近年、リフォーム費用の削減や施主の意向をより反映させる方法として「分離発注」という手法が注目を集めています。従来の一括発注とは異なるこのアプローチは、中間マージンをカットしてコストを大幅に削減できる可能性がある一方で、施主により多くの責任と手間を求める側面もあります。
分離発注は、設計と施工を別々の会社に発注したり、各専門分野の業者に直接発注したりする方法で、約10%から20%、場合によっては最大30%のコスト削減が期待できるとされています。しかし、施主が複数の業者と直接契約を結ぶため、事務的な手続きや現場管理における負担も増加します。
この記事では、分離発注の基本的な仕組みから具体的なメリット・デメリット、成功させるためのポイント、よくあるトラブル事例まで、リフォームを検討している方が知っておくべき情報を詳しく解説します。適切な知識を身につけて、あなたのリフォームプロジェクトを成功に導きましょう。

リフォームの分離発注とは何ですか?一括発注との違いを教えてください
リフォームにおける分離発注とは、住宅や建物の改修工事を行う際に、施主(建て主)が設計と施工を別々の会社に発注する方法、または工事を構成する各専門分野の業者に直接発注する方法を指します。
一般的な一括発注では、窓口が一つで話が早く、何かあった際の責任の所在が明確で安心感があります。リフォーム会社が現場監督として各専門業者の工程管理や材料発注を行うため、発注者であるオーナーの手間はほとんどかかりません。
一方、分離発注では、基礎工事、柱・壁の組み立て、電気工事、水道工事、壁紙貼り、庭工事など、様々な専門分野の工事を施主が個別に直接業者に発注します。これは入札案件や公共事業などの大規模工事でよく見られる形式ですが、住宅建築やリフォームにおいては、まだあまり一般的ではありません。
分離発注の最大の特徴は、施主が工事全体をコントロールできることです。自分好みの材料や工法、そして実際に工事を行う業者を施主が自由に選べるため、理想的な家づくりを実現することが可能になります。また、各業者との直接契約により、工事の内容や費用が透明化されるという重要な利点もあります。
ただし、分離発注を選択する場合、施主は複数の専門工事業者と直接契約を結ぶことになるため、事務的な手続きや業者探しに多くの時間と労力が必要になります。各業者への発注説明会への参加や契約書作成、個別の入金手続きなどが増える傾向にあり、施主自身が工事全体の進捗や品質を管理する「現場監督」のような役割を担う必要が生じることもあります。
分離発注でリフォーム費用はどのくらい安くなる?メリットを詳しく知りたい
分離発注の最大の魅力は、建築費を大幅に削減できる可能性があることです。通常の一括発注方式では、工務店やハウスメーカーが下請け業者に発注する際に中間マージンを上乗せするため、その分コストが増加します。
分離発注では、施主が直接専門工事業者と契約を結ぶため、この中間マージンを削減でき、約10%から20%のコスト削減が期待できるとされています。中には、最大30%のコスト削減も可能と言われることもあり、実際に2434万円ものコストダウンが実現したという経験談もあります。
また、分離発注では競争入札によって業者を選定するため、コストが透明化されるという利点もあります。工事業者の原価が全て公開される場合もあり、どこにどれだけの費用がかかっているかが明確になります。これにより、施主は納得のいく価格で工事を発注することができます。
施主の意向の反映という面でも大きなメリットがあります。施主の「思い」が工事に反映されやすくなり、自分好みの材料や工法、そして実際に工事を行う業者を施主が自由に選べるため、理想的な家づくりを実現することが可能です。特定の業者しか関わらない部分工事(設備の取り換えなど)では、施工管理を必要としないケースも多く、その場合は施主が直接施工業者に依頼することで、施工管理費を節約できます。
品質の向上も重要なメリットの一つです。特にCM分離発注の場合、建築家や設計者が第三者の立場で現場をチェックします。設計者と施工者がそれぞれ異なる会社であるため、お互いの業務内容を厳正にチェックし合うことで、手抜き工事や施工不良を防ぎやすくなるというメリットがあります。これにより、リフォームに関連する詐欺の防止にも繋がると考えられています。
さらに、リフォーム内容ごとに職人との直接取引を行うことで、より細かな要望を伝えることができ、職人の技術や人柄を直接確認できるという安心感も得られます。工事中、完成後の10年保証に対応することも可能で、長期的な安心も確保できます。
分離発注のデメリットやリスクは?失敗しないための注意点とは
分離発注には多くのメリットがある一方で、施主が負うべき重要なリスクや注意点も存在します。適切な理解と管理がなければ、かえってコストが増加したり、深刻なトラブルが発生したりする可能性が高まります。
最も大きなデメリットは、施主の負担と手間が大幅に増加することです。分離発注では、施主が複数の専門工事業者と直接契約を結ぶことになるため、事務的な手続きや業者探しに多くの時間と労力がかかります。各業者への発注説明会への参加や契約書作成、個別の入金手続きなどが増える傾向にあり、これらの作業は想像以上に煩雑で時間を要します。
また、施主自身が工事全体の進捗や品質を管理する「現場監督」のような役割を担う必要が生じることがあります。工事の調整や段取りがうまくいかないと、工期の遅延や追加費用の発生に繋がりかねません。複数の業者のスケジュール調整や、工事の順序立て、品質チェックなど、専門的な知識が求められる場面も多くあります。
責任の所在が不明確になる可能性も重要な懸念事項です。複数の業者と個別に契約するため、工事中に問題が発生した場合に、どの業者の責任であるかが不明確になる可能性があります。例えば、ある工事が原因で別の工事に不具合が生じた場合、責任の押し付け合いになることも考えられ、最終的に施主が損失を被る可能性もあります。
専門知識の不足によるリスクも見過ごせません。施主が建築やリフォームに関する十分な知識や経験を持っていない場合、不適切な業者選びや、工事内容・品質の判断ミスを犯すリスクがあります。これにより、期待通りのリフォームができなかったり、後から追加費用が発生したりする可能性があります。
専門家は、理解不足の施主が設計・施工・材料の分離発注を行うことはトラブルが多発するため、止めた方が良いと強く警告しています。分離発注を成功させるためには、施主自身がある程度の建築知識を身につけるか、信頼できる専門家のサポートを受けることが不可欠です。
失敗しないための注意点として、まず契約書、保証書、図面を必ず残すことが重要です。金額や工事内容だけでなく、アフターメンテナンスの対象、費用、期限を明記した保証書や、工事の詳細を示す図面が不可欠です。また、「合意を得てから」を徹底することで、「言った・言わない」のトラブルを防ぐことができます。
CM分離発注とは?どんな場合に利用すべきでしょうか
CM分離発注(オープンシステム)は、分離発注の中でも特に注目されている方式で、施主が設計者と施工者それぞれと直接契約を結ぶ仕組みです。この方式では、設計者が設計、発注業務、工事の進捗・品質管理を担い、施主をサポートしながら家づくりを進めていきます。
CM分離発注の最大の特徴は、工務店に一括発注するのとは異なり、施工は各専門業者に直接発注されますが、各専門工事業者への発注説明会や契約書作成などの手続きの大部分を、CMを担う設計事務所などが代行してくれる点です。これにより、施主は専門家のサポートを受けながら、コストの透明化や中間マージンの削減といった分離発注のメリットを享受できます。
CM分離発注における建築家や設計者の役割は多岐にわたります。設計・監理では、施主の要望に基づいた設計を行い、工事が設計通りに進んでいるか、品質は保たれているかをチェックします。施主のサポートとして、専門工事業者との契約手続きの代行や、競争入札のサポートを行います。
また、コスト管理において工事業者の原価を公開させ、コストの透明化を図り、第三者チェックとして工事現場において、第三者の客観的な視点から品質や進捗を確認します。これにより、設計者と施工者がそれぞれ異なる会社であるため、お互いの業務内容を厳正にチェックし合うことで、手抜き工事や施工不良を防ぎやすくなります。
CM分離発注を利用すべきケースとしては、まず建築に関する専門知識が不足している施主が挙げられます。分離発注のメリットを享受したいが、自分で全ての業者管理を行うのは不安という場合に最適です。また、高品質なリフォームを求める場合や、独自のこだわりを持つ施主にも適しています。
大規模なリフォームや全面改修を行う場合も、CM分離発注が有効です。工事が複雑になればなるほど、専門家による工程管理や品質管理の重要性が高まります。さらに、コストの透明性を重視する施主や、複数の業者を比較検討したい場合にも、CM分離発注は大きなメリットを提供します。
ただし、CM分離発注でも施主の関与は必要で、完全に丸投げできるわけではありません。設計者との密な打ち合わせや、重要な判断における施主の意思決定は不可欠です。また、CM料として設計者への報酬が別途必要になる点も考慮する必要があります。
分離発注でよくあるトラブル事例と予防策を教えてください
分離発注では、複数の業者が関わることや施主の管理責任が大きいことから、様々なトラブルが発生しやすい環境にあります。実際の事例を基に、主要なトラブルパターンとその予防策を詳しく解説します。
契約に関するトラブルが最も多く発生しています。施主の合意なしでリフォームが行われるケース(見積もりのみで工事が開始された)や、契約内容と施主の認識が異なるケース(外壁塗装を一部分だけ依頼したのに、勝手に全て塗られた)、工事後の対応に関する問題(追加費用が請求された、リフォーム後の保証がなかった)などが典型例です。
これらを防ぐためには、契約書、保証書、図面を必ず残すことが重要です。金額や工事内容だけでなく、アフターメンテナンスの対象、費用、期限を明記した保証書や、工事の詳細を示す図面が不可欠です。また、契約前にリスクも説明することで、納品遅延による工事遅延、どのような状況で追加工事が発生するか、追加工事の費用など、起こりうるリスクを事前に明確にしておくことが大切です。
施工品質に関するトラブルも深刻な問題です。防水工事において、屋上防水改修で10年保証が契約条件だったにも関わらず、手摺基礎との取り合い部分の処理方法が原因で、メーカーが10年保証を出せない納まりになっていたケースがあります。これは施工計画時に協力会社や材料メーカーを含めた検討が不十分だったことが原因でした。
予防策として、防水改修工事では保証の要否と期間を契約条件に明記し確認することが重要です。障害となりそうな部分を洗い出し、納まり図を作成して協力会社やメーカーと協議し合意の上施工することで、このようなトラブルを避けることができます。
工事中の事故やトラブルも注意が必要です。屋上防水撤去中に突然の豪雨で下階に漏水し、商品に被害が出た事例があります。これは防水層撤去から新設防水層施工までを1日で完了させる計画でなかったことと、天候変化への備えが不足していたことが原因でした。
対策として、既存防水層の撤去から新設防水層施工までを原則1日で完了できる計画とすることが重要です。天候変化に備え、時間単位の気象情報を活用し、止水対策を講じ、下階への漏水防止策を事前に検討し材料を準備することで、突発的な事故を防ぐことができます。
業者間の連携不足によるトラブルも頻発します。外壁塗装工事で、給湯器の給気口を自然換気口と間違えビニル養生で塞いでしまい、ガス給湯器が作動しなくなった事例があります。これは給気口の位置に関する作業員への指示不足と、一般の換気口と誤認したことが原因でした。
予防策として、外壁修繕工事では、空気の流出入がある金物(ベントキャップ、ガラリなど)がある場合、その用途を必ず確認し、適切な養生を行うことが重要です。作業員への指示徹底、図面周知、現地確認を徹底することで、このような基本的なミスを防ぐことができます。
最も重要な予防策は、工事担当者は改修工事時に留意すべき法的手続きとその内容を教育することです。小規模な改修工事でも法的手続きが必要な場合があるため、関連部門を交えた確認の場を設け、法令に詳しい設計部門が行政対応を行うことで、後々の大きなトラブルを避けることができます。
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