夜行バスの相席ブロックはいつからキャンセル料が発生?返金額も解説

社会

夜行バスの「相席ブロック」とは、隣り合う2席を予約しておき、出発直前に1席だけキャンセルすることで隣席を空席にする不正行為です。キャンセル料は多くのバス会社で出発7日前から発生し、当日キャンセルでは運賃の50%が徴収されるため、返金額は支払済運賃の半額程度となります。かつては100円程度のキャンセル料で済む路線もありましたが、2024年以降は各社が規定を厳格化しており、相席ブロックの経済的メリットは急速に失われつつあります。

この記事では、夜行バス・高速バスにおける相席ブロックの手口から、各バス会社のキャンセル料が「いつから」発生するのか、実際の「返金額」はいくらになるのかまで、詳しく解説します。さらに、この行為に伴う法的リスクや、正規サービスである「ダブルシート」との比較、そして今後の対策についても網羅的にお伝えします。快適な夜行バス移動を求める方にとって、知っておくべき重要な情報をまとめました。

夜行バスの相席ブロックとは何か

夜行バスにおける「相席ブロック」とは、本来1名で乗車する予定であるにもかかわらず、隣り合う2席分の予約を行い、出発直前やキャンセル料の負担が軽い時期に片方の座席だけをキャンセルする行為を指します。これにより、実質的に隣の席を空席のまま確保し、正規の「ダブルシート」料金を支払うことなく快適な移動空間を手に入れようとするものです。

この現象は2024年から2025年にかけて顕在化し、高速バス・夜行バス業界において深刻な問題となりました。単なるマナー違反にとどまらず、予約システムの脆弱性を突いた行為として、各バス会社が対策を強化する事態に発展しています。インターネット上では「裏技」や「ライフハック」として紹介されることもありますが、後述するように偽計業務妨害罪に問われる可能性のある違法行為です。

相席ブロックの具体的な手口

相席ブロックの実行プロセスは、高速バス予約システムの「座席指定機能」と「キャンセル規定」の時間差を利用したものです。まず実行者は、乗車予定の便において窓側と通路側など隣り合う2つの座席を同時に確保します。多くの予約サイトでは1回の操作で複数名の予約が可能であり、架空の同行者名を入力してシステムのチェックを通過させるケースが見られます。この時点で座席在庫は2席分減少し、他の利用者はこれらの座席を選択できなくなります。

次に、実行者は決済期限やキャンセル料が高くなる直前まで予約を保持します。多くのバス会社では予約から決済までの猶予期間を設けていたり、出発の数日前まではキャンセル料を無料または低額に設定していたりするためです。この期間を利用して、隣席に他者が入り込む余地を排除し続けます。

最終段階として、出発直前(当日の数時間前やキャンセル料が跳ね上がる境界線の直前)に、不要な1席分のみをキャンセルします。キャンセルされた座席はシステム上「空席」として在庫に戻されますが、出発直前というタイミングでは新たな予約が入る確率は極めて低くなります。特に夜行バスの場合、当日夜間に出発する便をその数時間前に予約する需要は限定的です。また、多くの予約サイトが出発の数十分前にはWeb予約を締め切る仕様となっていることも、この手口を成立させる要因となっています。

相席ブロックが増加した背景

なぜ2024年以降に相席ブロックが急増したのでしょうか。その背景には現代特有の心理的・社会的要因が複数存在します。

第一に、新型コロナウイルスの流行を経て定着した「他者との距離感」の変化があります。社会的距離の確保が叫ばれた時期に、隣に人がいない状態が「安全」で「当然」であるという感覚が醸成されました。この感覚がウイルスへの恐怖が薄れた後も「不快感への忌避」として残り、見知らぬ他人と肩が触れ合う距離で長時間過ごす高速バスの環境に対する耐性を低下させています。夜行バスでは寝顔を見られることへの抵抗感や、隣席の乗客の体臭や衣擦れの音に対する過敏な反応が、相席ブロックを正当化する内的な動機となっています。

第二に、SNSを中心とした情報の伝播と「損失回避」の心理があります。インターネット上では相席ブロックの手法が「快適に移動するための裏技」として共有され、それを知らないことは「損」であるかのような言説が形成されています。行動経済学のプロスペクト理論が示すように、人間は利得の喜びよりも損失の痛みを大きく評価する傾向があります。「隣に人が来る」という事象を「快適性の損失」と捉え、それを回避するためであれば多少の倫理的逸脱やキャンセル料の支払いは正当な防衛策であると誤認する心理が働いています。

第三に、高速バスという交通手段に求められる「安さ」と「質」の矛盾があります。新幹線や航空機と比較して圧倒的に安価な移動手段を選択しながらも、個室のようなプライバシーを求めるという相反する欲求が利用者の内面に存在しています。正規料金を払って2席確保するほどの経済的余裕はないが、4列シートの窮屈さは我慢できないという層が、システムの不備を突く形で最適解を見出した結果が相席ブロックであるとも言えます。

主要バス会社のキャンセル料はいつから発生するか

相席ブロックを助長してきた最大の構造的要因は、長年にわたり日本のバス業界で慣習となっていた「安価なキャンセル料」でした。しかし、問題の深刻化を受けて各事業者は規定の改定や厳格化を進めています。ここでは主要な高速バス事業者におけるキャンセル料規定について、「いつから」発生するのかを中心に詳しく解説します。

WILLER EXPRESS(ウィラーエクスプレス)のキャンセル料規定

WILLER EXPRESSはダイナミックプライシング(価格変動制)を積極的に導入している事業者であり、キャンセル規定についても予約プランや時期によって変動する体系を採用しています。

WILLERの標準的なプランでは、予約完了後であっても出発日の8日前まではキャンセル料が発生しません。この期間内であれば無償で予約の取り消しが可能となるため、早期予約段階での座席確保が行われやすい環境がありました。

キャンセル料が発生し始めるのは出発日の7日前からです。この時点から出発の2日前までの期間にキャンセルを行った場合、旅行代金(運賃)の30%がキャンセル料として徴収されます。さらに出発日の前日になると、この料率は40%(一部プランでは50%)に上昇します。そして出発当日に関しては、出発時刻までのキャンセルであっても旅行代金の50%という高率のキャンセル料が適用されます。出発時刻を過ぎてからの連絡や無連絡での不参加の場合は、旅行代金の100%すなわち全額が没収され、返金は一切行われません。

ジェイアールバス関東(JRバスグループ)のキャンセル料規定

JRバスグループ、特にジェイアールバス関東は、路線の特性(長距離夜行か短距離昼行か)に合わせてキャンセル料の規定を細かく「パターン化」している点が特徴です。このパターンの違いが相席ブロックのしやすさに直結しています。

短距離路線の規定として、東京から近郊の観光地や地方都市を結ぶ短距離・中距離路線(「夢街道会津号」「上州ゆめぐり号」「マロニエ号」など)の多くは、依然として出発時刻まで一律100円(または110円)という緩やかなキャンセル規定が適用されています。これらの路線では出発の5分前にキャンセルしても負担額はわずか100円程度で済みます。鉄道の乗車券変更の柔軟性に倣った公共交通機関としての利便性重視の結果ですが、相席ブロックを行う側にとっては「100円払えば隣を空けられる」という環境を提供してしまっています。

長距離・夜行路線の規定として、東京〜大阪間の「ドリーム号」や「グラン昼特急号」などの長距離人気路線では規定が大幅に厳格化されています。これらの路線では乗車日の11日前までは100円でキャンセル可能ですが、10日前から8日前までは運賃の20%7日前から2日前までは30%と段階的に上昇します。そして乗車日の前日から出発時刻までのキャンセルについては、運賃の50%(一部の早売運賃ではさらに高率の場合もあり)が徴収されます。

VIPライナー(平成エンタープライズ)のキャンセル料規定

VIPライナーは独自の待合室(VIPラウンジ)などのサービスで知られますが、キャンセル規定に関しては比較的シンプルかつ早期から手数料が発生する体系をとっています。

VIPライナーの規定では、キャンセル料が無料となるのは出発日の11日前や21日前まで(プランによる)であり、出発日の10日前あるいは7日前の段階から旅行代金の20%〜30%のキャンセル料が発生し始めるのが一般的です。具体的には7日前から2日前までは30%前日は40%当日(出発時刻まで)は50%となります。

特筆すべきは、VIPライナーのWebサイトにおいて「ご予約のみでキャンセルを繰り返されるお客様に対しては、不正とみなし、会員資格の取り消しと共に、ご予約をお断りさせていただきます」という強力な警告文が明記されている点です。金銭的なペナルティだけでなくサービスの利用停止という措置を伴うものであり、事業者としての断固たる姿勢を示しています。

その他の事業者の傾向

さくら観光などの他の主要事業者も、概ねWILLERやVIPライナーと同様の料率設定を採用しています。出発日の10日前〜8日前頃から20%程度のキャンセル料が発生し、当日は50%となるのが業界のスタンダードとなりつつあります。しかし、一部の旧来型の予約システムを利用している地方のバス会社や共同運行便においては、システム改修の遅れなどから依然として直前まで数百円でキャンセル可能なケースも散見され、対策の足並みは完全には揃っていないのが現状です。

夜行バスのキャンセル時に返金される金額の計算方法

キャンセル料の規定を理解したところで、実際に利用者の手元に戻ってくる「返金額」がいくらになるのかを具体的に解説します。返金額の計算は単純にキャンセル料を差し引くだけではなく、事務手数料が別途かかる場合があることに注意が必要です。

WILLERの返金額計算と事務手数料

WILLERにおける返金額の計算は、単に運賃からキャンセル料を引くだけではありません。特にコンビニ決済や銀行振込などで支払い済みの場合、返金に伴う「払戻手数料(事務手数料)」が別途差し引かれます。

計算式は以下の通りです。返金額 = 支払済代金 -(規定のキャンセル料 + 返金事務手数料)

返金事務手数料は返金手続き1件につき一律440円程度(税込)かかる場合が多くなっています。例えば、5,000円の運賃を支払済みで出発当日にキャンセルした場合を想定します。キャンセル料は50%の2,500円です。ここからさらに事務手数料440円が引かれるため、返金額は2,060円となります。利用者の負担額(失う金額)はキャンセル料2,500円と手数料440円の合計2,940円となり、運賃の半額以上を失う計算になります。

このコスト構造は、かつてのような「数百円でブロックできる」状況とは大きく異なり、相席ブロックに対する一定の経済的抑止力として機能していると言えます。

JRバスの返金額計算と払戻手数料の二重構造

JRバスの場合、購入場所によって払戻しの手続きと手数料が異なる点が重要です。「高速バスネット」等のWebサイト上でクレジットカード決済を行った場合は、Web上でのキャンセル操作により上記のキャンセル料のみが差し引かれて返金されます。

しかし、コンビニエンスストアで発券した紙のチケットの場合、バス会社の窓口ではなくウェルネット株式会社などの代行サービスを通じた電話やWebでの払戻し手続きが必要となることが多くなっています。この場合、規定のキャンセル料に加えて別途「事務手数料」として500円(税別)程度が加算されます。

したがって、コンビニ発券のチケットを用いて100円キャンセルの路線で相席ブロックを行ったとしても、実質の負担額は100円+550円=650円程度となります。

返金額の具体的なシミュレーション

運賃5,000円の区間を例に、いくつかのケースで返金額をシミュレーションしてみましょう。

ケース1:出発7日前にキャンセルした場合(キャンセル料30%)
キャンセル料は5,000円×30%=1,500円です。事務手数料440円を含めると負担額は1,940円となり、返金額は約3,060円となります。

ケース2:出発前日にキャンセルした場合(キャンセル料40%)
キャンセル料は5,000円×40%=2,000円です。事務手数料440円を含めると負担額は2,440円となり、返金額は約2,560円となります。

ケース3:出発当日にキャンセルした場合(キャンセル料50%)
キャンセル料は5,000円×50%=2,500円です。事務手数料440円を含めると負担額は2,940円となり、返金額は約2,060円となります。

このように、出発日が近づくほど返金額は減少し、当日キャンセルでは支払った運賃の4割程度しか戻ってこない計算になります。

相席ブロックに伴う法的リスクと罰則

相席ブロックについて、多くの利用者は「キャンセル料さえ払えば問題ない」「規約の範囲内の行為だ」と軽く考えている傾向があります。しかし、法的な観点から分析すると、この行為は単なるマナー違反にとどまらず、刑法上の犯罪や民法上の不法行為に該当する可能性がある極めて危険な行為です。

偽計業務妨害罪に問われる可能性

相席ブロック行為が問われうる最も重い法的責任は、刑法第233条に規定される「偽計業務妨害罪」です。法律の条文では、虚偽の風説を流布しまたは偽計(人を欺く計略)を用いて、人の信用を毀損しまたはその業務を妨害した者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処するとされています。

この法律を相席ブロックに適用する場合の論理構成は以下のようになります。まず「偽計(欺く行為)」については、実際には乗車する意思がない架空の同行者(あるいは乗車しない自分自身)の分まで座席を予約する行為が該当します。予約システムに対して「2名で乗車する」という虚偽の情報を入力し、誤信させているからです。次に「業務妨害」については、本来であれば販売できたはずの座席を不正に確保し、他の顧客の予約機会を奪い、バス会社の販売業務を阻害し、結果として空席を生じさせて収益を減少させる行為が該当します。

過去には小田急ロマンスカーや空港リムジンバスにおいて、数千回に及ぶ架空予約とキャンセルを繰り返した人物がこの偽計業務妨害の容疑で逮捕された事例が存在します。相席ブロックにおいても、反復継続的に行っている場合や悪質性が高いと判断された場合は、バス会社が被害届を提出し警察が捜査に乗り出す可能性は十分に考えられます。

民法上の損害賠償請求リスク

刑事責任とは別に、民事上の責任を追及される可能性もあります。民法第709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています(不法行為責任)。

バス会社側は相席ブロックを行った利用者に対し、以下の損害賠償を請求する法的根拠を持ちます。逸失利益としてはブロックされなければ他の客に販売できていたはずの運賃相当額、調査費用としては不正な予約パターンを特定するために要したシステム調査の人件費や外部委託費、対応費用としては他の乗客からのクレーム対応や再販手配にかかったコストなどが挙げられます。

民事訴訟においては「故意」の立証がハードルとなります。「当日は本当に友人と乗る予定だったが急病で来られなくなった」と主張された場合、それが嘘であることを証明するのは容易ではありません。しかし、SNSでの書き込み(「相席ブロック成功!」などの投稿)や、過去の予約履歴(毎回2席予約して直前に1席キャンセルしている等)が証拠となれば、故意が認定される可能性は高まります。

運送約款および会員規約違反によるペナルティ

法的措置に至る前段階として、バス会社の定める「運送約款」や「会員規約」への違反は明白です。ほぼ全ての予約サイトの利用規約には、以下のような禁止事項が含まれています。重複予約の禁止として同一人物が同一日時の同一便を重複して予約すること、虚偽情報の登録禁止として架空の名前や他人の名前を無断で使用して予約すること、迷惑行為の禁止として正当な理由のない頻繁なキャンセルや事業者の業務を妨害する行為などです。

これらの規約違反が確認された場合、事業者は即座に予約を取り消し、会員資格を剥奪(強制退会)し、将来にわたってのサービスの利用を拒否する権限を有しています。JRバス関東やWILLERなどは不正予約に対して厳格に対処する方針を公式サイト等で警告しており、実際にブラックリスト入りして予約ができなくなるリスクは現実的なものです。

正規サービス「ダブルシート」との比較

相席ブロックを行う利用者の動機が「隣を空けたい」という点にあるならば、そのニーズに応える正規のサービスとして「ダブルシート(1名2席確約)プラン」が存在します。不正行為である相席ブロックと正規サービスであるダブルシートを、コストとリスクの観点から比較してみましょう。

ダブルシートプランの価格設定

「ダブルシート」とは、1名の乗客が隣り合う2席分の座席を公式に購入し、占有権を確保するプランです。WILLER EXPRESS、ジェイアールバス、VIPライナーなどの主要各社が導入しています。

その価格設定は時期やバス会社によって大きく異なりますが、主に3つのパターンに分類できます。

キャンペーン型(低価格上乗せ)は、過去のWILLERのキャンペーンのように、通常運賃にプラス500円〜1,000円程度を追加するだけで利用できるタイプです。利用者にとって最も魅力的ですが、販売数や期間が限定されていることが多いのが特徴です。

セット割引型は、2席分の運賃の合計額ではなく、例えば「1.5人分」程度の価格設定で販売されるタイプです。JRバスのダブルシートなどで見られる設定で、通常5,000円の区間でダブルシートプランが7,500円〜8,000円程度で販売されるイメージです。

単純倍額型は、特別な割引はなく単純に2席分の運賃を支払う必要があるタイプです。繁忙期などはこの設定になることが多く、コストは2倍となります。

相席ブロックと正規プランのコスト比較

運賃5,000円の区間におけるコストパフォーマンスを比較してみます。

相席ブロック(当日50%キャンセルの場合)では、利用者は予約時に2席分(10,000円)を確保します。当日キャンセルにより、自席分5,000円はそのまま支払います。キャンセルした席については5,000円の50%である2,500円がキャンセル料として徴収され、残りの2,500円(手数料除く)が返金されます。結果として利用者が負担する総額は7,500円(自席5,000円+キャンセル料2,500円)となります。

正規ダブルシートプラン(セット割引型の場合)では、バス会社がダブルシートプランを7,000円で販売していた場合、正規プランで購入した方が相席ブロックを行うよりも500円安く済むことになります。

相席ブロック(100円キャンセルの場合)では、キャンセル料が100円の路線の場合、総額は5,100円で済んでしまいます。この場合、正規プラン(仮に7,000円)よりも圧倒的に安く、不正行為への経済的インセンティブが強く働いてしまいます。

現在のバス業界のトレンドとして、キャンセル料を「当日50%〜100%」へと引き上げる動きが加速しています。これにより「相席ブロックの方が高くつく」あるいは「正規プランと変わらない」状況が生まれつつあります。法的リスクやアカウント停止のリスクを冒してまで、同額あるいは高額な費用を払ってブロックを行う合理性は消滅しつつあると言えます。しかし、依然として「100円キャンセル」が可能な路線が残存していることが、問題を完全に解決できない要因となっています。

方法負担額(運賃5,000円の場合)リスク
相席ブロック(当日キャンセル)約7,500円法的リスク・アカウント停止
正規ダブルシート7,000円〜8,000円程度なし
相席ブロック(100円路線)約5,100円法的リスク・アカウント停止

バス会社による対策と今後の展望

バス事業者側もキャンセル料の値上げだけでなく、テクノロジーを駆使したシステム面からの対策を強化しています。

AIとアルゴリズムによる不正検知システム

最新の予約システムにはAI(人工知能)や高度なアルゴリズムを用いた不正検知機能が組み込まれ始めています。具体的には以下のような挙動をシステムが監視しています。

予約・キャンセルの繰り返しとして、特定のユーザーIDやIPアドレス、電話番号から頻繁に「予約→直前キャンセル」が繰り返されていないかを検出します。不自然な座席選択として、常に「通路側」のみをキャンセルし隣の「窓側」を維持し続けるパターンがないかを分析します。重複データの照合として、異なる名前で予約されていても電話番号やメールアドレス、決済クレジットカード情報、デバイスの端末識別子などが一致していないかを確認します。

これらの条件に合致した場合、システムが自動的に警告を発したり予約を強制的にブロックしたりする仕組みが導入されつつあります。JRバス関東や高速バスドットコムなどの大手プラットフォームでは、このような不正対策ソリューションの導入や、ボット(自動プログラム)による大量予約を防ぐための認証システムの強化が進んでいます。

自動キャンセル機能と決済期限の厳格化

「とりあえず予約」を防ぐため、決済期限の厳格化も進んでいます。かつては「乗車当日まで支払い猶予」があるケースも多かったですが、現在は「予約日を含めて3日以内」あるいは「出発日の○日前まで」に入金が確認できない場合、システムが即座に自動キャンセルを実行し座席を在庫に戻す処理が行われています。

富士急バスなどの一部事業者では、未決済予約の自動キャンセル期間を大幅に短縮し、座席の「仮押さえ」ができる時間を極小化する対策を講じています。

ダイナミックプライシングと将来像

今後は航空業界のように、需要に応じて価格やキャンセル規定がリアルタイムで変動する「ダイナミックプライシング」と連動した、より洗練された座席管理が主流になると予想されます。

混雑状況に応じてダブルシートプランの価格を自動調整したり、出発直前に空席がある場合に限り既存の予約客に対して格安で隣席購入をオファーする(アップセル)機能などが実装されれば、相席ブロックという不正な手段に頼らずとも適正な価格で快適性を享受できる環境が整うでしょう。

夜行バスで隣席を空けたい場合の正しい選択肢

相席ブロックは違法リスクを伴う不正行為であることが明らかになりました。では、正当な方法で隣席を空けて快適に移動するにはどうすればよいでしょうか。

ダブルシートプランの積極的活用

最も確実で安全な方法は、各バス会社が提供している正規のダブルシートプランを利用することです。キャンペーン期間中であれば通常運賃にわずかな追加料金で利用できる場合もあります。予約サイトで「ダブルシート」「隣席確保」などのキーワードで検索し、対応便を探してみることをおすすめします。

3列独立シートの選択

最初から個室感の高い3列独立シートを選択するという方法もあります。3列独立シートは各座席が独立して配置されており、隣席との間にカーテンや仕切りがあるタイプが多いため、4列シートのような窮屈さや他者との接触を気にする必要がありません。料金は4列シートより高くなりますが、相席ブロックのような不正行為に手を染めるリスクを考えれば、正規のプレミアムサービスを利用する方がはるかに賢明です。

閑散期・平日便の活用

需要の少ない閑散期や平日便を選ぶことで、自然と隣席が空席になる可能性が高まります。特に週中の火曜日や水曜日出発の便は空いていることが多く、追加料金なしで隣席が空くケースもあります。

まとめ

夜行バス・高速バスにおける「相席ブロック」は、隣り合う2席を予約して直前に1席だけキャンセルすることで隣席を空席にする不正行為です。2024年以降に問題が顕在化し、各バス会社がキャンセル料の厳格化や不正検知システムの導入などの対策を強化しています。

キャンセル料は多くのバス会社で出発7日前から発生し、当日キャンセルでは運賃の50%が徴収されます。返金額は事務手数料を差し引くと支払済運賃の4割程度となり、かつてのように「数百円で隣を空けられる」状況は急速に失われつつあります。

さらに重要なのは、相席ブロックが偽計業務妨害罪(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)に問われる可能性のある違法行為であるという点です。過去には類似の行為で逮捕者も出ており、SNSへの投稿や予約履歴が証拠となって摘発されるリスクは現実のものです。アカウント停止やブラックリスト入りによって将来的にサービスを利用できなくなる可能性もあります。

隣席を空けて快適に移動したいのであれば、正規のダブルシートプランを利用するか、最初から3列独立シートを選択することが最も賢明で安全な方法です。不正な手段でリスクを負う時代は終わりを告げました。バス業界も利用者のニーズに応えるサービス設計を進めており、適正な価格で快適性を享受できる環境が整いつつあります。

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