民法改正で共同親権はいつから?2026年4月施行の内容と影響を徹底解説

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民法改正によって導入される共同親権制度は、2026年4月1日から施行されることが確定しています。これは2024年5月に成立した改正民法に基づくもので、1947年の民法制定以来77年ぶりとなる家族法制の大改正です。離婚後も父母双方が子育てに責任を持つ「共同親権」が選択可能となり、養育費確保のための新制度も同時にスタートします。この記事では、施行時期の詳細から共同親権の具体的な仕組み、養育費に関する画期的な新制度、そして既に離婚している家庭への影響まで、知っておくべき重要なポイントを詳しく解説します。

民法改正による共同親権はいつから始まるのか

共同親権制度の施行日は2026年(令和8年)4月1日です。この日付は、改正民法の附則第1条において「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」と規定されていることに基づいています。改正民法は2024年5月17日に国会で可決・成立し、同年5月24日に公布されました。政府は公布から約1年半後の2025年10月頃に施行期日を定める政令を閣議決定し、新年度の開始に合わせて2026年4月1日を施行日とする方針を固めています。

この約2年間の準備期間は、新制度に対応するための家庭裁判所の体制整備、戸籍事務システムの改修、そして国民への周知徹底のために設けられたものです。現在離婚を検討している方や、将来的な親権変更を望んでいる方にとって、この「2026年4月1日」という日付はすべての法的判断の分水嶺となる重要な基準日です。

施行までの移行期間における取り扱い

2024年5月の公布から2026年4月の施行までの約2年間は、現行法である単独親権制度が引き続き適用される移行期間となります。この期間中に成立した離婚については、原則として従来どおり父母のどちらか一方を親権者と定めなければなりません。

施行日をまたぐケースの扱いについても、改正法の附則で明確に定められています。施行日前に離婚が成立した場合は単独親権となりますが、施行日以降であれば、親権者変更の申立てを通じて共同親権へと移行する道が開かれます。つまり、現在離婚協議中の方にとっては、施行を待って離婚するか、あるいは施行前に離婚を成立させておくかという戦略的な判断が求められる局面にあると言えます。

関連法案との連動スケジュール

今回の改正は民法だけにとどまらず、家事事件手続法、人事訴訟法、民事執行法など多岐にわたる法律の一括改正です。これらは原則として同日の2026年4月1日に施行されます。

2024年5月24日には改正法が公布され、2024年から2025年にかけて最高裁判所規則の制定、家庭裁判所の運用指針(ガイドライン)の策定、自治体窓口のマニュアル作成が進められています。2025年10月頃には施行期日を定める政令の閣議決定が予定されており、そして2026年4月1日に改正法が全面施行となり、共同親権、法定養育費、先取特権等の新制度がスタートします。このように、施行までには周到な準備期間が設けられており、実務の現場では現在進行形で新制度への対応策が練られている段階です。

共同親権制度の仕組みとは

単独親権から選択的共同親権への転換

これまでの民法(改正前第819条)では、離婚時には必ず父母の一方を親権者と定めなければならない「単独親権」制度が採用されていました。改正民法では、離婚後の親権について、父母が協議により「双方を親権者とする(共同親権)」か「一方を親権者とする(単独親権)」かを選択できる仕組みを導入しました。

ここで重要なのは、これが「原則共同親権」ではなく、「選択的共同親権」であるという点です。メディア等では「共同親権導入」と一括りにされがちですが、法的には「選択肢が増えた」という構成をとっています。ただし、裁判所が介入する場合の判断基準が変わるため、実質的には共同親権がスタンダードな選択肢の一つとして機能し始めることになります。

親権決定の三段階プロセス

離婚後の親権のあり方は、協議、調停、審判という三段階のプロセスを経て決定されます。

第一段階は父母による協議です。離婚する夫婦は、まず自分たちで話し合い、離婚後の親権を共同にするか単独にするかを決めます。双方が合意し、それが子どもの利益に反しない限り、離婚届にその旨を記載して提出すれば、その合意どおりの親権形態が認められます。これまでの離婚届には親権者を「夫」か「妻」のどちらかにチェックする欄しかありませんでしたが、2026年の施行に合わせて様式が変更され、共同親権を選択する欄が新設されます。

第二段階は家庭裁判所による調停です。話し合いがまとまらない場合、または一方が話し合いに応じない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。調停委員が間に入り、双方の意見を聞きながら、子どもの年齢、環境、父母の関係性などを考慮して、どちらの親権形態が望ましいかを探ります。

第三段階は家庭裁判所による審判です。調停でも合意に至らない場合、最終的には裁判官が審判によって親権者を指定します。改正法では重要な判断基準が示されており、裁判所は「子の利益」を最優先に考慮し、父母双方を親権者とすべきか、一方を親権者とすべきかを判断します。父母が共同して親権を行使することが困難であると認められる特段の事情がない限り、共同親権の可能性も十分に検討されることになります。

DVや虐待がある場合の単独親権

共同親権の導入に際して最も懸念されたのが、DVや虐待があるケースでも加害親と関わり続けなければならないのかという点です。この懸念に対し、改正法は明確な「除外事由」を設け、以下のようなケースでは裁判所が必ず単独親権としなければならないと規定しました。

一つ目は虐待の恐れがある場合で、父または母が子に対して虐待をする恐れがあるときです。二つ目はDVの恐れがある場合で、父または母が配偶者に対して暴力を振るう等により、共同して親権を行使することが困難であると認められるときです。

ここでの「DV」の定義は、身体的暴力に限らず、精神的な支配や経済的圧迫を含む広義の概念として運用されることが期待されています。裁判所は、当事者からの申立てや調査官の調査に基づき、DVの存在やその影響を認定した場合は、共同親権を排除し、単独親権を選択しなければなりません。これにより、被害者親子の安全を確保するセーフガードが法的に担保されています。

共同親権下での意思決定の分担

共同親権となった場合、あらゆることを逐一二人で合意しなければならないとなると、子育てが停滞する恐れがあります。そこで改正法は、親権の行使について「共同で行うべき事項」と「単独で行える事項」を整理しました。

重要事項については共同決定が必要です。子どもの進学先の選択(公立か私立か)、長期の転居、重大な医療行為、改宗など、子どもの人生や身分に重大な影響を及ぼす事項については、父母が協議して共同で決定する必要があります。

日常の行為については単独決定が可能です。日々の食事、身の回りの世話、習い事の送迎、軽微な病気の受診、ワクチン接種といった「監護及び教育に関する日常の行為」については、同居している親(監護親)が単独で決定・実施できるとされました。これにより、別居親のいちいちの同意がなくても、日常的な子育てに支障が出ないよう配慮されています。

急迫の事情がある場合も単独決定が可能です。緊急手術が必要な場合や、DVや虐待から避難する場合など、急迫の事情があるときは、例外的に単独で親権を行使できると明記されました。これにより、「別居親と連絡がつかないから手術の同意書が書けない」といった生命に関わるリスクを回避することができます。

養育費確保のための新制度とは

民法改正のもう一つの大きな柱は、ひとり親世帯の貧困要因となっている養育費の不払い問題に対する抜本的な対策です。共同親権の導入とセットで、養育費の履行を確保するための強力な法的ツールが導入されます。

法定養育費制度の創設

従来の実務では、離婚時に養育費の取り決めをしていなかった場合、後から請求するには改めて調停を申し立てる必要があり、その間の養育費が確保できないという問題がありました。改正法では、「法定養育費」という画期的な概念が新設されます。

これは、離婚時に具体的な取り決めがなくても、法律上当然に発生する養育費の請求権です。子を監護している親は、別居している親に対し、法務省令で定められる「一定額(最低限度の生活費)」をいつでも請求できるようになります。この制度の導入により、離婚直後の混乱期や、相手方が話し合いに応じない場合でも、少なくとも最低限の金額については法的根拠を持って直ちに請求することが可能となり、不払いの「逃げ得」を許さない姿勢が鮮明になります。

養育費の先取特権とは

さらに画期的な改正点が、養育費債権に対する「一般の先取特権」の付与です。先取特権とは、債務者の財産について、他の債権者に優先して弁済を受けることができる権利のことです。

これまで、養育費の未払いを理由に相手の給料や預金を差し押さえる(強制執行する)には、判決書、調停調書、執行認諾文言付き公正証書といった「債務名義」が必要でした。協議離婚で単なる離婚協議書(私文書)しか作成していない場合、裁判を起こして判決を得なければ強制執行ができず、これが回収の大きなハードルとなっていました。

改正により養育費に先取特権が付与されると、理論上は債務名義がなくても、養育費の権利を証明することで、相手方の財産に対する競売手続や配当要求が可能となります。従来の「公正証書がなければ泣き寝入り」という状況が劇的に改善される可能性があります。

財産開示手続の活用

養育費を回収しようにも「相手がどこに勤めているかわからない」「どこの銀行に口座があるかわからない」というケースも多発しています。これに対応するため、「第三者からの情報取得手続(財産開示手続)」が、今回の民法改正と連動してより実効性を増すことが期待されます。

裁判所を通じて、市町村や年金事務所から勤務先情報を取得したり、銀行本店に照会して支店の口座情報を特定したりする手続きが、先取特権や法定養育費制度と組み合わされることで、不払い親に対する包囲網は格段に狭まることになります。

既に離婚している家庭への影響

現在、単独親権の下で子育てをしているひとり親家庭にとって、この改正が自分たちにどう適用されるのかは切実な問題です。改正法は、施行日(2026年4月1日)より前に成立した離婚についても、一定の条件下で新制度への移行を認める遡及的な措置を講じています。

親権者変更の申立てによる移行

施行日以降、既に離婚している父母の間でも、家庭裁判所に「親権者の変更」を申し立てることによって、単独親権から共同親権へと変更することが可能になります。

父母間に合意がある場合は、元夫婦が話し合い、これからは二人で協力して育てようと合意に至れば、家庭裁判所の審判を経て、スムーズに共同親権に変更することができます。この場合、裁判所は主に形式的な確認と、それが子の不利益にならないかのチェックを行います。

父母間に合意がない場合が最も論争となる点ですが、元配偶者の一方が共同親権を望み、もう一方が拒否している場合でも、家庭裁判所に変更の申立てを行うこと自体は可能です。

裁判所による変更の判断基準

しかし、申立てがあれば簡単に共同親権に変更されるわけではありません。家庭裁判所は、既に安定している現在の養育環境を変更することのリスクを慎重に評価します。

子の利益の観点からは、現状の単独親権の下で子どもが心身ともに健全に育っている場合、あえて法的地位を変更する必要性があるかが厳しく問われます。「親が関わりたいから」という親側の事情だけでは認められにくく、「共同親権にすることで子どもにどのようなプラスがあるか」が重視されます。

離婚時の経緯と合意の性質も重要です。離婚時に激しいDVがあったり、深刻な対立の末に「二度と関わらない」ことを条件に親権を譲ったりといった経緯がある場合、裁判所は共同親権への変更を認めることに極めて慎重になります。改正法附則には、親権者変更の判断において「離婚の協議の経過」を考慮すべき旨が明記されており、過去の紛争の実態が蒸し返されることになります。

現在の関係性も判断材料となります。現在、面会交流が円滑に行われているか、父母間で最低限の連絡調整ができる関係にあるかも重要です。連絡すら取れない状態で「共同親権」という法的枠組みだけを与えても機能しないためです。

既に離婚して長期間が経過し、単独親権での生活が定着しているケースにおいて、監護親の強い反対を押し切ってまで裁判所が共同親権への変更を命じるケースは、よほど特段の事情がない限り、限定的であろうと予測されています。しかし、別居親側から見れば「申し立てる権利」が法律で保障されること自体が大きな変化であり、これを契機に面会交流の拡充や養育費の増額といった交渉が活発化する可能性があります。

親子交流(面会交流)の促進について

改正法では、これまで「面会交流」と呼ばれてきた別居親と子との接触について、より広い概念である「親子交流」という言葉を用いて、その重要性を再定義しています。

親の責務としての交流

改正法の背景には、「親の離婚後も、子どもは父母双方から愛され、養育される権利を持つ」という理念があります。共同親権の導入は、単に親権という権利を分け合うだけでなく、別居親も子育てに対する「責務」を負うことを意味します。

したがって、正当な理由なく親子交流を拒絶することは、親権者としての適格性に疑義を生じさせる事情となり得ます。一方で、DVや虐待のリスクがある場合には、交流を制限・禁止することが「子の利益」を守るために必要であるという原則も維持・強化されています。

祖父母等との交流の法制化

注目すべき新たな規定として、父母以外の親族(祖父母など)と子との交流について、家庭裁判所が関与できるようになった点が挙げられます。

これまでは、離婚によって親権を持たない側の祖父母が孫に会えなくなっても、それを法的に救済する明確な規定がありませんでした。改正法では、「子の利益のために特に必要があると認めるとき」は、家庭裁判所が祖父母等の親族と子との交流について定めることができるようになります。これは、親が死亡したり行方不明になったりした場合や、親自身が深刻な対立関係にあっても祖父母とは良好な関係にある場合など、子どもの支援ネットワークを広げるための措置として機能します。

民法改正の背景と今後の展望

国際的な潮流と日本の対応

なぜ今、77年ぶりの大改正が行われるのでしょうか。主要先進国(G7)の中で、離婚後の単独親権制度を堅持していたのは日本だけでした。このため、国際結婚が破綻した際に、日本人親が子どもを無断で日本に連れ帰り、相手方親との接触を完全に断つケースが相次ぎ、これが国際法上の問題として諸外国から強い批判を浴びてきました。

また、国連の子どもの権利委員会からも、日本に対し、子どもの最善の利益を確保するために共同養育を可能にする法整備を行うよう、度重なる勧告が出されていました。今回の改正は、こうした国際的な要請に応えるとともに、グローバルスタンダードに合わせた法制へのアップデートという意味合いを持っています。

養育責任と子どもの貧困問題

国内においても、離婚による「親子の断絶」が深刻な問題となっていました。単独親権制度の下では、親権争いに負けた側の親は、法的に子育てに関与する権利を失ったかのような扱いを受け、面会交流も月1回数時間程度に制限されることが一般的でした。

その結果、「会えないなら金も払わない」という心理が働き、養育費の不払いが増加し、ひいては子どもの貧困につながるという悪循環が生じていました。共同親権は、離婚後も両親が対等な立場で子に関わることで、別居親の養育意欲を維持し、精神的・経済的な両面から子どもを支える基盤を作ることを目的としています。

今後に向けて知っておくべきこと

2026年4月1日の民法改正施行は、日本の家族観における大きな転換点です。「離婚したら他人」というこれまでの感覚から、「離婚しても父母は父母」という父母の終生責任へと意識の転換が求められます。

この改正は、適切に運用されれば、子どもが両親の愛情を受けて育つ機会を増やし、養育費の確保によって経済的な安定をもたらす大きなメリットがあります。一方で、DV被害の継続や、父母間の紛争が子どもを板挟みにするリスクも完全には排除できません。だからこそ、司法の適切な介入と、私たち一人一人が法制度の趣旨を正しく理解することが不可欠です。

現在離婚協議中の方は、施行日である2026年4月まで離婚を待てる状況か、それとも一刻も早く離婚すべき状況かを見極めることが重要です。DV事案であれば、法施行を待たずに現行法下で単独親権を確保し、安全な生活を確立することが優先されるでしょう。円満離婚であれば、あえて施行を待ち、最初から共同親権を選択することで、将来の親権変更の手間を省くという選択肢もあります。

既に離婚している別居親の方は、2026年以降に親権者変更の申立てが可能になりますが、認められるハードルは低くありません。今からできる準備として、養育費を滞りなく支払うこと、面会交流の実績を積み重ねて子どもとの信頼関係を築くこと、そして元配偶者との感情的な対立を緩和する努力を始めることが、将来的な共同親権への近道となります。

ひとり親(同居親)の方は、新制度によって元配偶者から共同親権への変更を申し立てられるかもしれないという不安があるかもしれません。しかし、現在の生活が安定しており、子どもが健全に育っているならば、裁判所が安易に変更を命じることはありません。むしろ、新設される法定養育費や先取特権の知識を身につけ、未払いの養育費がある場合はそれを回収する準備を進める好機と捉えることもできます。

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