障害年金2026年度改定で増額!物価スライドの仕組みと金額を解説

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2026年度(令和8年度)の障害年金は、物価スライドと賃金スライドの仕組みにより前年度から増額されることが決定しました。厚生労働省が2026年1月23日に公表した内容では、障害基礎年金は前年度比プラス1.9%、障害厚生年金の報酬比例部分は前年度比プラス2.0%の引き上げとなっています。増額の理由は、2025年の消費者物価指数がプラス3.2%を記録したことを受けた物価スライドの適用にありますが、現役世代の賃金上昇率が物価上昇に追いついていないため、マクロ経済スライドの調整も加わり、物価上昇率そのものよりも低い改定率となりました。新しい金額は2026年4月分(同年6月支給分)から適用されます。この記事では、2026年度における障害年金改定の具体的な金額、増額の理由となった物価スライドの仕組み、マクロ経済スライドによる調整の影響、さらに関連する手当の改定まで詳しく解説します。

2026年度の障害年金改定の全体像

2026年度の障害年金改定は、名目上の支給額が引き上げられるという点で受給者にとって安堵材料となる改定です。障害基礎年金(国民年金)は前年度比プラス1.9%、障害厚生年金の報酬比例部分は前年度比プラス2.0%の引き上げが確定しました。ただし、この上昇幅は改定の基準となった2025年の物価上昇率3.2%を下回っています。物価が3.2%上がったにもかかわらず年金の増額が1.9%から2.0%にとどまった背景には、「賃金スライド」と「マクロ経済スライド」という二つの調整メカニズムが厳格に適用されたことがあります。

この結果、受給者の実質的な購買力は前年度と比較して目減りすることになります。額面上の金額は増えるものの、物価上昇分をカバーしきれない構造となっているため、受給者にとっては改定の仕組みそのものを理解しておくことが重要です。なお、障害年金は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の二階建て構造となっており、それぞれの改定率が異なる点も2026年度の特徴として押さえておく必要があります。

障害年金が増額される理由と物価スライドの仕組み

物価変動率と名目手取り賃金変動率の関係

年金額の改定率を決定する際には、二つの経済指標が重要な役割を果たします。一つ目は物価変動率です。2026年度改定の基準となった2025年(令和7年)の全国消費者物価指数(生鮮食品を含む総合指数)の対前年変動率はプラス3.2%でした。エネルギー価格の下落があったものの、食料品価格の顕著な上昇が全体を押し上げた結果、高い水準を記録しています。

二つ目は名目手取り賃金変動率で、プラス2.1%と算出されました。この数値は、直近3年度(令和4年度から令和6年度)の実質賃金変動率の平均であるマイナス1.1%に、物価変動率プラス3.2%と可処分所得割合変化率0.0%を組み合わせて計算されたものです。

賃金スライドが適用される理由

年金額改定のルールでは、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合、低い方の名目手取り賃金変動率を用いて改定を行うと定められています。2026年度は物価変動率3.2%に対して名目手取り賃金変動率が2.1%であったため、低い方の2.1%が改定の基準として採用されました。

本来であれば物価に合わせて3.2%引き上げることが理想的ですが、支え手である現役世代の賃金上昇が2.1%にとどまっている状況下で、年金受給者のみを物価に合わせて手厚く保護することは世代間の公平性を損なうことになります。この「賃金スライド」の仕組みにより年金財政の持続可能性が担保されていますが、受給者にとってはインフレ率以下の増額にとどまる主な要因となっています。

マクロ経済スライドがもたらす調整効果

賃金変動率の2.1%からさらに差し引かれるのがマクロ経済スライドによる調整分です。マクロ経済スライドとは、少子高齢化に伴う現役世代(被保険者)の減少と平均余命の伸びを年金額に自動的に反映させ、給付水準を緩やかに抑制する仕組みのことです。

2026年度のマクロ経済スライド調整率はマイナス0.2%と算出されました。この結果、障害基礎年金の最終的な改定率は、賃金変動率2.1%からマクロ経済スライド調整率0.2%を差し引いたプラス1.9%となっています。

一方、障害厚生年金の報酬比例部分については、2025年の制度改正に伴う特例措置が適用されています。この特例措置は、将来の給付水準(所得代替率)の低下を和らげるため、厚生年金の報酬比例部分にかかるマクロ経済スライドの調整率を2030年度(予定)までの間、本来の3分の1程度に緩和するというものです。その結果、厚生年金の調整率はマイナス0.1%となり、改定率はプラス2.0%となっています。2026年度は障害基礎年金と障害厚生年金で改定率に0.1ポイントの差が生じている点が特徴的です。

障害基礎年金の2026年度支給額

障害基礎年金1級と2級の改定額

障害基礎年金は、国民年金制度に加入していた期間に初診日がある場合、または20歳前に初診日がある場合に支給される基礎的な給付です。等級は1級と2級に分かれており、2級の額が老齢基礎年金の満額と同額、1級はその1.25倍と設定されています。2026年度の改定額は2026年4月分(同年6月支給分)から適用されます。

障害基礎年金1級は、月額換算で88,260円となりました(昭和31年4月2日以降生まれの新規裁定者の場合)。常時介護を必要とするような重度の障害状態にある受給者の生活を支えるための基礎的な所得保障として位置づけられています。

障害基礎年金2級は、月額換算で70,608円となりました。前年度の月額69,308円と比較して月額1,300円の増額です。日常生活に著しい制限を受ける程度の障害状態にある受給者に支給されます。

なお、昭和31年4月1日以前に生まれた既裁定者については、計算の基礎となる係数が異なるため、2級の月額が70,408円となるなど数十円から数百円程度の微細な差が生じる場合がありますが、原則的な増額率は同一です。

以下の表は、障害基礎年金の主な金額について前年度との比較をまとめたものです。

項目2025年度2026年度増減額
障害基礎年金2級(月額)69,308円70,608円+1,300円
子の加算・第1子第2子(年額)234,800円239,300円+4,500円
子の加算・第3子以降(年額)78,300円79,800円+1,500円
生活者支援給付金1級(月額)6,813円7,025円+212円
生活者支援給付金2級(月額)5,450円5,620円+170円

子の加算額の2026年度改定

障害基礎年金の受給者に、その者によって生計を維持されている子がいる場合には、基礎年金額に上乗せして「子の加算」が支給されます。対象となるのは、18歳到達年度の末日(3月31日)までの間にある子、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子です。

2026年度における子の加算額は、第1子と第2子が各239,300円(年額)で、前年度の234,800円から4,500円の増額となっています。第3子以降は各79,800円(年額)で、前年度の78,300円から1,500円の増額です。この加算額の引き上げも賃金変動率およびマクロ経済スライドの結果を反映したものであり、子育て世代の障害年金受給者にとって重要な生活支援となっています。

障害厚生年金の2026年度支給額と等級別の構造

報酬比例部分の計算と改定

障害厚生年金は、会社員や公務員など厚生年金保険に加入している間に初診日がある場合に支給される、障害基礎年金に上乗せされる「2階部分」の年金です。障害の程度に応じて1級から3級までの等級が存在します。

障害厚生年金の額は、受給者個々の現役時代の標準報酬月額と加入期間に基づいて算出される「報酬比例部分」が基本となります。2026年度は、この報酬比例部分の計算に用いられる再評価率等がプラス2.0%引き上げられました。300月(25年)未満の加入期間しかない場合でも、300月加入したものとみなして計算される「最低保障」の仕組みがあるため、若くして障害を負った場合でも一定の水準が確保されます。

等級別の支給構造と最低保証額

障害厚生年金1級の場合は、報酬比例の年金額が1.25倍に増額されて計算され、さらに配偶者加給年金が加算されます。これに加えて障害基礎年金1級も併給されるため、手厚い保障となっています。障害厚生年金2級では、報酬比例の年金額に配偶者加給年金が加算される形で、障害基礎年金2級と併給されます。

障害厚生年金3級は障害厚生年金独自の等級であり、障害基礎年金は支給されません。報酬比例部分の計算額が低い場合でも、2026年度は年額623,800円(昭和31年4月2日以降生まれの場合)が最低保証額として設定されています。この最低保証額があることにより、加入期間が短い場合や標準報酬月額が低い場合でも、3級の受給者には一定水準の所得保障が確保されます。

配偶者加給年金の改定と支給停止要件についての注意点

障害厚生年金1級または2級の受給者に、生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合は「配偶者加給年金」が加算されます。2026年度の配偶者加給年金額は239,300円(年額)で、子の加算(第1子・第2子)と同額であり、前年度から増額されています。

配偶者加給年金について注意が必要なのは、厳格な支給停止要件が存在する点です。2022年4月の制度改正以降、配偶者自身が老齢厚生年金(被保険者期間20年以上)や退職共済年金(組合員期間20年以上)、あるいは障害年金を受け取る権利を有している場合、配偶者自身の年金が全額支給停止(在職中など)であっても、障害年金受給者側の配偶者加給年金は支給停止となります。このルールは2026年度も継続して適用されるため、配偶者が長期間会社員であった場合などは事前に確認しておくことが大切です。

障害年金生活者支援給付金の2026年度改定額

障害年金生活者支援給付金とは、年金制度とは別に所得が一定以下の障害年金受給者に対して支給される福祉的な上乗せ給付です。消費税率引き上げ分を活用した制度で、物価変動の影響を直接的に受ける仕組みとなっています。

2026年度の支給額は、障害等級1級の方が月額7,025円で、前年度の6,813円からプラス212円の増額となりました。障害等級2級の方は月額5,620円で、前年度の5,450円からプラス170円の増額です。

この給付金は障害基礎年金の受給者であって、前年の所得が一定額以下(扶養親族の人数によりますが、単身世帯で概ね472万円以下など)である場合に支給されます。新たに要件を満たした場合は日本年金機構から送付される請求書を提出する必要がありますが、既に受給している方は自動的に改定後の額が振り込まれます。

関連する障害者手当の2026年度改定と在職老齢年金の変更

特別障害者手当等の改定額

障害年金の改定と連動して、障害者福祉に関連するその他の手当も2026年4月から増額されます。これらは年金と併給可能な場合も多く、総合的なセーフティネットの一部として機能しています。

特別障害者手当は月額30,450円で、在宅で常時特別の介護を必要とする重度障害者(20歳以上)に支給されます。障害児福祉手当は月額16,560円で、重度の障害を持つ20歳未満の児童に支給されます。特別児童扶養手当は1級が月額58,450円、2級が月額38,930円で、精神または身体に障害のある20歳未満の児童を養育する保護者に支給されます。

在職老齢年金の支給停止調整額の大幅引き上げ

障害年金受給者が65歳を迎え、老齢厚生年金との選択や併給を検討する際に重要となるのが在職老齢年金制度です。2026年度改定において、この制度の支給停止調整額が従来の51万円から65万円へと大幅に引き上げられました。

賃金と年金の合計額が月額65万円までは年金が一切カットされずに全額支給されることを意味します。障害を持ちながら就労する高齢層や障害者雇用枠で働く受給者にとっても、就労意欲を阻害しない大きな制度変更です。従来は51万円を意識して就労調整を行うケースがありましたが、65万円への緩和により、より柔軟な働き方が可能となります。

2026年度改定の経済的背景と物価・賃金の動向

食料品主導のインフレが家計に与える影響

改定の基準となった3.2%の物価上昇率は、一様な値上がりによるものではありません。食料品価格の高騰が総合指数を大きく押し上げた一方で、エネルギー価格は沈静化の傾向が見られました。

生鮮食品を除く食料品価格の上昇が加速し、輸入原材料価格の高止まりや円安の影響が色濃く反映されています。生活必需品である食料の値上がりは低所得世帯ほど家計への打撃が大きく、障害年金受給者のような固定収入層にとっては統計上の数字以上に生活実感としての負担感を強める要因です。

エネルギー価格については、ガソリンや電気代、都市ガス代に関して政府の補助金政策の効果もあり、前年比で下落または横ばいの傾向でした。これにより物価全体の上昇幅はある程度抑制されたものの、食料品の上昇分を相殺するまでには至っていません。

実質賃金の低迷と年金改定率への影響

2025年時点の統計では、名目賃金こそ上昇しているものの、物価上昇を差し引いた実質賃金は直近3年度平均でマイナス1.1%と低迷しています。現役世代の実質的な稼ぎが減っている中で年金受給者への給付だけを物価通りに増やせば、現役世代の保険料負担感が増大し制度への信頼が揺らぎかねません。

年金制度には「実質賃金がマイナスの場合、年金改定率もその分抑制する」という調整弁が組み込まれており、2026年度はこの調整弁が作動した形です。物価上昇率3.2%に対して改定率が1.9%から2.0%にとどまった最大の要因は、この賃金スライドの仕組みにあります。

今後の見通しと受給者が知っておくべきポイント

年金振込通知書で正確な手取り額を確認する

2026年度の改定額が反映された最初の支給日は2026年6月15日(4月分・5月分)です。これに先立ち、日本年金機構から2026年6月上旬頃に「年金振込通知書」および「年金額改定通知書」が発送されます。この通知書には改定後の基本額だけでなく、天引きされる介護保険料や国民健康保険料等の額も記載されるため、実際の手取り額を確認する上で不可欠な書類です。支援給付金の通知書はハガキ形式で別送される場合があるため、郵便物の確認には注意が必要です。

精神・知的障害による受給増加と更新手続きの重要性

障害年金制度を取り巻く環境として見逃せないのが、受給事由の構造変化です。2025年9月時点の統計では、新規裁定における精神障害・知的障害の割合が67.0%を占め、更新時においては79.1%に達しています。うつ病や統合失調症、発達障害など外見からは分かりにくい障害による受給が主流となる中で、2026年度の改定による増額は就労が不安定になりがちなこれらの層にとって生命線となっています。

一方で、有期認定(更新)の審査においては、診断書の記載内容と日常生活能力の整合性が厳格に見られる傾向が続いています。金額の改定と並んで更新手続きの準備も受給者にとっての大きな関心事であり、主治医との連携や日常生活の状況を正確に伝えることが重要です。

2030年に向けた制度改革の展望

2026年度の改定は、2025年の年金制度改正を経た最初の本格的な改定でした。特に厚生年金におけるマクロ経済スライドの緩和措置(マイナス0.1%への縮小)は2030年度までの時限措置です。政府は次期財政検証(2029年頃予定)に向けて、基礎年金の給付水準の維持やマクロ経済スライドの適用期間の調整について議論を加速させています。

障害年金受給者にとって基礎年金部分は生活の根幹です。2026年度は1.9%の増額となりましたが、物価上昇率との差であるマイナス1.3%相当の実質減が今後も続けば、マクロ経済スライドの調整終了時期の前倒しや基礎年金への国庫負担割合に関する議論など、制度的な抜本改革が必要となる可能性があります。受給者においては、6月に届く通知書で自身の正確な支給額をしっかりと把握すると同時に、物価高騰に対する家計防衛策を講じることが2026年度を乗り切るための現実的な対応となります。

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