遠距離介護で使えるサービス完全ガイド|交通費節約術と医療費控除のポイント

生活

遠距離介護は現代社会における大きな課題の一つです。親元を離れて暮らす人々が増加する中、親の高齢化に伴い「遠距離介護」の必要性が高まっています。遠距離介護とは、離れて暮らす親族のために遠方から通いながら行う介護のことを指します。

遠距離介護には、親が住み慣れた環境で生活を継続できることや、介護者が「介護離職」を回避できるというメリットがある一方で、緊急時にすぐに駆けつけられないという最大のデメリットや、介護者の帰省にかかる交通費が大きな経済的負担となるという課題があります。しかし、適切なサービスの活用と事前の準備により、これらの課題は大幅に軽減することが可能です。

介護保険制度下の多様な居宅サービス、近年発展が著しい介護保険外の民間見守りサービス、そして地域住民による創意工夫を凝らした移動支援・生活支援の取り組みなど、遠距離介護を支援する様々なサービスが存在します。また、交通費に関しても医療費控除の適用や各種割引制度の活用により、経済的負担を軽減する方法があります。

Q1. 遠距離介護で利用できる公的サービスにはどのようなものがありますか?医療費控除の対象になるサービスも教えてください

遠距離介護において活用できる公的サービスは多岐にわたります。介護保険制度下の居宅サービスが中心となりますが、これらのサービスは医療費控除の対象となるかどうかによって分類されています。

医療費控除の対象となる居宅サービス(自己負担分がすべて対象)には、訪問看護訪問リハビリテーション居宅療養管理指導通所リハビリテーション短期入所療養介護などがあります。これらは看護や医学的管理の下における療養上の世話等に相当するサービスです。

一方、併用時のみ医療費控除の対象となるサービスとして、訪問介護(生活援助中心型を除く)、通所介護短期入所生活介護小規模多機能型居宅介護などがあります。これらは上記の医療系サービスと併せて利用する場合にのみ控除対象となります。

医療費控除の対象外となるのは、訪問介護(生活援助中心型)認知症対応型共同生活介護特定施設入居者生活介護福祉用具貸与などです。

介護保険施設については、介護老人保健施設介護療養型医療施設介護医療院の費用は控除対象となり、特別養護老人ホームの場合は自己負担額の2分の1が控除対象となります。

また、おむつ代についても、医師等が発行する「おむつ使用証明書」がある場合、または市町村による確認書類がある場合に限り、医療費控除の対象となります。

これらのサービスを利用する際は、事業者が発行する領収書に「医療費控除対象額」が明記されているため、必ず確認し、5年間保管することが重要です。高額介護サービス費の払い戻しを受けた場合は、その金額を差し引く必要があります。

Q2. 遠距離介護の交通費は医療費控除の対象になりますか?控除を受けるための条件と注意点について

遠距離介護における交通費の医療費控除については、その目的によって対象となるかどうかが大きく異なります。多くの介護者が誤解しやすい部分でもあるため、正確な理解が必要です。

医療費控除の対象となる交通費として、通院にかかる交通費(電車やバスの運賃、場合によってはタクシー代)があります。ただし、タクシー代は公共交通機関が利用できない場合にのみ対象となります。また、診察や治療のための医師の送迎費用も対象です。

介護保険サービス関連では、通所リハビリテーションや通所介護、短期入所生活介護などを利用するために施設へ通う際の交通費が、これらの居宅サービス等の対価に係る自己負担額が医療費控除の対象となった場合で、かつ、通常必要なものに限り、医療費控除の対象となります。

重要な注意点として、介護のための介護者自身の帰省費は、原則として医療費控除の対象外です。これは、診察や治療に直接関係する費用ではないためです。また、ガソリン代は「人的役務の提供の対価」ではなく、ガソリンの購入対価であるため、医療費控除の対象にはなりません。

病院に入院している親を、家族が年末に自宅で一日だけ過ごすために許可を取り、その際に発生したタクシー代も、診察や治療に直接関係しないため医療費控除の対象にはなりません。

医療費控除を受けるためには確定申告が必要で、控除額は支払った医療費から保険金などで補填される金額を差し引き、さらに10万円(総所得金額等の5%と10万円のいずれか少ない方)を控除した金額となり、上限は年間200万円です。

遠距離介護における帰省頻度は「月1回以上帰省している人」が8割以上というデータもあり、1回の帰省にかかる交通費は「往復1万円未満」が最多であるものの、頻度が高まると年間で数十万円から百万円以上に達することも珍しくないため、正確な控除対象の理解が家計への影響を左右します。

Q3. 介護保険外の民間見守りサービスにはどんな種類がありますか?それぞれの特徴と費用相場を知りたいです

介護保険サービスだけでは賄いきれないニーズに対応するため、民間企業による介護保険外サービスが充実しており、遠距離介護においても重要な選択肢となっています。

訪問型サービスでは、食事宅配サービスが代表的です。高齢者の自宅へ食事を宅配するとともに安否確認を行うサービスで、栄養バランスの改善にもつながります。相場は1食あたりおよそ400~600円で、毎日3食の場合、月に2~3万円程度となります。

安否確認訪問サービスは、郵便局や電気・水道会社などの専任スタッフが定期的に巡回し、安否確認を行います。郵便局の「みまもり訪問サービス」は月額2,500円(税込)で月1回約30分の訪問、メールか郵送で報告されます。

センサー型サービスは、居室内に設置したセンサー機器が親の生活動作を感知し、安否を確認する方法です。照明のオン・オフや人体の動き、家電の使用などを検知するタイプがあります。月額2,000円~5,000円程度が相場ですが、初期費用がかかる場合もあります。一定期間反応がない場合にサービス提供者が自宅を確認してくれるため、24時間体制での見守りが可能です。

自動電話・メール型サービスは、自宅の固定電話や携帯電話に自動で電話やメールをかけ、応答の有無で安否確認を行います。郵便局の「みまもりでんわサービス」は固定電話が月額1,070円、携帯電話が月額1,280円となっています。

カメラ型サービスは、自宅に設置したカメラを利用して親の安否確認を行うサービスです。リアルタイムで様子を確認でき、体調不良や事故などのトラブルに早く気づけます。セキュリティ会社による緊急時対応や24時間監視サービスもあります。メリットとして、親の行動や生活リズムの変化を察知し、離れていても親の様子を見守れる安心感があります。体調急変時でも迅速な対応が可能で、警備会社などが駆けつけるサービスもあります。デメリットとして、総合的なサポートは難しい場合があり、親のプライバシーに関わるため、事前に親の同意を得ることが必須です。

実際の利用事例として、ベルギー在住の方が日本にいる要介護2の認知症の母親の眼科の定期検診(3ヶ月に1回)の通院付き添いに「Crowd Care(クラウドケア)」を利用している例があります。これは、公的介護保険だけではカバーできない個別のニーズに対応する良い事例といえます。

Q4. 地域住民による移動支援や生活支援サービスはどのような仕組みですか?全国の取り組み事例を教えてください

全国の多くの市町村で、地域住民が主体となった多様な移動支援・送迎の取り組みが進められています。これらの活動は、介護保険の財源である「総合事業」の補助金や、市町村の一般財源などを活用して実施されています。

群馬県渋川市の「ささえあい買い物事業『あいのり』」は、社協がタクシー事業者と契約し、利用者が乗り合いでスーパーへ行くサービスです。利用者は利用料を支払い、差額は社協が負担する仕組みで、2022年時点で協賛店舗は8店舗に増加しています。利用者にとっては安価なタクシー利用と交流機会、タクシー事業者にとっては平日の閑散期の仕事確保、店舗にとっては売上向上という「WIN-WIN」の仕組みが構築されています。

岐阜県各務原市では、自治会や地区社協などが事業主体となり、タクシー会社と契約して高齢者等が買い物や通院に際してタクシーに相乗りできる仕組みを導入しています。利用者は地域で決めた利用料(1回100円~300円程度)を支払い、地域が通常のタクシー料金との差額を負担し、その地域負担額の3分の2を市が補助します(年間上限30万円)。

愛知県豊明市の「おたがいさまセンター『ちゃっと』」は、市内の協同組合と市が協働運営し、生活支援(送迎を含む)が必要な人と、その支援ができる「生活サポーター」をマッチングしています。利用者は1回250円/30分以内で利用でき、市が約800万円で委託しています。

静岡県袋井市・森町では、元々子育て支援の仕組みであったファミリー・サポート・センターを高齢者支援にも応用し、送迎・付き添い支援が依頼の約半数を占めています。利用料金は1時間あたり700円~850円で、援助会員にも同額が支払われます。

長野県駒ヶ根市では、NPO法人が訪問型サービスB(「アトム支援」)や福祉有償運送(「アトム便」)などの多様な移動支援サービスを提供しています。「アトム支援」は基本料金1時間1,500円ですが、要支援者等には補助(650円)があり、自己負担は850円となります。

鹿児島県鹿屋市の「ドライブサロン」では、社会福祉法人が地域貢献活動として、車両と運転手を無償で提供し、地域住民の買い物の送迎を行っています。利用料金は無料で、利用者の安否確認や見守りの仕組みとしても機能しており、人とのつながりの増加、体調改善、免許返納につながるなど多様な効果が確認されています。

これらの取り組みに共通するのは、地域の実情に応じたきめ細やかな対応と、多様な財源の組み合わせによる持続可能な仕組みづくりです。

Q5. 遠距離介護の交通費を節約する方法はありますか?割引制度や企業の福利厚生について

遠距離介護における交通費は年間で数十万円から百万円以上に達することも珍しくないため、様々な節約方法を組み合わせることが重要です。

航空会社による介護帰省割引の活用が効果的です。一部の航空会社では、介護を受ける方と同居していない介護者が帰省する際に利用できる割引制度を提供しています。利用条件として、二親等以内の親族であることや、介護認定の書類、戸籍謄本などの提出が必要となる場合があります。ただし、航空会社によって割引の有無や内容は異なるため、利用を検討している場合は各航空会社に直接問い合わせる必要があります。格安航空券の方が割引よりも安価な場合もあるため、比較検討が推奨されます。

企業の福利厚生を最大限活用することも重要です。一部の企業では、福利厚生として遠方に住む家族の介護のための帰省旅費を補助する制度を導入しています。森永乳業は帰省旅費の一部負担、大和ハウス工業は「親孝行支援制度」として年4回を上限に帰省距離に応じた補助金(1回につき1.5万円~5.5万円)を支給しています。自身の勤務先にこうした制度がないか、人事部門に確認することが大切です。

テレワークの活用も現代ならではの節約方法です。パソコンがあればどこでも仕事ができる現代では、週に1日テレワークを取り入れることで通勤時間を削減し、その分をケアマネジャーや理学療法士との連絡、または親元への帰省に充てるなど、時間管理を工夫している介護者もいます。

介護タクシーの適切な利用も交通費節約につながります。介護タクシーは、運転手が介護や医療に関する専門知識を持ち、車椅子対応車両を提供しており、通院など医療行為に関連する移動のために利用し、かつ公共交通機関の利用が困難な場合に、その交通費が医療費控除の対象となる可能性があります。

地域の移動支援サービスの活用により、親の移動に関する費用を抑えることも可能です。前述の地域住民による移動支援では、1回100円~600円程度の低料金で利用できるサービスが多数存在します。

さらに、住宅リフォームの助成金を活用し、親の自宅を安全にすることで、怪我や事故による緊急帰省の頻度を減らすことも間接的な節約効果があります。要介護認定を受けている場合、支給限度基準額20万円の9割(18万円)が上限で助成されることがあります。

これらの方法を組み合わせることで、遠距離介護の経済的負担を大幅に軽減することが可能です。

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