【2025年最新】介護保険の老健とは?費用・入所条件・サービス内容を徹底解説

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介護保険制度における介護老人保健施設(老健)は、高齢者の在宅復帰を支援する重要な施設として注目を集めています。病院での治療を終えた要介護者が、リハビリテーションを中心とした介護を受けながら自宅での生活復帰を目指す、医療と介護の架け橋的な役割を担っています。2025年に向けて地域包括ケアシステムの構築が進む中、老健の機能はより一層重要性を増しており、単なる「在宅復帰」だけでなく「在宅支援施設」としての役割も明確化されました。2024年度の介護報酬改定では医療機関との連携強化が図られ、協力医療機関要件の見直しや新たな加算制度が導入されるなど、質の高いサービス提供に向けた取り組みが進んでいます。本記事では、老健の基本的な仕組みから最新の制度変更まで、利用を検討されている方やご家族が知っておくべき重要なポイントを詳しく解説します。

Q1. 介護保険の老健とは何ですか?特養との違いも教えてください

介護老人保健施設(老健)は、要介護者の在宅復帰を最大の目的とする介護保険施設です。病院での治療を終え病状が安定した方が、リハビリテーションを中心とした介護を受けながら、自宅での生活に戻ることを目指します。いわば病院と老人ホームの中間に位置する施設として機能しています。

老健の最大の特徴は、医師が常勤で配置されている点です。これにより日常的な医療提供が可能となり、肺炎や尿路感染症などの疾病発症時にも施設内での対応が評価されています。また、看護師や理学療法士、作業療法士などの多職種協働によるチームケアが重視されており、利用者一人ひとりの状態に応じた個別のリハビリテーションプログラムが提供されます。

特別養護老人ホーム(特養)との主な違いは以下の通りです。まず入所期間において、老健は原則3~6ヶ月の短期間での在宅復帰を目指すのに対し、特養は終身利用が前提となっています。医療体制では、老健には医師の常勤配置が義務付けられているため、より医療依存度の高い方の受け入れが可能です。費用面では、老健の方が若干高めの設定となっていますが、入居一時金は不要です。サービス内容については、老健はリハビリテーションに特化しているのに対し、特養は生活支援を中心としています。

2017年の介護保険法改正により、老健の役割は「在宅復帰」だけでなく、より広い概念である「在宅支援施設」として明確にされました。これは、単に施設から自宅に戻すだけでなく、退所後も継続して在宅生活を支援することで、利用者の自立を促進する役割が期待されていることを意味します。地域包括ケアシステムの中核として、高齢者が住み慣れた地域で尊厳を持って生活できるよう、医療・介護の両面から支援する重要な役割を担っています。

Q2. 老健に入所するための条件と期間はどのくらいですか?

老健の利用対象者は、要介護1から5のいずれかの認定を受けている方です。また、特定疾患によって要介護認定されている40歳から64歳の方も対象となります。要支援認定のみの方は利用できませんので、まずは要介護認定を受けることが必要です。

入所期間については、老健は長期入所を目的とした施設ではありません。原則として3ヶ月から6ヶ月が目安とされており、この期間内での在宅復帰を目指します。ただし、在宅復帰が困難と判断された場合は、引き続き入所することも可能です。2018年の福祉医療機構のデータによると、老健の平均在所日数は348.9日となっており、実際には1年程度の入所期間となるケースも少なくありません。

入所を検討する際のタイミングとしては、以下のような状況が適しています。病院での急性期治療を終え、病状が安定している状態で、リハビリテーションによる機能回復が期待できる場合です。また、自宅での生活に不安があるものの、将来的には在宅復帰を希望している方にとって最適な選択肢となります。

入所の流れは、まず要介護認定を受けた後、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談します。希望する施設に空きがあるかを確認し、施設見学や面談を経て入所の可否が決定されます。医師による医学的な判断も重要な要素となるため、現在の病状や今後の見通しについて詳しく説明できるよう準備しておくことが大切です。

近年、国の方針として老健の在宅復帰機能がより強化されています。在宅復帰率の高い施設はリハビリテーション専門職員が多い傾向があり、短期間での在宅復帰が可能となる一方で、長期入居はより難しくなると予想されます。そのため、入所時から明確な退所後の生活プランを立てておくことが重要になってきています。施設では入所時からのアセスメントを通じて、利用者の人生背景を考慮し、家族と共に自立支援のための計画を策定します。

Q3. 老健ではどのようなサービスが受けられますか?

老健では、在宅復帰を目指す利用者のために多様なサービスが提供されています。中でも最も重要なのがリハビリテーションです。利用者の状態や目標に応じて個別のメニューが作成され、起き上がり、ベッドと車椅子間の移乗、歩行訓練など、日常生活が送れるようになることを目指します。

リハビリテーションの具体的な内容として、一般的に週2回以上、20分から30分程度の時間で実施されます。特に入所から3ヶ月間は「短期集中リハビリテーション」を週3回から毎日受けることが可能です。ただし、過去3ヶ月以内に別の老健に入所していた場合は、原則として短期集中リハビリテーションは受けられません。

誤嚥性肺炎予防のための嚥下リハビリテーションも重要な役割を担っており、食事の際のむせが多い利用者には食べ方の指導や嚥下機能のトレーニングが行われます。リハビリ職員は、リハビリの提供に加えて、利用者や家族への転倒予防のための住環境調整、日常生活動作の工夫、適切な介助方法の指導、自主トレーニングの指導なども行い、在宅生活への移行をきめ細やかに支援します。

医療的ケアについては、老健は医療提供施設として位置づけられており、医師が常勤で配置されている点が他の介護施設との大きな違いです。これにより、日常的に必要な医療提供が可能であり、肺炎や尿路感染症などの疾病発症時の施設内対応も評価されます。緊急時対応については、地域の病院など協力医療機関との連携により行われ、2024年度の介護報酬改定では、この連携体制がより強化されました。

看取り(ターミナルケア)も老健の重要なサービスの一つです。在宅支援の一環として、余命わずかな方を対象とし、無理な延命治療はせず、痛みや不快感を和らげる医療的ケアを中心に行い、その人らしい最期が迎えられるように支援します。入所中は利用者の尊厳を守り、家族とのコミュニケーションを通じて信頼関係を構築し、多職種が密に連携して安らかな最期を支援します。

日常生活上の介護として、食事、入浴、排せつなどの基本的な生活支援も提供されます。これらのサービスは、単なる身体介護にとどまらず、利用者の自立を促進する視点で提供されており、できる限り自分でできることは自分で行えるよう支援します。多職種協働によるチームケアにより、医師、看護職員、介護士、リハビリセラピスト、管理栄養士などが連携し、包括的なサービスを提供しています。

Q4. 老健の費用はいくらかかりますか?2025年の最新料金体系を教えてください

老健にかかる費用は、入居一時金がなく、月額費用のみです。月額費用の内訳は、「施設サービス費+居住費+食費+その他日常生活費」の合計となります。日常生活費を除く基本的な費用は、介護度や部屋のタイプによって異なりますが、ひと月あたり8万円から13万円程度が基準となります。

2024年度の介護報酬改定による重要な変更点があります。まず、多床室の室料負担の導入として、2025年8月分から介護医療院(II型)および老健施設(療養型、その他型)の多床室について、月額8,000円程度の室料負担を利用者に求めることが決定されました。これは約8,000人が新たに負担増の対象になると推計されています。

居住費の基準額も引き上げされており、昨今の光熱費等の高騰を踏まえ、2024年8月分から1日当たり60円の引き上げが行われ、これは入所者負担となります。一方で、食費(1日1,445円)については据え置きとなっており、2023年度の介護経営実態調査で食材費コストの増加などが見られなかったことが理由です。

低所得者への配慮として補足給付制度があります。この制度は、原則として世帯全員(世帯を分離している配偶者を含む)が市町村民税非課税の方を対象としています。第1段階では、生活保護受給者や老齢福祉年金受給者で預貯金額1,000万円以下の方は、多床室の居住費負担限度額が0円で据え置かれます。

第2段階と第3段階では、年金収入と預貯金額に応じて負担軽減が行われます。2024年8月からの居住費の負担限度額(多床室)は、第2段階・第3段階ともに370円/日(旧320円/日)となっています。補足給付の対象ではない方(第4段階相当)の居住費は、施設と利用者との契約により決められます。

高額介護サービス費・高額医療合算介護サービス費制度により、世帯の医療費と介護費を合算した高額療養費に対しては、世帯の所得水準に応じて4段階の自己負担限度額が設定されており、限度額を超える支払いは免除されます。この制度により、所得水準が原因で必要な介護や医療を受けられない状況は存在しないとされています。

居室タイプによっても費用は異なり、ユニット型個室が最も高く、従来型個室、多床室の順に安くなっています。また、介護度が高いほど費用が高くなる仕組みとなっているため、入所前に具体的な費用シミュレーションを行うことが重要です。

Q5. 老健での生活環境と職員体制はどうなっていますか?

老健の居室タイプは4種類に分けられます。多床室は1部屋に定員2人以上で暮らすタイプで、従来型個室は1人部屋、ユニット型個室は複数の1人部屋とリビングなどの共用設備がひとつの単位(ユニット)ごとにあるタイプ、ユニット型準個室は壁上部が天井から一定程度空いているなど、ユニット型個室と同じ水準ではない個室となっています。多床室の床面積は1人当たり8平方メートル以上に限られています。

館内設備については、生活に必要な浴室、トイレ、食堂などが共通して整備されており、リハビリや診療に利用する部屋も完備されています。特に老健は、その目的に応じて特養よりもリハビリ施設が充実している傾向があり、機能訓練室や理学療法室、作業療法室などの専門的な設備が整っています。

職員体制では、多職種協働によるチームケアが重視されています。利用者を中心に、医師、看護職員、介護士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護支援専門員、支援相談員、管理栄養士など、多くの専門職が連携し、包括的なサービスを提供します。この多職種協働体制は、ピラミッド型ではなく、利用者を中心に円で囲むような「ドーナツ型」と表現され、各専門職が対等な立場で連携します。

具体的な人員配置基準として、利用者100人当たりに、常勤の医師1人、看護師9人、介護士(介護福祉士)25人、理学療法士・作業療法士または言語聴覚士1人、介護支援専門員1人、支援相談員1人などの最低限の配置が求められています。この基準により、医療従事者の人員配置が手厚くなっており、特養と比較してより医療的なケアが充実しています。

日常生活の流れは、朝の起床から夜の就寝まで、規則正しい生活リズムが保たれています。食事時間は決められており、栄養バランスを考慮した食事が管理栄養士の指導のもと提供されます。個別のリハビリテーション時間は週2回以上設定され、入所から3ヶ月間は短期集中リハビリテーションとして、より集中的なプログラムが組まれます。

利用者の評価システムも充実しており、ICF(国際生活機能分類)の考え方に基づいた介護が行われています。これは利用者が「現在できること」を客観的に評価し、入所時からのアセスメントを通じて、利用者の人生背景を考慮し、家族と共に自立を支援するアプローチです。退所後も継続して在宅生活を支援することで、「自立」に資する介護を提供しています。リスクマネジメントについても、転倒・転落事故、施設内感染、プライバシー保護などの多様なリスクに対応するため、専門的な人材である「リスクマネジャー」が配置されることもあります。

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