手の常在菌を使った発酵ジュースを提供しているホテルとは?

生活

「ビートたけしのTVタックル」は、4月23日にテレビ朝日系列で放送され、ヘルスツーリズムの特集として、AWA西伊豆が提供している発酵シロップを使ったジュースが紹介されました。番組では、自家製の発酵シロップをホテルのスタッフが紹介する際、「手の菌の常在菌というものを使って発酵させているので、中に手を入れてかき混ぜています」と説明しながら、透明の瓶の中に直接手を入れながら夏みかんをかき混ぜている様子が映し出されました。

番組放映後、ツイッターでは、「どんな菌がついているか分からない状態の手で直接食材に触れるのは危険だ」「荒れた手には食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌が付着していることがある」といった、衛生面を不安視する声が続出していました。

このホテルは、発酵に関する知識が不足していると言い訳していますが、実際には衛生観念全般に関する基本的な知識が不足しているようです。そのため、このジュース以外のものについても懸念されることがあります。

数年前の食品衛生法改正により、食品取り扱い業者はHACCP管理が必要になりました。そして、飲食店を含む一般的な食品取扱施設で設置が義務付けられる食品衛生責任者の講習会では、HACCPとその基礎になる衛生管理について教えられます。 しかし、講師のレベルはお世辞にも高いとは言えず、また受講者は居眠りをしている始末です。 今回の件も、企業に勤める食品取扱者としては当然の衛生規範であっても、個人経営の事業者ではなかなか教育が行き届かないという典型的なケースでしょう。 マトモな衛生規範を認知していれば、自分の素手で非加熱で一定期間保存する果実ジュースに手を出すことは本当にあり得ないことです。 当事者は衛生規範を欠いていることは明らかですが、それに言及し反省の意思が見られない場合、もはや業界から退場することが望ましいでしょう。

これ、数年前に流行りましたよね。たとえ自分や家族に飲ませるためだとしても、食品衛生を知っていれば気持ち悪くて絶対にできません。ましてやホテルとして客に提供するなんてことは、食品衛生の勉強をしたプロがすることとは到底思えません。

番組を観ていて、「手の常在菌を使った発酵」というアバウトな説明と映像にちょっとビビりました。確かにヨーロッパのワイン造りでも若い娘さんたちが素足でブドウを踏みつけて作るシーンを見たこともありますが、今の時代、客に提供するものがこの作り方ではだめでしょうね。地元の味噌屋見学に行ったとき言われたのは、「前の日から納豆を食べないで来てください。」でした。ちょっとの納豆菌でも味噌蔵1つダメになるのだそうです。目に見えないものだからこそ、しっかりした管理が必要なんだと思います。

この件は保健衛生上、絶対にあってはならない問題です。今まで健康被害にあった人はいないのでしょうか?心配です。

このホテルの発酵ジュースを取り上げ放映してしまったテレビ局の制作サイドの倫理観にも問題がありますが、逆に放映されたことによってこのような不適切な行為を世にさらすことにつながる皮肉な結果となりました。本来なら、放映する前に不適切な行為を感じ取り、保健所に通報するセンスが番組制作者や責任者にあれば、違った評価に結び付いたと思います。

この件で思い出したのは、半世紀以上昔のヨーロッパのどこかの国(覚えていません、ごめんなさい)で収穫したブドウを民族衣装を着た女性たちが裸足で踏みつぶして葡萄酒を作るシーンを放映していたテレビ番組です。当時は、「フーン、そうなんだ」と思って観ていましたが、今ではあり得ないことです。このホテルは、半世紀以上昔の感覚のままなのでしょうか。

とにかく、この問題が発覚して良かったです。

「発酵」という言葉だけで、菌が入れば自然に発酵するというのは本当に怖いですね。何の菌がどういう作用をすることで発酵が起こるのか、そしてそれがどのように良い影響を与えるのかについて、他人に説明できる程度になってから、世に出すべきだと思います。それが最低限の説明責任ではないでしょうか。

発酵を促すことは、発酵に必要な菌が繁殖しやすい環境を作ることを意味します。例えば、酵母菌や雑菌のように、菌は菌であるため、発酵を促進する菌が繁殖しやすい環境では、同様に雑菌も繁殖しやすい環境となります。そのため、必要な菌以外の菌が繁殖しないようにするために、自然の法則に反する注意や配慮が必要です。

糠床のように高い塩分濃度の中では、雑菌はまだ繁殖しにくいですが、 ジュースのような高い糖度の中は、多くの菌類にとって栄養豊富なパラダイスとなります。 私自身も、個人で楽しめる範囲で簡単な発酵食品を作りますが、 糖質の多いものを発酵させる場合は、個人レベルでも結構気を遣う必要があるため、 勉強不足であることに衝撃を受けました。

なぜ、この旅館は、テレビ番組の取材に応じたのか、疑問です。確かに、今までは食品衛生法上の問題もなく過ごしてきたでしょうが、それが一度公になれば、気にする方もいるでしょう。その飲料の効果は別にしても、その行為は軽率です。

何よりも、プロデューサーや製作者側が何も疑問を感じずに放送してしまうことに怖さを感じます。テレビ局の人たちって、普通の感覚が麻痺している方が多いのかなあ。

私は、まさしくこれと同じシロップ作りのワークショップに参加したことがあります。完成したけれども、やっぱりドロドロのものを見ると不安になって捨てました。母は、自分で作ったシロップが美味しかったと言っていましたね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました