軽EVは、充電インフラ不足や電欠不安といった課題を抱えながらも、近距離利用に特化したシティコミューターとして日本市場で着実に普及が進んでいます。日産サクラやホンダN-ONE e:をはじめとする各メーカーの販売強化策により、2024年度以降も国内EV販売の中心的存在として成長を続けています。本記事では、軽EVを取り巻く充電インフラの現状、ユーザーが抱える電欠不安の実態、そして近距離利用における優位性と各メーカーの販売強化戦略について詳しく解説します。軽EVの購入を検討している方や、すでに所有しているものの航続距離に不安を感じている方にとって、実際のデータに基づいた有益な情報をお届けします。

- 軽EVとは何か:日本独自の電動モビリティの特徴
- 軽EV市場の販売動向:日産サクラの成功とホンダの参入
- 軽EVの主要モデル比較:バッテリー容量と航続距離の違い
- 充電インフラ不足の実態:数字で見る日本の課題
- 集合住宅における充電難民問題:マンション居住者の苦悩
- 目的地充電の重要性:ながら充電という新しいスタイル
- 電欠不安の正体:JAFのデータが示す現実
- カタログ値と実測値の乖離:実際に何キロ走れるのか
- 冬季の航続距離低下:暖房使用がもたらす深刻な影響
- 近距離利用としての最適解:シティコミューターとしての軽EV
- 軽EVの経済性:ガソリン車との維持費比較
- V2Hによる新しいライフスタイル:災害対策と電気代節約
- メーカーの販売強化策:体験型販売の重要性
- 日産サクラの商品力強化:90周年記念車とマイナーチェンジ
- 充電サービスの進化:Honda Chargeの革新性
- 2025年以降の軽EV市場展望:競争激化の時代へ
- バッテリー交換式という新たな可能性
- 軽EV購入を検討する際のポイントまとめ
- 軽EVが切り拓く日本のモビリティの未来
軽EVとは何か:日本独自の電動モビリティの特徴
軽EVとは、日本の軽自動車規格に準拠したバッテリー式電気自動車のことです。全長3.4m以下、全幅1.48m以下という軽自動車の枠組みの中に、電動パワートレーンを搭載することで、狭い道路や住宅環境が多い日本の生活に適した電気自動車として開発されました。
従来のガソリン軽自動車が抱えていた課題として、エンジンの振動や騒音、低トルクによる坂道でのもたつきなどがありました。軽EVはこれらのネガティブな要素を電動化によって一掃し、静粛性の高さと力強い発進加速を実現しています。日産サクラの最大トルクは195N・mに達しており、これは軽ターボ車の約2倍、2.0リッター自然吸気エンジン車に匹敵する数値です。この大トルクにより、発進時や坂道走行において、従来の軽自動車では考えられなかったスムーズな走りを体験できます。
また、重いバッテリーを床下に配置することで重心が低くなり、背の高いハイトワゴンタイプであってもコーナリング時の横揺れが少なく、安定した走行が可能となっています。日産の「e-Pedal」やホンダの「シングルペダルコントロール」といった回生ブレーキを活用したワンペダル走行機能は、ブレーキペダルの踏み替え頻度を減らし、市街地走行や渋滞時のドライバーの疲労を大幅に軽減してくれます。
軽EV市場の販売動向:日産サクラの成功とホンダの参入
軽EV市場において、日産サクラと三菱eKクロスEVは圧倒的な存在感を示してきました。2022年の発売以来、日産サクラはその洗練されたデザインと軽自動車の枠を超えた質感により、多くのユーザーから支持を集めています。2024年度(2024年4月から2025年3月累計)の国内販売台数は2万832台を記録し、3年連続で国内EV販売台数No.1の座を維持しました。累計販売台数は2024年時点で約13万台に達しており、日本のEV保有台数の底上げに最も貢献したモデルとなっています。
しかし、その成長曲線には変化が生じています。2024年の販売推移を詳細に見ると、発売直後のような爆発的な伸びは沈静化し、前年比での伸び幅は縮小傾向にあります。この現象には複数の要因が絡み合っています。まず、新しいモノ好きや環境意識の高い層への普及が一巡したことが挙げられます。次に、サクラとeKクロスEVに対抗しうる強力な新型軽EVが不在であった期間が長く、市場全体の話題性が低下していた側面もあります。
この停滞ムードを打破したのが、ホンダによるNシリーズの電動化攻勢です。ホンダは日産とは異なるアプローチを採り、まず商用車の「N-VAN e:」で市場に参入し、その技術を乗用車へと転用する戦略を展開しました。2024年10月に発売されたN-VAN e:は、配送業者や職人といったプロフェッショナルなユーザーをターゲットに開発され、サクラの20kWhを大きく上回る29.6kWhの大容量バッテリーを搭載しています。発売から短期間で販売台数は5,000台を突破し、企業のフリート需要だけでなく、車中泊やアウトドア利用を目的とした一般ユーザーからの引き合いも強い状況です。
さらに、2025年9月にはN-VAN e:で培った電動化技術をベースにした乗用モデル「N-ONE e:」が投入されました。N-ONE e:は同じ29.6kWhのバッテリーを搭載しながら、乗用車としての空力特性の良さを活かし、WLTCモードで295kmという航続距離を実現しています。日産サクラの180kmと比較して約1.6倍、N-VAN e:の245kmと比較しても約20%の延伸であり、軽EVは遠出できないという固定観念を覆すスペックとなっています。
軽EVの主要モデル比較:バッテリー容量と航続距離の違い
現在市場で購入可能な軽EVは、それぞれ異なる特徴を持っています。日産サクラと三菱eKクロスEVは兄弟車の関係にあり、20.0kWhのバッテリーを搭載してWLTCモードで180kmの航続距離を持ちます。価格帯は約250万円から300万円となっており、内装質感の高さが特徴です。サクラはスタイリッシュなデザイン、eKクロスEVはSUVテイストのデザインという違いがあります。
ホンダN-VAN e:は商用ベースのモデルで、29.6kWhのバッテリーを搭載し、WLTCモードで245kmの航続距離を実現しています。積載性に特化した設計と外部給電機能を備えており、業務利用からアウトドア利用まで幅広いニーズに対応できます。価格帯は約250万円から300万円です。
ホンダN-ONE e:は2025年9月に発売された最新モデルで、29.6kWhのバッテリーにより軽EV最長となる295kmの航続距離を誇ります。価格帯は約270万円から320万円となっており、バッテリー容量あたりの単価で見ると、現行軽EVの中で突出したコストパフォーマンスを発揮しています。
これらのスペックを比較すると、バッテリー容量の違いが航続距離に直結していることがわかります。サクラやeKクロスEVは毎日の通勤や買い物といった近距離利用に最適化されており、N-VAN e:やN-ONE e:はより長い距離を走行する必要があるユーザーに適しています。購入を検討する際は、自分の日常的な走行距離を把握した上で、最適なモデルを選択することが重要です。
充電インフラ不足の実態:数字で見る日本の課題
充電インフラの不足は、軽EVを含む全てのEVユーザーが直面する大きな課題です。2024年3月時点で、国内の充電器設置数は約4万口となっており、その内訳は普通充電器が約3万口、急速充電器が約1万口となっています。しかし、この数字だけでは充電インフラの実態を正確に把握することはできません。
重要なのは「数」の純増よりも、その「中身」の変化です。2020年代初頭には、初期に設置された充電器の老朽化や採算性の悪化により、撤去数が新規設置数を上回る「純減」の時期もありました。しかし、2023年以降は政府の補助金の後押しもあり、再び増加トレンドに入っています。質的な変化としては、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアを中心に、従来の20kWから50kW程度の充電器から、90kWから150kW級の高出力充電器への更新が進んでいます。
ここで軽EV特有の課題が生じます。日産サクラやeKクロスEVの急速充電受入能力は最大30kW程度に制限されているため、150kWの超急速充電器に接続しても、その性能を十分に活用することができません。むしろ、高スペックな充電器を長時間占有してしまうことで、他のEVユーザーに迷惑をかける「充電渋滞」の原因となる可能性があります。軽EVユーザーは、充電スポットを選ぶ際に、自分の車両の充電能力に見合った充電器を選択することが望ましいといえます。
集合住宅における充電難民問題:マンション居住者の苦悩
日本のEV普及における最大のボトルネックは、マンションなどの集合住宅における基礎充電環境の欠如です。EVユーザーの40%以上が自宅で充電できない「充電難民」の状態にあり、マンションへの充電器設置率はわずか0.058%という極めて低い水準にとどまっています。
マンションへの充電器設置を阻む要因は主に3つあります。1つ目は合意形成のハードルです。管理組合において、EV非保有者から「なぜ一部の人のために共益費を使うのか」という反発が強く、総会での決議が通りにくい状況があります。2つ目はコストの問題です。既設マンションへの配線工事や受変電設備の増強には、数百万円単位の費用がかかります。3つ目は運用面の課題です。充電専用スペースをどのように確保するか、充電終了後の車両移動をどのように促すかといったルール作りが困難となっています。
この状況に対して、「Terra Charge(テラチャージ)」や「WeCharge」、「YourStand」といった新興事業者が、初期費用とランニングコストを無料化する受益者負担モデルを武器に、既設マンションへの導入を急速に進めています。特にテラチャージは、2025年3月末までに累計15,000口の設置を見込んでおり、管理組合の負担をゼロにすることで合意形成の壁を突破しています。マンション居住者でも、これらのサービスを活用することで充電環境を整備できる可能性が広がっています。
目的地充電の重要性:ながら充電という新しいスタイル
自宅充電が困難なユーザーにとって、商業施設や宿泊施設での「目的地充電」は生命線となっています。テラチャージなどの事業者は、マンションだけでなく、スーパーマーケット、ドラッグストア、ホテルなどへの普通充電器設置を加速させています。これは、買い物や食事のついでに充電する「ながら充電」を定着させ、EV運用のストレスを軽減する狙いがあります。
ながら充電の最大のメリットは、充電のための時間を別途確保する必要がないことです。例えば、週末にショッピングモールで2時間ほど買い物をしている間に充電すれば、普通充電器(6kW)であっても12kWh程度の電力を補給できます。これは日産サクラのバッテリー容量の半分以上に相当し、日常的な近距離移動であれば十分な航続距離を確保できる量です。
また、宿泊施設での充電も効果的な選択肢となっています。旅先のホテルに普通充電器が設置されていれば、夜間の睡眠時間を利用して翌朝には満充電の状態で出発できます。軽EVでの遠出を検討する際は、宿泊施設の充電設備の有無を事前に確認しておくことで、電欠への不安を大幅に軽減できます。
電欠不安の正体:JAFのデータが示す現実
電欠(バッテリー切れ)は、EVユーザーにとって最大の恐怖です。この不安は単なる心理的なものではなく、実際のデータにも表れています。JAF(日本自動車連盟)の2024年度ロードサービス救援データによれば、BEV(バッテリーEV)に関する出動件数は9,419件であり、そのうち「駆動用電池切れ(電欠)」によるものは1,049件に上ります。これはBEV救援全体の約11%を占め、タイヤのパンクや12V補機バッテリー上がりに次ぐ第3位のトラブル原因となっています。
注目すべきは、電欠件数が前年度の975件から増加傾向にある点です。EVの普及台数が増えれば絶対数が増えるのは当然ですが、約1割という発生率は無視できないリスクといえます。ガソリン車のガス欠であれば携行缶での給油で即座に復帰できますが、EVの電欠は現場での急速充電か、レッカーによる搬送が必要となり、復旧までの時間と手間が大きくなります。
JAFはこの事態に対応するため、2025年12月より全国47都道府県で、給電機能を搭載したサービスカーの配備を完了させました。これにより、電欠が発生した場合でも、現場で必要最低限の電力を供給してもらい、最寄りの充電スポットまで自走できるようになっています。電欠への不安を持つユーザーにとって、このような救援体制の整備は大きな安心材料となります。
カタログ値と実測値の乖離:実際に何キロ走れるのか
軽EVを検討するユーザーにとって最大の関心事は「実際に何キロ走れるのか」という点です。カタログスペック(WLTCモード)はあくまで一定の条件下での数値であり、実利用環境では大きく乖離することがあります。
日産サクラのWLTCモード航続距離は180kmですが、より実態に近いとされるEPA換算では約144km程度と推測されます。ユーザーによる実走行レポートでは、春や秋の空調不要な時期であれば、街乗りで140kmから150km程度の走行は十分可能とされています。しかし、高速道路を80km/hから100km/hで巡航した場合、空気抵抗の増大により電費は著しく悪化します。実測テストでは、100km/h巡航時でも車内騒音は71dBと静粛性は保たれているものの、バッテリー消費は激しく、片道100kmを超える移動には途中充電が必須となるケースが多くなっています。
つまり、軽EVの航続距離を考える際には、カタログ値をそのまま信用するのではなく、自分の使用環境を想定した上で、余裕を持った計画を立てることが重要です。日常的に片道50km以内の移動がメインであれば、サクラやeKクロスEVでも十分に対応できます。より長距離の移動が多い場合は、N-ONE e:のような大容量バッテリーを搭載したモデルを選択するか、途中での充電を前提とした運用を検討する必要があります。
冬季の航続距離低下:暖房使用がもたらす深刻な影響
軽EVユーザーが特に注意すべきなのが、冬季における航続距離の低下です。EVはエンジンの排熱を利用できないため、電気ヒーター(PTCヒーターやヒートポンプ)で車内を暖める必要があり、これが膨大な電力を消費します。
日産サクラを用いた冬季(12月)の実証実験では、峠道を含む100km走行を行った結果、バッテリー残量がわずか12%まで低下した事例が報告されています。これは、満充電からの実質航続可能距離が110kmから120km程度に留まることを意味します。ホンダN-VAN e:においても同様の現象が確認されており、気温10℃以下の環境で暖房をオンにした瞬間、メーター上の航続可能距離表示が152kmから100kmへと、一瞬にして50km以上減少したというユーザー報告があります。氷点下に近い環境での検証では、暖房使用により実航続距離がカタログ値の約6割まで落ち込むことが確認されています。
この「冬場の航続距離激減」は、物理法則に基づくEVの宿命であり、特にバッテリー容量の小さい軽EVにおいては深刻な問題となります。ユーザーは「冬場はカタログ値の5割から6割」という厳しい見積もりを持って運用する必要があります。対策としては、出発前にプレコンディショニング(充電しながらの車内暖房)を行う、シートヒーターやステアリングヒーターを活用して暖房設定温度を下げるといった工夫が有効です。
近距離利用としての最適解:シティコミューターとしての軽EV
軽EVは、近距離利用に特化したシティコミューターとして最も力を発揮します。総務省のデータによれば、日本の自家用車の1日あたりの平均走行距離は約30km程度とされています。この数値を基準に考えると、日産サクラの実質航続距離が冬場でも100km以上あることを踏まえれば、数日に1回の充電で十分に日常生活をカバーできる計算になります。
特に地方部においては、軽EVは「生活の足」としての実需に完璧に対応します。スーパーマーケットへの買い物、子どもの送り迎え、通院といった日常的な移動は、ほとんどが片道10km以内の範囲に収まります。このような使い方であれば、航続距離の制約はほとんど問題になりません。むしろ、ガソリンスタンドまで行く手間が省け、自宅で充電できる利便性の方が大きなメリットとなります。
また、セカンドカーとしての軽EVの活用も効果的な選択肢です。家族で複数台の車を所有している世帯では、長距離移動用のガソリン車やハイブリッド車と、近距離移動用の軽EVを使い分けることで、それぞれの車両の特性を最大限に活かすことができます。軽EVは維持費が安いため、セカンドカーとしての経済的な負担も軽減されます。
軽EVの経済性:ガソリン車との維持費比較
軽EVの大きな魅力の一つが、ランニングコストの安さです。年間1万km走行する場合、ガソリン軽自動車の燃料代が約10万円から11万円かかるのに対し、軽EVの電気代(自宅充電メイン)は約5万円程度と半額以下に抑えられます。さらに、オイル交換が不要であり、回生ブレーキによりブレーキパッドの摩耗も少ないため、メンテナンスコストも年間2万円から3万円程度安くなります。
税制面でのメリットも見逃せません。軽自動車税は、ガソリン軽自動車が10,800円であるのに対し、軽EVは購入翌年度の税額が軽減されます。重量税についてはEVは免税となるため、ガソリン車の3,300円が不要です。これらを年間で合計すると、軽EVはガソリン軽自動車と比較して年間約8万円程度の維持費削減が期待できます。
車両本体価格は確かにガソリン軽自動車よりも高額ですが、国からのCEV補助金(55万円から58万円)や、自治体独自の補助金を活用すれば、イニシャルコストの実質負担額をかなり圧縮することが可能です。東京都などでは追加の補助金が用意されている場合もあり、居住地域の補助金制度を確認することが購入検討の第一歩となります。長期的な視点で見れば、軽EVはガソリン車と比較して十分に経済合理性のある選択といえます。
V2Hによる新しいライフスタイル:災害対策と電気代節約
V2H(Vehicle to Home)システムを導入すれば、軽EVの活用範囲がさらに広がります。V2Hとは、EVのバッテリーに蓄えた電力を家庭に供給するシステムのことです。安価な深夜電力をEVに充電し、昼間の電力需要が高い時間帯に家庭へ給電することで、電気代を節約できます。
また、災害時の非常用電源としても活用できる点は、軽EVならではの付加価値です。日産サクラの20kWhバッテリーでも、一般家庭の約1日分から2日分の電力を賄うことができます。ホンダN-ONE e:の29.6kWhであれば、さらに長時間の給電が可能です。地震や台風による停電時に、照明、冷蔵庫、スマートフォンの充電などに電力を使用できることは、大きな安心につながります。
ニチコン製をはじめとするV2H機器は、最大65万円の補助金に加えて工事費補助の対象となっており、車両とセットで導入することで実質的な負担を大幅に軽減できます。ディーラーでは、単に車を販売するのではなく、「エネルギー自給自足のライフスタイル」を提案する動きが広がっています。太陽光発電システムと組み合わせれば、昼間に発電した電力をEVに蓄電し、夜間に家庭で使用するという、より効率的なエネルギー活用も実現可能です。
メーカーの販売強化策:体験型販売の重要性
軽EVの販売現場において、各メーカーは従来の「スペック説明」から「生活体験の提供」へと戦略を転換しています。日産は「サクラ1日モニターキャンペーン」を展開し、ユーザーに自身の生活圏でEVを使用させる取り組みを行っています。自宅で充電できるか、通勤ルートでどれくらいバッテリーが減るかを実体験させることで、ユーザーが抱く漠然とした不安を、具体的なデータと経験で払拭することを目指しています。
ホンダもまた、N-ONE e:等の発売に合わせ、大規模な試乗キャンペーンを実施しています。試乗者にAmazonギフトカードなどを配布するインセンティブ施策は、EVに関心の薄い層を店舗に呼び込むための強力な手段となっています。カタログスペックだけでは伝わらない、EVならではの滑らかな加速感や静粛性を体験してもらうことで、購入への心理的ハードルを下げる効果があります。
軽EVの購入を検討しているのであれば、まずはディーラーでの試乗や1日モニターキャンペーンを積極的に活用することをお勧めします。自分の生活圏で実際に走らせてみることで、航続距離が自分のニーズを満たすかどうか、自宅での充電環境は問題ないか、といった疑問を具体的に検証できます。
日産サクラの商品力強化:90周年記念車とマイナーチェンジ
日産は販売台数のテコ入れとして、サクラの「90周年記念車」を投入しました。この特別仕様車は、カッパー(銅色)のアクセントを施したドアミラーやルーフステッカー、専用のブラックアルミホイール、そして「テーラーフィット」と呼ばれる上質な合成皮革シートを採用し、特別感を演出しています。
また、2024年のマイナーチェンジでは、ユーザーからの要望が高かった機能が追加されました。Amazon Alexaの搭載により、音声操作でのナビゲーションや音楽再生が可能になりました。バックビューモニターが全車標準化され、駐車時の安全性が向上しています。助手席ヒーターの採用も、冬場の快適性を高める嬉しい改良です。
これらの改良は、発売から数年が経過したモデルの商品力を維持し、競合車種との差別化を図るための重要な施策です。軽EVの購入を検討する際は、各モデルの最新の装備内容を確認し、自分のニーズに合った仕様を選択することが大切です。
充電サービスの進化:Honda Chargeの革新性
後発のホンダは、N-ONE e:の発売に合わせて独自の充電サービス「Honda Charge」を開始しました。最大の特徴は、CHAdeMO規格として初となる「Plug and Charge(プラグ&チャージ)」機能の導入です。これは、充電プラグを車両に挿すだけで、事前のカード認証やアプリ操作なしに認証と課金が完了するシステムです。テスラのスーパーチャージャーに近い利便性を実現しており、充電時の手間を大幅に削減しています。
また、ENEOSでんきと提携した「EV夜とくプラン」など、自宅充電における電気代割引メニューも用意されています。車両、充電サービス、エネルギー料金を一元管理するエコシステムを構築することで、ユーザーの利便性を高めると同時に、ホンダブランドへのロイヤリティを高める戦略となっています。
一方、日産の充電サービス「ZESP3」にも変化が訪れています。2024年以降、サービス内容の適正化が進められ、かつてのような「月額定額で充電し放題」に近いプランは縮小傾向にあります。基本料金と従量課金を組み合わせた、より公平性が高く持続可能なモデルへとシフトしており、ユーザーは自分の充電頻度に応じた最適なプランを選択する必要があります。
2025年以降の軽EV市場展望:競争激化の時代へ
2025年以降、軽EV市場はさらなる混戦模様を呈しています。スズキは初のEV「e VITARA」の生産を開始し、トヨタ、ダイハツ、スズキの3社アライアンスによる商用軽バンEVの投入も進められています。これにより、国内全メーカーが軽EV市場に参入する体制が整いつつあります。
海外メーカーの脅威も現実のものとなっています。ヒョンデは小型EV「INSTER」の予約を開始し、BYDも日本市場向けモデルの開発を加速させています。これら輸入EVは、日本の軽規格には収まらないものの、コンパクトなサイズ感と圧倒的なコスト競争力、そして先進的なソフトウェア機能で、軽EVの上位互換としての地位を狙っています。
日本の軽EVは、税制優遇という守られた領域だけでなく、商品力そのもので勝負しなければならない局面に立たされています。ユーザーにとっては、選択肢が増えることは歓迎すべきことであり、各メーカーの競争によって、より優れた製品がより手頃な価格で提供されることが期待されます。
バッテリー交換式という新たな可能性
充電時間の短縮という観点からは、「バッテリー交換式」の技術も注目されています。ホンダとヤマト運輸が進める実証実験では、着脱式バッテリー(Honda Mobile Power Pack)を使用することで、充電待機時間をゼロにする運用が検証されています。2023年11月から群馬県で開始されたこの実証は、商用利用において極めて有効なソリューションとなる可能性を示しています。
バッテリー交換式のメリットは、充電に要する時間をほぼ完全に削減できることです。ガソリン車の給油と同様に、数分間でバッテリーを交換して走行を続けられます。特に配送業務など、車両の稼働時間を最大化したいビジネスユースにおいては、大きなメリットがあります。
ただし、一般ユーザー向けの展開には、交換ステーションの膨大なインフラ投資やバッテリー規格の統一といった課題があり、現時点ではまだ実用化に向けた検討段階にあります。将来的には、この技術が一般ユーザーにも開放され、充電時間という軽EVの課題を解決する選択肢の一つとなることが期待されます。
軽EV購入を検討する際のポイントまとめ
軽EVの購入を検討する際に考慮すべきポイントについて整理します。まず、自分の日常的な走行距離を把握することが最も重要です。1日の走行距離が50km以下であれば、日産サクラやeKクロスEVでも十分に対応できます。より長距離の移動が多い場合や、冬場の暖房使用による航続距離低下を考慮すると、ホンダN-ONE e:のような大容量バッテリーモデルが適しています。
次に、充電環境を確認しましょう。戸建て住宅であれば、200Vの充電用コンセントを設置することで、毎晩の充電が可能になります。マンション居住者の場合は、テラチャージなどの新興事業者が提供するサービスの導入状況を管理組合に確認するか、自ら導入を提案することも検討してください。自宅での充電が難しい場合は、職場や頻繁に利用する商業施設の充電器を活用する運用も選択肢となります。
経済性については、車両本体価格だけでなく、補助金、維持費の削減効果、そして自分の利用期間を総合的に考慮して判断しましょう。5年以上乗ることを想定すれば、維持費の差額だけで数十万円のメリットが生じます。試乗や1日モニターキャンペーンを積極的に活用し、実際の使用感を確かめた上で最終的な判断をすることをお勧めします。
軽EVが切り拓く日本のモビリティの未来
軽EVは、日本の脱炭素化を推進する上で最も現実的かつ効果的なツールとして位置づけられています。充電インフラ不足や電欠不安といった課題は確かに存在しますが、各メーカーの販売強化策、充電サービス事業者の取り組み、そして政府の支援策により、これらの課題は着実に解消に向かっています。
日産サクラや三菱eKクロスEVは、航続距離こそ180km(実質120km前後)に留まるものの、その質感と経済性により、地方部におけるセカンドカー需要を的確に満たす商品として定着しました。一方、ホンダN-ONE e:は295kmという航続距離を実現することで、週末の中距離ドライブも視野に入れたファーストカー需要の取り込みを目指しています。
ユーザーは今後、自身のライフスタイルに合わせて、バッテリー容量や車種を柔軟に選択できる時代を迎えています。完全な街乗り専用であれば従来モデル、たまに遠出もするのであれば大容量バッテリーモデルというように、選択肢が広がっていることは消費者にとって大きなメリットです。軽EVの持つ経済性と走行性能の魅力は、今後も日本のモビリティ市場を牽引していくことでしょう。

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