発を支援することで、自らの努力で所得を向上させられる環境を整備することを重視する姿勢を示しており、経済界の要請とは異なるアプローチを取る可能性があります。

高市内閣の今後の展望と課題

高市内閣の発足は、日本の経済政策が大きな転換点を迎えたことを示しています。71%という高い支持率でスタートした高市政権ですが、この期待にどう応えていくかが今後の鍵となります。

サナエノミクスが目指すのは、単なる経済の再生に留まらず、外交、防衛、技術、社会システムを統合し、日本の「国力」そのものを再構築しようとする壮大な試みです。その挑戦が、失われた数十年を取り戻し、日本を再び力強い成長軌道に乗せる「劇薬」となるのか、それとも財政破綻への扉を開く「毒薬」となるのか、その帰趨は今後の具体的な政策運営と、それに対する国民、そして市場の審判によって決まることになるでしょう。

高市内閣の未来は、二つの大きな課題を克服できるかにかかっています。一つは「政治的実現性」です。少数与党という厳しい政権基盤の中で、連立パートナーである日本維新の会や他の野党、さらには党内の慎重派との間で、いかにして政策実現のための合意形成を図っていくのか、その政治手腕が厳しく問われます。

もう一つは「市場からの信認」です。財源の裏付けに乏しいまま財政拡張路線を突き進めば、国債や通貨に対する信認が失われ、経済に深刻なダメージを与えかねません。成長への道筋を具体的に示し、市場との丁寧な対話を通じて、その政策が「無謀なバラマキ」ではなく「未来への賢明な投資」であることを証明し続ける必要があります。

国民が期待する物価高対策、外交・安全保障、社会保障といった喫緊の課題に対して、高市内閣がどのような具体的な成果を示せるかが、今後の支持率を左右することになるでしょう。発足時の高い支持率に甘んじることなく、一つ一つの政策を着実に実行し、国民の期待に応えていくことが求められています。

日本初の女性総理大臣として誕生した高市早苗氏は、歴史的な使命を背負っています。その手腕と政策の実効性が、今後の日本の進路を大きく左右することになるのです。私たち国民も、高市内閣の動向を注視し、建設的な議論を通じて、より良い日本の未来を共に築いていく姿勢が求められています。

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