ピカソの作品価格の低下について考える

生活

スキャンダラスな私生活でも知られる画家パブロ・ピカソの作品は、過去には女性問題などが作品の価格に影響しなかった。しかし、「エル・パイス」によると、2023年4月までにオークションに出品されたピカソの作品は1798作ある。そのうちの55.2%に買い手がつき、合計の落札金額は9700万ドル(約130億円)強だった。だが、1999年以降、ピカソの作品の価格は同時代の他作家の2倍の速さで上昇していたが、2023年に入り価格は下落している。ピカソ作品の価格の低下について、いくつかの原因が考えられる。エル・パイスは、この世界的な危機の時代に、コレクターが所有作品を手放すことに弱腰であること、加えて、ピカソの私生活への疑問を要因に挙げる。エコノミストも同様に、ピカソの女性に対する「下劣な振る舞い」と、「現代の芸術家へのピカソの影響力の低下」を指摘する。没後50年にあたる2023年、美術館関係者だけでなく世間でも、ときに暴君的とも言える、女性たちへのピカソの行動に批判が高まっている。それに対して、スペイン・マドリードにあるソフィア王妃芸術センターの前館長マヌエル・ボルハ=ヴィレルは、「中長期的にピカソの重要性が薄れていくとは思えない」とエル・パイスの取材に語っている。今後のピカソの立ち位置は、これから開催されるオークションの結果で明らかになる。

フェミニストの視点で画家を評価し、その評価が作品の評価にまで結びつけられることは、過剰反応と言えます。このような見方をする人は、最初から作品よりも画家のプロフィールを評価基準にしているのかもしれません。クリエイターには曲者も多く、その点を追求して作品を評価する姿勢が必要です。作家や画家の経歴は何であれ、結果として生み出された芸術性は変わらないと考えられます。

ポリティカル・コレクトネス的な考え方による再評価が、芸術家やその作品にまで及ぶことは、違和感を覚えるかもしれませんが、避けられない現実だと思います。

個人的には、ピカソはあまり好きではありませんでしたが、スペインのソフィア王妃芸術センターでゲルニカを見たときには、打ち震えるような感動を覚えました。ピカソが天才的な芸術家であることは疑いようがありません。

しかし、その作品の「真の芸術的価値」だけを評価するなら、おそらく最近の市場価格の1/10程度になるでしょう。残りの90%は、投機的な価値であり、美人投票的な仕組みによって形成された価格にすぎないでしょう。

つまり、作品の芸術的価値に惚れ込んだ買い手によって価格がつけられたのではなく、将来の評価や価格上昇の見通しを考慮した投機的な価格設定がなされたのです。その投機的な価格設定には、ポリティカルコレクトネスが反映されていることもあるでしょう。

海外の富裕層たちは、絵画の取引を株式と同じように行っています。絵の内容を見ることはほとんどなく、将来的に値上がりすると予想される絵を買うことが多いです。そうなると、ピカソはもはや投資対象ではなくなってしまいました。しかし、ピカソの作品が値上がりすると信じている人たちもいます。

実は、絵の良さがわかるオーナーは、存命している人の中ではほとんどいないと言われています。以前は、コレクションを飾る個人や法人の美術館がたくさんありましたが、今は絵を見ることもなく、投資のために絵画を買うことが主流になっています。美術品は、物として資産管理ができるため、投資としても200年以上もこのような形で行われていますね。

芸術は難しいですね。

私は、私生活や問題行動などが芸術作品自体の評価に影響を与えることに疑問を感じます(好き嫌いに影響を与えるのは仕方がありませんが、ワグナーなどは、本人の関与とは無関係に、ヒトラーが愛好者だったために永年イスラエルで嫌われてきました)。

個人的な意見として、ピカソさんについては20世紀に「同時代に生きた天才」として過剰に持て囃された印象があると思います。一方で、私生活についてはまだ記憶に新しいため、ミケランジェロやダ・ヴィンチなどと比べると、純粋に芸術作品の評価に関する議論が私生活の話に飲み込まれてしまうことがあるように感じます。

彼は独創的なスタイルを築き、一時代を作った天才であることは間違いない。しかしながら、同時代の人物が減少している今後が真価を問われると思われる。

完璧な人間など存在しない。芸術面で突出した能力を持つ人は、それだけ激しい情熱や感情を抱いているということだ。そのため、彼の女性に対する考え方が模範的な考え方と異なっていたとしても不思議ではない。男女間の考え方も、数十年前と現在では全く異なっている。当時は許されていたことが今は悪とされることもある。普通の人でも、はるか未来の倫理観まで予測して生活することはできない。

もしある人が品行方正でなかった場合、芸術やスポーツなどの突出した能力を競うものまで、その人の価値が決まってしまうとしたら、芸術の道に挑戦することができなくなり、当たり障りのない人生を選ぶ人が増え、文化が政治や誰かの好き嫌いで潰されることになるだろう。

箱根のピカソ美術館で、ピカソが晩年に描いた線画を見ました。若い頃から多様な作風に挑戦してきたピカソの作品群を一つにまとめるという点で、非常に印象的でした。作品を見ると、ピカソの生き方や経歴を超越する程度の、的確な線と色の組み合わせが感じられます。このような感覚があれば、ピカソの偉大さは揺らぐことはありません。

ピカソの作品価格が落ちている理由はわかりませんが、どの作家にも傑作とそうでない作品があります。試行錯誤の結果である失敗作品も、人気が出ると売り出されてしまうことがあります。また、有名になった後は落書きでも売れるため、作品の質が低下することもあります。失敗作や手抜き作品の価格が下落するのは避けられませんが、購入者は中身を見極める目を持つことが必要です。

近年、ピカソをはじめとする絵画や美術作品の価格が高騰しすぎて、そのバブルが収束し始めたと思われます。現状、主な美術作品はスーパーリッチ層の投資対象になってしまっています。例えば、昨年、ウォーホルのシルクスクリーンが250億円で落札されましたが、あまりにも異常な値段です。

この機会に、適正価格に戻るべきだと思います。ピカソが大好きで、新婚旅行でゲルニカを見に行きました。その大きさと迫力に圧倒されました。先日、大阪にピカソとマティスの展示があり、久しぶりに美術館に行ってきました。やはり面白かったです。しかし、ピカソが清廉潔白な人であったかは疑問です。不世出の作家の1人に違いありませんが、あの作品が生まれた背景には様々な要因があると思います。

ピカソは、玄人筋だけでなく、一般人からも天才と評価される稀有な芸術家です。天才の作品と人格は切り離して評価されるものですが、ピカソの作品は3万点以上存在します。1日1作品仕上げても100年近くかかる計算になります。ピカソ作品の中には、どうでもいい作品もあれば、本人でない作品もたくさんあります。それらを再度区別する作業が必要かもしれません。

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