日本の安全保障体制が歴史的な転換期を迎えています。2025年10月21日に発足した高市早苗内閣のもと、内閣情報調査室を国家情報局に格上げする方針が明確に示されました。この動きは、単なる組織の名称変更にとどまらず、日本のインテリジェンス機能を根本から強化し、諸外国並みの情報機関体制を構築するための重要な一歩となります。北朝鮮による核・ミサイル開発の脅威、中国の軍事活動の活発化、ロシアの対外活動、さらにはサイバー攻撃や偽情報の流布など、日本を取り巻く安全保障環境は急速に厳しさを増しており、これらの脅威に対処するためには高度な情報収集・分析能力が不可欠です。内閣情報調査室から国家情報局への格上げがいつから実施されるのか、その具体的な時期やスケジュール、背景、そして今後の展望について、詳しく解説していきます。この改革は、日本の国土と国民を守るための情報インフラを整備する上で、極めて重要な意味を持つものと言えるでしょう。
国家情報局への格上げはいつから実施されるのか
内閣情報調査室から国家情報局への格上げについて、最も関心が高いのはその実施時期です。2026年の通常国会において、現在の内閣情報調査室及び内閣情報官を格上げし、国家情報局及び国家情報局長を創設することが、自民党と日本維新の会の連立政権合意書に明記されました。通常国会は例年1月下旬に召集されることから、2026年1月末頃から法案の審議が開始され、年度内の成立を目指すものと考えられます。したがって、法律の施行は早ければ2026年4月以降、遅くとも2026年度内には実現する見込みです。
この格上げは段階的に実施される計画となっています。まず2026年の通常国会で国家情報局を創設し、その後、2027年度末までに対外情報庁（仮称）を独立した組織として設置することが合意されています。つまり、2026年に国内外の情報を統括する国家情報局を設置し、2028年3月末までに対外情報に特化した専門組織を新設するという二段階のロードマップが描かれているのです。さらに、情報機関職員を育成するための府省横断的な情報職員養成機関も2027年度末までに設置される予定であり、情報分析の専門家を体系的に育成する仕組みが整備されます。
法的枠組みの整備も並行して進められます。2026年の通常国会では、国家情報局の設置に伴い、現在の内閣情報会議を廃止し、新たに国家情報会議を設置する法律も制定される予定です。この国家情報会議は、各省庁の情報機関を統括し、政府全体の情報活動を調整する役割を担うことになります。また、スパイ防止に関する法制についても、連立政権合意書において年内に議論を開始し、早期成立を図るとされており、情報保全のための法的基盤も並行して整備される見通しです。
格上げの背景にある安全保障環境の変化
内閣情報調査室から国家情報局への格上げが必要とされる背景には、日本を取り巻く安全保障環境の劇的な変化があります。北朝鮮による核・ミサイル開発は、日本の安全保障にとって前例のない、重大かつ差し迫った脅威となっており、その技術は年々高度化しています。中国の軍事活動も、地域及び国際社会の安全保障上の強い懸念事項とされており、特に東シナ海や南シナ海における活動の活発化は、日本の安全保障に直接的な影響を及ぼしています。
ロシアの対外活動や軍事的動向、そして中国との戦略的な連携も、日本を含むインド太平洋地域にとって強い懸念材料です。特に2022年以降のウクライナ情勢を契機として、ロシアと中国の連携が深まる中で、日本の安全保障環境はさらに複雑化しています。サイバー攻撃や偽情報の流布は平時から恒常的に発生しており、有事と平時の境界が曖昧になってきているのが現状です。安全保障の対象も、従来の軍事領域から経済分野にまで拡大しており、総合的な対処能力が求められています。
政府機関や軍事関連の情報ネットワークに対するサイバー攻撃が頻発しており、その中にはロシア、中国、北朝鮮の政府機関が関与していると指摘される事例もあります。北朝鮮のサイバー脅威アクターは、政府機関、金融機関、防衛産業などで広く使用されているソフトウェア製品を標的としたサプライチェーン攻撃を実施しています。FBIの発表によれば、北朝鮮政府系のハッカー集団が15億ドル相当の暗号資産を窃取したとされており、これらの資金が核・ミサイル開発に転用されている可能性が指摘されています。このような脅威に対処するためには、高度な情報収集・分析能力を持つ組織が不可欠です。
経済安全保障と情報機関の役割
安全保障の概念は、従来の軍事的な領域を超えて、経済分野にまで拡大しています。中国の国家情報法は、2014年4月に習近平政権が導入した総体的国家安全観に基づき、中央政府及び共産党主導の法治支配を強化する一環として制定されました。この法律により、中国企業は政府の情報収集活動に協力する義務を負うこととなり、先端技術や機密情報の流出リスクが高まっています。
このような状況下で、日本も経済安全保障の観点から、より強固な情報収集・分析体制を構築する必要に迫られています。特に、半導体やAI、量子技術などの先端技術分野においては、技術流出が国家の安全保障に直結する問題となっています。経済活動と安全保障が密接に結びついた現代において、情報機関は経済に関する情報も含めて包括的に収集・分析する能力が求められています。
現代の安全保障において、同盟国や友好国との情報共有は極めて重要です。しかし、日本の情報機関の能力や体制が不十分であると、他国から重要な情報を提供してもらえない、あるいは日本が収集した情報の信頼性が疑われるという事態が生じかねません。国家情報局の設置により、情報の収集・分析能力を高め、国際的な情報共有のネットワークにおいて日本の存在感を高めることが期待されています。特に、ファイブアイズ（アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの情報共有枠組み）との連携強化は、日本の安全保障にとって重要な意味を持ちます。
現在の内閣情報調査室の役割と限界
内閣情報調査室は、内閣の重要政策に関する情報を収集・分析して官邸に報告し、官邸の政策決定と遂行を支援する官邸直属の情報機関です。治安維持のための情報収集を目的とする警察や公安調査庁とは異なり、内閣が重要な政策を遂行する上で必要とされる情報を対象としており、国内外の情勢により求められる情報が変化します。内閣情報官のもとで、次長及び総務部門、国内部門、国際部門、経済部門、内閣情報集約センター並びに内閣衛星情報センターで分担して業務を処理しています。
内閣情報官は、日本の情報機関の取りまとめ役として、内閣総理大臣に週2回、各20〜30分程度の定例報告をしているほか、必要に応じて随時、国内外の特異情報に関する分析を総理に直接報告しています。しかし、この体制には限界があり、自前の情報収集能力の不足が指摘されています。内閣情報調査室は、シンクタンクなどに調査の一部を委託しており、具体的には世界政経調査会、国際情勢研究会、国民出版協会などが事実上の別働隊として機能していますが、諸外国の情報機関と比較すると、組織的な情報収集能力において大きな差があります。
批判的な指摘として、内閣情報調査室は自前の情報収集能力など持たず、国内、それも永田町近辺の御用聞きに終始しているという評価があります。また、各省庁は習性として情報を抱え込む傾向があり、国内だけでなく外事情報においても情報共有の問題が指摘されています。この縦割り行政の弊害により、重要な情報が内閣に集約されず、迅速な意思決定が阻害されるケースがあります。国家情報局への格上げは、こうした組織上の課題を解決し、各省庁の情報を一元的に集約・分析する体制を構築することを目的としています。
国家情報局の具体的な組織と権限
国家情報局は、国家安全保障局と同格の組織として位置付けられます。国家情報局長も、国家安全保障局長（国家安全保障担当の内閣総理大臣補佐官）と同格とされ、内閣総理大臣を直接補佐する役職となります。この格上げにより、情報機関のトップが内閣の意思決定により深く関与できるようになり、安全保障政策と情報活動の連携が強化されることが期待されています。
国家情報局は、各府省に対して情報提供を指示する権限を持つことになります。これにより、従来の縦割り行政の弊害を克服し、政府全体の情報を効率的に集約することが可能となります。また、国家情報会議を通じて、各省庁の情報機関の活動を調整し、政府全体としての情報戦略を策定する役割も担います。この権限の強化は、情報の一元化と迅速な意思決定を実現するための重要な要素です。
2027年度末までに、国家情報局とは別に対外情報庁（仮称）が独立した組織として設置される予定です。この対外情報庁は、海外における情報収集活動を専門に行う組織であり、諸外国のCIAやMI6に相当する機関となります。現在、日本には対外情報を専門に収集する組織が存在せず、この点が諸外国と比較して大きな弱点とされてきました。興味深いことに、コスタリカですら対外情報機関を持っているとされており、先進国の中で対外情報機関を持たない日本の状況は極めて異例です。対外情報庁の設置により、この空白が埋められることになります。
人材育成と組織文化の変革
府省横断的な情報職員養成機関が2027年度末までに設置され、情報分析の専門家を体系的に育成する仕組みが整備されます。これにより、情報機関の能力向上と、各省庁間の情報共有の円滑化が図られます。従来、日本の情報機関は人材育成の体系化が不十分であり、諸外国の情報機関と比較して専門性に欠けるとの指摘がありました。この養成機関の設置により、長期的な視点で情報機関の能力を底上げすることが期待されています。
国家情報局を設置するだけでは、情報機関の能力は向上しません。各省庁の縦割り意識を打破し、情報を共有する文化を根付かせることが重要です。これには時間がかかる可能性があり、トップのリーダーシップと継続的な改革努力が不可欠です。日本のインテリジェンスコミュニティは、複数の機関で構成されており、内閣情報調査室、防衛省情報本部、公安調査庁、警察庁警備局、外務省国際情報統括官組織、内閣衛星情報センターなどがそれぞれ独自の所管事項と専門性を持ちながら活動しています。
これらの機関間で人事交流も行われており、内閣情報調査室には警察庁警備局、公安調査庁、防衛省情報本部、外務省の情報関連組織などから出向者が配置され、インテリジェンスコミュニティとしての連携が図られています。また、防衛省情報本部長を退任後に内閣衛星情報センター所長に就任するケースが多く見られるなど、組織間の人事交流も行われています。しかし、これらは個別の連携に留まっており、政府全体としての情報戦略を統一的に推進する体制は十分に確立されていません。国家情報局の設置により、こうした連携が制度化され、より効果的な情報活動が可能になることが期待されています。
自民党と日本維新の会の連立合意の意義
2025年10月20日、自民党と日本維新の会は連立政権樹立で合意し、合意文書に署名しました。この合意により、翌21日に高市早苗内閣が発足しました。この連立合意書において、国家情報局の創設が重要政策として明記されています。従来の自民党と公明党の連立では、公明党が慎重な姿勢を示していた憲法9条改正やスパイ防止法といった政策が、日本維新の会との連立では前面に押し出される形となりました。
連立政権合意書には、2026年の通常国会において内閣情報調査室及び内閣情報官を格上げし、国家情報局及び国家情報局長を創設すること、国家情報局及び国家情報局長は国家安全保障局及び国家安全保障担当の内閣総理大臣補佐官と同格とすること、2027年度末までに対外情報庁（仮称）を独立した組織として設置すること、2027年度末までに府省横断的な情報職員養成機関を設置すること、情報及びスパイ防止関連法制については年内に議論を開始し早期成立を図ることが盛り込まれています。
日本維新の会の共同代表である藤田文武氏は、自民党との連立交渉が予想される中でスパイ防止に関する立場がテーブルに載せられて前進することを望むと述べていました。一方、立憲民主党や公明党はスパイ防止法の導入について慎重な姿勢を示しており、今後の国会審議では論戦が予想されます。高市首相は、総裁選挙期間中から情報機関の強化を重要政策として掲げており、今回の連立合意により、その実現に向けた道筋が明確になったと言えます。
諸外国の情報機関との比較から見える課題
諸外国の情報コミュニティの予算を防衛費に対する割合で見ると、アメリカは予算8兆円、人員20万人で防衛費の12パーセント、イギリスは予算3000億円、人員1万6000人で防衛費の10パーセント、フランスは予算1200億円、人員1万3000人で防衛費の4パーセント、イスラエルは予算6000億円、人員6000人で防衛費の10パーセントとなっています。これに対して、日本は予算1500億円以下（推定）、人員5000人以下で防衛費の2〜3パーセントとなっており、諸外国と比較して著しく少ないことが分かります。
英国の情報機関（MI6、MI5など）は、統合情報委員会（JIC）を通じて情報の共有に優れています。JICは、各情報機関から集められた情報を一元化し、政府の意思決定に活用する仕組みを確立しています。日本の国家情報局と国家情報会議も、この英国モデルを参考にしていると考えられます。各省庁の情報を効率的に集約し、政府全体の情報戦略を統一することが重要です。
アメリカのCIAは、世界最大の情報機関であり、対外諜報活動を専門に行っています。イギリスのMI6（秘密情報部）も、対外情報収集に特化した組織です。これらの機関は、自国の安全保障だけでなく、国益の確保のためにグローバルな情報ネットワークを構築しています。日本の対外情報庁が2027年度末までに設置されることで、ようやく日本もこれらの国々と同様の体制を持つことになります。イスラエルのモサド（諜報特務庁）は、世界で最も優れた情報機関の一つとされており、特に人的情報収集能力（HUMINT）に優れています。日本の情報機関も、技術的な情報収集だけでなく、人的情報収集の能力向上が求められています。
スパイ防止法制と情報保全の重要性
情報機関の能力強化と並行して、情報保全のための法整備も不可欠です。現在、日本にはスパイ行為を包括的に取り締まる法律が存在せず、外国の諜報活動に対して十分な対処ができない状況にあります。連立政権合意書においては、情報及びスパイ防止関連法制については年内に議論を開始し早期成立を図るとされており、国家情報局の設置と並行して、法整備が進められる見通しです。
日本維新の会は、スパイ防止法制に関する中間整理をまとめ、対外情報庁の創設を提言しています。維新は、臨時国会でスパイ防止基本法を提出する方針を示しており、情報庁の創設も盛り込む予定です。維新の藤田幹事長は、今の日本の情報機関は権限も予算も人も足りず、国民の命と財産、領土を守るため諸外国並みの情報機関が必要だと述べています。
一方で、スパイ防止法の導入については、市民の自由や人権を侵害するのではないかという懸念も示されています。日常会話から思想まで監視されるのではないかとの批判もあり、今後の国会審議では、国家の安全保障と個人の自由のバランスをどう取るかが焦点となるでしょう。立憲民主党や公明党は慎重な姿勢を示しており、紛糾必至の情勢です。政府には、国民の理解を得ながら、適切な法制度を構築することが求められます。
高市首相のリーダーシップと政府の取り組み
2025年10月24日、政府は国内外の情報活動の司令塔となる国家情報局の創設に向けた調整を開始しました。高市早苗首相は、木原誠二官房長官に対して国家情報局の創設について検討するよう指示を出しています。この指示は、高市内閣発足からわずか3日後という迅速な対応であり、情報機関強化への首相の強い意志を示すものです。
高市首相は、情報機関強化を総裁選挙期間中から一貫して主張してきました。2025年9月の記者会見では、情報関連諸機関の司令塔として国家情報局を創設したいと明言し、インテリジェンス体制の抜本的な改革を公約として掲げていました。国家情報局の目的は、各府省庁が持つ情報を一元的に集約し、分析することにあります。現在の縦割り行政では、外国勢力による国家安全保障や国益を脅かす活動に対して、迅速かつ効果的に対処することが困難な状況にあります。
政府は、内閣情報調査室を国家情報局に再編し、国家安全保障局と同格に位置付け、各府省に情報提供を指示できる権限を付与する方針です。また、内閣情報官を国家情報局長に格上げし、国家安全保障局長と同格とすることで、安全保障政策と情報活動の一体的な運営を目指します。高市首相は記者会見で、国土と国民を守る組織を作らせていただきたいと述べ、インテリジェンスの司令塔となる組織の必要性を強調しました。
ファイブアイズとの関係強化と日本の役割
ファイブアイズは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国による機密情報共有の枠組みです。UKUSA協定に基づき、信号情報（SIGINT）を中心に、極めて機密性の高い情報を相互に共有しています。この枠組みは、第二次世界大戦中の米英の情報協力を起源とし、冷戦期を経て現在に至るまで、世界で最も緊密な情報共有体制とされています。
イギリスの政治家の中には、ファイブアイズを拡大し、日本を加えてシックスアイズとすることを支持する声があります。ブレア元首相や外交委員会のタガンダット委員長などが、日本の参加を支持する発言をしています。2019年7月には、英国の有力紙ガーディアンやテレグラフが、中国に焦点を当てた観点から、日本が6番目のメンバーになる可能性について報道しました。
河野太郎元防衛大臣は、ファイブアイズ諸国との情報交換が日常的になればシックスアイズと呼ばれることもあり得ると述べています。日本は2018年以降、フランス、ドイツとともにファイブアイズとの会合を持ち、中国のサイバー活動を焦点とした新たな情報共有の枠組みを構築しています。しかし、日本がファイブアイズに正式に参加するには、独立した対外情報機関が存在しないこと、情報収集に関する法的制約があること、ファイブアイズ諸国との情報評価基準の違いなどの課題があります。
国家情報局と対外情報庁の設置により、日本の情報収集・分析能力が向上すれば、ファイブアイズとの情報共有がより緊密化する可能性があります。対外情報庁の設置は、ファイブアイズ参加への重要なステップとなり得ます。諸外国の情報機関との対等な関係を築くためには、日本自身が高度な情報収集・分析能力を保有し、価値ある情報を提供できることが不可欠です。
今後の展望と克服すべき課題
2026年の通常国会では、国家情報局設置法案とスパイ防止関連法案が主要な審議対象となる見込みです。自民党と日本維新の会の連立により、これらの法案の成立可能性は高まっていますが、野党の反対も予想され、国民的な議論が必要となるでしょう。特に、スパイ防止法については、その内容次第では国民の権利に大きな影響を及ぼす可能性があるため、慎重かつ透明性のある議論が求められます。
現在の日本の情報機関予算は、諸外国と比較して著しく少ない状況です。国家情報局と対外情報庁を効果的に運営するには、予算の大幅な増額が必要となります。しかし、財政状況が厳しい中で、国民の理解を得ながら予算を確保することは容易ではありません。情報機関への投資の重要性を国民に説明し、理解を得る努力が政府に求められます。
情報活動において、同盟国や友好国との協力は極めて重要です。国家情報局と対外情報庁の設置により、日本の情報収集・分析能力が向上すれば、ファイブアイズなどの国際的な情報ネットワークにおいて、日本の立場を強化できる可能性があります。すでに日本は、ファイブアイズ諸国との情報共有を強化しており、今後さらなる連携の深化が期待されます。
サイバー攻撃、AI技術を使った偽情報、量子コンピューティングなど、情報分野における技術革新は急速に進んでいます。国家情報局は、これらの新技術に対応できる能力を持つ必要があります。特にサイバー分野では、攻撃側の技術進化が早く、防御側が常に後手に回る傾向があります。最先端技術への投資と、優秀な技術者の確保が課題となるでしょう。
情報機関の活動は、その性質上秘密裏に行われる部分が多くなります。しかし、民主主義国家である以上、情報機関の活動に対する適切な監視と、国民への説明責任も必要です。諸外国では、議会による情報機関の監視制度が整備されています。日本でも、国家情報局の活動を監視する仕組みを構築し、権限の濫用を防ぐ必要があります。透明性と監視のバランスを取りながら、国民の信頼を得られる情報機関を構築することが重要です。
日本の情報機関改革の歴史的意義
内閣情報調査室から国家情報局への格上げは、2026年の通常国会で法制化され、2026年度内には実現する見込みです。さらに、2027年度末までに対外情報庁が設置され、日本の情報機関体制は大きく変貌することになります。この改革は、厳しさを増す安全保障環境に対応し、日本の情報収集・分析能力を諸外国並みに引き上げることを目的としています。
サイバー攻撃、経済安全保障、偽情報の流布など、新たな脅威に対処するためには、強力な情報機関が不可欠です。しかし、組織を新設するだけでは十分ではありません。各省庁の縦割りを克服し、情報を共有する文化を根付かせること、専門人材を育成すること、十分な予算を確保すること、そして国民の理解と信頼を得ることが重要です。
また、スパイ防止法をはじめとする法整備も並行して進められますが、国家の安全保障と個人の自由のバランスをどう取るかが大きな課題となります。透明性のある議論を通じて、国民の理解を得ながら、適切な制度設計を行うことが求められます。2026年は、日本の情報機関史における転換点となる年です。この改革が成功すれば、日本の安全保障体制は大きく強化されることになるでしょう。今後の政府の取り組みと国会での議論に注目が集まります。
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