セブンイレブンおにぎり値上げの理由とコメ価格高騰の影響を解説

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セブン‐イレブンのおにぎりが、ついに「200円時代」に突入しました。2026年2月12日、セブン‐イレブン・ジャパンはおにぎりと弁当を含む計29商品の値上げを発表し、コメ価格の高騰を主な理由として挙げています。この値上げは単なる一企業の価格改定にとどまらず、日本のデフレ経済からインフレ基調への構造転換を象徴する出来事として大きな注目を集めています。

今回の改定では、不動の人気を誇る「手巻おにぎり ツナマヨネーズ」が税抜き165円から182円へ、「手巻おにぎり 炭火焼紅しゃけ」が198円から215円へと引き上げられました。わずか2年弱で主力商品が50円以上、比率にして40%以上も値上がりした背景には、コメ価格の歴史的高騰に加え、海苔の生産量減少、物流コストの上昇、環境対応コストの増加といった複合的な要因が存在します。この記事では、セブン‐イレブンのおにぎり値上げの具体的な理由からコメ価格高騰の背景、消費者への影響、そして今後のおにぎり市場の動向までを詳しく解説します。

セブン‐イレブンのおにぎり値上げの概要と具体的な価格変動

セブン‐イレブンのおにぎり値上げは、2026年2月10日から順次実施されました。今回の価格改定は計29商品に及び、おにぎりだけでなく弁当も対象となっています。注目すべきはその値上げ幅です。「手巻おにぎり ツナマヨネーズ」は税抜き165円から182円へと約17円の値上げが行われ、税込ベースでは約20円近い上昇となりました。さらに高級路線の定番商品である「手巻おにぎり 炭火焼紅しゃけ」は税抜き198円から215円へと引き上げられ、明確に「200円の壁」を突破しました。

この価格推移を時系列で振り返ると、変化の大きさがより鮮明に浮かび上がります。2024年春の時点では、手巻おにぎりツナマヨネーズは128円、しゃけも128円で販売されていました。わずか2年弱の間に、ツナマヨは128円から182円へと54円の上昇、しゃけは128円から215円へと87円もの上昇を記録したことになります。かつて100円玉一枚で購入できた時代を知る消費者にとって、おにぎり一個に200円以上を支払う現実は大きな心理的変化を伴うものです。

セブン‐イレブンは2024年4月にも原材料高騰を理由とした値上げを実施していましたが、当時はまだ「100円台前半」の商品ラインナップを維持しようとする姿勢が見られました。2024年後半から2025年にかけてはコメ価格高騰が社会的話題となる中でも、期間限定の「100円セール(税抜)」を実施し「コメの美味しさを伝えていく」というキャンペーンを展開して客数維持に努めていました。しかし今回の改定は、もはやキャンペーンや企業努力ではコスト増を吸収しきれないフェーズに入ったことを明確に示しています。

おにぎり値上げの最大の理由「コメ価格高騰」の背景

令和の米騒動が引き起こした需給逼迫とは

セブン‐イレブンのおにぎり値上げの最大の理由は、原材料であるコメの価格高騰です。セブン‐イレブン自身も公式発表においてコメ価格の高騰を主要因として挙げています。この高騰の背景には、2024年から2025年にかけて発生した「令和の米騒動」と呼ばれる深刻な需給逼迫がありました。

令和の米騒動の発端となったのは2023年の記録的な猛暑です。高温障害により米粒が白く濁る「白未熟粒」が多発し、玄米から白米にした際に商品として残る割合を示す精米歩留まりが著しく低下しました。この結果、市場に流通する食用米の実質的な供給量が大幅に減少することとなりました。

供給面の問題に加えて、需要面でも強い圧力が生じました。円安を背景に急増した訪日外国人観光客による外食需要が業務用のコメ在庫を大きく圧迫したのです。さらに南海トラフ地震臨時情報の発表や相次ぐ自然災害への懸念から、消費者の間で「買いだめ」行動が広がりました。SNSでの品薄情報の拡散が不安を増幅させ、店頭からコメが消えるという1993年の「平成の米騒動」以来の混乱が発生しました。こうした供給減少と需要増大が重なったことで、コメの需給バランスは大きく崩れることになりました。

2026年のコメ価格はどこまで上がったのか

令和の米騒動の影響は一時的な品薄解消後も価格面で色濃く残り、むしろ上昇を続けています。主要銘柄であるコシヒカリの価格は、2024年2月時点の約2,476円から2025年2月時点では4,363円へと推移し、前年比で約2倍近い水準まで跳ね上がりました。

この急騰はブランド米に限った話ではありません。コンビニエンスストアや外食産業が主に使用する業務用米においても、2,300円台から4,239円へと価格が急騰しています。通常であれば業務用米はブレンドや産地リレーによって価格を抑制できるものですが、全国的な不作と需給逼迫により安価なコメの調達自体が困難になっている状況です。

セブン‐イレブンのような巨大チェーンにとって、原価の大部分を占めるコメの調達価格が倍増することは企業努力や効率化だけで吸収できる範囲を遥かに超えています。今回の17円〜20円という値上げ幅は、原材料費の爆発的な上昇を反映した最低限の価格転嫁と言えます。

農業生産コストの構造的な上昇がコメ価格を下支え

コメ価格が下がらない背景には、生産現場におけるコスト構造の変化も存在します。肥料や農薬、農業機械の燃料費といった生産資材価格は、国際情勢の不安定化や円安の影響を受けて高騰を続けています。肥料価格の上昇は農家の経営を圧迫し、作付け面積の拡大を躊躇させる要因となっています。

また気候変動リスクの常態化も深刻な問題です。2024年以降も猛暑リスクは継続しており、高温に強い品種への転換が進められていますが、品種改良と普及には長い時間を要します。供給不安が解消されない限りコメ価格の高値安定は今後も続くと見込まれ、コンビニおにぎりの価格がかつてのような水準に戻る可能性は極めて低い状況です。

コメ以外のコスト要因がおにぎり価格に与える影響

海苔の生産量激減がおにぎりの原価を押し上げる

おにぎりの価格を押し上げているのはコメだけではありません。おにぎりの品質を左右する重要な素材である海苔も深刻な供給危機に直面しています。主要産地である有明海などでは冬場の海水温上昇や降水量の減少による栄養塩不足が常態化し、深刻な不漁が続いています。

かつて約100億枚あった海苔の国内生産枚数は、近年では約60億枚程度まで激減しました。約4割もの供給減は当然ながら価格高騰を招いており、特にコンビニおにぎりで使用されるパリッとした食感と風味を持つ高品質な海苔は争奪戦の様相を呈しています。海苔の価格上昇分だけでもおにぎり1個あたりの原価を数円単位で押し上げる要因となっており、北海道産米の使用などコメの銘柄変更コストと合わせると製造原価は数十円単位で上昇しているとされています。

具材となる水産資源の調達コストが増大

今回の値上げ対象である「ツナマヨネーズ」と「紅しゃけ」は、いずれも水産資源に依存した商品です。世界的な健康志向の高まりによる魚食ブームにより、マグロ、カツオ、サケといった魚種は国際的な争奪戦となっています。

特にサケ(紅鮭など)は漁獲量の減少や輸入価格の高騰が著しく、税抜き215円という価格設定はもはや高級食材の部類に入りつつあることを示しています。ツナマヨに使用されるマグロやカツオも同様の状況にあり、さらにマヨネーズの原料となる卵や植物油の価格変動もリスク要因です。安定した品質の具材を大量に確保し続けるためのコストは年々増大しています。

物流の2024年問題がもたらしたおにぎり配送コストの上昇

商品を工場から店舗へ届ける物流コストの上昇も、おにぎり値上げの重要な要因です。2024年4月から適用されたトラックドライバーの時間外労働規制強化、いわゆる「物流の2024年問題」は、コンビニの配送体制に根本的な見直しを迫りました。

人手不足と労働時間の制約により、従来の「24時間いつでも頻繁に納品する」体制は維持不可能となりました。セブン‐イレブンは対策として、おにぎりや弁当などのチルド・デイリー商品の配送回数を1日4回から3回へ削減する決断を下しました。また、カップ麺などの加工食品については発注から納品までのリードタイムを「当日」から「翌日」へと延長し、配送センターでの仕分け作業の平準化を図っています。

これらの効率化努力を行ってもなお、ドライバーの人件費上昇や燃料費の高騰、車両価格の上昇といったコストアップ要因が上回っているのが現状です。今回の値上げには商品そのものの原価だけでなく「商品を運ぶための維持費」が含まれていると言えます。

環境対応コストがおにぎり価格に反映される構造

SDGsや環境配慮への社会的要請も、おにぎりの価格構造に影響を与えています。セブン‐イレブンはプラスチック使用量の削減を進めており、おにぎりの包装フィルムや弁当容器に植物由来のバイオマスプラスチックを配合した素材を導入しています。

これらの環境配慮型素材は、従来の石油由来プラスチックと比較して製造コストが割高になる傾向があります。消費者が企業に環境への配慮を求める一方で、そのコストは最終的に商品価格に反映されることになります。脱炭素社会の実現に向けたコスト負担が、身近なおにぎりの価格上昇という形で可視化されているのです。

セブン‐イレブンの経営戦略と高付加価値化への転換

セブン‐イレブンのおにぎり値上げは、単なるコスト転嫁にとどまらず経営戦略の大きな転換を反映しています。2026年2月の改定でツナマヨが182円、しゃけが215円となったことは、企業が「安さを維持して客数を稼ぐ薄利多売モデル」から「適正な利益を確保できる価格で販売する高付加価値モデル」へと完全に舵を切ったことを意味します。

200円を超えるおにぎりを消費者に納得して購入してもらうためには、圧倒的な「質」の裏付けが求められます。セブン‐イレブンは今回の値上げに際して、単なる価格転嫁ではなく品質向上を伴う改定であることを打ち出しています。おにぎりの「ふっくら感」を向上させるための成型機の導入や、海苔の風味を逃さない包装技術の改良、具材の増量や製法の見直しなどが並行して進められています。さらに監修商品や地域限定の高級食材を使用した「こだわりおにぎり」シリーズ(300円〜400円台)の拡充も推進しています。

この戦略は、中途半端な価格帯の商品は淘汰され「安さを追求するならスーパーマーケットやディスカウントストア、利便性と品質を追求するならコンビニ」という棲み分けを明確にしようとするものです。コンビニおにぎりの存在意義を「手軽さ」だけでなく「品質」にも見出すことで、価格に見合った価値を提供する方向へと大きく舵を切りました。

コメ価格高騰とおにぎり値上げが消費者行動に与える影響

おにぎり値上げに対する消費者の具体的な反応

おにぎりの値上げが消費者行動に与える影響は無視できないものがあります。消費者の94.8%が「おにぎりが好き」と回答しており、国民食としてのおにぎりの地位は依然として盤石です。しかし、相次ぐ値上げに対する消費者の反応は非常にシビアなものとなっています。

2025年6月の調査では、値上げを受けての行動変化について「特に行動は変わっていない」と回答した人が34.7%で最多でした。しかしこの結果は裏を返せば6割以上の消費者が何らかの行動変容を起こしていることを意味します。「購入する頻度を減らした」が32.3%、「安い具材のおにぎりを選ぶようになった」が23.6%という結果からは、消費者が明確に防衛策を講じている姿が浮かび上がります。

特にツナマヨが180円を超え、しゃけが200円を超えた今回の改定は、これまで「変わっていない」と答えていた層の心理的ハードルを越える転換点となる可能性があります。毎日2個買っていたおにぎりを1個に減らしてカップ麺やパンを組み合わせる、あるいは自宅からおにぎりを持参するといった行動変化が加速することが見込まれます。

手作り回帰とおにぎり専門店シフトという二つの潮流

おにぎり市場では興味深い二極化のトレンドが進行しています。物価高騰の影響で「自宅でおにぎりを作る」人が増加しており、特に女性層では「手作り派」が約半数を占める結果となりました。具材や米を自分で選んで握ることは、コスト削減になるだけでなく食の安全や健康管理の面でもメリットがあります。

一方でコンビニよりもさらに高価格帯であるおにぎり専門店の人気も衰えていません。約90%の人が専門店での購入経験や購入意向を持っており、「具材とごはんの両方でおいしさを求めて」専門店を利用しています。この現象は消費者が「中途半端なものにはお金を出さないが、本当に価値があるものには対価を惜しまない」というメリハリ消費を強めていることを如実に表しています。

セブン‐イレブンが直面しているのは「手作り(低コスト)」と「専門店(高品質・高単価)」との三つ巴の競争です。コンビニおにぎりが「高いのにそこまで美味しくない」と判断されれば手作りや専門店に客を奪われるリスクがあるため、価格を上げてでも品質を維持・向上させ専門店のクオリティに肉薄する必要があったのです。

2026年以降のおにぎり市場の未来予測とセブン‐イレブンの展望

おにぎり協会が示す2026年3つのトレンド

一般社団法人おにぎり協会の中村祐介代表理事が発表した「2026年トレンド予測」は、値上げの先にあるおにぎりの進化の方向性を示唆しています。

第一のキーワードは「世界食化(Global Standard)」です。おにぎりは日本だけのローカルフードから世界的なファストフードへと進化しつつあります。実際にニューヨークやパリ、ロンドンでは日本式のおにぎりが500円〜800円相当の価格で販売され、人気を集めています。第二のキーワードは「二極完成(Bipolarization Completed)」で、プレミアムか日常かという価格と役割の分担が明確になるという予測です。セブン‐イレブンの高付加価値戦略はまさにこの流れに沿ったものと言えます。第三のキーワードは「完結おにぎり(Complete Meal)」で、一個で食事が完結するような栄養バランスとボリュームを兼ね備えたおにぎりが台頭するという見通しです。200円〜300円のおにぎりは単なる炭水化物ではなく良質なタンパク質を含む「完全食」に近い存在として再定義されようとしています。

インバウンド需要がおにぎり市場に与える新たな影響

訪日外国人にとって日本のコンビニおにぎりは非常に魅力的な存在です。円安の影響もあり、外国人観光客にとって1個200円(約1.3〜1.4米ドル)のおにぎりは驚異的な安さに映ります。海外の主要都市では同等のおにぎりが数倍の価格で販売されていることを考えると、この「内外価格差」はコンビニ各社にとって大きな商機となっています。

インバウンド需要が見込める都市部の店舗では、和牛やウニ、イクラなどを使用した500円前後のプレミアムおにぎりが外国人観光客の注目を集めています。2026年は日本人向けの日常食としての側面と観光客向けの体験食としての側面が同じ棚の中で混在し、おにぎりの価格帯がさらに広がっていく一年になると見込まれます。

コンビニビジネスの持続可能性とおにぎりの将来

おにぎりの値上げは、コンビニエンスストアというビジネスモデル自体の持続可能性を問うものでもあります。24時間営業、高頻度配送、大量廃棄を前提とした従来のモデルは人口減少と環境制約の中で限界を迎えつつあります。加盟店オーナーの利益を守り、ドライバーの労働環境を改善し、食品ロスを減らすためには「適正な価格」での販売が不可欠です。

182円のツナマヨと215円の紅しゃけという価格は、日本の食が「デフレによる品質の切り売り」を脱し「適正なコストを負担して質を守る」フェーズへと移行したことを象徴しています。コメ価格高騰をはじめとする複合的なコスト上昇は一過性のものではなく構造的な変化であるため、今後もおにぎりの価格は現在の水準を維持するか、さらに上昇していく見通しです。

また、価格が上昇することで一つ一つのおにぎりを大切に食べる意識が生まれ、結果として食品ロスの削減につながるというポジティブな側面にも目を向ける必要があります。「安くて便利」の裏側にあった過剰なサービスや誰かの犠牲によって成り立っていた低価格が、もはや維持できない時代に入ったことを私たち消費者は理解する必要があります。値上げの背景にある構造的な理由を正しく把握した上で、忙しい日はコンビニの高品質おにぎりを活用し、時間がある日は手作りおにぎりを楽しむといったメリハリのある食生活が、これからの時代に求められる賢い選択と言えます。

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