H3ロケット9号機の打ち上げは、当初2026年2月1日に予定されていましたが、2025年12月22日に発生した8号機の打ち上げ失敗を受けて、当面の間延期されることが正式に発表されました。 新たな打ち上げ日は2026年1月時点で未定となっており、8号機の失敗原因が完全に究明され、9号機への対策が施されるまでは再開されない見通しです。延期の期間は原因究明の進捗次第であり、早ければ2026年夏から秋頃、設計上の問題が見つかった場合は2027年以降になる可能性も示唆されています。
この記事では、H3ロケット9号機の打ち上げ延期に至った経緯と背景、8号機失敗の技術的な詳細、H3ロケットの特徴と準天頂衛星「みちびき」システムの重要性、そして今後の見通しについて詳しく解説します。日本の宇宙開発における重要なマイルストーンである9号機の動向を理解することで、今後の打ち上げ再開に向けた展望が見えてきます。

H3ロケット9号機の打ち上げ延期が発表された経緯
H3ロケット9号機の打ち上げ延期は、2026年1月7日にJAXA(宇宙航空研究開発機構)と三菱重工業から正式に発表されました。9号機には準天頂衛星「みちびき7号機」が搭載される予定であり、当初の打ち上げ計画では2026年2月1日(日曜日)の16時30分から18時00分の間に打ち上げが行われる予定でした。予備期間として3月31日までのウィンドウが確保されていましたが、延期によりこれらの計画はすべて白紙となりました。
延期の直接的な理由は明確です。2025年12月22日に打ち上げられたH3ロケット8号機が失敗し、搭載されていた準天頂衛星「みちびき5号機」が喪失したことを受けての判断でした。宇宙開発においては、失敗原因が完全に特定され、次の機体に対して有効な対策が施されるまでは打ち上げを行わないという鉄則があります。JAXAと三菱重工業は、この原則に則り、原因究明と対策の水平展開が完了するまで9号機の打ち上げを見合わせることを決定しました。
この延期が意味するところは単なる「数週間の遅れ」ではありません。原因究明の深度によっては、数ヶ月から年単位のスケジュール変更を余儀なくされる可能性があります。過去の事例として、H3ロケット試験機1号機が失敗した際には、2号機の打ち上げまでに約1年の歳月を要しました。今回も同様、あるいはそれ以上の困難な道のりが予想されており、2026年度初頭に期待されていた「みちびき」7機体制の完成は不透明な状況に陥っています。
H3ロケット8号機失敗の詳細と技術的分析
9号機の延期を正しく理解するためには、8号機で何が起きたのかを詳細に把握する必要があります。2025年12月22日に発生したこの失敗は、日本の宇宙開発にとって大きな痛手となりました。
2025年12月22日の打ち上げ当日
H3ロケット8号機は、2025年12月22日午前10時51分30秒に種子島宇宙センターから打ち上げられました。搭載されていたのは準天頂衛星「みちびき5号機」で、これは2010年に打ち上げられた初号機の後継機として、システムの持続性を担保する重要な衛星でした。
打ち上げ直後の飛行シーケンスは順調に見えました。メインエンジンであるLE-9エンジン2基と固体ロケットブースター(SRB-3)2本が正常に燃焼を開始し、機体は大気圏を突き進みました。SRB-3の分離、第1段エンジンの燃焼終了、そして第1段・第2段の分離までは、事前のシミュレーション通りの軌跡を描いていました。しかし、管制室のテレメトリデータ(遠隔測定データ)は、静かに異常の兆候を示し始めていました。
第2段エンジンの燃焼異常
問題が発生したのは、宇宙空間での推進を担う第2段エンジン「LE-5B-3」の作動フェーズでした。このエンジンは、H-IIAロケットで長年運用されてきた「LE-5B-2」の改良版であり、世界で最も信頼できる上段エンジンの一つと評価されていました。
計画では、LE-5B-3エンジンは2回に分けて燃焼を行う予定でした。1回目の燃焼で地球を回る待機軌道に投入し、慣性飛行を経て2回目の燃焼で衛星をより高い軌道(トランスファー軌道)へと送り出す手順です。
しかし実際のデータでは、まず第1回燃焼において燃焼停止のタイミングが予測よりも27秒遅れました。ロケットの自律制御システムは、推力が想定よりも低い場合、目標速度に達するまで燃焼時間を延長しようとします。この時点でエンジンは本来のパワーを出せておらず、システムが必死に帳尻を合わせようとしていたことが分かります。
そして運命の第2回燃焼では、予測よりも15秒遅れて着火動作に入りましたが、推力が立ち上がった直後にエンジンが停止しました。完全に燃料が尽きたか、燃焼を維持できない状態に陥ったのです。この結果、ロケットは必要な速度を維持できず、「みちびき5号機」と共に打ち上げ当日の15時頃までに大気圏へ再突入し、南太平洋上で燃え尽きたと推定されています。
液体水素タンクの圧力低下とフェアリング分離衝撃
なぜ信頼性の高いLE-5B-3エンジンが推力を喪失したのでしょうか。JAXAの解析チームが注目したのは、第2段機体に搭載されている液体水素タンクの圧力データでした。
ロケットエンジンにおいて、燃料(液体水素)と酸化剤(液体酸素)はターボポンプによって燃焼室へ送り込まれます。このポンプが正常に働くためには、タンク側から一定の圧力で燃料が押し出されている必要があります。これを「入口圧力」と呼びますが、8号機のデータでは打ち上げから約3分20秒後、まだ第1段が飛行している段階から第2段の液体水素タンクの圧力が異常な低下を示し始めていました。
圧力が下がれば、ターボポンプに十分な水素が供給されず、キャビテーション(泡の発生)や回転数の異常を引き起こし、結果としてエンジンの推力が低下します。第1回燃焼の時間が延びたのも、第2回燃焼ができなくなったのも、すべては「水素の供給不足」で説明がつきます。
ここで浮上したのが「フェアリング分離時の衝撃」です。発射から3分45秒後、衛星を覆っていたフェアリングが左右に分割して投棄されました。この瞬間、第2段機体に取り付けられた加速度計が、過去のフライトデータとは異なる極めて特異な「大きな衝撃(加速度)」を記録していました。
この衝撃が発生したタイミングと水素タンクの圧力低下が進行した時間帯が重なることから、調査チームは「フェアリング分離時の衝撃、あるいは分離機構の何らかの不具合によって、第2段機体の構造やタンク、あるいは配管に物理的なダメージが生じ、そこから水素が漏洩したのではないか」という仮説を立てています。
さらに、第2段機体に搭載されていたカメラの映像解析では、フェアリング分離後の「みちびき5号機」の側面パネルが破損あるいは脱落し、衛星の内部構造がむき出しになっているような映像も確認されています。これは、フェアリングが綺麗に開かず衛星や機体に接触したか、分離のための火工品(爆薬)が過剰な衝撃を与えた可能性を示唆しています。
H3ロケットの技術的特徴と開発の背景
H3ロケット9号機の状況を正しく文脈の中に位置づけるためには、H3ロケットがどのような思想で設計され、どのような技術的挑戦を行ってきたのかを理解する必要があります。H3は単なるH-IIAの大型化ではなく、抜本的な設計思想の転換を図った野心的なロケットです。
「柔軟・高信頼・低価格」を目指した設計コンセプト
H3ロケットの開発コンセプトは「使いやすいロケット」であることでした。従来のH-IIAロケットは信頼性において世界最高水準(成功率98%近く)を誇りましたが、打ち上げコストが約100億円と高く、受注から打ち上げまでのリードタイムが長いという課題がありました。
H3ロケットはこれらの課題を克服するため、3つの柱を掲げて開発されました。まず低価格化として、H-IIAの半額となる約50億円を目標に設定し、自動車用電子部品の採用や3Dプリンタによるエンジン部品製造など、民生技術を大胆に取り入れました。次に柔軟性として、多様な衛星重量に対応するためブースターの本数(0本、2本、4本)やメインエンジンの基数(2基、3基)を自由に組み合わせられるラインナップを用意しました。そして高信頼性として、部品点数を削減しシステムをシンプルにすることで故障のリスクを減らす設計思想を採用しました。
メインエンジン「LE-9」の革新性
H3ロケットの技術的核心は、第1段エンジンの「LE-9」にあります。これは世界で初めて大推力エンジンに「エキスパンダーブリードサイクル」という燃焼方式を採用したものです。この方式は構造が単純で安全性が高い一方、大推力を出すのが難しいとされてきましたが、日本の技術陣は燃焼室のひび割れやタービンの振動問題など数多のトラブルを克服して実用化に成功しました。
一方、今回8号機で問題となった第2段エンジンの「LE-5B-3」は、本来「枯れた技術(実証済みの安定した技術)」として位置づけられていました。H-IIAの第2段「LE-5B-2」は再着火能力に優れ長時間燃焼が可能で、高い評価を受けていました。H3用のLE-5B-3はこれをベースに低コスト化と長寿命化を図ったものですが、今回の失敗によりこの「信頼の要」に疑義が生じたことは、技術陣にとって大きな衝撃でした。
H3ロケットの多彩なバリエーション
H3ロケットには衛星の重さに応じて複数の形態が存在します。型番は「H3-ab」のように表記され、aはメインエンジンの数、bはブースターの本数を表します。
22形態はエンジン2基とブースター2本の組み合わせで、H3の基本形となっています。試験機2号機や3号機、4号機、そして失敗した8号機もこの構成でした。24形態はエンジン2基とブースター4本の組み合わせで、最強のパワーを持つ重量級構成です。HTV-X1を運んだ7号機で採用されました。30形態はエンジン3基でブースター0本の構成で、液体燃料エンジンだけで飛び立つ仕様です。
30形態は戦略的に重要なモデルで、ブースターがないため打ち上げ時の振動が少なく衛星に優しい環境を提供できるほか、準備期間の短縮やコスト削減に寄与します。当初H3ロケット6号機でこの30形態がデビューする予定でしたが、エンジン3基構成による音響・振動環境の変化を確認するための燃焼試験が必要となり、スケジュールが後ろ倒しになっていました。
8号機の失敗は最も標準的と思われた22形態で発生したため、まだ飛行実績のない30形態である6号機の開発計画にも再検証の波が押し寄せています。特に失敗原因が第2段のタンク周辺にある場合、形態に関わらず全機体に共通する設計部位であるため、6号機の打ち上げも9号機同様に不透明な状況となっています。
準天頂衛星「みちびき」システムと7機体制の重要性
H3ロケット9号機が運ぶはずの「みちびき7号機」と、8号機で失われた「みちびき5号機」はどのような役割を持っていたのでしょうか。ここでは日本独自の測位衛星システムの意義と喪失の影響について解説します。
日本版GPSとしての「みちびき」の仕組み
私たちが普段スマートフォンやカーナビで利用している位置情報は、主に米国のGPS衛星からの信号に依存しています。しかし都市部のビル街や山間部では衛星からの電波が遮られ、位置がずれたり受信できなかったりすることがあります。
これを解決するために日本が独自に整備しているのが準天頂衛星システム「みちびき(QZSS)」です。「みちびき」の特徴は、日本のほぼ真上(天頂)を通る「8の字軌道」を描く衛星を配置することです。これにより常に少なくとも1機の衛星が頭上にあり、ビルや山に邪魔されずに信号を届けることができます。
2018年からは4機体制(準天頂軌道3機と静止軌道1機)でのサービスを開始し、GPSと併用することでセンチメートル級の超高精度測位を実現してきました。
7機体制完成の意義と国家戦略
政府の次なる目標は2025年度末を目処とした「7機体制」の構築でした。7機体制になれば日本の空には常に4機以上の「みちびき」が存在することになります。GPS衛星には位置を特定するために最低4機の衛星が必要という原理があります。つまり7機体制が完成すれば、米国のGPSが使えなくなったとしても「みちびき」だけで日本周辺の高精度な測位が可能になります。
これは産業競争力の向上だけでなく、国家安全保障上の自律性を確保するという極めて重大な意味を持っています。自動運転技術の実証実験やドローン物流のルート設計など、センチメートル級の精度を前提としたビジネス開発を行っている企業にとって、7機体制の完成は事業の基盤となるインフラでした。
みちびき5号機喪失の影響
8号機で失われた「みちびき5号機」は、2010年に打ち上げられた初代「みちびき(初号機)」の後継機でした。初号機は設計寿命を超えて運用されており、いつ故障してもおかしくない状態です。5号機はこの初号機とスムーズに交代しサービスを維持するための「リリーフエース」として期待されていました。
5号機が喪失した今、システムは老朽化した初号機に頼り続ける綱渡りの状態を強いられています。もし初号機が機能を停止すれば、4機体制の一角が崩れ、現在の高精度測位サービスの品質維持(特に誤差の補正能力)に影響が出るリスクがあります。
みちびき7号機の新機能と延期の影響
今回延期となった9号機に搭載される「みちびき7号機」は、7機体制を完成させるための最後のピースでした。7号機は準静止軌道に投入される予定で、従来の衛星よりも機能が強化されています。具体的には信号の「なりすまし」を防ぐための認証機能や、海外でも高精度測位を利用可能にする「MADOCA-PPP」サービスの強化など、次世代の測位ビジネスを牽引する機能が搭載されています。
9号機の延期によりこれらの新機能の本格稼働が先送りになることは、関連産業にとって大きな事業リスクとなっています。
H3ロケット打ち上げを見学できる種子島宇宙センター
H3ロケット9号機がいつか打ち上げられるその日に備え、現地「種子島」での見学に関する情報をお伝えします。打ち上げ延期は残念ですが、見学旅行の計画を立てる時間が増えたとポジティブに捉えることもできます。
世界一美しいロケット発射場
鹿児島県の南に位置する種子島の南端にある種子島宇宙センターは、青い海と白い砂浜、緑の断崖に囲まれ「世界一美しいロケット発射場」と称されています。H3ロケットが打ち上げられる「大型ロケット発射場」は、その中でも最も海に近い場所に位置しています。
おすすめの見学スポット
H3ロケットの打ち上げはその巨大さゆえに島内の広範囲から目撃することができますが、迫力を体感するためには適切な場所選びが重要です。
長谷公園はロケット見学のド定番スポットで、射点から約6kmの距離にあり広大な芝生広場が広がっています。視界を遮るものがなくリフトオフの瞬間から上昇していく軌跡をパノラマで楽しめます。公式のカウントダウン音声が場内放送で流れることが多く、数百から数千人によるカウントダウン合唱の一体感は圧巻です。ただし非常に人気があるため場所取りは早朝から必須で、駐車場もすぐに満車になります。
恵美之江展望公園は射点から約3kmと一般人が立ち入れる場所としては最も近いスポットの一つです。距離が近いため音と振動の迫力が段違いで、H3のメインエンジン点火時の閃光や固体ブースターの爆音をダイレクトに感じられます。ただし通常は事前抽選制となることが多く、当選倍率は極めて高いです。9号機の打ち上げ時も抽選になる可能性が高いため、南種子町の公式サイトをこまめにチェックする必要があります。
宇宙ヶ丘公園は南種子町の市街地に近い高台にある公園でキャンプ場も併設されています。射点を真正面に見据えるアングルでロケットが自分の方に向かって飛んでくるような迫力を味わえます。市街地からのアクセスが良いため買い物やトイレなどの利便性が高いのも魅力です。
また種子島の東海岸(竹崎海岸など)は規制区域外であればどこからでもロケットが見えます。公式の見学場所以外で自分だけの静かな場所を見つけて見送るのも通な楽しみ方です。
アクセスと宿泊の争奪戦
9号機の打ち上げ日が決定した瞬間から、種子島へのアクセスと宿泊予約の争奪戦が始まります。
飛行機は鹿児島空港から種子島空港への便が小型機中心で座席数が限られており、発売開始と同時に満席になることも珍しくありません。高速船「トッピー&ロケット」は鹿児島本港から西之表港へ向かう便で便数は多いですが、打ち上げ前日は混雑します。フェリー「はいびすかす」や「プリンセスわかさ」は時間はかかりますが車を持ち込めるため、島内での移動手段として有効です。
宿泊については南種子町の宿はJAXA関係者やメーカー、報道陣で埋まってしまうことが多いため、西之表市(島北部)や中種子町の宿を確保し当日はレンタカーで南下するのが一般的な方法です。
H3ロケット9号機の打ち上げ再開時期の見通し
最も多くの方が知りたいであろう「9号機の再打ち上げ時期」について、現在の状況から見通しを整理します。
原因究明の現状と課題
2026年1月時点でJAXAは8号機の失敗原因について、「水素タンク圧力低下」と「フェアリング分離衝撃」の相関関係に絞って調査を進めています。しかし大きなハードルがあります。それは「現物がない」ことです。
失敗した第2段機体は海に沈んでいるか大気圏で消滅しています。自動車事故や航空機事故のように残骸を集めて調査することができません。頼りになるのは打ち上げ時に送信された膨大なテレメトリデータ(温度、圧力、加速度など)のみです。JAXAは地上での再現試験(フェアリング分離時の衝撃を模擬した試験やタンクの強度試験など)を行いデータと照らし合わせる地道な作業を進めていくことになります。
早期再開と長期化の2つのシナリオ
原因究明の結果によって、打ち上げ再開までの期間は大きく異なってきます。
もし原因が特定の部品の不良や組み立て時の締め付けトルクミスなど、8号機固有の製造品質の問題(ヒューマンエラー含む)であると特定されれば、対策は比較的容易です。9号機の機体を点検し該当部品を交換するだけで済むため、2026年夏から秋頃の打ち上げ再開が期待できます。
一方で「フェアリング分離時の衝撃が設計想定よりも恒常的に大きかった」あるいは「水素タンクの配管強度が構造的に不足していた」という設計上の問題が判明した場合、事態は深刻です。フェアリングの分離機構を再設計したりタンク周りの補強を行ったりする必要が生じ、設計、製造、検証試験という長いプロセスが必要となります。この場合は2027年以降への大幅な延期も覚悟しなければなりません。H3試験機1号機の失敗時はエンジンの改修に約1年を要しており、今回は機体構造に関わる可能性が高いため同等かそれ以上の期間が必要になる恐れがあります。
打ち上げ順序の再編問題
さらに複雑なのが打ち上げ順序の再編です。現在H3ロケットの打ち上げ待ちリストには、30形態試験機であるH3ロケット6号機(未打ち上げ)、みちびき7号機を搭載するH3ロケット9号機(延期中)、そして後続の商業衛星や科学衛星を搭載するH3ロケット10号機以降が並んでいます。また、H-IIAロケット50号機(最終号機)も射場設備の共用や人員配置の関係でH3のスケジュール影響を受けます。
JAXAとしては失敗直後の「復帰戦(Return to Flight)」にはリスクを最小限に抑えたい心理が働きます。高価で替えのきかない「みちびき7号機」を復帰戦に乗せるリスクを冒すのか、それとも比較的リスク許容度の高いミッションを先に行うのか。今後の判断は技術的な合理性と政治的な要請(みちびき早期再開)の間でのバランスが求められることになります。
まとめ:試練を越えて再び宇宙へ
H3ロケット9号機の打ち上げ延期は、日本の宇宙開発が直面した大きな試練です。8号機の失敗により、5機連続成功で積み上げてきた信頼は一時的に揺らぎ、みちびき7機体制という国家目標も足踏みを強いられました。
しかしロケット開発の歴史は、失敗と克服の歴史でもあります。かつてH-IIロケットが連続失敗で存続の危機に瀕した際も、徹底的な原因究明とH-IIAへの設計変更を経て世界屈指の信頼性を勝ち取りました。H3ロケットもまたこの「産みの苦しみ」を経て、より強くより信頼されるロケットへと進化する過程にあると言えます。
9号機が種子島の空へ舞い上がるその日は、単なる打ち上げ再開の日ではなく、H3ロケットが真の意味で日本の宇宙輸送を支えるインフラとして完成する日となるはずです。JAXAや三菱重工業のエンジニアたちの挑戦を見守り、次の公式発表を待ちましょう。そしていつか来るその日には、ぜひ種子島へ、あるいはライブ中継の画面の前へ集まり、H3ロケット9号機の復活の瞬間を共に見届けていただければと思います。


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