カシオのリングウォッチ「CRW-001-1JR」は、指に装着して使用するフルメタル製のデジタル時計です。時計事業50周年を記念して開発されたこの製品は、時刻表示やストップウオッチ、デュアルタイムなど、デジタルウォッチとしての実用的な機能を指輪サイズの筐体に凝縮しています。2024年12月にメーカー希望小売価格19,800円(税込)で発売され、その革新的なコンセプトとフルメタルの造形美から大きな話題を呼びました。
この記事では、カシオの指につける時計であるリングウォッチについて、詳細なスペックや搭載機能、開発を支える技術力から派生モデルの展開まで幅広く紹介します。指輪型の時計という新しいジャンルに興味をお持ちの方や購入を検討している方にとって、必要な情報を網羅的にお伝えしていきます。

カシオの指につける時計「リングウォッチ」とはどんな製品か
カシオのリングウォッチ「CRW-001-1JR」は、一般的な腕時計のモジュールを極小サイズに凝縮し、指輪という限られたスペースにデジタルウォッチの機能をフルに実装したデバイスです。カシオ計算機が時計事業に参入してから50周年という記念すべき節目に開発されました。「純粋な時計としての機能美」と「ガジェットとしての遊び心」を兼ね備えた製品として、世界中のガジェット愛好家や時計ファンから熱狂的な支持を集めています。
この製品が他の指輪型ウェアラブルデバイスと大きく異なるのは、スマートフォンとの通信機能や生体センサーを一切搭載していない完全に独立したスタンドアローンのデバイスであるという点です。心拍数や睡眠データの計測を主目的とするスマートリングが主流を占める市場において、デバイス単体で時刻を確認できる液晶ディスプレイを備えた「純粋な時計」として唯一無二のポジションを確立しています。
カシオの原点「指輪パイプ」から続く開発ストーリー
リングウォッチの誕生には、カシオの原点ともいえる歴史的なエピソードが深く関わっています。カシオ計算機の前身である「樫尾製作所」は、1946年に「指輪パイプ」というヒット商品を生み出しました。第二次世界大戦終結直後の日本は深刻な物資不足に見舞われており、当時の人々はたばこを根元まで安全に吸えるよう切望していました。この切実なニーズに応えて樫尾四兄弟の次男・俊雄が考案し、長男・忠雄の高度な旋盤技術で製品化された指輪型パイプは、爆発的な売れ行きを記録しました。
この指輪パイプの販売利益が、後のカシオを世界的な電子機器メーカーへと押し上げるリレー式電卓の開発資金源となった事実は、同社の歴史において極めて重要な意味を持っています。つまり、カシオの歴史的起点には腕時計や電卓よりも先に「指輪」という形態の製品が存在していたのです。時計事業50周年という節目において、同社商品企画部の小島一泰氏がこの歴史的文脈に着目し、リングウォッチの企画を立案しました。
開発を加速させたきっかけの一つが、2023年7月にカプセルトイメーカーから発売されたカシオ監修の指輪型ミニチュアへの市場の反響でした。カシオの歴代名機を模した精巧なミニチュアはあくまで模型であり、時計としては動作しないものでしたが、市場からは「実際に動作するものが欲しい」という熱狂的な要望が殺到しました。この声を受け、商品企画部の50周年記念企画、開発推進統轄部の野中陽子氏が進めていた新しいアクセサリー展開の構想、そして深センの開発部隊による超小型モジュール開発という三つの社内プロジェクトが一つに統合され、製品化が一気に加速したのです。
カシオ リングウォッチ CRW-001-1JR のスペック詳細
「CRW-001-1JR」の主要なスペックを以下の表にまとめました。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| ケースサイズ | 縦25.2mm × 横19.5mm × 厚さ6.2mm |
| 質量 | 約16g |
| 素材 | ステンレススチール(MIM一体成形) |
| モジュール直径 | 12.8mm |
| LCD全体の厚み | 0.77mm |
| 精度 | 平均月差±30秒 |
| 電池 | 小型ボタン電池(寿命約2年) |
| 防水性能 | 日常生活用防水 |
| リングサイズ | 22号(スペーサーで19号・16号に調整可能) |
| 操作ボタン | 3つ(物理ボタン) |
| バックライト | ホワイトLED |
| 価格 | 19,800円(税込)/米国価格135ドル |
ケース部分は縦25.2ミリメートル、横19.5ミリメートル、厚さ6.2ミリメートルというコンパクトな寸法に収められています。フルメタルのステンレススチール無垢材を使用しているため質量は約16グラムです。Samsung Galaxy Ringなどの樹脂製・チタン製スマートリングの最大重量が約3グラム程度であることと比較すると重量感はありますが、一般的な金属製腕時計と比べれば圧倒的に軽量であり、指元に確かな存在感と高級な質感を与える絶妙なバランスに仕上がっています。
内蔵する専用モジュールは直径わずか12.8ミリメートルで、G-SHOCKの定番モデル(DW-5600系など)に使用されるモジュールの体積の約10分の1にまで小型化されています。時計の精度は平均月差プラスマイナス30秒と実用上十分な数値が確保されており、純粋なタイムピースとしての信頼性も担保されています。
カシオ リングウォッチに搭載された機能の全容
「CRW-001-1JR」は極小の筐体の中に、カシオのデジタルウォッチとして求められる実用的な機能を網羅的に搭載しています。
基本の時間表示機能では、視認性の高い7セグメント表示の小型液晶を採用し、「時・分・秒」の表示に加えて「日付」の確認が可能です。フルオートカレンダー機能を実装しているため、うるう年や月末の日付修正は自動で処理されます。手動で日付を調整する手間がかからない点は、指輪サイズの極小デバイスにおいて特に利便性の高いポイントです。
グローバルな視点を持つユーザーや旅行者にとって実用的なデュアルタイム機能も搭載されており、ホームタイムとは別のもう一つの時刻を同時に把握できます。異なるタイムゾーンの時刻を手元で瞬時に確認したい場面で活躍する機能です。
計時機能としては、1/100秒単位で最大60分まで計測可能なストップウオッチ機能が備わっています。指輪サイズのデバイスにストップウオッチが搭載されていること自体が大きな驚きであり、日常のちょっとした時間計測にも活用できます。表示形式は12時間制と24時間制の切り替えにも対応しています。
時刻フラッシングライトによるアラーム・時報機能の特徴
「CRW-001-1JR」の中で最も独特な機能が、時刻フラッシングライトと呼ばれるアラームおよび時報の通知方式です。極小の指輪サイズにはバイブレーションモーターやスピーカーを搭載するスペースが存在しないため、設定した時刻や毎正時(1時間ごと)にディスプレイのLEDバックライトがほのかに点滅して時間の経過を知らせるという仕組みが採用されています。
この光の明滅による通知は、物理的な制約から生まれた仕組みでありながら、ユーザーの感情に訴えかける優雅な演出として高く評価されています。カシオの公式米国サイトでは「Pulsing light speaks to the twinkling of time(脈打つ光が時の瞬きを語る)」という詩的な表現で紹介されており、単なる機能的な代替手段ではなくエモーショナルな体験として位置づけられています。薄暗いバーや映画館、静かな夜の書斎で指元が静かに明滅し、時の経過を知らせる体験は、スマートフォンの通知音や振動とは根本的に異なる控えめで上品なものです。ただし、ホワイトLEDの発光は穏やかなため、明るい場所では発光を確認できないという仕様上の特性がある点には留意が必要です。
3つの物理ボタンによる直感的な操作性
タッチパネルが主流の時代において、この極小の指輪の側面には実際に押し込める3つの物理ボタンが配置されています。これらのボタンを使って各モードの切り替え、ストップウオッチのスタートとストップ、デュアルタイムの時刻設定などをすべて指先で操作可能です。指先でつまむように操作する極小ボタンの独特なクリック感は、アナログな機械式ガジェットを操作する際のプリミティブな楽しさを味わえるものであり、「CRW-001-1JR」が受動的なアクセサリーではなくアクティブなガジェットとしての完成度を高めている大きな要因です。
超小型モジュールを支えるカシオのマイクロエンジニアリング
指輪という極めて制約の厳しい空間に実用的なデジタルウォッチの機能を組み込むためには、従来の腕時計の設計思想を根底から覆す技術革新が必要でした。カシオの開発チームはG-SHOCKの定番モデルで使用されるモジュールをベースとしながら、それを体積比で約10分の1にまでダウンサイジングすることに成功しました。
この極小化を達成する上で最大の技術的障壁となったのが、各種電子部品の「厚み」です。開発チームは限られた空間内で部品同士の干渉を防ぎつつ機能性を維持するため、徹底的な薄型化を推し進めました。LCDのガラス板厚は通常の0.4ミリメートルから、強度が保てる限界値である0.15ミリメートルにまで削り落とされています。これによりLCD全体の厚みをわずか0.77ミリメートルに抑えることに成功しました。
暗所で時刻を確認するためのバックライト機構においても、ディスプレイを均一に発光させる導光板の厚みを0.15ミリメートルにまで薄型化しています。これはA4コピー用紙の厚みに肉薄するレベルであり、カシオの精密技術の粋を集めた成果です。こうしたミクロレベルでの技術的進化は、厳しい物理的制約の中でもデジタルウォッチの要である「視認性」と「耐久性」、そして「基本性能」を一切妥協しないという技術者たちの執念の結晶といえます。
MIM技術で実現したフルメタル一体成形の造形美
「CRW-001-1JR」の視覚的な魅力の核となっているのが、MIM(Metal Injection Molding:金属粉末射出成形)と呼ばれる高度な加工技術で実現されたフルメタルの造形美です。MIM技術とは、微細な金属粉末とバインダー(樹脂などの結合材)を混練した材料をプラスチック成形のように金型に打ち込み、その後バインダーを熱処理で除去して高温で焼結させるという特殊な製造プロセスを経る技術です。
G-SHOCKの最高峰であるMR-GやMT-Gなどのハイエンドモデルでも採用実績のあるこの技術を用いることで、カシオはケース、裏蓋、リング部分を繋ぎ目のない完全な一体成形(1ピース構造)として製造することに成功しました。従来のステンレススチールの切削加工(CNC加工)では刃物が入り込めないような複雑な三次元曲面や微細な装飾を施すことは困難ですが、粉末状の金属を射出するMIM技術を用いることで、金属の重厚感を持ちながらもプラスチック成形のような自由度の高い造形が実現しました。
カシオの伝統的なウレタン製腕時計に見られるディンプル(くぼみ)デザインやデジタルウォッチならではのメカニカルな形状が、指輪サイズで忠実に再現されています。その結果、「高級アクセサリーとしてのジュエリー感」と「精密機器としてのガジェット感」が融合した唯一無二の存在感を放つ製品が誕生しました。
防水性能と電池交換を両立した革新的な設計思想
超小型の指輪型デバイスにおいて、「十分な防水性能の確保」と「電池交換が可能な構造」の両立は最も困難な技術課題の一つです。Oura Ringなど多くのスマートリングは内部に樹脂を充填して完全密閉することで防水性を担保していますが、内蔵バッテリーの寿命(通常数年程度)が尽きれば廃棄するしかない使い捨て構造となっています。
カシオは「使い捨ての電子機器」ではなく「長く愛用できる本物の時計」をユーザーに届けるという信念のもと、電池交換可能な構造に極限までこだわりました。その鍵となったのが独自の「前面組み込み構造」と「ガラス接着技術」です。MIM技術による一体成形ケースには裏蓋が存在しないため、電池を含む超小型モジュールをケースの「前面(ディスプレイのガラス側)」から挿入するという腕時計の常識を覆す逆転の発想が採り入れられました。
モジュールを前面から組み込んだ後、無機ガラス製の風防を被せて特殊なガラス接着技術で厳重に封止することで、水やホコリの侵入を防ぐ高い気密性を確保しています。これにより指を洗う際や雨天時にも安心して使用できる日常生活用防水を実現しました。さらに、カシオ修理センターにおいて防水性を維持したまま電池交換を行うことが可能です。電池寿命は約2年で、交換しながら長期間使い続けられる設計は、サステナビリティの観点からも使い捨て型デバイスに対するカシオの明確な回答といえます。
リングウォッチのサイズ展開と装着時の注意点
「CRW-001-1JR」のリングサイズは22号(USサイズ10.5、EUサイズU相当)が基本設計となっており、指周り約62.8ミリメートル、内径約20ミリメートルです。フルメタルの一体成形構造上、リング本体の金属を後から拡張・縮小することはできないため、同梱のサイズ調整用スペーサーを使用して対応する仕組みが採用されています。
スペーサーは2種類用意されており、一つは19号相当(指周り約59.7ミリメートル、内径約19ミリメートル)、もう一つは16号相当(指周り約56.6ミリメートル、内径約18ミリメートル)に調整するためのものです。これにより16号、19号、22号の三段階で指の太さに対応可能となっています。ただし、店舗でのサイズ調整サービスは提供されていないため、購入を検討する場合は事前に装着を想定する指のサイズを正確に計測しておくことが必要です。このサイズの制約はフルメタル一体成形の美しさを優先した結果生じたトレードオフであり、購入前の確認が重要なポイントとなります。
派生モデルの展開:ゴールドモデルとG-SHOCK NANOシリーズ
「CRW-001-1JR」の成功は、カシオの製品ラインナップに「リングウォッチ(CASIO RING WATCH)」という全く新しい独立したブランドカテゴリを創出する原動力となりました。すでに複数のバリエーション展開へと拡大しています。
ゴールドモデル「CRW-001G-9」のラグジュアリーな魅力
ベースモデルであるシルバーカラーのCRW-001-1に加え、筐体全体に華やかなゴールドコーティングを施した「CRW-001G-9」がラインナップに加わっています。米国での販売価格は155ドルです。ステンレススチールのインダストリアルな質感をダイレクトに楽しめるシルバーモデルとは異なり、よりラグジュアリーなジュエリーとしての側面が強調されており、ハイエンドなファッションアイテムとしての汎用性をさらに高めた戦略的な製品です。
G-SHOCK NANO「DWN-5600」シリーズの進化と特徴
さらに注目を集めているのが、G-SHOCKのDNAを受け継いだ「G-SHOCK NANO DWN-5600」シリーズです。G-SHOCKの象徴ともいえるスクエアデザイン(5600系)をそのままリングサイズに縮小・再現した製品で、ブラック(DWN5600-1)、レッド(DWN5600-4)、イエロー(DWN5600-9)など、G-SHOCKらしいポップでストリート感あふれるカラーバリエーションが各110ドルで展開されています。
このシリーズにおける最も重要な進化は、アジャスタブルバンド(調整可能なバンド)の採用です。CRW-001がスペーサーによる限定的なサイズ調整(16号、19号、22号のみ)しかできなかったのに対し、DWN-5600シリーズは指周り48ミリメートルから82ミリメートルまで柔軟にフィットする画期的なバンド構造を備えています。この無段階サイズ調整機能の獲得により、リングウォッチのターゲット層は特定の指の太さを持つ方々からあらゆるユーザーへと飛躍的に拡大しました。
サイズの制約から解放され、どの指にも自由に装着できるようになったことで、リングウォッチは単なる時計から自己表現のための新たなファッションアイテムへと進化しています。複数のリングウォッチを異なる指に重ね付けしたり、手首に装着するカシオ製腕時計とコーディネートしたりと、これまでにない新しいスタイリングの楽しみ方が広がっています。
カシオ リングウォッチの価格と入手状況についての最新情報
「CRW-001-1JR」のメーカー希望小売価格は19,800円(税込)、米国価格は135ドルです。2024年12月の発売直後から世界中のガジェット愛好家や時計ファンの間で凄まじい反響を呼び、公式オンラインストアや正規取扱店では早期に「生産完了」または「在庫切れ」のステータスとなりました。
二次流通市場ではこの極端な需給の不均衡を反映して、定価を大きく上回る価格での取引が常態化しています。メルカリなどのフリマアプリやeBayなどの国際的なオークションサイトでは、実勢価格として50,000円から70,000円前後、つまり定価の2.5倍から3.5倍にも達するプレミアム価格で推移しているケースが多く確認されています。この現象は「CRW-001-1JR」が単なる実用的な時計の枠を超え、希少なコレクターズアイテムとして市場に認知されたことを示しています。カシオというブランドへのグローバルな信頼性、50周年記念モデルという唯一のストーリー性、そしてMIM技術や超小型モジュールなど他社に容易に模倣できない技術的ハードルの高さが、製品の希少性と価値を強力に裏打ちしているのです。
スマートリングとカシオ リングウォッチの違いを比較
現在の指輪型ウェアラブル端末市場では、Oura RingやRingConn、Samsung Galaxy Ringなど「ヘルスケアトラッキング」を主目的とするスマートリングが大きな市場を形成しています。これらの製品とカシオ リングウォッチを比較すると、その独自のポジションが明確になります。
| 比較項目 | カシオ リングウォッチ | 一般的なスマートリング |
|---|---|---|
| 主な目的 | 時刻の確認・計時 | 健康データの計測 |
| ディスプレイ | 液晶ディスプレイあり | なし(スマホ依存) |
| スマートフォン連携 | なし(スタンドアローン) | 必須(Bluetooth接続) |
| 生体センサー | なし | 心拍・睡眠・血中酸素など |
| 素材・質感 | ステンレススチール(重厚) | 樹脂・チタン(軽量) |
| 電池交換 | 可能(修理センター対応) | 不可(使い捨て構造) |
| デザイン方向性 | メカニカルで存在感あり | ミニマルで自己主張控えめ |
カシオのリングウォッチは、常時スマートフォンからの通知や生体データのスコアリングに追われることのない、ある種の「デジタルデトックス」的な価値を提供するデバイスといえます。インターネットに接続されていないからこそ得られる精神的な安心感や、「時間を知る」という本質的な機能に特化したレトロフューチャーな美学が、過度なデジタル化に疲弊した層やファッション感度の高い層から強く支持されています。
電池交換が可能な構造は、ソフトウェアアップデートの打ち切りやバッテリー劣化で数年後には使えなくなるスマートリングとは一線を画すものです。物理的なモジュールが故障しない限り、数十年後であっても「時を刻む道具」としての役割を果たし続けるポテンシャルを秘めています。かつての「指輪パイプ」が物理的な道具として長く愛用されたように、世代を超えて受け継がれる可能性を持つプロダクトであることも、カシオ リングウォッチの大きな魅力です。

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