死亡後の口座凍結前に預金を引き出す行為は、民法・刑法・税法の三つの法領域において重大なリスクを伴う行為です。家族が亡くなった直後、葬儀費用や生活費のためにキャッシュカードで預金を引き出すことは日常的に行われていますが、この行為には相続放棄ができなくなる「法定単純承認」の成立、窃盗罪や詐欺罪への該当、重加算税の賦課といった深刻な法的リスクが潜んでいます。本記事では、死亡後の預金引き出しにまつわる違法性やリスク、実際に起こり得るトラブルについて詳しく解説し、適法に資金を確保するための方法をお伝えします。

死亡後の口座凍結前引き出しとは
死亡後の口座凍結前引き出しとは、被相続人が亡くなってから金融機関が口座を凍結するまでの間に、遺族がキャッシュカードや窓口を通じて預金を引き出す行為を指します。被相続人が死亡した瞬間に法的には相続が開始され、被相続人の有していた一切の権利義務は包括的に相続人に承継されます。しかし、現代社会の金融実務において、この「死亡の瞬間」と「金融機関による口座凍結」の間には不可避的なタイムラグが存在しています。
この「空白の時間」において、キャッシュカードと暗証番号を保有する遺族が、葬儀費用や当面の生活費を確保する目的でATM等から預金を引き出す行為は、日常的に頻発している現象です。多くの遺族は「自分たちの親のお金である」「葬儀のために使うのだから正当な行為である」という素朴な法感情に基づき、安易に引き出しを行ってしまいます。しかし、この行為は民法、刑法、税法という三つの異なる法領域において、それぞれ重大なリスクを孕んでおり、場合によっては取り返しのつかない法的効果やペナルティを招く「トリガー」となり得るのです。
口座が凍結される仕組みと法的根拠
金融機関が預金者の死亡を知った時点で口座を凍結するのは、法的な根拠に基づいた措置です。銀行と預金者の関係は、法的には消費寄託契約に加え、振込や引き出しといった事務処理を委託する委任契約の側面を併せ持っています。民法第653条は委任の終了事由として「委任者または受任者の死亡」を規定しており、預金者が死亡したその瞬間に、生前銀行に対して与えていた「私の代わりに金銭を払い出してよい」という委任の効力は消滅します。
したがって、生前に被相続人からキャッシュカードを預かり「何かあったらここから使いなさい」と言われていたとしても、その代理権は死亡と同時に失効します。死亡後にキャッシュカードを用いてATM操作を行う行為は、もはや正当な権限に基づかない無権限取引となり、銀行のシステム利用規約に明確に違反する行為となります。
銀行が口座凍結を行うタイミング
金融機関は、預金者の死亡を「知った」時点で口座を凍結します。この「知る」きっかけは多岐にわたります。最も一般的なのは遺族からの直接の申し出ですが、新聞の訃報欄(おくやみ欄)のチェック、地域の葬儀看板の確認、あるいは営業担当者が近隣からの情報で察知する場合もあります。
逆に言えば、銀行が死亡の事実を認知するまでの間、口座はシステム上「生存している」状態として扱われます。ATMは物理的に稼働し、暗証番号さえ合致すれば現金を吐き出します。このシステム上の挙動と法的な正当性の乖離が、多くの遺族を誤った行動へと誘引する主因となっています。銀行側が口座を凍結する真の目的は、預金を保全し、将来の遺産分割協議確定前に一部の相続人が勝手に財産を持ち出すことによる「二重払い」のリスクや、相続トラブルへの巻き込まれを回避することにあります。
預金債権の法的性質と判例変更
預金債権の法的な扱いについては、重要な判例変更がありました。かつて日本の判例(最高裁平成16年判決等)は、預金債権は「可分債権」であり、相続開始と同時に法定相続分に応じて当然に分割され、各相続人に帰属すると解釈していました。この理屈に従えば、自分の持ち分に相当する額を引き出すことは理論上可能であるとも考えられました。
しかし、最高裁判所大法廷は平成28年12月19日、この判例を変更し、「預貯金債権は遺産分割の対象に含まれる」という判断を下しました。これにより、預金は相続開始と同時に分割されるのではなく、遺産分割協議が整うまでは「相続人全員の準共有状態」に置かれることとなりました。この判例変更により、一部の相続人が単独で預金を引き出す行為は、他の相続人の共有持分を侵害する行為としての違法性がより鮮明となり、実務上の運用も厳格化されています。
民法上のリスク:法定単純承認という不可逆的な罠
死亡後の引き出しにおいて最も致命的なリスクは、相続人の意思に関わらず、法律上強制的に「相続を承認した」とみなされる「法定単純承認」の成立です。民法第921条1号は、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は、単純承認をしたものとみなすと定めています。単純承認とは、被相続人の権利(プラスの財産)も義務(借金や保証債務などのマイナスの財産)も、すべて無条件に引き継ぐことを意味します。
もし被相続人に多額の借金があり、遺族が相続放棄を検討していたとしても、死亡直後に預金を引き出して消費してしまえば、その行為が「処分」にあたり、相続放棄の申述が受理されなくなる(あるいは後から債権者に無効を主張される)リスクが生じます。一度単純承認が成立すれば、それを撤回することは原則としてできません。これが法定単純承認の最も恐ろしい点です。
葬儀費用への充当は「処分」にあたるのか
実務上、最も頻繁に問題となるのが「引き出した預金を葬儀費用に充てた場合」の扱いです。これについては、裁判例の積み重ねにより一定の基準が形成されています。大阪高等裁判所昭和63年3月25日の決定や、東京地方裁判所平成14年の判決などにおいては、被相続人の預金を葬儀費用に充当する行為について、それが「社会通念上相当な範囲」である限り、民法921条の「処分」には該当せず、相続放棄を妨げないと判断しています。この背景には、葬儀は死者を弔う儀式として社会的・道徳的に不可欠なものであり、その費用を死者の遺産から支出することは自然な感情に合致するという考え方があります。
しかし、これは「葬儀費用ならいくら使っても良い」という意味ではありません。「相当な範囲」を超えた豪華な葬儀や、葬儀に付随する不明瞭な支出(過度な飲食費、親族の交通費、香典返しの費用等)が含まれている場合、それは「処分」とみなされる危険性があります。また、墓石や仏壇の購入費用についても議論がありますが、これらも祭祀承継のために必要な範囲であれば処分にあたらないとされる傾向があるものの、投資的な価値を持つような高額な仏具等の場合は判断が分かれる可能性があります。
絶対に避けるべき行為:借金の弁済と債権回収
葬儀費用以上に危険なのが、被相続人の借金を返済するために預金を引き出す行為です。被相続人の債務を弁済することは、明らかに「保存行為(財産の現状を維持する行為)」を超えた「処分行為」とみなされます。たとえ善意で「借金をきれいにしてあげたい」と思って行ったとしても、その瞬間に単純承認が成立し、他に隠れていた巨額の借金も含めてすべて背負うことになります。
同様に、被相続人が他人に貸していたお金(貸金債権)を取り立てて回収し、自分の懐に入れる行為も「処分」にあたります。債権者に対して請求(催告)するだけであれば時効の中断(更新)としての保存行為とみなされ得ますが、実際に金銭を受領して収受することは処分行為となります。
形見分けと遺品の持ち出しにも注意
預金引き出しとは直接関係しませんが、関連するリスクとして「形見分け」があります。経済的価値の乏しい衣類や写真などを持ち帰る程度であれば問題ありませんが、高価な貴金属、美術品、あるいは換金価値のある時計などを持ち出すと、やはり「処分」とみなされ、単純承認の成立を主張される材料となり得ます。預金引き出しと合わせてこれらの行為を行うことは、リスクを相乗的に高めることになります。
刑法上のリスク:窃盗罪・詐欺罪の構成要件
「自分のお金ではなく親のお金を引き出す」という行為は、刑事罰の対象となる可能性があります。ここでは、刑法の理論的枠組みと実務上の運用について詳しく解説します。
ATMからの引き出しと窃盗罪
ATMからキャッシュカードで現金を引き出す行為において、その現金の占有は銀行にあります。銀行の意思に反して、権限のない者(死亡した預金者の相続人)がその占有を移転させる行為は、刑法上の「窃盗罪」(刑法235条)の構成要件に該当します。判例実務においても、正当な権限のない他人のカードを用いてATMから現金を引き出す行為は、銀行に対する窃盗罪を構成すると解されています。
窓口での手続きと詐欺罪
窓口で手続きを行う場合、死亡の事実を告げずに(あるいは生存しているかのように装って)払戻請求書を提出し、現金の交付を受ける行為は、銀行員を欺罔(ぎもう)して財物を交付させる行為として「詐欺罪」(刑法246条)が成立します。銀行は「名義人が生存しており、依頼意思がある」と信じているからこそ支払いに応じるのであり、死亡の事実を知っていれば支払わなかったことは明白だからです。
親族相盗例の適用とその限界
「家族が逮捕されるのか」という点について、刑法244条には「親族相盗例(しんぞくそうとうれい)」という特例があります。これは、配偶者、直系血族、同居の親族の間で発生した窃盗罪等については、刑を免除するという規定です。しかし、この規定には重大な落とし穴があります。
ATMからの引き出しや窓口での詐欺において、被害者は「銀行」です。銀行と相続人は親族関係にないため、理論上、親族相盗例は適用されず、犯罪は成立し、処罰の対象となり得ます。実務上、銀行が実際に警察へ被害届を出し、告訴することは稀ではありますが、法的には「犯罪者」としての地位に置かれることに変わりはなく、銀行側が悪質だと判断すれば刑事責任を追及される可能性はゼロではありません。
また、引き出した現金を他の相続人に分配せずに着服した場合、他の相続人に対する「横領罪」が問題となります。この場合、被害者は他の相続人(親族)となるため、親族相盗例により刑が免除される可能性はありますが、それはあくまで「刑事罰を受けない」というだけであり、民事上の不法行為責任が消えるわけではありません。さらに、親族相盗例の対象となる親族の範囲は限定的であり、例えば「別居している兄弟姉妹」や「子の配偶者(嫁・婿)」などが関与した場合、告訴があれば起訴される可能性があります。
相続トラブルのリスク:民事訴訟と人間関係の崩壊
刑事事件化せずとも、死亡後の引き出しが引き起こす最も現実的かつ深刻な被害は、遺族間の人間関係の断絶と泥沼の民事紛争です。相続手続きにおいて最も重要な基盤は、相続人同士の信頼関係です。しかし、一部の相続人が他の相続人に無断で預金を引き出していたことが発覚すると、この信頼は一瞬で崩壊します。
使途不明金と不信感の醸成
通帳の履歴に、死亡直前や直後の不明な出金記録(使途不明金)が見つかると、他の相続人は様々な疑念を抱きます。「葬儀費用に使ったと言うが、本当はもっと引き出して自分のポケットに入れたのではないか」「生前から親のカードを管理していたが、過去にも勝手に使い込んでいたのではないか」といった疑念が生じると、遺産分割協議は感情的な対立の場と化し、まとまるものもまとまらなくなります。結果として、弁護士費用をかけて何年も争う「争族」へと発展するケースが後を絶ちません。
不当利得返還請求訴訟の可能性
勝手に引き出された預金について、他の相続人は民事訴訟を通じて返還を求めることができます。これを「不当利得返還請求」といいます。法的根拠は、「法律上の原因なく他人の財産(遺産共有持分)によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした」という点にあります。
この訴訟において重要な争点となるのは「引き出した現金の使途」です。引き出した側が、その全額を葬儀費用や被相続人の医療費など、遺産から支出すべき正当な費用に充てたことを証拠(領収書等)付きで証明できれば、返還義務は否定される傾向にあります。しかし、領収書を紛失していたり、どんぶり勘定で使途が不明瞭であったりする場合、裁判所は「私的に費消した」と推認し、法定相続分に応じた額の返還を命じる判決を下す可能性が高くなります。
葬儀費用の負担者に関する論点
さらに複雑なのが「葬儀費用は誰が負担すべきか」という論点です。判例(東京地裁平成24年等)では、原則として「喪主」が負担すべきという考え方が主流ですが、相続人全員の合意や慣習によっては遺産からの支出も認められます。もし、他の相続人が「遺産から葬儀費用を出すことに合意していない」と主張し、裁判所が「喪主負担」の原則を採用した場合、引き出した預金を葬儀に使っていたとしても、それは「他人の金で自分の支払い義務(喪主としての債務)を免れた」ことになり、不当利得として返還を命じられるリスクがあります。
税務上のリスク:重加算税と調査の網
「税務署にはバレないだろう」という甘い認識は、現代の税務行政においては通用しません。死亡直前・直後の預金引き出しは、相続税調査における最重要チェック項目の一つです。
手許現金の申告漏れ
相続税は、被相続人が死亡した日(相続開始日)に所有していた財産に対して課税されます。死亡直前に銀行口座から引き出された現金は、死亡日時点では「預金」ではなくなっていますが、使い切っていなければ「手許現金(てもとげんきん)」という形の相続財産として存在しています。多くの遺族は、銀行が発行する「残高証明書」の数字だけを見て相続税の申告書を作成しがちです。しかし、残高証明書には死亡日時点の銀行残高しか記載されておらず、直前に引き出された現金は反映されていません。この現金を申告財産に計上し忘れると、単純な「申告漏れ」となります。
KSKシステムによる厳格な監視
国税庁は「KSK(国税総合管理)システム」という高度な情報システムを運用しています。ここには、国民の過去の所得税申告データ、不動産取得履歴、法定調書などが蓄積されており、被相続人の生涯の収入と支出から推計される「あるべき資産額」が算出されます。申告された相続財産がこの推計値より著しく少ない場合、システムは「資産隠しの疑いあり」とのアラートを出します。
税務調査が実施されると、調査官は職権で金融機関に照会をかけ、被相続人の口座の過去5年〜10年分の入出金履歴を取り寄せます。「死亡の3日前に50万円、1週間前に100万円が引き出されていますが、この現金はどこにありますか?領収書はありますか?」と調査官はこのように具体的に追及します。これに対し、「生活費に使った」等の曖昧な回答で、客観的な証拠(領収書や医療費明細)を提示できなければ、その現金は「手元に残っている(相続財産である)」と認定され、課税対象に加えられます。
仮装・隠蔽と重加算税
さらに重大なのは、意図的な財産隠しと判断された場合です。死亡直後の混乱に乗じて現金を引き出し、それをタンス預金として隠匿し、相続税申告書に記載しなかった場合、これは「仮装・隠蔽」行為とみなされます。この場合、本来の税額に加えて、35%〜40%という極めて重いペナルティである「重加算税」が課されます。また、延滞税も加算されるため、結果として本来払うべき税金の倍近い金額を支払う羽目になることも稀ではありません。
しばしば見られる事例として、相続人が税理士に対して通帳の現物を見せず、残高証明書のみを渡して申告を依頼するケースがあります。この場合、税理士は直前の引き出し事実に気づけず、結果として過少申告となってしまいます。後に税務調査で発覚した際、税理士は責任を負いきれず、納税者が「税理士に情報を隠していた」として重加算税の対象となる判決事例も存在します。
適法な解決策:遺産分割前の仮払い制度の活用
これまで述べてきたような多大なリスクを冒さずとも、遺産分割協議前に現金を確保するための適法な手段が存在します。それが、2019年(令和元年)7月1日に施行された改正民法による「遺産分割前の相続預金の払戻し制度(仮払い制度)」です。
仮払い制度の趣旨と概要
改正前の民法下では、預金は遺産分割協議が完了するまでロックされ、相続人全員の実印がなければ1円たりとも引き出せないのが原則でした。しかし、これでは葬儀費用や生活費に困窮する遺族を救済できないため、法改正により、各相続人が単独で、一定額までなら仮に払い戻しを受けられるようになりました。
引き出し可能額の計算方法
この制度を利用して引き出せる金額は、「相続開始時の預貯金残高(口座ごと) × 3分の1 × その相続人の法定相続分」という計算式によって算出されます。ただし、一つの金融機関からの払戻し上限額は150万円と定められています。法務省令により定められたこの上限額は、標準的な葬儀費用等を賄うのに必要十分な額として設定されています。
具体的な計算例を挙げます。預金残高が600万円あり、相続人が長男と次男の2名(法定相続分は各2分の1)の場合、長男が単独で引き出せる額は「600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円」となります。この場合、100万円までは長男が単独で適法に引き出すことができます。
仮払い制度の手続きと必要書類
この制度を利用するためには、ATMではなく、銀行の窓口で所定の手続きを行う必要があります。必要な主な書類としては、被相続人の除籍謄本・戸籍謄本(出生から死亡までの連続したもの、相続人を確定させるため)、相続人全員の戸籍謄本(現在生存している相続人を確認するため)、払戻しを希望する相続人の印鑑証明書(本人の意思確認のため)、運転免許証などの本人確認書類、銀行備え付けの所定の払戻し請求書が挙げられます。
この手続きを経ることで、銀行は公的に払戻しに応じます。この方法で引き出した金銭は、後の遺産分割協議において、その相続人が「既に受け取った遺産の一部」として計算されるため、他の相続人との公平性も保たれ、トラブルになりにくいという利点があります。
150万円を超える資金が必要な場合
もし、150万円を超える多額の資金が緊急に必要である場合(例えば、被相続人の借金の返済期限が迫っている、事業資金が必要である等)、家庭裁判所に遺産分割の審判を申し立てた上で、「保全処分」としての仮払いを求めることも可能です。家庭裁判所が認めれば、150万円の上限を超えて引き出すことができますが、緊急性と必要性の疎明が求められます。
死亡後の預金引き出しで取るべき適切な行動
死亡後の口座凍結前に、キャッシュカードで安易に預金を引き出す行為は、一時の利便性と引き換えに、法的・税務的・人間関係的に極めて大きな代償を払うリスクがあります。ここでは、遺族が取るべき適切な行動指針について解説します。
キャッシュカードは使用しないことが鉄則
被相続人が亡くなった時点で、そのキャッシュカードの使用は「ストップ」するのが鉄則です。暗証番号を知っていても、ATMにカードを入れるべきではありません。これが全てのリスクを遮断する唯一の確実な方法です。
支出は「立替払い」を原則とする
葬儀費用や当面の支払いは、可能な限り喪主や相続人が自己資金で一時的に立て替えることを推奨します。そして、領収書を保管し、後日、遺産分割協議の中で精算して相続財産から回収するという手順を踏むのが最も安全です。
徹底した記録と証拠保全の重要性
どうしても被相続人の預金を使わざるを得なかった場合、あるいは知らずに引き出してしまった場合は、「いつ」「どこで」「何のために」「いくら」使ったのかを詳細に記録してください。そして、領収書、請求書、レシート等の原本を必ず保管してください。これは、税務調査における対抗要件となると同時に、他の相続人への説明責任を果たすための命綱となります。
専門家への早期相談が重要
もし、引き出した後に被相続人の借金が発覚した場合や、他の相続人と揉めそうな気配がある場合は、直ちに弁護士、司法書士、税理士等の専門家に相談してください。特に「相続放棄」を考えている場合、初動のミス(安易な支払い)が命取りになるため、自己判断での支出は厳禁です。
まとめ
「家族のお金だから」という甘えや、「バレなければいい」という油断は、高度にシステム化された現代の金融・行政監視網の前では通用しません。死後の手続きにおいては、感情ではなく「法」が支配します。遺された家族が円満に故人を送り出し、その後の生活を守るためにも、適正な手続きを遵守することこそが、最大のリスクヘッジとなるのです。
現金が必要な場合は、面倒でも戸籍謄本等を揃えて、銀行窓口で正規の「仮払い制度」を申請してください。数週間の時間はかかりますが、これが適法かつ安全に資金を確保する王道です。死亡後の口座凍結前引き出しに関する違法性やリスク、トラブルを正しく理解し、適切な対応を取ることが、将来の相続トラブルを防ぐ最善の方法といえます。

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