資格確認書の全員送付は2026年まで?高齢者の対象者と条件を解説

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2026年7月末までの期間、75歳以上の後期高齢者に対しては、マイナ保険証の登録有無にかかわらず資格確認書が全員に自動送付されます。この措置は、2024年12月2日に従来の健康保険証の新規発行が停止されたことに伴い、デジタル機器の操作に不慣れな高齢者が必要な医療から排除されることを防ぐために設けられた特例です。資格確認書の交付条件は、マイナンバーカードの取得状況や健康保険証利用登録の有無によって異なり、後期高齢者と前期高齢者(65歳から74歳)では対応が大きく異なります。この記事では、2026年の資格確認書制度における全員送付の仕組み、対象者の範囲、交付条件の詳細、そして高齢者やその家族が知っておくべき実践的な情報を網羅的に解説します。

資格確認書とは何か

資格確認書とは、マイナ保険証を保有していない被保険者が、医療機関で保険診療を受ける際に必要な資格情報を証明するための書類です。改正健康保険法に基づいて創設されたこの制度は、被保険者番号や窓口負担割合といった重要な情報を医療機関に示す役割を担っています。

従来の健康保険証は2024年12月2日をもって新規発行が停止され、それ以降は原則としてマイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」の仕組みに移行しました。しかし、マイナンバーカードの取得は任意であるという原則があるため、カードを持たない選択をした国民に対しても、医療へのアクセスを保障する必要があります。この課題を解決するために生まれたのが資格確認書制度です。

資格確認書は単なる一時的な「つなぎ」の書類ではありません。マイナ保険証を持たない選択をした国民にとっては、実質的に「新しい健康保険証」として機能し続ける恒久的なセーフティネットとしての役割を果たしています。形態については国が一律に規格を定めているわけではなく、各保険者の裁量に委ねられています。多くの保険者では従来の健康保険証と同様のサイズ(縦54mm×横86mm程度)やプラスチックまたは紙の材質を採用していますが、一部の健保組合ではA4サイズの紙様式やはがき型を採用することもあります。

重要な特徴として、資格確認書には原則として顔写真が掲載されません。これはマイナンバーカードのような厳格な本人確認書類としての機能を意図していないためであり、発行の迅速化という実務上の観点からも写真なしでの運用が基本となっています。

2026年の全員送付とは

2026年という年は、資格確認書制度において極めて重要な意味を持っています。後期高齢者医療制度においては、被保険者の多くがデジタルデバイスの利用に困難を抱えている現実があります。また、マイナ保険証を持っていても、暗証番号の失念やカードリーダーの操作不安から、紙の証明書を「お守り」として持ち続けたいという要望が根強く存在します。

これを受けて、政府は2025年夏の年次更新(7月末期限)および2026年夏の年次更新(7月末期限)までの間、マイナ保険証の保有状況にかかわらず、後期高齢者全員に対して資格確認書を職権交付する方針を固めました。2025年夏の年次更新はすでに実施され、後期高齢者には資格確認書が届いています。そして2026年夏の年次更新においても、同様の措置が継続される予定です。この措置により、後期高齢者はマイナ保険証の登録有無に関係なく、申請不要で手元に紙の証明書が届くことになります。

ただし、この「全員送付」はあくまで暫定的な運用であることに注意が必要です。厚生労働省は、2026年7月末までの運用としてこの措置を位置づけており、それ以降についてはマイナ保険証の普及状況や利用実態を見極めた上で判断するとしています。2027年以降は、マイナ保険証を持っている後期高齢者には資格確認書が送られなくなる可能性が残されているのです。

資格確認書の対象者と交付条件

資格確認書が誰に届くのかという条件は、非常に細かく規定されています。自分がどのケースに該当するのかを正確に把握することが、制度を適切に活用する第一歩となります。

申請不要で自動的に届く対象者として、まずマイナンバーカード未取得者が挙げられます。カード自体を持っていない場合は、現在加入している健康保険の保険者から、有効期限が切れる前または新規加入時に資格確認書が自動的に郵送されます。

次に、マイナンバーカードを保有しているものの健康保険証利用登録を行っていない方も対象となります。カードは持っているが、保険証としての紐付けをしていない状態であれば、資格確認書が届きます。

さらに、マイナ保険証の利用登録を一度行った後に解除手続きを完了した方も、解除完了時点で資格確認書の交付対象リストに入ります。電子証明書の有効期限が切れている方も同様です。マイナンバーカードのICチップに入っている「利用者証明用電子証明書」の有効期限は発行から5回目の誕生日までとなっており、この期限が切れている場合は、カード自体が有効でもオンライン資格確認ができないため、資格確認書が送られます。マイナンバーカードを自治体に返納した方についても、自動的に交付対象となります。

申請が必要なケースも存在します。マイナ保険証を持っている場合でも、特定の事情がある方は申請を行うことで資格確認書を取得できます。これは「併用」または「ダブル持ち」と呼ばれる状態です。

要配慮者に該当する高齢者や障害者等で、マイナ保険証での受診が困難であり、介助者等の第三者が資格確認を補助する必要がある場合は、申請によりマイナ保険証を維持したまま資格確認書を持つことができます。この場合、更新時も再申請不要となる運用が一般的です。

DV被害者等で加害者に居場所を知られないようマイナポータルの閲覧制限等を設定している方など、オンライン資格確認になじまない事情がある場合も申請による取得が可能です。また、マイナンバーカードを紛失して再発行待ちの間や、カード更新の手続き中で手元にカードがない場合も、申請により一時的な交付を受けることができます。

後期高齢者と前期高齢者の違い

後期高齢者と前期高齢者では、資格確認書の交付に関する取り扱いが大きく異なります。この違いを正確に理解しておくことが重要です。

後期高齢者(75歳以上)については、前述の通り2026年7月末までの期間、マイナ保険証の保有状況にかかわらず全員に資格確認書が自動送付されます。これは政治的な配慮と、高齢者がデジタルデバイスの操作に困難を抱えている現実を踏まえた特例措置です。後期高齢者は何も手続きをしなくても、手元に紙の証明書が届く仕組みが整えられています。

一方で前期高齢者(65歳から74歳)については、対応が異なります。国会審議において、野党側から「65歳以上も一律に送付すべきではないか」との提案がなされましたが、厚生労働省はこれを明確に否定しました。その理由として、前期高齢者層のマイナ保険証利用率が相対的に高いこと、および年齢で区切って一律に送付対象とすることは保険者(自治体)の事務負担を過度に増大させることなどが挙げられています。

したがって、前期高齢者については原則通りの運用となります。マイナ保険証を持っていない人には資格確認書が自動送付されますが、マイナ保険証を持っている人には資格確認書は送付されず、代わりに「資格情報のお知らせ」という別の書類が送付されることになります。

自治体の現場では混乱を避けるための独自の動きも見られました。一部の自治体が国の方針を超えて対象を広げようとする動きを見せた際、厚生労働省が「一律交付は必要ない」と牽制する通知を出した経緯があります。これは国がマイナ保険証への移行を強力に推進したい意図と、住民サービスを優先したい自治体との間の緊張関係を示す出来事でした。

2026年3月末までの特例措置

「2026年」というキーワードには、全員送付以外にもう一つの重要な意味があります。それは、有効期限が切れた従来の保険証の取り扱いに関する特例措置です。

2024年12月2日以降は従来の保険証の新規発行がなくなり、発行済みの保険証も最長で2025年12月1日には失効します。しかし厚生労働省は、移行期における現場の混乱や資格確認書の発行遅延、患者の認識不足を考慮し、2026年3月末までは有効期限が切れた従来の保険証を持参した場合でも、医療機関がオンライン資格確認等で資格の有効性を確認できれば保険診療として取り扱ってよいとする事務連絡を発出しました。

この措置は、患者が「保険証が廃止された」ことを知らずに期限切れのカードを持参した場合や、資格確認書がまだ届いていない場合の救済策として機能します。形式上は無効なカードであっても、実質的な資格確認ができれば10割負担を求めずに済むという、非常に強力な激変緩和措置です。

ただし注意すべき点として、この特例はあくまで医療機関側の温情的な対応を可能にするものであり、患者側が期限切れカードの使用を権利として主張できるものではありません。2026年4月以降は、この特例措置がなくなる可能性があるため、早めに自身の状況を確認し、必要な手続きを行っておくことが推奨されます。

資格確認書の有効期限と更新の仕組み

資格確認書の有効期限は「5年を超えない範囲で各保険者が定める」と法律で規定されています。これは一律5年という意味ではなく、保険者の判断で1年や2年にも設定できることを意味します。

国民健康保険や後期高齢者医療制度においては、前年の所得に基づいて負担割合(1割から3割)や保険料が毎年決定される仕組みであるため、従来の健康保険証と同様に「1年更新」となることが大半です。毎年7月末や3月末などに一斉更新が行われます。したがって、高齢者の多くはこれまで通り毎年新しい証が郵送されてくるサイクルが変わることはありません。

組合健保や協会けんぽなどの被用者保険では、所得による負担割合変動が少ない(70歳未満の場合)ため、最長の5年やそれに近い期間を設定する可能性があります。ただし、住所変更や扶養状況の変化に対応するため、より短い期間を設定する組合もあります。

更新手続きについては、原則として申請不要というのが答えです。マイナンバーカードを持っていない人や、要配慮者として登録された人に対しては、有効期限が近づくと保険者が自動的に新しい資格確認書を送付する「職権更新」の仕組みが整備されています。これにより、認知症の高齢者などが更新手続きを忘れて無保険状態になるリスクを防いでいます。ただし、途中でマイナ保険証を取得したことが判明した場合などは、次回の更新から送付が停止されます。

医療機関での資格確認書の使い方

患者が資格確認書を持って医療機関を受診する際の流れは、従来の健康保険証とほぼ変わりません。受付で資格確認書を提示すると、医療機関スタッフが券面を目視確認するか、OCR(光学文字認識)端末等を用いて情報を読み取ります。マイナ保険証のような顔認証や暗証番号入力は不要です。

重要なのは、医療機関がオンライン資格確認システムを通じて、その資格確認書が現在有効であるかをリアルタイムで確認できる点です。これにより、退職後などで無効になった証を使おうとした場合に窓口で即座に判別が可能となり、後日の請求差し戻しリスクを減らすことができます。

窓口負担割合については、資格確認書の券面に原則として負担割合が記載されます。70歳以上74歳までの方、および後期高齢者等の場合、証を見せるだけで正しい負担割合で受診できます。ただし、年度途中の所得更正などで負担割合が変わった直後の場合など、券面記載と実態が異なる可能性もゼロではありません。その場合は、オンライン資格確認システム上のデータが正しい情報として扱われます。

限度額適用認定証の不要化は、資格確認書の大きなメリットの一つです。これまで紙の保険証を使用している人が入院などで高額な医療費がかかる場合、事前に役所や健保組合に申請して「限度額適用認定証」を入手し、提示する必要がありました。しかし新制度下では、オンライン資格確認を導入している医療機関であれば、資格確認書を提示し、本人が窓口で「限度額情報の提供」に同意(口頭確認や書面署名)することで、認定証なしで自己負担限度額までの支払いで済むようになります。

これはマイナ保険証だけのメリットと誤解されがちですが、資格確認書でもオンライン資格確認システムと連携することで同様の恩恵を受けられる仕組みとなっています。ただし、オンライン資格確認未導入の医療機関やシステム障害時には、従来通り紙の認定証が必要となる場合があります。

資格確認書を紛失した場合の対応

資格確認書を紛失した場合は、迅速な対応が求められます。マイナ保険証がない人にとって、これが唯一の受診手段だからです。

国民健康保険(市町村)の場合、多くの自治体では本人が窓口に行き本人確認ができれば即日交付が可能です。写真付き身分証がない場合でも、年金手帳やキャッシュカードなどの複数提示で本人確認を行い、即日または翌日郵送で対応するケースが多いです。

協会けんぽや健保組合の場合は、原則として郵送でのやり取りとなるため、申請書の送付から新しい証が届くまで1週間から2週間程度かかる場合があります。勤務先を経由して申請する場合はさらに時間がかかることもあります。

再発行手数料については、自治体国保では無料のケースが多いですが、一部の健保組合では1,000円から2,000円程度の手数料を徴収する規定を設けているところもあります。

新しい資格確認書が届くまでの間に受診が必要になった場合は、いくつかの対応方法があります。自治体や健保によっては、正式な証が届くまでの仮の証明書を発行してくれる場合があります。また、一旦窓口で全額(10割)を支払い、後日新しい証を持って精算するか、療養費支給申請を行って7割から9割分の返還を受ける方法もあります。マイナンバーカードを持っていれば、紛失を機にマイナ保険証の利用登録を行うことで、即座にオンラインでの資格確認が可能となり、証の到着を待たずに受診できる可能性もあります。

本人確認書類としての資格確認書の限界

従来の健康保険証は、写真なしでも本人確認書類(身分証明書)として広く利用されてきましたが、資格確認書ではこの機能が大幅に縮小します。犯罪収益移転防止法等の改正や金融機関の規定変更により、顔写真のない確認書類(資格確認書を含む)は、単独では本人確認書類として認められないケースが増えています。

銀行口座の開設や携帯電話の契約、郵便局での特例型郵便の受け取り等の際、資格確認書を提示する場合は、住民票の写しや公共料金の領収書など、もう1点の補助書類が必要となるのが一般的です。運転免許証を返納した高齢者がマイナンバーカードも持たない場合、写真付きの身分証が手元になくなることになり、日常生活の手続きで不便が生じる「身分証難民」となるリスクがあります。

この問題への対策として、マイナンバーカードを持たない選択をする場合は、「運転経歴証明書」の取得を検討することが有効です。運転経歴証明書は運転免許証を返納した方が取得できる写真付きの公的身分証明書であり、有効期限もありません。また、住民票の取得方法についても、コンビニ交付が使えない場合は窓口利用となるため、あらかじめ確認しておくことが推奨されます。

2026年以降に備えるための実践的なアドバイス

2026年という年は、資格確認書制度において大きな転換点となる可能性があります。後期高齢者への「プッシュ型交付」特例が2026年7月で終了した後、どのような運用になるかが焦点です。政府は「マイナ保険証の利用率」を指標としていますが、利用が進まなければ特例の延長や申請手続きの簡素化が検討される可能性があります。

高齢者やその家族に向けて、以下の点に注意しておくことが重要です。

「何も届かない」を防ぐために、毎年夏(7月頃)に届く自治体からの封筒は必ず確認する習慣をつけましょう。マイナ保険証の登録有無によって、入っている書類が「資格確認書」か「資格情報のお知らせ」か異なります。もし何も届かなければ、登録状況の誤認や郵送事故の可能性があるため、速やかに保険者に問い合わせる必要があります。

有効期限の管理も重要です。資格確認書は「1年更新」が基本です。毎年夏に新しいものが届くサイクルを忘れないようにし、古い証と新しい証を取り違えないよう整理しておきましょう。

2026年の変化に備えることも大切です。後期高齢者の「全員送付」特例が終わる2026年夏以降、マイナ保険証を持っている人には資格確認書が届かなくなる可能性があります。その際「やはり紙が欲しい」となれば、自ら申請手続きをする必要があるかもしれません。この「自動から申請へ」の切り替わりポイントを意識しておくことが重要です。

資格確認書制度の将来展望

現行法上、資格確認書は「当分の間」の措置とされていますが、2026年以降すぐに廃止されるとは考えにくい状況です。国会では、資格確認書の発行を恒久化し、希望者には従来の保険証と同様に交付し続けるべきだとの主張もあり、今後も議論は続く見通しです。

資格確認書制度は、デジタル移行期における強力なセーフティネットとして機能していますが、その仕組みは従来の保険証よりも複雑であり、受動的ではなく能動的な情報収集と管理が求められる制度と言えます。2026年までの経過措置期間を最大限に活用し、自身にとって最適な医療アクセスの方法を選択する準備期間として捉えることが大切です。

75歳以上の後期高齢者であれば2026年7月末までは全員に資格確認書が届きますが、それ以降は状況が変わる可能性があります。前期高齢者(65歳から74歳)については、マイナ保険証を持っていない方のみが自動送付の対象となります。いずれの場合も、自身の加入している保険制度と、マイナ保険証の登録状況を正確に把握しておくことが、スムーズな医療アクセスを維持するための鍵となります。

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